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2019年4月 1日 (月)

メロディーメイカーとしてのセンスが光る

Title:Weezer(Black Album)
Musician:Weezer

「青」を基調したデビューアルバム以降、あるひとつの色を基調としたジャケット写真のアルバムをリリースし続けたアメリカのパワーポップバンドWeezer。で、今回のテーマは「黒」なのですが・・・・・・いや、これは完全にギャグということでいいですよね(笑)。
全身黒のジャケットがかなりインパクトのあるWeezerのニューアルバムです。

今回のアルバムは正直言うと、かなり賛否両論が分かれそうな「問題作」といっていい内容だったのではないでしょうか。今回のアルバムを一言で言うと、最初から最後までポップ曲調のナンバーが並ぶアルバムになっていました。ちょっとラテン風のメロで軽快に聴かせる「Can't Knock The Hustle」からはじまり、ピアノが入り、ビートルズを彷彿とさせるような美メロが耳を惹く「High As A Kite」、ダンサナブルでディスコ風のポップチューン「Living In L.A.」、切ないメロが耳を惹くピアノポップ「Piece Of Cake」など、まずはそのメロディーラインが耳を惹くナンバーが続いていき、最後は軽快なサマーポップチューン「Byzantine」からスペーシーなシンセでダイナミックにまとめた「California Snow」で締めくくり。全編、ポップなメロがまず全面に押し出された作品となっています。

そのため今回のアルバムは彼らのパワーポップという側面がほとんど前に出てきていません。あえて言えば「I'm Just Being Honest」あたりはギターサウンドが前に出ているロックな楽曲に仕上がっていますが、「パワーポップ」といえそうな作品はこの曲くらい。そのため、かなり賛否の分かれるアルバムになっていたように感じます。

Weezerは今年、このアルバムのほか、カバーアルバム「Weezer(Teal Album)」をリリースしています。このアルバムもまた、非常にポップなナンバーをカバーした作品になっていましたが、今から考えるとこのカバーアルバムは本作の前哨戦という意味合いもあったのでしょう。

また、前作「Pacific Daydream」もサイケポップなアルバムに仕上げられており、賛否がわかれるようなアルバムでしたが、そう考えると、今、Weezerのベクトルはよりポップという方向性を指し示しているということになるのでしょうか。ただ、幻想的にまとめられており、ポップという方向性がぼやけていた前作と比べると、本作はその方向性が明確に示されており、すっきりとまとまったアルバムにも感じました。

Weezerといえばパワーポップバンドの代表格的バンド。そういうイメージがあっため、正直言うと今回のアルバムのポップスさに関しては私もはじめは拍子抜けしてしまいました。ただ、聴き進めていくうちに、徐々にそのメロディーの美しさに惹かれていきました。特にこのメロディーの良さに関しては、彼らのアルバムの中でも屈指の作品と言えるのではないでしょうか。メロディーメイカーという側面においては今、彼らは脂が乗っている状況と言えるかもしれません。

確かに賛否がわかれるということは非常によくわかるのですが、個人的にはこのアルバムは傑作アルバムだったように感じます。突き抜けてポップなメロディーラインは実に絶品。Weezerのポップという側面での魅力を余すことなくアルバムの中に入れてきています。ただ・・・もっとも次のアルバムはやはりガツンとロックなアルバムを聴きたい、とも思ってしまうのも否定はできないのですが・・・。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)


ほかに聴いたアルバム

Quiet Signs/Jessica Pratt

アメリカの女性シンガーソングライターによる約4年ぶりとなるニューアルバム。基本的にアコースティックギター一本でしんみり歌うスタイル。ちょっと70年代のテイストも感じる、どこか懐かしさもあるフォーキーなメロディーラインが大きな魅力。彼女の静かな歌声も優しく響きます。派手さはないですが、心の奥に響いてくるような魅力的なアルバムでした。

評価:★★★★★

After its own death/Walking in a spiral towards the house/Nivhek

Grouperというソロプロジェクトでも活動を行うアメリカの女性ミュージシャン、Liz Harrisの新プロジェクト、Nivhekのニューアルバム。といっても、実質的には「After its own death」という曲と「Walking in a spiral towards the house」という2曲が入っているのみが入っている全60分弱のアルバムで、「After its own death」は幻想的なサウンドに美しい女性ボーカルが入りつつ、途中からいきなり不気味なノイズが鳴り響く緊迫感ある展開が耳を惹くナンバー。続く「Walking in a spiral towards the house」は静かでメタリックなサウンドがミニマル的に淡々と続いていく楽曲になっており、こちらも不気味ながらも緊迫感あるサウンドが耳を惹きます。全編、不気味な雰囲気ながらも、どこか幻想的なサウンドが魅力的なアルバムでした。

評価:★★★★★

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