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2019年3月17日 (日)

ヘナヘナな雰囲気ながらも

Title:Ripples
Musician:Ian Brown

1980年代後半から90年代にかけて活躍し、当時のマンチェスター・ムーブメントの中心的存在だったイギリスのロックバンド、THE STONE ROSES。アルバムをわずか2枚リリースした後に解散してしまったのですが、その後の音楽シーンに絶大な影響を与えました。

その後2011年、2016年と再結成。日本でもライブを行い、2016年の再結成時には久々となる新曲もリリースしたのですが、残念ながらアルバムのリリースはなく、現在はまたバンドは解散状態となります。多くの音楽ファンが待ちわびるTHE STONE ROSESの3枚目のアルバムはいつになるのか不明なのですが、バンドのボーカリストであるイアン・ブラウンがこのたび約10年ぶりとなるソロアルバムをリリースし、話題となっています。

ただ、かく言う私は特にリアルタイムでTHE STONE ROSESを聴いていた訳でもなく、バンドに大きな思い入れもありません。そのためソロアルバムも興味はあったもののさほど高い期待の下で聴き始めたという訳ではありませんでした。実際、1曲目「First World Problems」も最初、シンプルでちょっとチープさすら感じるシンセの音と、決して上手いわけではないイアンのボーカルでヘナヘナな感じでの楽曲となっており、最初聴き始めた時はいまひとつか、と感じたのが素直な感想でした。

しかしアルバムを聴き進めていくうちにその印象が徐々に変わっていきました。1曲目「First World Problems」にしても、最初はヘナヘナと感じたのですが、淡々と続くシンセのサウンドとリズムがある種の独特なグルーヴ感を奏でていることに気が付き、さらに2曲目「Black Roses」も、ノイジーなギターサウンドのうねるようなサウンドが独特のリズム感がグルーヴィーでとても気持ちよくなってきます。

続く「Breathe And Breathe Easy(The Eerness Of Now)」はアコギのみで聴かせるナンバーなのですが、さらに「The Dream And The Dreamer」はパーカッションとギター、さらにシンプルながらも重いリズムを刻むベースラインが非常にファンキーで一種のトリップ感を覚えるようなグルーヴを奏でています。そしてこの独特なリズムに、実はヘナヘナと思われたイアンブラウンのボーカルが実にマッチ。比較的平坦で、抑揚をつけないような歌い方なだけに、サウンドが刻むグルーヴを奏でるミニマル的なリズムにピッタリとマッチしているゆに感じました。

後半もタイトルチューンである「Ripples」も淡々とした感じのバックに流れるベースとドラムの重いグルーヴを奏でるリズムがとても心地よく、それに幾分サイケ気味なギターサウンドがのっているサウンドの組み合わせがユニーク。「Blue Sky Day」もミディアムチューンのナンバーでボーカルを前に押し出した楽曲ながらも後半から入ってくるドラムの重いリズムが耳を惹きます。そしてラストの「Break Down The Walls(Warm Up Jam)」は比較的シンプルなサウンドで淡々と進む楽曲。最後もまたヘナヘナとした雰囲気の楽曲となっているのですが、もうここまでアルバムを聴き進むと、このヘナヘナ感が逆に気持ちよくなっているから不思議(笑)。最後は心地よいリズムを楽しみつつアルバムを聴き終えることが出来ました。

そんな訳で最初はヘナヘナなサウンドとボーカルに違和感を覚えたアルバムでしたが、その独特のグルーヴ感が非常に気持ちよく、アルバムを最後まで聴き進むと、そのヘナヘナ感がたまらない魅力に感じた作品に仕上がっていました。THE STONE ROSESの最新アルバムはいつになるかわかりませんが、とりあえずはこのアルバムでファンの方はしばらくは楽しめるのではないでしょうか。聴いていて心地よさを感じる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Remind Me Tomorrow/Sharon Van Etten

ニューヨークはブルックリンを拠点に活動する女性シンガーソングライターのニューアルバム。ミディアムテンポでダウナーな雰囲気を醸し出しているメロディアスなポップチューンが並ぶ作品。ピアノやエレクトロサウンドなどを取り入れつつ、全体的には分厚いサウンドが特徴的で、聴いていて心地よさを感じるポップアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

2018 Grammy Nominees

おなじみアメリカのグラミー賞ノミネート作品を集めたオムニバスアルバム。毎年、その出来栄えによって音楽業界全体の「勢い」を占うことが出来ます。ここ数年来、名曲が多く、業界全体に勢いを感じられたのですが、2017年版はその勢いが一気に収まり、そして2018年版は・・・と聴いてみると、正直言って2018年も小粒揃いの不作気味。全体的にはメロディアスなポップチューン、それもカントリー風の泥臭い雰囲気の曲が目立ち、平凡で面白味はありません。2年連続の不作で、ちょっと音楽業界の動向が心配になってしまう内容でした。

評価:★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES
2016 GRAMMY NOMINEES
2017 GRAMMY NOMINEES

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