ニューウェーブ風サウンドを軸にバラエティー富んだ構成が魅力的
Title:Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1
Musician:Foals
イングランド出身の5人組ギターロックバンドFoalsの約4年ぶりとなるニューアルバム。毎作、アルバムは高い評価を得ているほか、人気の面でもイギリスのナショナルチャートの上位の常連となっている彼ら。いい意味で質と人気両方バランスよく確保しているバンドといった印象を受けます。日本では残念ながら本国ほどの人気はありませんが、フジロックにも何度か参加しグリーン・ステージに立った経験もあるなど、日本でも音楽ファンを中心に注目を集めるバンドです。
音楽の方向性はエレクトロサウンドをふんだんに取り入れた80年代ニューウェーブからの影響も感じさせる作風がメイン。今回のアルバムでも「Exits」や「White Onions」、さらには「On The Luna」などエレクトロの軽快なサウンドとリズムにギターサウンドを重ねポップなメロでまとめあげた作品が目立ちます。ほどよく軽快なエレクトロビートと、ほどよくロックなバンドサウンドのバランスが絶妙でポップなメロと合わせて聴いていてとても楽しくなるようなナンバーが並びます。
特にこのエレクトロという方向性でアルバムのひとつの核となっているのが4曲目の「In Degree」。ディスコ風のリズムが軽快なエレクトロダンスチューンとなっており、サウンド的なインパクトは十分。思わず身体が動き出しそうな楽しいポップチューンに仕上がっています。
ただ、そんなニューウェーブ風なエレクトロサウンドを主軸にしつつ、様々なサウンドメイキングを繰り広げているのが今回のアルバムのひとつの大きなポイント。そもそもアルバムのスタート「Moonlight」は静かで荘厳な雰囲気からのスタート。不思議な森の中に迷い込んだかのような幻想的、でもどこか近未来的な雰囲気のある独特なサウンドが印象に残るミディアムテンポの聴かせるナンバーになっています。
サウンドメイキングで言えば中盤の「Syrups」も秀逸。ダビーな雰囲気で不気味にスタートする序盤に強いインパクトを持たせつつ、後半は疾走感あるサウンドでロック的なダイナミズムさを聴かせる楽曲に仕上げています。「Sunday」も前半はメロディアスな歌を聴かせるポップソングとなっていながらも後半はトランシーなミニマルテクノチューンに早変わり。この構成も非常にユニークさを感じます。
そんなサウンドメイキングが強い印象を残す一方、なにげにメロディーの美しさも光るのが今回のアルバムの特徴。前述の「Syrups」も力強い「歌」を聴かせてくれる曲になっていますし、「Sunday」のメロディーもインパクト十分。さらにラストの「I'm Done With The World(&It's Done With Me)」もシンセとピアノの音色をバックに美しい歌を聴かせてくれる歌モノのポップソングに仕上げています。いままで聴いた彼らの作品はファンクやソウルなどの要素も加えたポップが魅力的だったのですが、今回はそのようなブラックミュージックの要素は薄め。ただ純粋にメロディーラインの美しさとポピュラリティーはいままでのアルバムで一番の出来だったかもしれません。
そんな訳でいままでの彼らの作品同様、期待どおり、いや期待以上の傑作アルバムだった本作。ちなみにタイトル通り、今年中にはPt.2のリリースが予定されているとか。今回のアルバムを聴く限りでは否応なく期待は高まります。次回作、非常に楽しみです。
評価:★★★★★
FOALS 過去の作品
TOTAL LIFE FOREVER
Holy Fire
ほかに聴いたアルバム
Signs/Tedeschi Trucks Band
日本でも高い支持を誇るアメリカのルーツ志向のブルースロックバンドによる約3年ぶりのニューアルバム。いつもながらシンプルに、泥臭く聴かせてくれるブルースロックが心地よく、ただその中にはソウル色が強い楽曲やよりムーディーに仕上げた楽曲もありバラエティーも感じられます。いい意味で安定感のあり、「ブルースロックを聴いた」という充実感も感じられるアルバムでした。
評価:★★★★
TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Brain Invaders/Zebrahead
サマソニに数多く出演し、本国アメリカ以上に日本で高い人気を誇るロックバンドZebrahead。3年5ヶ月ぶりとなるニューアルバムには日本盤のボーナストラックとしてE-girlsの「Follow Me」を日本語でカバーした曲を収録するなど、その親日ぶりがうかがえます。本作はメロコアやミクスチャーロックなどの要素を取り入れ、ほどよくへヴィーにまとめつつも、基本的にはポップなパンク路線でメロディーはしっかりとキャッチーに仕上げています。そこそこへヴィーにまとめつつも基本的にわかりやすいポップなメロディーラインが流れているあたり、日本で高い人気を誇る大きな要因でしょうか。良くも悪くも期待通り、素直に楽しめるポップなロックアルバムでした。
評価:★★★★
Zebrahead 過去の作品
Phoenix
Out of Control(MAN WITH A MISSIONxZebrahead)
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