バンドとしての限界を露呈
Title:Eye of the Storm
Musician:ONE OK ROCK
約2年ぶりとなるONE OK ROCKのニューアルバム。ここ最近、すっかりと人気バンドの仲間入りを果たした彼ら。このアルバムも当然のようにチャート1位を獲得し、その高い人気を見せつけました。ただ、残念ながらこのニューアルバム、作品としての評価は決して高くはないようです。Amazonのレビューなどを見る限りだと「洋楽っぽい」という評価をしている方が多いようで、これが大きなマイナス要素となっているようです。
確かにこのアルバム、おそらく一般的なイメージで言うところの「洋楽っぽさ」を強く感じるアルバムではあります。英語詞を中心に持ってきている点やエフェクトをふんだんにかけてスケール感を出している点、また、J-POPのようにわかりやすいサビを持ってきていない点も「洋楽っぽい」とイメージされる要因なのかもしれません。実際、このアルバムと前後して、アヴィリル・ラヴィーンのニューアルバムを聴いたのですが、正直言って、このアルバム、アヴィリルのニューアルバムにかなり似ている曲が少なくありません。
ただ、正直言って「洋楽っぽい」からマイナスというのはかなり違和感があります。というのは、このアルバムの内容がいまひとつなのは決して「洋楽っぽい」からではありません。このアルバムが凡作になっているのは一言で言うと、似たような曲ばかりが並んでいるからというのが大きな要因となっているように感じます。例えばさきほど比較に出したアヴィリル・ラヴィーンのニューアルバム「Head Above Water」。確かに何曲か、このアルバムの収録曲に似ている曲もあります。ただ一方でアヴィリルはこのアルバムで「Tell Me It's Over」というソウルな楽曲を披露しています。しかし、残念ながらONE OK ROCKのアルバムには、こういうバリエーションはありませんし、それは逆に言えば、そういうバリエーションある音楽が出来ないという、彼らの音楽的偏差値の低さを露呈してしまったように感じてしまいます。
また、アヴィリルのアルバムに似たような曲があったという点もまた、彼らの楽曲がよくありがちなタイプの曲が並んでいるということを裏付けてしまったように感じます。正直言って、彼らのサウンドは決して目新しくもありませんし、最近の洋楽の潮流でもありません。そういう意味でも非常に平々凡々に感じてしまいます。
サウンドの面でも、シンセなどの音を入れてスケール感を出すという非常に安直な方向性の楽曲が並びます。これもまた、スケール感という形でバンドの体力のなさをごまかしているようにすら感じました。正直言って、楽曲のワンパターンさという欠点は以前の彼らの楽曲からも感じられたのですが、その一方、そのワンパターンさをダイナミックなバンドサウンドでカバーしているようなアルバムが少なくありませんでした。今回のアルバムに関しては、そのバンドサウンドのカッコよさすら放棄してしまったように感じます。
かなり厳しいことを言ってしまうと、今回のアルバム、完全にONE OK ROCKのバンドとしての限界を露呈してしまったアルバムのように感じます。もともとTakaの書くメロディーラインは哀愁感もあり、良くも悪くも日本的な部分も多く、それと迫力あるバンドサウンドのマッチが彼らの良さと思っていたのですが、そのスタイルを無理に変えようとした結果、いまひとつメロディーに合わないようなスケール感だけあるワンパターンの楽曲という彼らの悪い部分だけが前に出てしまったアルバムになっていました。これは率直に厳しいなぁ・・・。
評価:★★★
ONE OK ROCK 過去の作品
Nicheシンドローム
残響リファレンス
人生×僕=
35xxxv
Ambitions
AMBITIONS INTERNATIONAL VERSION
ほかに聴いたアルバム
bless You!/ORIGINAL LOVE
ちょっと久しぶり、約4年ぶりになるオリジナル・ラヴのニューアルバム。ソウルやR&Bのみならずファンクやジャズ、ロックなど様々な音楽を取り込んだ幅広い音楽性が特徴的で、特に最近流行りとなっているAOR、シティポップ的なサウンドも取り込んでいます。さらに、最近注目を集めるラッパーPUNPEEをフューチャーした楽曲もあったりして、いまなお音楽に対する貪欲な挑戦心を伺える楽曲。ただ一方ではそれだけバリエーションがありながらもアルバム全体としての統一感もあるのは、オリジナル・ラヴが確固たる個性を確立しているからでしょう。ベテランらしいいい意味での安定感もある傑作でした。
評価:★★★★★
ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
エレクトリックセクシー
ラヴァーマン
プラチナムベスト ORIGINAL LOVE~CANYON YEARS SINGLES&MORE
壊れたピアノとリビングデッド/MUCC
MUCCの最新作はタイトル通り、「ピアノ」と「ホラー」をテーマとしたコンセプチュアルなアルバム。全編にピアノを取り入れた楽曲が並んでいます。構成としては前半にヘヴィーな楽曲が並び、後半はメロを聴かせるナンバーが並ぶスタイルに。前半のヘヴィーな楽曲では正直ピアノはあまり目立たず、隠し味的な感じにとどまっていますが、後半は哀愁感あるメロにもマッチ。ヘヴィーなMUCCとポップなMUCCがほどよくバランスされた作品になっていました。
評価:★★★★
MUCC 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍
BEST OF MUCC II
カップリング・ベストII
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コメント
ワンオクの、楽曲のバリエーションの少なさも気にならないくらいのエネルギッシュで若さ溢れる勢いあるバンドサウンドが好きだったので、今回あまりバンド然としていなくて終始首を傾げながら聴き終わってしまったという印象でした。
海外進出を意識しだしてから外部の作家が介入してきてるみたいなのですが、今回のクレジットを見たうえで、こうもワンパターンでありふれたものになってると「もしかして本人たちが関与してるところあまりないのでは?」と懐疑的になってしまいます。ワンオクとしてメンバーと作りあげたなら、これが彼らの目指す方向性なのかとまだ納得して行方を見守れるんですけどね。
そのせいもあってかこのアルバム、ファンの一部ではTakaのソロアルバムとまで言われてしまってるんですが、つい最近のインタビューでTaka本人が「いつかワンオクをやめる。時期はそんなに遠くない未来だと思ってる」と発言したせいで解散秒読みとまで言われてあまり穏やかじゃないです。
もしかしたら本人たちこそバンドとして限界を感じているのかもしれません。解散するには惜しいバンドではあると思うのですけどね。
投稿: 亮 | 2019年3月31日 (日) 17時50分
>亮さん
確かに今回のアルバム、バンドとしての一体感はかなり薄く、Takaのソロアルバムといった感想を持つのも無理のない感じがします。
彼自体、それほどバンドに魅力を感じてしないのかもしれませんが・・・ただこのアルバムを聴く限りだと、ソロとしてはまだまだ厳しい感じがしますね。
もっとバンドとして基礎体力をしっかりつけてから、バンドを基軸とした上でソロとして活躍してほしいところですが。
ちょっと心配です。
投稿: ゆういち | 2019年4月 1日 (月) 00時24分
ONE OK ROCKというグループの限界を見た何とも複雑な気持ちを抱くアルバム。
投稿: ひかりびっと | 2019年4月 7日 (日) 10時40分