まさかの「第二番」
Title:岸田繁「交響曲第二番」初演
Musician:指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団
2016年にまさかの「交響曲第一番」を完成させたくるりのメインライターにしてボーカリストである岸田繁。ロックにクラシックの要素を取り入れたり、オーケストラをバックにロックの演奏を行うミュージシャンは少なくありませんが、「交響曲」をひとつ書き上げるというのは前代未聞。大きな驚きを持って迎え入れられました。そして昨年、まさかに「交響曲第二番」を完成。本作は「第一番」同様、広上純一指揮、京都市交響楽団演奏の元に行われた初演の模様を収録したアルバムとなっています。ちなみに会場は愛知県芸術劇場だったそうで、うーん、ノーチェックでした。行きたかったな・・・。
この「交響曲第二番」では第5楽章まであった前作から変わり、4楽章制を採用。クラシックについては詳しくわからないものの、この4楽章制は古典的な枠組みだそうで、インタビューなどでも岸田繁本人が語っていましたが、よりクラシックのマナーに沿った作品に仕上げたそうです。
そんな訳で、このアルバムの感想を書こうとしても交響曲をどのように評価すればいいのか、いまひとつわからないので、なんとも言えない部分もあるのですが・・・まず聴いた感想としては「第一番」よりも聴きやすかったように感じました。一番の理由は前作が5楽章50分に及ぶ長さだったに対して、本作は40分とシンプルにまとまった点。ポップに慣れ親しんだ耳としては短い方が聴きやすさを感じます。また、比較的わかりやすいメロディーラインが要所要所に顔だし、かつ全体的にダイナミックな展開が多かった点も聴きやすい要因でしょうか。ここらへんのメロディーラインのわかりやすさはメロディーメイカーとして定評のある岸田繁ならでは、といった感じですし、またサウンドのダイナミズムさはある意味、ロックミュージシャンである彼ならでは、と言えるのかもしれません。
ただ一方では第二楽章ではひとつのフレーズが嫌と言うほど繰り返されていて、正直ちょっとしつこく感じる部分も。全体的にはオーソドックスな交響曲といった印象も強く、ここらへん、クラシックに詳しい方にはどのように評価されるのか気になるところ。ちなみにアルバム後半は「岸田繁 管弦楽作品集『フォークロア・プレイリスト①』により抜粋」として2曲の管弦楽曲が収録されているのですが、こちらの方が6,7分程度の長さでひとつのまとまりとして完結する楽曲が収録されているため、ある意味「ポップス」に近い感じが。彼にとっても作りやすかったのかもしれませんが、個人的にもこちらの方がより聴きやすかったように思います。
評価:★★★★
Title:岸田繁「フォークロア・プレイリスト I」
Musician:指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団
で、こちらが配信限定で同時リリースされたアルバム。「交響曲第二番」のCDにも収録されている「岸田繁 管弦楽作品集『フォークロア・プレイリスト①』により抜粋」 の2曲に当日演奏されたバルトーク、ショスタコーヴィチ、ヴィラ=ロボスの曲も収録されています。「岸田繁の曲」という意味では上のCDにすべて収録されている訳なので、こちらまで聴く必要はないのでしょうが・・・こちらも気になって聴いてみました。
その収録された3曲ですが、哀愁感あるメロが印象的なバルトークに不協和音的な響きが独特なショスタコーヴィッチ、ダイナミックな演奏が魅力的なヴィラ=ロボスと3曲とも魅力的な曲が並びます。こちら、やはり選曲は岸田繁本人なのでしょうか?彼の音楽的興味が垣間見れるような選曲になっておりとても魅力的。サブスクリプションでも配信されているようですので、岸田繁のファンならこちらもチェックしておきたいところでしょう。
評価:★★★★
岸田繁 過去の作品
まほろ駅前多田便利軒 ORIGINAL SOUNDTRACK
岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集
岸田繁「交響曲第一番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
ほかに聴いたアルバム
VIVIAN KILLERS/The Birthday
今年で結成13年目を迎えるThe Birthdayの10枚目となるアルバム。The Birthdayを紹介するときに、「元ミッシェル・ガン・エレファントのチバユウスケとクハラカズユキのいる」という書き方をしているのですが、ミッシェルの活動期間が12年だったので、ついにThe Birthdayの方が長くなってしまいましたね・・・。そろそろミッシェルの紹介の方が、「あのThe Birthdayのチバユウスケとクハラカズユキがかつて在籍していた」という書き方になってしまうかもしれません。
気が付けばフジイケンジがギターとして加入してからも既に8年目となる訳で、すっかりバンドとしてもまとまってきた感のある彼ら。スタイル的にはガレージロックという方向性は相変わらずながら、「ポップでメロディアス」というスタンスがよりはっきりしてきたように思います。ただ、この手のバンドはポップに走ると、「バンドサウンド」がヘナヘナになってしまうケースがほとんどなのですが、このアルバムを聴く限りでは、ヒリヒリしたような緊張感はその中でもしっかりと維持しており、タイトで文句なしにかっこいいガレージサウンドを聴かせてくれています。ある意味、ロックバンドとしてのカッコよさとポップなメロを見事に両立させたアルバムと言えるでしょう。13年目を迎えた彼らですが、まだまだバンドとして進化を続けそうです。
評価:★★★★★
The Birthday 過去の作品
TEAR DROP
MOTEL RADIO SiXTY SiX
NIGHT ON FOOL
WATCH YOUR BLINDSIDE
I'M JUST A DOG
VISION
GOLD TRASH
BLOOD AND LOVE CIRCUS
NOMAD
LIVE AT XXXX
波形/bird
今年デビュー20周年を迎える女性シンガーソングライターによる4年ぶりのニューアルバム。約4年ぶりとなる本作は前作同様、冨田ラボがプロデュースを手掛けたエレクトロサウンドが前面に押し出されたポップチューン。今時のAOR的な要素を入れつつ、彼女ののびやかなボーカルも非常に魅力的な作品に。ただ、前作同様、トラックもボーカルも魅力的ながらも、ちょっと小さくまとまってしまった感がありパンチに欠ける印象も。聴いている間は文句なしに気持ちよく味わえるのですが、聴き終わった後に残る印象が薄い感じが・・・。
評価:★★★★
bird 過去の作品
BIRDSONG EP
MY LOVE
NEW BASIC
9
lush
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