ロックバンド演じるポップなカバー
Title:Weezer(Teal Album)
Musician:Weezer
日本でもおなじみ、ロックバンドWeezerが、今年1月に突如配信限定でリリースされたニューアルバムはなんと彼ら初となるカバーアルバム。昨年、TOTOの「Africa」のカバーを先行リリースしてちょっとした話題となったのですが、それに続く形でのカバーアルバムとなりました。
Weezerといえば、そのポップなメロディーラインと分厚いバンドサウンドで日本でも大人気のバンドなのですが、今回のカバーアルバム、まずはその選曲がすごいことになっています。一言で言えばド定番の連続(笑)。前述のTOTO「Africa」をはじめ、A-ha「Take On Me」やマイケル・ジャクソンの「Billie Jean」、そして最後を締めくくるのはBen E Kingの「Stand By Me」と、いまどきわざわざこの辺りの曲をカバーするバンドなんてないんじゃないか、というくらいの定番ナンバーの連続に、逆に潔さを感じます。
もうひとつ大きな特徴としてはカバーしている曲はポップチューンの連続という点。いうまでもなくロックバンドの彼らですが、いかにもなロックナンバーのカバーはほとんどなく、ほとんどがポップという枠組みでの楽曲ばかり。数少ないロック系のカバーはBlack Sabbathの「Paranoid」というのもまた、非常にユニークな選択に感じます。
またさらにこのカバーの選曲として、非常に日本人好みなメロディーラインのポップチューンが多いように感じました。Weezerといえばボーカリストであり作詞作曲を手掛けるリヴァース・クオモは大の親日家として知られ、奥さんが日本人であるほか、スコット&リバースなるJ-POPユニットを結成し活動をしていたりもします。今回カバーされている曲はいずれもメロディーがわかりやすい曲が多く、サビに該当するフレーズがわかりやすい形であらわれてくるような曲がほとんど。ここらへん、おそらくリヴァースの好みと関係しているのでしょう。これで、日本人がカバーしまくっている「Can't Take My Eyes Off You」がカバーされていれば完璧だったのですが(笑)。
そして肝心なカバーの内容ですが、これがアレンジが実に絶妙。基本的には原曲に準拠して大きくイメージを変えない形でのカバーとなっているのですが、ほどよくポップなメロディーラインを前に押し出しつつ、また、ロックバンドの彼ららしいバンドサウンドの味付けをしっかりと加えたカバーに仕上げています。例えば前述の「Paranoid」ですが、原曲のもつへヴィネスさは残しつつ、全体的にメロを前に押し出したハードロックテイストのナンバーに仕上げていますし、「Stand By Me」にしても原曲の持つポップで切なさを感じるメロを生かしつつ、ギターサウンドを入れた軽快なカバーに仕上げています。
ポップスをポップなままにロックバンドが演じた今回のカバー。実にWeezerらしさを感じるスタイルでのカバーと言えるかもしれません。最初から最後までポップなメロが楽しめるアルバムで、その中にほどよく入ってくるロックバンドらしいダイナミズムも絶妙。わかりやすいメロは日本人にとっても耳馴染みやすく、配信限定のためちょっと目立っていないかもしれませんが、Weezer好きなら間違いなくチェックすべきアルバムだと思います。またバンドとしても非常にいい状態なのでしょうね。3月にリリースされた新作、まだ聴いていないのですが、こちらもとても楽しみになってくる傑作でした。
評価:★★★★★
WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
ほかに聴いたアルバム
Best of Netsanet Melesse's Old Collection: Doju/Netsanet Melesse
今日紹介するのも各種メディアのベストアルバムの後追いで聴いた1枚。こちらはMusic Magazine誌ワールドミュージック部門第3位を獲得したエチオピアのベテラン女性シンガーのタイトル通りベストアルバム。聴いてみてすぐにわかるのですが、楽曲としては力強いボーカルにこぶしも効いていて、日本の演歌そのものといった感じ。そういう意味では日本人にとって耳なじみある楽曲に。一方ではホーンセッションを入れていたり、演歌に比べると明るいさわやかさを感じさせたり、演歌とは異なる魅力も随所に感じさせてくれます。なにより力強い彼女のボーカルに強い魅力を感じたアルバムでした。
評価:★★★★
Full Circle/Eddie Palmieri
こちらもベストアルバムの後追いで聴いた作品。同じくMusic Magazine誌でこちらはラテン部門で1位を獲得したアルバム。ニューヨーク出身のラテンジャズ・サルサミュージシャンの第一人者、エディ・パルミエリの最新アルバム。楽曲は哀愁感たっぷりの歌からスタートしつつ、後半はピアノやパーカッション、サックスなどが加わるジャムセッション的でジャズの要素も強いインストパートとなる構成。歌のパートも非常に聴かせるものがありますし、また複雑なリズムの要素を取り入れたジャムセッションも大きな魅力的な傑作でした。
評価:★★★★★
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