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2019年2月25日 (月)

ソロデビュー10周年のベストアルバム

Title:DX - 10th Anniversary All This Time 2008-2018 -
Musician:Diggy-MO'

昨年、ソロデビュー10周年を迎えた元SOUL'd OUTのメインMC、Diggy-MO'が、ソロでの活動を総括したベストアルバム。SOUL'd OUT活動中でもソロ活動を行っていた彼ですが、そのSOUL'd OUT活動中のソロ曲を含めて収録された内容になっています。ただ収録曲は発表順などとはなっておらず、彼のソロ時代の代表曲を全体の流れを考えつつ収録した構成になっています。

基本的な方向性としてはDiggy-MO'のソロ曲はSOUL'd OUTの延長線上の作風となっています。過剰とも言える巻き舌に、日本語を英語のように(それも英語らしさを強調して)発音するスタイル。そのため、全体的にはベタな洋楽的に聴こえつつも、メロディーラインには歌謡曲の影響が強く感じられる点。ある種「ベタベタ」ゆえのダサさを感じるのが大きな特徴で、今回のジャケット写真に関しても、ただ真正面からとらえたスタイルはなんとも言えず馬鹿ジャケ的な雰囲気も(笑)。ただ、この貫かれたベタさが非常に耳に残り、聴いていてワクワクするのがSOUL'd OUTの楽曲でしたし、そんな魅力はDiggy-MO'にも貫かれています。まさに「ダサカッコいい」という表現が非常にピッタリくるミュージシャンのように思います。

今回のベスト盤でも「JUVES」でいきなりサビで「ティッピコ~♪」なんていう訳の分からない、でも妙に耳に残るフレーズが登場してきますし、「ZAZA」でもサビで登場する「ザ・ザザザザザ~♪」というフレーズの訳の分からなさが妙に癖になります。また「Lovin' Junk」「SHOTTTTEQKILLA」ようにサビで登場してくるファルセットもSOUL'd OUTからの流れで、このファルセットボイスで楽曲の「抜け」を表現するスタイルもある意味ベタベタすぎて強いインパクトを感じてしまいます。

Diggy-MO'のソロ作はSOUL'd OUT解散であの独特の作風の曲に出会えなくなったファンにとってはうれしくなってくるような曲の連続で、このベスト盤も素直にワクワクしながら楽曲を楽しむことが出来ます。そういう意味でもSOUL'd OUTのファンだった方には無条件でお勧めできるベストアルバムになっています。

ただ一方ではSOUL'd OUTに比べるとDiggy-MO'の自由度が上がったからでしょうか、微妙に異なる点もあるのも事実。例えば「爆走夢歌」のような初期の作品はSOUL'd OUTの楽曲以上に歌謡曲のテイストが強くなっています。また「GIOVANNI」のようなスウィングジャズの要素を加えた曲などもあったりして、Diggy-MO'個人の音楽的興味がより強く楽曲に反映しているようにも感じます。もっともこういった点も、SOUL'd OUTの音楽的要素の中に含まれていたといえば含まれていたので、SOUL'd OUT時代の音楽性からかけ離れたというよりも、その一部がより強調されたといった方が妥当かもしれません。

正直言って、SOUL'd OUTやDiggy-MO'といえば、最近すっかり日本に定着したHIP HOPシーンの中で、あまりに「J-POP」寄りすぎて、HIP HOPとしては無視された存在になっています。確かに、Diggy-MO'のスタイルはHIP HOPのマナーからは離れている部分が少なくありません。ただ、一般的な日本語ラップのラッパーとは全く違う道を取りながら、歌謡曲的な要素や、日本人が思う「洋楽らしい」要素を取り入れつつ独特のスタイルを確立した彼のラップは、ある意味、突然変異的ながらも、ひとつの日本語ラップの到達点のような印象も受けます。今回のベストアルバムでは、そんなDiggy-MO'が確立したラップのスタイルを再確認できる内容になっていました。SOUL'd OUTの時代に比べると人気の面では落ち着いてしまった彼ですが、その音楽性はむしろSOUL'd OUTよりもさらに深化しているように感じます。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Diggy-MO' 過去の作品
Diggyism
DiggyismII
the First Night
BEWITCHED


ほかに聴いたアルバム

hadaka e.p./My Hair is Bad

人気上昇中の3ピースロックバンドによる5曲入りのEP盤。分厚いギターサウンドが耳を惹く、シンプルなギターロックの曲が展開。片思いを切なく描いた「微熱」など歌詞も魅力的。サウンドやメロディーにもうちょっと個性があった方がおもしろいかも、と思いつつ、歌詞を含めてしっかりと魅力的な楽曲を聴かせてくれており、5曲入りの短さとはいえ十分に楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

My Hair is Bad 過去の作品
woman's
mothers

再会/在日ファンク

2017年は結成10周年だったもののメンバーの脱退&新加入があり、結局アルバムのリリースはなかった彼ら。約2年半ぶりとなる本作は、楽曲にバリエーションを持たせた前作「レインボー」「笑うな」と比べると、比較的初期に戻ったような、JBバリのバリバリファンク路線に回帰。ただ一方、初期の彼らのような日本語の意外な歌詞をファンクのリズムにのせるというスタイルはあまり感じられず、そういう意味ではちょっとインパクトの面は薄くなってしまった感も。あらたなメンバーであらたな一歩というアルバムなのかもしれませんが、ちょっとマンネリ気味になりつつあるのが気になってしまった作品でした。

評価:★★★★

在日ファンク 過去の作品
在日ファンク
爆弾こわい
ベスト・オブ・在日ファンク~覗いてごらん見てごらん~

連絡
笑うな
レインボー

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