胸キュンポップで20年
Title:ALL TIME BEST~20th STORY + LOVE + SONG~
Musician:GOING UNDER GROUND
1998年にアルバム「Cello」でインディーデビュー。昨年、デビューから20周年を迎えたロックバンド、GOING UNDER GROUNDのオールタイムベストが本作。インディーズデビューアルバムに収録されている「チェロ」からスタートし、時系列順に収録。彼らの20年の歩みをたどることが出来るベストアルバムになっています。また、初のCD音源化となる「Parade」「Winding Road」も収録されており、ファンにとってもうれしいベスト盤になっています。
GOING UNDER GROUNDの最大の魅力と言えばなんといっても思春期の純愛を彷彿とさせるような、ノスタルジックな雰囲気の描写も魅力的な歌詞と胸がキュンとなるようなメロディーラインでしょう。ボーカルの松本素生は眼鏡フェイスと小太りの体系で、失礼ながらもロックバンドのボーカルらしからぬ風貌をしていますが、朴訥さを感じられる彼のそのルックスと歌声はGOING UNDER GROUNDの曲の世界観にピッタリとマッチしており、彼の存在があるからこそ、GOING UNDER GROUNDの世界が確立されているといっていいでしょう。
ただ一方、そんな歌の世界を作り上げている彼らですが、意外とロックバンドとして骨太な側面も持ち合わせているというのも大きな魅力でしょう。もともとGOING UNDER GROUNDというバンド名自体、イギリスのパンクロックバンドThe JAMの曲に由来していますし、結成当初はパワーポップバンドのWEEZERに大きな影響を受けていたとか。実際、1曲目「チェロ」はかなり分厚いギターサウンドの、確かにWEEZERも彷彿とさせるようなパワーポップチューンに仕上がっていますし、Disc1の前半に収録されている曲はノイジーなサウンドが前に出しているギターロック路線が貫かれています。
そんなGOING UNDER GROUNDを私がはじめて知ったのは2000年のメジャーデビュー直前。そしてはじめて見たライブが忘れもしない2000年の5月4日の日比谷野音。この日、あのBUMP OF CHICKENも出演し、前座にGO!GO!7188も登場したという今考えればかなり豪華なイベントライブだったのですが、このライブでなんとトリを飾った彼らのステージにすっかり魅せられてしまい、その後も何度かライブに足を運ぶなど、一時期はかなりはまっていました。
その後も一応アルバムがリリースされる毎にアルバムはチェックしているのですが、正直言って、ここ最近は一時期のようにはまることもなくライブに足を運ぶこともなくなりました。そんな私も久しぶりに彼らのベストアルバムでかつてはまっていた初期の頃の作品を聴いてみたのでですが・・・やはり良い!(笑)上にも書いたとおり、セピア色の風景を思い出させるような歌詞に胸をかきむしろようなメロディー、そしてそんな世界をほどよく盛り上げるギターサウンドが心にズシズシ響いてきます。あらためてGOING UNDER GROUNDの魅力を再認識できました。
こうやって時系列に沿って聴いてみると、彼らのひとつの完成形はおそらく2003年リリースのシングル「トライライト」ではないでしょうか。
「風と稲穂の指定席に座る 上映間近のアカネ空」
(作詞 松本素生 「トライライト」より)
というワンフレーズだけでその切なさを感じる風景がパッと目の前に浮かんでくるのは実に見事。バンドサウンドもストリングスを入れてくるなど厚みをまし、バンドとしての勢いも感じます。
ただ正直言ってしまうと、ここらへんの曲から邦楽ミュージシャンの悪い癖がはじまります。それはストリングスの多様。どうも日本のミュージシャンはスケール感を出そうと安易にストリングスを入れてくる傾向にあるようで、「STAND BY ME」や「パスポート」などストリングスのアレンジがどうにも平凡で悪い意味で陳腐なイメージを楽曲に与えてしまっています。
私がGOING UNDER GROUNDの曲から冷めたのもちょうどこの時期。今聴いてもDisc1の終盤からDisc2の最初の方の曲はマンネリ気味にも感じられ、決して悪い曲ではないのですが、このベストアルバムの中ではちょっと今ひとつに感じてしまいます。
しかし、その印象が再び変わるのがDisc2の中盤あたりから。今回のアルバムではじめてCD化された「Winding Road」はダイナミックで疾走感あるバンドサウンドが魅力的なインパクトある楽曲になっていますし、特に続く「LISTEN TO THE STEREO!!」はピアノも入ったダイナミックなバンドサウンドは初期の彼らを彷彿とさせるようなバンドの初期衝動的な勢いを感じさせる反面、サウンド的には厚みを増し、彼らの新境地を感じさせる曲に。特にここ最近の作品は初期の作品のようにバンドサウンドをより前面に出した曲が復活しており、加えて「あたらしい」のようにほどよくエレクトロサウンドを取り入れた曲もあったりして、バンドとして一歩進化した姿を感じることが出来ました。
今回のベスト盤で彼らの曲を聴いて、あらためてGOING UNDER GROUNDというバンドの魅力と彼の今の進化を感じることが出来ました。なにげにここ最近の彼らは徐々に成長を遂げているんだな、といまさらながら気が付かされたアルバム。なんか久しぶりに彼らのライブにも足を運びたくなったなぁ・・・。
評価:★★★★★
GOING UNDER GROUND 過去の作品
おやすみモンスター
COMPLETE SINGLE COLLECTION 1998-2008
LUCKY STAR
稲川くん
Roots&Routes
Out Of Blue
真夏の目撃者
FILM
ほかに聴いたアルバム
はじめてのCHEMISTRY/CHEMISTRY
2001年にテレビ番組「ASAYAN」の企画によりデビュー。デビューアルバム「The Way We Are」は初動ミリオンを達成するなど、まさに一世を風靡したR&B男性デゥオ、CHEMISTRY。その後2012年に活動を休止したものの、2017年に活動を再開しています。そんな彼らの期間限定でリリースされたベストアルバム。最近はとにかくボリュームばかりが大きいベスト盤が多い中、このアルバムは1枚組で10曲に厳選(+ボーナストラックで2曲)。タイトル通り、これでCHEMISTRYの入門盤としては最適なアルバムになっています。
これを機に久しぶりにCHEMISTRYの代表曲を聴いてみたのですが・・・懐かしいなぁ。今でも普通に口ずさめるような曲の連続で、いかに彼らが多くのヒット曲を生み出してきたか再認識しました。特に本格的なR&Bを志向しつつも一方ではほどよく和風、歌謡曲的な要素も入れてきており、いい意味で聴きやすいポップスに仕上がっています。いまさらながらこのバランスの良さがあれだけの人気を確保した大きな要因なんでしょうね。久しぶりに聴いて彼らの魅力を再認識したアルバム。そろそろ久々にオリジナルアルバムを聴きたいなぁ。
評価:★★★★★
CHEMISTRY 過去の作品
Face to Face
the CHEMISTRY joint album
regeneration
CHEMISTRY 2001-2011
Trinity
そろそろ中堅/打首獄門同好会
最近、急速に知名度を上げてきた打首獄門同好会。ラウドロック、ヘヴィーメタル的な要素を取り入れたヘヴィーなサウンドを奏でながらも、日常に密接したネタを取り上げるユーモラスな歌詞が魅力的。最近ではベースのjunkoが誕生日のライブで実は還暦になったという衝撃の事実が判明し、Twitter上でバズる大きな話題となりました。このアルバムでもタイトル通りの気持ちを率直に表現した「はたらきたくない」やギターボーカルの大澤敦史の出身地について歌ったそのものズバリ「HAMAMATSU」なども収録。さらにあの「おどるポンポコリン」をラウドにカバーしていたりします。ラウドなロックとギャップのあるユニークな歌詞という組み合わせで、ちょっとSEX MACHINEGUNSを彷彿とさせるところも。ただ思ったよりラウドというよりはポップ寄りなサウンドになっていて、個人的にはもっとラウドに突っ切ってしまった方がおもしろいようにも感じました。ただユニークな歌詞はやはりインパクト大で、まだまだ注目度は高まっていきそうです。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事
- 彼女の幅広い音楽性を感じる(2019.12.26)
- 80年代に一世を風靡した女性ロックシンガー(2019.12.28)
- 2つの異なるスタイルで(2019.12.14)
- ミュージシャンとしての矜持を感じる(2019.12.17)
- 2019年最大の注目盤(2019.12.13)
コメント