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2019年3月24日 (日)

珠玉のポップアルバム

Title:My oldest numbers vol.4
Musician:石田ショーキチ

Spiral Lifeのメンバーとしてデビュー。Spiral Life活動休止後は自身のバンド、Scudelia Electroとしての活動やスピッツやCoccoへのプロデュース活動でも積極的な音楽活動を続けてきた石田ショーキチ。2018年は彼がSpiral Lifeとしてデビューしてからちょうど25年の記念すべき年となったそうですが、そんな中リリースされたのが本作。いままでの彼の代表作をリアレンジしたセルフカバーアルバムで、タイトル通り本作が第4弾。そしてシリーズ最終作となるそうです。

全9曲入りのアルバムなのですが、9曲中2曲がScudelia Electro時代のナンバー。そして残り7曲がSpiral Lifeの曲となっています。特にアルバムはいきなり「The Answer」「20th Century Flight」とSpiral Lifeの代表曲からスタート。ちょっとうれしい選曲に、まずは否応なく気持ちは盛り上がってしまいます。

そしてこの石田ショーキチの書くナンバーは、個人的にはとにかく音楽的な壺を突きまくりのギターロック。フィードバックノイズをほどよく効かせたノイジーなギターサウンドに非常にキュートなメロディーライン。バンドサウンドのヘヴィネスさとポップスのキュートさのバランスがたまりません。ある意味、彼の書くギターロックは個人的な好みの最もど真ん中を貫いてくる楽曲かもしれません。

ノイジーなギターサウンドが流れつつ、基本的にキュートな序盤から一転、「Dance to god」はゴリゴリのギターサウンドを聴かせるヘヴィーなロックナンバーに。かと思えば続く「星のクロニクル」はシンプルでアコースティックなアレンジのポップチューンと幅広いアレンジの曲が続きます。ただどの曲も石田ショーキチの書くポップでキュートなメロディーが流れており、このフックの効いたメロディーラインが聴いていてとても心地よさを感じさせてくれます。

今回のアルバムはリアレンジアルバムということですが、基本的には原曲から大きくイメージを変えた楽曲はありません。ただ、あえて言えば全体的によりバンドサウンドを押し出しヘヴィネスさは増したように思います。特に「20th Century Flight」はドリーミーでポップな雰囲気が強かった原曲に対してバンドサウンドを前に押し出したアレンジに変化しています。もっとも、元々ギターの音はしっかり鳴っている楽曲でしたし、なによりもメロディーの美しさが楽曲の主軸となっているだけに、曲を聴いた時の印象に大きな変化はありませんでしたが。

ちょっとおもしろいのはSpiral Life時代はどちらかというとヘヴィネスさは相方の車谷浩司が担い、石田ショーキチはポップやエレクトロサウンドを取り入れている、という印象もありましたが、スパイラル活動休止から20年以上が経てスパイラルの曲をよりヘヴィーな方向でリアレンジしているのが石田ショーキチというのは、時代の流れを感じてしまいます。

そんな訳で珠玉のポップソングが並ぶ最高のポップアルバム。最初から最後まで心からその胸をうつようなサウンドとメロディーを楽しむことが出来ました。正直、最近、以前ほどは音楽活動が活発ではなくなってきてしまいましたが、これだけのポップスを作り上げられるポップ職人の彼。是非ともまた数多くの名曲を世に送り出してほしいところ。このアルバムでカバーアルバムは一区切りということですので、次は待望のオリジナルアルバムリリースでしょうか。楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

UNTITLED/KOHH

今、音楽シーンの中で最も活況を呈している日本のHIP HOPシーン。その中でも最も注目を集めているラッパーの一人が彼、KOHH。宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」にも参加して話題となりました。そんな彼の約2年8ヶ月ぶりのニューアルバム。サウンド的には最近の流行であるトラップを大胆に取り入れて、哀愁感のあるサウンドを構成。このちょっとウェットな雰囲気も持つサウンドが日本人の心境ともマッチしているように感じます。また一方で、ONE OK ROCKのTakaが参加した「I Want a Billion」などダイナミックなロックサウンドを入れてきている曲などもあり、楽曲のバリエーションも感じます。

ただ一方・・・これは個人的な好みによる部分もあるのかもしれませんが・・・彼は比較的しっかりと日本語を語るようにラップするタイプのラッパーなのですが、どうもこのラップがトラップのサウンドといまひとつアンマッチな感じを受けて、いまひとつしっくりと来ません。そもそもトラップの細かいリズムが彼のラップのスタイルとマッチしないのかもしれませんが、どうもこの違和感が最後までぬぐうことができず。他の点は文句なしの内容だと思うのですが・・・。

評価:★★★★

過去レクション/チャラン・ポ・ランタン

結成10周年を迎える姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンのインディーズ時代の曲を収録した初期ベスト。 基本的に軽快なバルカンミュージックで、コミカルさを含んだ物語性ある歌詞というスタイルは初期から変わらず。ある意味、早い段階で完成されていたことを伺わせます。一方、もものボーカルに関しては、さすがに初期作品に関しては拙い印象も。また今回4枚組のアルバムを聴いたのですが、さすがに似たような曲も多く、ちょっと最後は聴いていてダレてしまった感も。ただ、今なお変わらない魅力はこの時期からしっかりと感じられました。

評価:★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ミラージュ・コラージュ

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アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

ゆういちさんが次のアルバムを期待しているところに
水を差すようで申し訳ないのですがちょっと前に
石田ショーキチのメルマガにて残念なお知らせが届きました。
内容は端折りますが下記のような内容でした。

ライブの準備中石田氏がプロデュースしているアイドルに対して
「ブスアイドルがついてくるライブには行かない」と言う観客の声が
聞こえたそうです。それで今まで自分が歌で伝えようとしていたことは
伝わっていなかったのか、もう自分が歌う意味が見いだせない。
よって気が変わらない限り今残っているライブスケジュールをこなした後は
プロデュース業を除き活動停止、多分引退する。とのことでした。

石田氏本人がいる前でそんな発言をするファンがいるのも怒り心頭なのですが
石田氏のこの決断はショックでなりません。
もちろん本人が決めた以上仕方のないことです。

L⇔RとSpiral Lifeは自分の青春でもありましたので
その二人の新曲がもう聴くことができないと思うと悲しい思いです。

まだほんの少しライブスケジュールは残っているのでもしゆういちさんが
気になるのであればと思いますので公式HPのスケジュールを貼っておきます。
http://ishidashokichi.com/wp/live

投稿: Toshi | 2019年3月25日 (月) 21時41分

>Toshiさん
情報ありがとうございます。なんと、そんなことがあったんですか。それは非常に残念なニュースです。
そのような発言をするファンは非常に失礼ですが、ただそれで活動をやめてしまうというのもなんとも・・・
といった感じもしますが・・・。
残りのライブでは残念ながら行けそうなライブはないのですが、いつかまた再び活動を再開してほしいです。
とても残念です。

投稿: ゆういち | 2019年4月 1日 (月) 00時19分

先日新しくメルマガが届き引退の件について少し風向きが変わりそうな内容でした。内容はまた端折ります。

・ファンや関係者から多くの応援をもらったこと。
・プロデュースしているアイドルのライブが成功したこと。
・4月のライブでの共演者から「ファンの失礼な発言がきっかけかもしれないが何か理由が根底にあるのではないか?」と言われたことが図星であったこと。実際黒沢健一氏が亡くなって以降石田氏自身のための曲が書けなくなっていたということだそうです。

以上のことから石田氏自身のための曲をまとまった数作りそれが納得のいくものであったら引退撤回、そうでなければそのまま引退とのことでした。

石田氏の一ファンとしてはなんとか納得のいく出来のものができることを祈るのみです。

投稿: Toshi | 2019年5月19日 (日) 20時38分

>Toshiさん
情報ありがとうございます。単純にファンの発言に起因しただけではなく、引退宣言には複雑な事情があったようですね。
なんとか石田氏に納得できるような作品を作ってほしいところですが・・・。ただ、そのような心境ならば、納得できる曲云々関係なく、何年かしたらシーンに復帰する可能性も大きいように感じます。彼には無理をしないでがんばってほしいところです。

投稿: ゆういち | 2019年6月10日 (月) 23時32分

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