凄みを感じるステージ
Title:Live In London
Musician:Mavis Staples
60年代から70年代にかけてゴスペル、ソウルグループのThe Staple Singersのメンバーとして数多くのヒット曲を生み出してきた、まさにソウル界のレジェンドと呼ぶにふさわしい女性シンガー、メイヴィル・ステイプルス。本作はその彼女が昨年7月、タイトル通りロンドンのユニオン・チャペルで2日間行われたライブの模様を収録したライブアルバム。彼女にとっては2008年にリリースした「HOPE AT THE HIDEOUT」以来、10年ぶりとなるライブアルバムとなります。
そんなレジェンドによるライブアルバムなのですが、これが度肝を抜かれるほどカッコいい!!もう1曲目「Who Told You That」の歌いだしから、その迫力あるボーカルにガツンと来ます。かと思えば、迫力あるボーカルで歌い上げるだけではなく、例えば「What You Gonna Do」ではゆっくりと感情たっぷりに静かな歌声を聴かせてくれています。単に声量が大きい、というだけではなく、表現力ある感情たっぷりのボーカルに強く惹きつけられます。
そんな彼女ですが、なんとこの時、御年79歳(!!)。80歳間近にして、ボーカルの衰えを全く感じさせないのは驚くばかり。さらにこの年齢ながらも若手に負けないような声の艶さえしっかりと残っています。加えて、哀愁を帯びた表現力あるボーカルは年齢を重ねたからこそ出せるものでしょう。通常、音楽のジャンル、特にボーカルはどうしても年を取ると声量がなくなったり安定感がなくなったりして年を取れば取るほど味が出る・・・という感じではないのですが、彼女に関してはむしろ年を重ねるほどボーカリストとしての凄みが増しているような印象すら受けます。
さらにそんなミュージシャンとしての凄みを感じるのは、彼女ほどの大ベテランでありながらも今回のライブではトーキング・ヘッズの「Slippery People」やファンカデリックの「Let's Do It Again」といったジャンルの少々異なるタイプのミュージシャンのカバーにも挑戦しているという点。よくよく考えれば彼女の現時点での最新作「If All I Was Was Black」は排外主義のはびこる現在にノーをつきつけた力強いメッセージ性を込めた作品となっているなど、80歳間近にしてしっかりと「今」を生きる現役感ある作品になっていました。この年齢になると昔のヒット曲を歌い継ぐだけの懐メロシンガーになる中が多い中、いまだに挑戦を続ける彼女には驚かされるばかりです。
ちなみに今回のアルバムではアンコールでは会場全体で「Happy Birthday」を歌うほほえましいシーンもそのまま収録。ちなみに日本人にもおなじみのこの曲、彼女が歌えばパワフルなソウルの曲に早変わりしてしまいます(笑)。
80歳近い年齢でありながら、ここまで迫力あって、なおかつ安定感のあるボーカルを聴かせてくれるというのは驚き。また、いまだに新たな挑戦を感じさせるのも驚くばかりです。一方では年齢ならではの感情の機微を見事に歌いこんだ味のあるボーカルも魅力的。彼女でしかできないような素晴らしいステージに鳥肌が立ちました。ライブ盤ですが、個人的には間違いなく今年のベスト盤候補の1枚。一度生で見てみたいけど・・・さすがに難しいだろうなぁ・・・。
評価:★★★★★
Mavis Staples 過去の作品
One True Vine
If All I Was Was Black
ほかに聴いたアルバム
Galipoli/Beirut
アメリカのロックバンド、Beirutの約3年ぶりとなるニューアルバム。ワールドミュージックとインディーロックを結び付けたバンド、という紹介のされ方をするのですが、ホーンやピアノなどを取り込みアコースティックにまとめたフォーキーなポップスというイメージ。いかにもワールドミュージック的な雰囲気は強くないのですが、どこかスパイス的に入っているエキゾチックな雰囲気が魅力的なアルバムでした。
評価:★★★★★
Beirut 過去の作品
Beirut In Concert
MIRI/BASSEKOU KOUYATE & NGONI BA
アフリカの伝統的な弦楽器、ンゴーニの奏者として知られるバセク・クヤーテ。彼の約4年ぶり5作目のアルバムとなるのが本作です。ンゴーニの音色をバックに、様々なゲストボーカルが参加し、メロディアスに歌い上げるアルバム。ンゴーニの音色はどこか哀愁感あふれるサウンドで、それに伴い歌も基本的に哀愁感あふれるメロディアスなもの。アフリカ的なトライバルの雰囲気はたっぷり加えつつ、日本人にとってもどこか懐かしさを感じる音色とメロディーが印象に残る1枚でした。
評価:★★★★★
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