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2019年3月23日 (土)

今、最も話題の女性SSW

Title:瞬間的シックスセンス
Musician:あいみょん

昨年は数多くのヒット曲が誕生した1年でした。いまでもヒットを続ける米津玄師の「Lemon」、 老若男女がはまったまさに国民的ヒットDA PUMPの「U.S.A.」、そしてこれらに続いて昨年後半からヒットを続け、今でもロングヒットを続けているのがあいみょん「マリーゴールド」です。そんなまさに今、最も注目を集める女性シンガーソングライターあいみょんの待望のニューアルバムがリリースされました。

正直言うと、あいみょんのヒットについては個人的にかなり「意外」という印象を受けました。彼女の曲に関しては、はっきりいって派手さはありません。「マリーゴールド」にしてもサビのメロディーは決してフックが効いてインパクトが強い、といった感じもありませんし、歌詞についてもわかりやすいキーとなるようなフレーズが登場する訳ではありません。

例えばこの「マリーゴールド」の魅力としては楽曲としてはある意味耳なじみがあるような、シンプルなフレーズと歌詞でしょう。歌詞にしても恋人をマリーゴールドに例えるフレーズは正直言ってありふれた手法。メロディーに関してもシンプルでありそれだけで大きな売りとなるようなインパクトはありません。しかし、そんなシンプルながらも恋人との日常を描いた目に浮かぶような風景描写の歌詞は見事ですし、メロディーもシンプルだからこそ、どこか懐かしさを感じ、かつ何度か聴くうちに耳に残ります。

しかしこれらの魅力は何度かしっかりと曲を聴くうちに気が付くようなものであり、楽曲自体のインパクトは薄い感じすらします。ある意味、インパクト重視の「ヒット曲」とは程遠い曲という印象。それにも関わらずこの曲が大ヒットを続けているというのは、それだけ「歌」を求めるリスナー層が増えているということでしょう。実際、米津玄師にしても最近流行りの星野源にしてもしっかりと「歌」を聴かせるミュージシャン。今後もこういうシンプルな歌を求めるようなヒット曲が続くかもしれません。

そして「マリーゴールド」が大ヒットしている中リリースされた今回のアルバムも基本的には「マリーゴールド」と同じ方向性のシンプルに「歌」を聴かせる曲が並んでいます。切ない片思いの妄想的な歌詞ながらも多くの人の共感を呼びそうな「ら、のはなし」や、アコギでフォーキーに切ない恋を歌い上げる「恋をしたから」など、シンプルながらもしっかりとまずは歌を聴かせる曲が目立ちます。

一方、シンプルなポップチューンが多い中で、ギターサウンドに載せて満たされない現状をうたう「夢追いベンガル」のような、典型的なロックチューンがあったり、「GOOD NIGHT BABY」「from 四階の角部屋」など思ったよりロック寄りの曲が目立つのも特徴的。ポップミュージシャンというイメージが強い彼女ですが、そのロックからの影響も強い点を意外にも感じました。そういえば、本作には収録されていませんが、「君はロックを聴かない」という曲もロングヒットを続けていますしね。もっともロックな曲に関してもあくまでも主役は歌。バンドサウンドを聴かせるというよりも歌詞とメロをしっかりと聴かせる曲が並んでいました。

そんな訳で、あくまでもシンプルに歌詞やメロを聴かせる曲が並ぶ今回のアルバム。それだけに聴いていてちょっと地味という印象を受けるかもしれませんが、「マリーゴールド」同様、聴けば聴くほど味が出てくるようなアルバムに感じます。ただ、彼女のようなしっかりと歌を聴かせる女性SSWは昨今少なくありません。そんな中で、なぜ彼女があれだけ売れたのか、アルバムを聴いてもやはり私の疑問が完全に解消された訳ではありませんが・・・。これからあいみょん人気が続いていくのか、それとも「一発屋」的に終わるのかわかりませんが、このアルバムを聴く限りではまだまだこれからもヒットを飛ばしそう。とりあえずはまだヒット曲の「マリーゴールド」がこれからどれだけヒットを続けるのか、注目です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

おとぎ/Eve

もともとニコニコ動画で「歌い手」として人気を博し、その後、初音ミクを使用した楽曲も発表。ボカロPとしても注目を集めたいわゆるネット初のシンガーソングライター。アルバムはこれが5枚目となりますが、各種メディアでも大々的にプッシュ。見事ベスト10ヒットを果たしブレイクとなりました。

作風はマイナーコードメインの疾走感あるギターロック。テンポが早く早口気味のボーカルはPVで歌詞が映像として映し出せるネット動画出身ならではといった感じ。ちょっとファンタジックな雰囲気を感じる歌詞もまたボカロPらしい印象。インパクトもあるし、比較的ネットにとどまらず広く訴求していきそうな一般性もある感じで、今後より注目は高まっていくかも。ただ、ちょっと過剰とも思えるメディアのプッシュに、正直、どこか「第二の米津玄師」的なものを期待する空気を強く感じてしまいます。ただその結果、「ボカロPといえばこういう音楽」というイメージが流布してしまいそうな危険性も感じるのですが。

評価:★★★★

ふたりぼっちで行こう/矢野顕子

矢野顕子のニューアルバムはタイトル通り、ゲストとのコラボ楽曲で、2人で(一部例外も)作り上げた楽曲が収録されたアルバム。奥田民生や大貫妙子など、さもありなん的なメンバーから、前川清のような意外性あるベテランや逆に細美武士のような若手(・・・って感じではもうないかな?)、さらには津軽三味線奏者の上妻宏光といった異色のコラボも。楽曲は矢野顕子の楽曲もあれば相手のカバーもあり、特に吉井和哉とのコラボとの「パール」はご存知THE YELLOW MONKEYのヒット曲なのですが雰囲気がかなり変わった、それでも楽曲の魅力がしっかりと伝わる名カバーに仕上がっています。

矢野顕子も非常に個性的で癖のあるボーカルですが、コラボ相手も一癖も二癖もある実力派揃い。そのため、2人ともしっかりと個性を出して楽曲をつくりあげているカバーに仕上がっていました。矢野顕子と相手のそれぞれの才能をうまく引き上げ傑作を作り上げている名コラボ作を並べた傑作です。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)

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