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2019年3月18日 (月)

安定感ある傑作

Title:ALL THE LIGHT
Musician:GRAPEVINE

デビュー以来、コンスタントなアルバムリリースが続くGRAPEVINE。本作が16枚目のオリジナルアルバムとなりますが、途中、ベスト盤のリリースを挟んだ「真昼のストレンジランド」と「愚かな者の語ること」の間が2年超離れてしまった以外は、すべてオリジナルアルバムのリリーススパンが1年から1年半程度という積極的な活動スタイルには驚きすら感じます。

そしてこれだけ積極的にアルバムをリリースしていながらもどのアルバムも一定以上のクオリティーを保ち、駄作がない、というのも驚くべき事実。さらにここ最近、いい意味での安定感が増してきたように感じます。特に以前はヘヴィーな雰囲気の作品と爽やかな雰囲気の作品を交互にリリースしてきたように感じますが、今回のニューアルバムはGRAPEVINEのこの2つの特徴をうまく融合したアルバムに仕上げていたように感じます。

特に今回のアルバムはいきなりアカペラの楽曲「開花」でスタート。続く「Alright」はシンプルでストレートなギターロックチューン。ホーンセッションも加わり、ストーンズばりのロックンロールチューンを軽快に聴かせます。さらに続く「雪解け」はアコースティック風のナンバーと、比較的爽やかなナンバーが続いていきます。

かと思えば「Asteroids」はちょっと重い、ダウナーな雰囲気のナンバーですし、「God Only Knows」はツェッペリンばりのヘヴィーなギターリフが耳に残るダイナミックなナンバーと彼らのヘヴィーな側面を楽しむことが出来ます。

また全体的にもバラエティーに富んだ作風が特徴的で、「ミチバシリ」ではタブラのリズムが入り、ちょっと不思議な空気感を醸し出していますし、「こぼれる」ではしんみり静かなギターでジャジーな雰囲気に。さらにブルージーなギターを聴かせる「Era」など、全体的にはR&BをベースとしたロックというGRAPEVINEのスタイルから大きくは逸脱せず、統一感はあるものの、様々なタイプの曲が最後まで展開されており、最後まで飽きずに楽しめます。

歌詞についてもここ最近の田中和将の特徴となっているのですが、以前にような深読みが可能な文学的な匂い漂う言葉選びそのままに、以前に比べると主題が比較的わかりやすくなった歌詞が目立ちます。

例えば「雪解け」では

「独りかい
怖がらないでいい
あともう少し
冬が終わるまでは」

(「雪解け」より 作詞 田中和将)

という、比較的わかりやすいメッセージ性を感じる歌詞を聴くことが出来ます。

そんな訳で今回のアルバムもGRAPEVINEらしい安定感のある傑作アルバムに仕上がっていました。これだけコンスタントにアルバムをリリースしながらも、これだけ外れがないというのはすごいなぁ・・・。彼らの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

GRAPEVINE 過去の作品
TWANGS
MALPASO(長田進withGRAPEVINE)
真昼のストレンジランド
MISOGI EP
Best of GRAPEVINE
愚かな者の語ること
Burning Tree
BABEL,BABEL
ROADSIDE PROPHET


ほかに聴いたアルバム

Blank Envelope/Nulbarich

初のベスト10ヒットとなった前作「H.O.T」に続き本作もチャートでベスト10入り。AOR、シティーポップのミュージシャンが数多くブレイクを果たしている中、その中心的なバンドのひとつともいえる彼らの最新作。全体的にはミディアムテンポの曲が多く、楽曲のスケール感もいままでに増して広がっているように感じます。ただ一方で前作同様、メロディーラインのフックの弱さが気になり、アルバム全体として印象が薄くなってしまっている点が気にかかります。もうひとつ、壁を乗り越えてほしい印象を受けるバンドですが・・・。

評価:★★★★

Nulbarich 過去の作品
Who We Are
Long Long Time Ago
H.O.T
The Remixies

Hell like Heaven/the peggies

女の子3人組ロックバンドのメジャーでは初となるフルアルバム。疾走感あるシンプルなギターロックがメインで、ポップなメロディーラインに女の子の「かわいらしさ」を前に押し出しつつ、バンドとしてはなかなかヘヴィーなサウンドを聴かせてくれており、そのギャップがかつてのチャットモンチーを彷彿とさせる部分も。そういう意味では「ポップでかわいらしいメロにヘヴィーなバンドサウンド」という点ではポストチャットモンチーの最右翼といった印象もある反面、そのためには、もうちょっと音楽的にはバリエーションも欲しい感じも。メロディーラインのインパクトはいままでのアルバムに加えて増してきた印象もあり、次のアルバムあたり、おもしろくなりそう、かも。

評価:★★★★

the peggies 過去の作品
super boy! super girl!!
なつめきサマーEP

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