そして続く
Title:Yeketelale
Musician:UKANDANZ
フランス人ギタリストのダミアン・クルュゼルのバンドに、エチオピア人のボーカリスト、アスナケ・ゲブレイエスが加わり、エチオピアの音楽を取り入れ大きな話題となったUKANDANZの3枚目のアルバムが到着しました。
「You can dance」から来るバンド名そのままに、身体が思わず動き出してしまう強度の強いダンスビートが特徴的な彼ら。以前実施した来日公演も大きな話題となりました。
2枚目となる前作「AWO」はダイナミックなプログレッシブロックの要素が強いアルバムとなりました。その結果、アルバムとしてはそのミュージシャン名とは異なり、若干踊りにくいアルバムになっていました。それだけに今後はそういった路線に進んでいくのかな・・・と思ったのですが、ここに来て、バンド名への原点回帰とでも言うのでしょうか、再びダンサナブルなアルバムに戻ってきました。
それも今回のアルバムの大きな特徴となるのは、80年代を彷彿とさせるエレクトロビート。今となってはちょっと安っぽさすら感じさせるのですが、それゆえに非常に荒々しさを感じさせるビートがさく裂。アルバムは「Gesse」でいきなり強いエレクトロビートが飛び出すダンサナブルな楽曲からスタート。続く「Gedawo」もこぶしの効いたボーカルが、80年代的なエレクトロビートにのって歌われています。「Weyene Ajire」なども、一番最初の出だしのスペーシーなリズムやハンドクラップの音など、まさに80年代テイスト。全体的には哀愁漂うホーンとメロディーが流れるナンバーなのですが、ビート感あるエレクトロサウンドが流れることにより、おそらくライブではみんな踊りだしそうなナンバーに仕上がっています。
このある種のチープさを感じさせるサウンドがなんとも言えない大きな魅力を醸し出しているのが今回のアルバムの大きな特徴といえるでしょう。もともとUKANDANZの歌は、とライバルなムンムンと伝わってくるエチオピア音楽。こぶしを効かせて歌い上げるそのボーカルは日本の演歌にもちょっと通じる部分もあるのですが、この土着感のあるメロディーが、エレクトロサウンドとはいえどこか人間的なぬくもりを感じさせる80年代サウンドと非常に相性良くマッチしています。今回のこのアレンジの方向性は大正解と言えるのではないでしょうか。
一方、ダンサナブルなビートの曲が続く前半と比較すると、後半は「Yene Hassab」などをはじめ、メロディーを聴かせる歌モノのナンバーが目立ちます。また、「Beyet New Mengedu」などはダイナミックなバンドサウンドが前に押し出されたナンバーで、前作で示されたプログレ路線の延長線上にあるようなナンバー。ここらへんは彼らの音楽性の幅広さを感じさせます。そしてラスト「Ashkaru」は前半のような80年代的なエレクトロサウンドを前に出すのではなく、ノイジーなバンドサウンドでリズミカルに盛り上がる大団円的なナンバー。こちらは1枚目の彼らの路線を継承するようなナンバーになっていました。
そんな訳で3枚目にしてまた新たな路線を提示した彼らですが、根本に流れるエチオピア音楽の方向性は変わらず、そういう意味ではスタイルを徐々に変えつつも、一本筋を通しているアルバムが続いているという印象を受けます。ちなみに今回のアルバムタイトル「Yeketelale」は「そして続く」という意味らしく、ある意味、彼らの音楽的な変化が続いていくという意味にも思われます。もちろんバンドとしてもこれからも続いていくということを強く示したアルバムとも言えるでしょう。しかし今回のアルバム、ライブで聴いたら気持ちよいだろうなぁ。次のアルバム、そして来日公演にも期待したいところです!
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Agenda/PET SHOP BOYS
前作「Super」から約2年10ヶ月ぶりとなる新作は4曲入りのミニアルバム。フルアルバムでないのはちょっと残念ですが、ただ、4曲のみといえいずれもPET SHOP BOYSの魅力が満載されたキュートなエレクトロポップチューンが並んでいます。特に1曲目の「Give stupidity a chance」はちょっと切ない雰囲気が魅力的な美メロチューン。来るべきニューアルバムが楽しみになってくる傑作でした。
評価:★★★★★
PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Buoys/Panda Bear
Animal Collectiveのメンバーによる約4年ぶりとなるソロアルバム。基本的にはアコギベースのフォーキーな雰囲気のポップチューンなのですが、そこに様々な音がサンプリングされたり、エレクトロサウンドを入れてきたりと、単純なフォークとは異なるユニークなサウンドメイキングが耳を惹く作品。もちろんベースとなるメロディーラインもしっかりと聴かせるインパクトもあり、ユニークなサウンドとあわせて最後まで飽きさせないアルバムでした。
評価:★★★★★
Panda Bear 過去の作品
2014-05-18:Warsaw,Brooklyn,New York
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事
- 圧巻のステージ(2019.12.29)
- 前作と同じレコーディングで生まれた作品(2019.12.24)
- ゴスペル色が強い新作(2019.12.23)
- バラエティー富んだエレクトロサウンド(2019.12.22)
- 待望の続編!(2019.12.20)
コメント