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2019年3月15日 (金)

完全に暴走

Title:あいつロングシュート決めてあの娘が歓声をあげてそのとき俺は家にいた
Musician:忘れらんねえよ

デビュー当初からもてない暗い男のストレートな本音をパンクロックにのせて歌い上げ、一部で絶大な支持を得ていたロックバンド、忘れらんねえよ。もともと3人組としてスタートしたバンドでしたが、2015年と昨年に相次いでメンバーが脱退。ついにボーカルでバンドのメインライターである柴田隆浩のソロバンドとなってしまいました。

そんな「ソロ」になってはじめてとなるアルバムが本作なのですが、やはりソロになったからでしょうか。柴田隆浩が暴走しまくっています(笑)。もともと聴き手によっては完全にひいてしまいそうな歌詞を書いていた彼でしたが、その方向性が今回は突き抜けてしまっており、比較的、そのような歌詞に共感を抱いていた私でさえ「え、さすがにこれは・・・(^^;;」と思ってしまう歌詞すらありました。しかし、だからこそ柴田隆浩のもっともコアな部分が表に出ており、聴いていて(共感するかどうかはともかくとして)非常に強い彼の叫びが胸に響いてくる作品になっていました。

まずアルバムで大きなインパクトとなっているのはタイトルから。岡村靖幸の名曲「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」をパロっているタイトルからして笑えてくるのですが、歌詞もタイトルそのまんま。青春の一風景を切り取った歌詞が途中から一転。「そのとき俺は家にいた」と情景がひっくり返る歌詞の構成も見事。いわゆる「リア充」になれない、クラスの隅っこにいるような男性の悲哀がストレートに伝わってきます。

そしてアルバムの中でもなんといっても彼のメッセージがストレートに伝わってくるのが「踊れ引きこもり」でしょう。タイトル通り、引きこもりに対してエールをおくる楽曲になっているのですが、

「ダセーなんて言わせねえよ個性!
妖怪ウオッチもエヴァも君の名は。も
俺らみたいなやつが作ってる!作ってる!」

(「踊れ引きこもり」より 作詞 柴田隆浩)

という歌詞は、まさに彼の引きこもりたちに対する強い愛情が伝わってくるようです。

「君は乾杯のとき俺とだけグラスを合わせなかった」も、もう歌詞から暗い男性の被害妄想が伝わってくるようで共感してしまいます(笑)。個人的にはどちらかというと気になった女の子に一生懸命話かけようとしすぎて逆に引かれてしまうタイプなので(^^;;歌詞で歌われる好きな子に思いを知られないとして好きでもない子と一生懸命話しているというスタンスにはあまり共感できないのですが、それでも彼の思いがビシビシ伝わってくるような曲になっています。

さすがに「君は電話に一切出ない」「もう30回かけてる」という歌詞はもうさすがに犯罪レベルのストーカーなんじゃないか?と引いてしまいましたが、それを含めて全編、彼のちょっと危なく、そして暗い思いが全速力で暴走して伝わってくるようなアルバム。まさにソロだからこそ出来たアルバムと言えるのではないでしょうか。

ちなみにソロらしいという意味ではユーモアという側面でも自由度が増しています。このアルバムタイトルやジャケット写真もそうですし、「踊れひきこもり」の中では「飲み屋の有線からはこんな歌が聴こえる」という部分からいきなり曲調が変わり、一昔前に流行った女性ボーカルのR&B系の歌+男性ラップの組み合わせのベタなヒット曲風のフレーズが流れ出すというユーモラスな展開に。「君は乾杯のとき俺とだけグラスを合わせなかった」のPVも登場人物全てが柴田隆浩というとんでもなくユニークな映像になっていますし、こういう部分でもいい意味で好き勝手な作品作りが目立ちます。

サウンド的にもいままで以上にパンキッシュで疾走感あるサウンドが目立ち、サウンドの面からも彼の暴走気味な歌詞をバックアップしている感も(笑)。この柴田隆浩の暴走については、ついていけないような部分もありますし、そのため賛否わかれているようですが、個人的には彼がやりたいことが音楽にしっかりと反映された結果、よりインパクトが増し、さらに彼の心の叫びがよりリスナーに突き刺さるような傑作に仕上がっていたように感じました。彼のこの暴走がこれからどこまで続いていくのか・・・楽しみです。

評価:★★★★★

忘れらんねえよ 過去の作品
忘れらんねえよ
空を見上げても空しかねえよ
あの娘のメルアド予想する
犬にしてくれ
忘れらんねえよのこれまでと、これから。
俺よ届け
僕にできることはないかな


ほかに聴いたアルバム

Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02/斉藤和義

恒例の斉藤和義ライブアルバム。今回は、アルバム「Toys Blood Music」に伴って実施されたライブツアーより、昨年6月に彼が学生時代を過ごしたゆかりの地、山梨公演の模様を収めたライブ盤。基本的にはいつも通りのステージといった感じ。彼ゆかりの地ということで、山梨県民の壺をつかんだような盛り上がり方をする部分があったりしてユニークさを感じるのですが・・・。ライブの楽しさは十分伝わってくるライブ盤であることは間違いありません。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017

ALL TIME BEST 1998-2018/コブクロ

CD4枚組のフルボリュームとなるコブクロのオールタイムベスト。具体的で比較的シンプルな表現に終始するラブソングに、同じくシンプルなバンドサウンドをバックに流れるシンプルなメロディーラインが主体。至ってシンプルに歌を聴かせるスタイルが特徴的で、歌だけで勝負しようとする姿勢には誠実性を感じます。ただその結果として、似たような曲が多くなってしまい、さすがに4枚組のアルバムを聴きとおすのはファンではないと体力がいりました。

評価:★★★★

コブクロ 過去の作品
5296
CALLING
ALL COVERS BEST
ALL SINGLES BEST2
One Song From Two Hearts
TIMELESS WORLD

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アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

おお、今まで忘れらんねえよのゆういちさんのレビューを見ていていまいち忘れらんねえよに対してあまり高評価をあげてる印象が無かったので今作の高評価めっちゃ嬉しい。どの曲も歌詞がいつにも増してきれっきれっですよね。次のフルアルバムが楽しみになる作品ですな。

投稿: オジャ | 2019年3月17日 (日) 13時20分

>オジャさん
そう、いままでのアルバムも悪くはなかったのですが、どこか物足りなさも感じていたのも事実で・・・。
今回のアルバムで完全に吹っ切れた印象です。フルアルバムもとても楽しみですね!

投稿: ゆういち | 2019年4月 1日 (月) 00時12分

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