女性SSWの過去作をリメイク
Title:Bobbie Gentry's The Delta Sweete Revisited
Musician:Mercury Rev
アメリカのサイケデリック・ポップバンド、Mercury Revの約4年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは60年代後半に活躍した女性シンガーソングライター、ボビー・ジェントリーのアルバム「The Delta Sweete」をMercury Revがリメイクしたアルバム。まあタイトルからしてそのまんまなのですが(^^;; 各曲に女性ボーカルをフューチャー。これが日本人にもおなじみノラ・ジョーンズにはじまり、Slowdiveのレイチェル・ゴスウェル、ステレオラブのレティシア・サディエールなどなど、かなり豪華なメンバーが名前を連ねています。
実は私、このボビー・ジェントリーという女性シンガーの曲についてはいままで全く聴いたことがありません(ひょっとしてコンピの中の1曲として聴いている可能性もありますが)。それだけに原曲は全く知らず、ある意味、Mercury Revのオリジナルアルバム的な感覚で聴くことが出来ました。
そんな状態で聴いた今回のアルバムなのですが、結果としては非常に素晴らしいポップスアルバムに仕上がっていました。まずアルバム冒頭はご存知ノラ・ジョーンズをフューチャーした「Okolona River Bottom Band」からスタート。ピアノの音色にストリングスを取り込み、分厚くドリーミーにまとめたサウンドも耳を惹きますが、そんな中、ちょっとスモーキーな雰囲気で力強く歌い上げるノラ・ジョーンズの歌声もパワフルで、それでいて優しさを感じられます。続く「Big Boss Man」はジャジーな雰囲気なアレンジに。この曲を歌うホープ・サンドヴァルの静かに優しく歌うその声にも強く惹かれます。
その後もまずアルバムを聴いて惹かれるのはその女性の歌声。どのボーカリストも個性的な実力派揃い。「Parchman Farm」は静かなサウンドの中で、軽くエフェクトをかけたカリス・ファン・ハウテンのボーカルがなんとも言えずセクシーな雰囲気で魅力的。「Penduli Pendulum」で聴かせてくれるバッシュティ・バンヤンの包容力あるボーカルも惹かれます。御年74歳の彼女。伝説的なフォークシンガーとして活躍していたそうですが、本作もそんなフィーキーなメロディーが美しいナンバー。声色には年齢なりの部分もありますが、それを上回る表現力をそのボーカルからは感じることが出来ます。
メロディーラインも全体的にフォーキーなメロで、優しく心に染み入ってくるようなフレーズが並んでおり、大きなインパクトに。それを味付けしているのは言うまでもなくMercury Revなのですが、基本的にはピアノやアコースティックギター、ストリングスなどアコースティックなサウンドがメイン。アコースティックなサウンドながらも比較的分厚い音作りも目立ち、ドリーミーな雰囲気を醸し出しているのですが、ただサウンドはフォーキーなメロや女性ボーカルにもピッタリとマッチ。目立ちすぎず、かといって音はそれなりの主張をもって楽曲の雰囲気づくりに貢献している、そのバランスの良さにMercury Revの素晴らしい仕事ぶりがうかがえます。
元々の楽曲自体が優れていたのでしょうし、また参加した女性ボーカルの実力もあるのですが、そんな女性ボーカルを集めて上手く曲に配置し、さらに素晴らしいアレンジを施したのはやはりMercury Revの実力があってからこそ。完全なオリジナルではなくカバーアルバムなのですが、しっかりとMercury Revの新作として評価されるべき傑作アルバムだったと思います。次にリリースされるオリジナルアルバムもとても楽しみです。
評価:★★★★★
Mercury Rev 過去の作品
The Essential Of Marcury Rev
Snowflake Midnight
Strange Attractor
The Light In You
ほかに聴いたアルバム
thank u,next/Ariana Grande
本作にも収録されている「7 rings」にかけた日本語のタトゥーが悪い意味で話題となってしまったアメリカのシンガーソングライター、アリアナ・グランデの最新作。音数を少なくしてシンプルにまとめたサウンドはトラップミュージックなど今どきの要素を取り入れ、かつメロディーラインはしっかりとポップにまとめ上げています。広い層にアピールできるポップチューンながらもきちんと今のサウンドへのアップデートしている作品でした。
評価:★★★★
Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
THE LOVE TRAIN/Meghan Trainor
こちらもアメリカの女性シンガーソングライター、メーガン・トレイナーの新作。6曲入りのミニアルバムとなります。彼女のブレイク作となったシングル「All About That Bass」はちょっと懐かしさを感じるレトロポップになっていたのですが、前作「Thank you」はいかにもアメリカの女性ポップシンガーが歌いそうな平凡な作風になってしまっていました。残念ながら続くこのミニアルバムも特にこれといった特徴の薄い、シンプルなポップソングがメイン。それなりにインパクトもありしっかりと聴かせる部分もあることは間違いないのですが、これ、メーガン・トレイナーの曲である必要はないような・・・。今後もこの方向で行ってしまうのかなぁ・・・。
評価:★★★
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