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2019年4月23日 (火)

2018年、話題のバンドの次の一手、だが。

Title:THE ANYMAL
Musician:Suchmos

2018年という年は間違いなくSuchmosにとって節目となる1年となりました。彼らの楽曲「VOLT-AGE」がNHKのサッカーワールドカップ中継のテーマソングに起用。さらに年末には紅白歌合戦にも初出場を果たし、その知名度を大きくアップさせる1年となりました。

昨年はその話題の楽曲「VOLT-AGE」を含む、ある種のシングル的なミニアルバムをリリースしましたが、本作はそれに続く待望のニューアルバム。前作「THE KIDS」も傑作アルバムでしたし、その後、あれだけ話題を振りまいた後にリリースされたアルバムということで否応なく注目の集まる1枚となる訳ですが・・・まずは聴き終わった後、「なるほどそう来るか・・・」とうなってしまいました。

当然、あれだけヒットして注目を集めた「THE KIDS」の後のアルバムで、なおかつ一般的な知名度も上がった今、次のアルバムも「THE KIDS」の延長線上で、なおかつポップスさを増したアルバムが来る、そう予想していました。しかし結果としては今回のアルバム、「THE KIDS」のSuchmosの方向性からは大きく離れ、なおかつ大衆受けという方向性に完全に背を向けたような作品に仕上がっていました。

まず冒頭の「WATER」。確かにジャジーでメロウというSuchmosのパブリックイメージに沿ったようなスタートとなっています。しかし、わかりやすいポップな楽曲といった感じではなく、歌もどこかフリーキーさを感じさせます。どこか飲み込みにくい感を抱きつつ、アルバムを進めると続く「ROLL CALL」はいきなりノイジーなバンドサウンドが飛び込んでくる、ガレージ風なサウンドがインパクトを持つ楽曲に。後半はサイケロック的な印象すら感じるナンバーに仕上がっていました。

実はこのサイケデリックな感じが今回のアルバムの最大の特徴。3曲目の「In The Zoo」ではゆっくりとダウナーなスタイルで途中からどんどんサイケな雰囲気に陥っていきますし、特にアルバムの大きなハイライトとなるのが6曲目の「Indigo Blue」。11分にも及ぶ長尺のナンバーになっているのですが、ダイナミックなバンドサウンドを前に押し出したスケール感あるサイケチューンに彼らの意欲を感じます。

もちろん後半にはメロウなAORナンバー「WHY」など彼らの「歌」を聴きたいという方にも満足できそうなポップチューンがしっかりと収録されています。ただそんな中でも「Hit Me,Thunder」のようなブルースな楽曲にも挑戦しており、彼らの挑戦心を感じることが出来ますし、終盤を締めくくるメロウチューンの「HERE COMES THE SIX-POINTER」「BUBBLE」にもドリーミーなサウンドにはサイケロックからの影響も感じさる部分があります。

そんな訳で、「THE KIDS」のようなアルバムを期待されていた方にとっては期待外れのアルバムと言えるかもしれません。ただ、一風変化した作風でもジャズやソウルなどの要素をロックなサウンドの取り入れているSuchmosらしさは変化いていませんし、アルバムもしっかりSuchmosらしいと感じる出来に仕上がっていました。ただ決してわかりやすいポップなアルバムではありませんし、そういう意味では最初とまどうアルバムになっているかもしれません。ただ、お茶の間レベルで話題になったからといって安易にポップな方向に進まず、あくなき挑戦心を持ち続けている彼らのスタイルに驚かされると同時に強く感心させられた作品になっていました。私も最初、このアルバムに戸惑ったのですが、何度か聴くうちに徐々にその世界に強く惹かれていきました。挑戦心あふれるとんでもないアルバム、と言えるかもしれません。2019年も彼らの勢いは止まりそうにありません。

評価:★★★★★

Suchmos 過去の作品
THE KIDS
THE ASHTRAY


ほかに聴いたアルバム

THE ANTHEM/AK-69

約2年半ぶりとなるAK-69のニューアルバム。もともと本格派「風」なヘヴィーでダークなトラックながらも、意外な聴きやすさゆえに広い支持を得ていた彼。今回のアルバムもヘヴィーでダイナミックなサウンドをトラックとして流しつつも、哀愁感あるメロディーが流れる曲が多く、ある種のポピュラリティーあるアルバムになっています。「THE ANTHEM」というタイトル通り、力の入った曲も多く、父親との今生の別れを描いた「Stronger」には思わず涙する人も多いかと。ラストの「BRAVE」ではなんとX-JAPANのToshiがボーカルで参加。独特のハイトーンボイスが嫌でもインパクトを持ったナンバーに。一方では「One More Time」では今風なトラップの音を取り入れたりもしており、そういう意味では本格派としての方向性とポピュラリティーを上手くバランスさせたアルバムにも感じます。いい意味でAK-69を聴いた、という満足感を覚えるアルバムでした。

評価:★★★★

AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King
THE THRONE
DAWN
無双Collaborations -The undefeated-

PIT VIPER BLUES/T字路s

女性ギターボーカルの伊東妙子とベース篠田智仁によるブルースデゥオT字路s。実は以前、ライブを見たことがあり、そのステージの素晴らしさに一気に気になるミュージシャンとなっていたのですが、ようやく音源を聴くことが出来ました。ブルースデゥオというイメージなのですが、楽曲的にはむしろカントリーやフォーク的な要素も強め。ただ、とにかくインパクトがあるのが伊東妙子のボーカル。迫力満点のだみ声は楽曲のくすんだ雰囲気にもピッタリマッチ。彼女にしか出せない独特の色を出しています。

ただゆっくりと噛みしめるように歌われる歌はインパクト十分・・・のはずなのですが、歌詞がしっかりと耳に入ってくる割には聴き終わった後、いまひとつ印象に残らないのが非常に気になりました。要するに、歌詞にインパクトあるフレーズや展開がいまひとつなく、引っ掛かりがほとんどない、ということ。せっかく素晴らしい歌声の持ち主で、歌い方もしっかりと歌詞を伝えるような歌い方にも関わらず、非常にもったいなく感じました。

評価:★★★★

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アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

Suchmosの新作は聞いていて思ったのは「フィッシュマンズかよ?!」と言いたいぐらいにサイケデリックなグルーヴに満ちた作風が良かったと僕は思っています。

投稿: ひかりびっと | 2019年4月25日 (木) 13時17分

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