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2019年2月17日 (日)

早くも結成20周年

Title:The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」
Musician:SHERBETS

ご存知元BLANKEY JET CITYの浅井健一率いる4人組ロックバンド。
ブランキー活動中にそのバンド活動も開始したSHERBETSですが、途中、活動休止の時期もはさみつつ、2018年は現メンバーでの活動もついに20周年。そんな訳で彼ら初となるベスト盤がリリースされました。

初回盤は全3枚組+DVD、通常盤は1枚という構成。初回盤の3枚組は曲順は必ずしもリリース順ではないものの、初期・中期・後期とわけられた構成になっています。ちなみに2018年で結成20年というのは現メンバーでのこと。1996年に今とは異なったメンバーでSHRBETSというバンドを組んでいます。ただし、今回のアルバムではその時期の楽曲も収録されており、決して「黒歴史」という訳ではないようです。

さてSHERBETSというと、ここ最近のイメージとしては曲単位だとカッコいい曲もあるけどアルバム通じて聴くと似たようなタイプの曲ばかりで飽きる、というイメージがありました。正直言うと、今回のベスト盤を聴いても同じようなイメージを受けてしまいます。確かに1曲1曲を別々に聴くとベンジーの声といい、くすんだ雰囲気の世界観といい、バンドサウンドといい文句なしにカッコいいのですが、どれも同じようなタイプの曲ばかり。ちょっと飽きてしまうなぁ、という印象はベスト盤を聴いた後でも変わりませんでした。

ただ、そんな中でもDisc1については文句なしでカッコいい楽曲が並んでいたと思います。とにかく近づいたら大ケガをしそうなヒリヒリするような楽曲の連続。1曲目を飾る「HIGH SCHOOL」などはノイジーなガレージサウンドとベンジーの声が見事にマッチして、これでもかというほどの力強い緊張感あるサウンドを聴かせてくれますし、「三輪バギー」も疾走感あるバンドサウンドが迫力満点。勢いあるサウンドに一気に惹きこまれる楽曲になっています。さらにDisc1の最後を飾る「38Special」はベンジーの世の中に対する苛立ちをそのまま吐露する歌詞は、いま聴いても簡単には触れられなさそうな危険な雰囲気満載の楽曲に仕上げられています。

ただ正直言うと、Disc2の頃の中期に関しては出来がいまひとつ。特に2000年代以降、浅井健一自体が数々のユニットを同時並行的に結成しアルバムも乱発。あきらかに制作過多な状況に陥っていました。Disc2の頃の作品は初期のヒリヒリする空気も薄れた割には、退廃的な世界観はそのまま残り、バンドサウンドの奏でる音にヤバさはなくなったものの、楽曲の雰囲気で無理やりその世界観を作り上げているような、ちょっとチグハグしたものも感じます。もっともそんな中でも「Baby Revolution」のようなコミカルな歌詞のベンジーらしい「反戦歌」なんかがあったりするので、決して駄作続くという感じではないし、1曲1曲取り上げれば、名曲も少なくないのですが。

一方、Disc3の後期になると、初期ほどではないにしろ幾分か勢いを取り戻しつつあるように感じました。新曲「愛は起きてる」は彼らとしては異色ともいえる四つ打ちのリズムのダンスチューンとなっていたり、楽曲のバリエーションも増えてきますし、また初期のようなヒリヒリする空気はまだ薄めなのですが、比較的安定感ある楽曲がそろっているような印象も受けました。ここ最近はようやく一時期の乱発気味だったリリースも落ち着いてきた感じになっているのですが、それにあわせて1曲1曲の楽曲の出来もよくなってきたといった感じでしょうか。正直、いまひとつな作品が続いていたSHRBETSのアルバムですが、この調子ならばそろそろようやく傑作に出会えそうです。

評価:★★★★

SHERBETS 過去の作品
MIRACLE
GOD
MAD DISCO
FREE
STRIPE PANTHER
きれいな血
CRASHED SEDAN DRIVE


ほかに聴いたアルバム

Eutopia/STUTS

こちらも2018年の「ベストアルバム」の後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌「日本のラップ/HIP HOP」部門で1位を獲得したアルバム。最近では星野源の楽曲への参加で一気に知名度を上げたミュージシャンで、「ラップ」というよりもトラックメイカーといった方が良いでしょう。本作もラップの作品も含んでいますが、基本的にはトラックを聴かせる曲がメイン。歌モノも多く収録されており、HIP HOPという枠組みに捕らわれずに楽しめるアルバムになっています。

基本的にはジャズやソウルなどの要素も取り入れたメロウなシティポップ風の楽曲がメイン。独特のサウンドというよりは完成度の高さをまずは感じるアルバムで、その上でジャズ、ソウルなどの要素を主軸にラテンの要素を取り入れたり、ビートの強いナンバーを入れてきたり、ミニマル的な要素を入れたり、いい意味での「音楽的な偏差値の高さ」も感じるアルバム。星野源に限らず、今後日本でも様々なミュージシャンから引っ張りだこになりそうな予感が。

評価:★★★★★

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