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2019年3月25日 (月)

デビュー時を彷彿させる再結成後初のアルバム

Title:underground
Musician:SPARTA LOCALS

今年に入り音楽ファンにとって大きな話題となったNUMBER GIRL再結成のニュース。数多くのバンドに影響を与えたこのバンドはご存知の通り、福岡から出てきたバンドですが、そんな福岡から出てきて、一時期、ポストNUMBER GIRL的に大きな注目を集めたバンドがありました。それが2004年にインディーズからアルバム「悲しい耳鳴り」でデビューしたSPARTA LOCALS。ライブではくるりや向井秀徳とも対バン。高い評価を得ましたが、残念ながらインディーズ、メジャー含めて7枚のアルバムをリリースしたあと、2009年に解散してしまいました。

しかし、そんな彼らが2016年に再結成。2017年には8年ぶりとなるワンマンライブを行いました。その後はライブを中心とした活動が続いていましたが、今年に入り、ついに約10年半ぶりとなるニューアルバムをリリース。その活動を本格化させています。

彼らは2006年にドラムスの中山昭仁が脱退しメンバーチェンジを行ったのですが、今回の再結成ではオリジナルメンバーが集結。そのこと自体もファンにとってはうれしいニュースなのですが、やはり長いこと一緒に活動を行い息のあったメンバーだからでしょうか、久々となったニューアルバムはそのブランクを全く感じさせない・・・どころかデビュー時の頃の勢いを復活させたような傑作に仕上がっていました。

彼らのサウンドは4人組バンドのシンプルながらもエッジの利いたバンドサウンドが特徴的。鋭利な刃物で空間を切り裂いていくようなサウンドが大きな魅力であり、耳を惹きます。また一方でメロディーラインはマイナーコード主体ながらもJ-POP的な哀愁感とはちょっと異なるカラッとしたメロが特徴的で、エッジの効いたサウンドとも相まって、独特な雰囲気を醸し出しています。

再結成後初となる今回のアルバムは、そんなSPARTA LOCALSの魅力が120%つまった傑作アルバムとなりました。まず1曲めとなる「夢くれ」のイントロのギターサウンドとリズミカルなドラムから、良い意味でいかにもなSPARTA LOCALSといった感じで、思わずガッツポーズをしたくなるほど。「jumpin」の切り裂くようなギターにテンポよいリズムの疾走感あるサウンドも大きな魅力。タイトルとなっている「アンダーグラウンド」もファンキーさを感じるリズムで身体が思わず動き出すような傑作。

一方でアルバムの中では意外な要素として「battle」では非常にヘヴィーなギターサウンドが入っており、いままでになかったようなバンドのダイナミズムを感じさせます。またファンキーなリズムが魅力となっている「GOD」では軽くラップの要素が入ってくるなど、アルバムにバリエーションを加えています。

そして最後の「noRmaL」はノイジーでちょっとサイケ気味なギターサウンドが流れる中、ちょっと切ない伸びやかなメロディーが印象に残る歌を聴かせるナンバー。孤独を歌いながらも「産まれて良かったな」と歌う優しい歌詞も心に響き、聴いたあとにほどよい満足感を残しアルバムは幕を閉じます。

デビュー時の勢いを取り戻したようなある種の瑞々しさすら感じる傑作アルバムで、バンドとしての状況の良さを強く感じさせます。バンドのキャリアを通しても最高傑作に近い出来とすら言えるのではないでしょうか。個人的には年間ベスト候補とも言えるレベルの傑作だったと思います。NUMBER GIRL復活に湧く日本のロックシーンですが、SPARTA LOCALS完全復活もシーンに大きな足跡を残しそうです。

評価:★★★★★

SPARTA LOCALS 過去の作品
メロディ泥棒&ビート刑事
Leecher


ほかに聴いたアルバム

THUNDERBIRD/大橋トリオ

約1年1ヶ月ぶりとなる大橋トリオのニューアルバム。いつも通り、アコースティックベースでジャジーな雰囲気を加えた暖かいポップチューンが並びます。楽曲の完成度については文句なく、いい意味で安心して聴けるし、広い層にお勧めできるアルバムなのは間違いありません。ただ、あまりにもいつも通りすぎて、目新しさはほとんどなし。そういう意味で、これが大橋トリオをはじめて聴く方にとっては文句なしの傑作といえるかもしれませんが、いままでのアルバムを聴いてきた方にとっては良くも悪くも「いつも通り」といった印象を受けてしまうアルバムでした。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS

LOVE&JETT/ギターウルフ

約2年半ぶりとなるギターウルフのニューアルバム。この2年半の間にベーシストが2人変わるなど、バンドとしてはちょっと混乱しているのか?という印象を受けてしまうのですが、このニューアルバムを聴くと、バンドとしてはむしろパワーアップしているように感じます。もちろんサウンド的にはゴリゴリの荒々しいガレージロックといつも通り。コミカルさもあるシンプルな歌詞もそのまま。良い意味での彼ららしいマンネリ感を維持しつつ、ただバンドとしての勢いはここにきて増している感もあります。タイトルチューンの「LOVE&JETT」も歌詞は片思いをテーマにしつつメロディーラインも意外とメロディアスと、荒々しいバンドサウンドを取り除いても十分耐えられるポピュラリティーを持っていることも垣間見せてくれます。とりあえず今のメンバーの相性はかなり良さそう。大いなるマンネリ路線の彼らですが、まだまだ勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

ギターウルフ 過去の作品
宇宙戦艦ラヴ
野獣バイブレーター
チラノザウスル四畳半

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