レゲエにとどまらず様々な音楽性を取り入れた傑作
Title:identity
Musician:MINMI
途中、ベスト盤が挟んだもののオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるMINMIのニューアルバム。
今回、ちょっと遅ればせながら聴いたのですが、聴いたきっかけはMusic Magazine誌の2018年ベストアルバム、レゲエ(国内)編で1位を獲得していたから。どちらかというとJ-POP的なイメージも強いミュージシャンだったので、「レゲエのアルバム」として高い評価を受けているのはちょっと意外にも感じました。
でも、このアルバムは確かに間違いない傑作アルバムでした。ただし、純然たるレゲエのアルバムというよりはレゲエをベースにしつつも、様々な音楽的な要素を入れて魅力的なポップスアルバムに仕上がっていた本作。もともとレゲエというジャンルにとどまらず、ラップやエレクトロ、ポップスなどの要素を楽曲に取り入れていた彼女なだけに、そういう意味ではMINMIらしいアルバムと言えるかもしれません。
まずイントロを挟んで実質的な1曲目はタイトルチューン「identity」からスタート。エレクトロサウンドをバックにしんみり聴かせるナンバー。若干レゲエ的なリズムも入っていますが、基本的にはメロウな歌声を聴かせるエレクトロポップに仕上がっています。続く「イマガイイ」もJP THE WAVYをゲストに迎え、HIP HOPの要素を取り入れたダウナーなエレクトロポップに仕上げています。
今回のアルバムはエレクトロトラックやHIP HOPの要素を大きく取り入れてきている点が大きな特徴。特に前述のJP THE WAVY以外にも「Passionately」では漢 a.k.a. GAMIを、「FIRE」ではAK-69をゲストとして迎えており、それぞれ力強いラップを聴かせてくれます。特に「FIRE」ではハードコアでダイナミックなトラックをバックにMINMIもラップに挑戦。かなりスケール感ある楽曲に仕上がています。
また、ドリーミーな雰囲気でちょっと和風な雰囲気を混ぜつつメロウに聴かせる「線香花火」ではトラップ的な要素を感じるエレクトロトラックを入れてきており、しっかりと今風な音にもアップデート。そしてラストは横浜F・マリノスの公式ハーフタイム応援ソングでもある「WINNER」で締めくくり。サッカーの応援歌らしい、最初は静かにスタートするものの、徐々に盛り上がっていくアゲアゲなナンバーになっており、軽い高揚感を味わいつつ、アルバムは幕を下ろします。
もっとも「Namaiki」のようなレゲエのナンバーもありますし、要所要所にレゲエ的なリズムを取り入れたりはしており、レゲエシンガーとしてのMINMIの基礎的な土台はアルバム通じて感じることができます。ただ全体的にはエレクトロポップやHIP HOPの要素を強く取り入れた今回のアルバム。音楽的なバラエティーにも富んでおり、ヘヴィーなサウンドからスケール感あるアゲアゲのナンバー、メロウに聴かせる楽曲まで最後まで飽きさせない展開に。またしっかりと今風のサウンドにもアップテンポされており、ある意味、理想的ともいえるポップスアルバムに仕上がっていました。
もともとレゲエを軸としつつも様々な音楽性を取り入れていたMINMI。今回のアルバムはそんな彼女の集大成ともいえる傑作アルバムだったように思います。すっかりベテランミュージシャンの仲間入りをしている彼女ですが、ここに来てこれだけの傑作をリリースするとは驚き。まだまだ彼女の勢いは止まらなさそうです。
評価:★★★★★
MINMI 過去のアルバム
THE LOVE SONG COLLECTION 2006-2007
MINMI BEST 2002-2008
Mother
I LOVE
ALL TIME BEST:ADAM
ALL TIME BEST:EVE
ほかに聴いたアルバム
愛 am BEST,too/大塚愛
本作にも収録されている「さくらんぼ」の大ヒットでおなじみの大塚愛の、デビュー15周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。大塚愛といえば最近は離婚騒動で大きな話題となりました。正直、芸能人の浮気や離婚騒動はどうでもいいと思っているのですが、ただ今回の件、旦那の浮気の被害が子供にまで及んでしまっており、そんな中で頑張っている彼女に一種の同情心も覚え、そういうこともあり今回、ベストアルバムを聴いてみることにしました。
大塚愛といえば「さくらんぼ」で一躍ブレイクしたわけですが、その「さくらんぼ」、あらためて聴くとポップスとしての完成度の高さを強く実感します。楽曲の盛り上がりといいサビのインパクトといいサビにからむ歌詞の完成度といい、本当にポップソングとして「理想的」ともいえる出来になっており、本作が大ヒットしたもの納得できます。
ただだからこそその後の彼女の曲はこの「さくらんぼ」を追いかけるような形になってしまっています。「Happy Days」や「SMILY」などあきらかに「さくらんぼ」を意識したような曲も少なくなく、彼女自身、「さくらんぼ」の呪縛に苦しんだんだろうなぁ、ということはこのベスト盤を通じても実感できます。全体的には聴いていて素直にウキウキ楽しくなるようなポップソングが多く、難しいこと抜きに楽しめたベスト盤なのですが、その一方で大塚愛の苦しさもどこか感じてしまうベストアルバムでした。
評価:★★★★
クラーケン鷹/電気グルーヴ
配信限定でリリースされた「クラーケン鷹2018」をCDリリースした作品。配信版の方はマイクからの録音だっため観客の歓声なども入っていたのですが、こちらはPA音源からダイレクトに収録したアルバムで、歓声などは入っていません。そのため、ライブの臨場感という意味では配信版の方が魅力的な反面、リミックス音源をしっかりと聴ける内容になっています。そういう意味ではライブ盤というよりもリミックスアルバムという印象も強いかも。今年リリースされた「30」につながるようなリアレンジの楽曲もあり、ライブの中で電気グルーヴの曲がどのように変化していくのか、より注目できる作品になっています。
評価:★★★★★
電気グルーヴ 過去の作品
J-POP
YELLOW
20
ゴールデンヒッツ~Due To Contract
人間と動物
25
DENKI GROOVE THE MOVIE?-THE MUSIC SELECTION-
TROPICAL LOVE
DENKI GROOVE DECADE 2008~2017
TROPICAL LOVE LIGHTS
TROPICAL LOVE TOUR 2017
クラーケン鷹2018
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事
- 彼女の幅広い音楽性を感じる(2019.12.26)
- 80年代に一世を風靡した女性ロックシンガー(2019.12.28)
- 2つの異なるスタイルで(2019.12.14)
- ミュージシャンとしての矜持を感じる(2019.12.17)
- 2019年最大の注目盤(2019.12.13)
コメント