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2019年2月12日 (火)

西洋的な要素とアフリカ的な要素が絶妙にバランス

Title:About 30
Musician:Adekunle Gold

毎年、各種メディアが選んだ前年度のベストアルバムのうち聴きのがしていたものを後追いで聴いているのですが、今年も1月以降、「2018年ベストアルバム」に選ばれた作品を後追いで聴いています。今日紹介するのは「Music Magazine」誌で2018年ワールドミュージック部門で1位に選ばれたアルバム。Adekunle Gold(アデクンレ・ゴールド)というのはナイジェリアの31歳のシンガーソングライター。これが2枚目のアルバムとなるのですが、ナイジェリアでは絶大な支持を得ているミュージシャンだそうです。

楽曲のタイプとしては「ジュジュやハイライフを取り入れた音楽」の紹介されています。ハイライフは以前もここで紹介したことがあるのですが、ヨーロッパのギターや管楽器がアフリカにもたらされ、西洋やラテン音楽などの影響を受けつつ、ガーナで発展した音楽のジャンル。またジュジュはそのハイライフなどの音楽がヨルバ(ナイジェリアを含む西アフリカの地域)においてパーカッションなどを取り入れて発達した音楽のジャンルだそうです。

もともとハイライフという音楽はアフリカでも上流階級を中心に発展した音楽だそうで、それだけにかなり垢抜けているという印象を受けるのですが、このアルバムも1曲目の「Ire」は切ないメロディーラインに郷愁感を感じるナンバーなのですが、パーカッションのリズムにトライバルな要素を感じるものの爽快さを感じるサウンドには垢抜けたものを感じます。続く「Down With You」もDyoという女性シンガーとのデゥオなのですが、彼女の歌うメロディーはメロウさも感じられる都会的なナンバーに仕上がっています。

もっとも一方では続く「Mr.Foolish」ではシェウン・クティをゲストに招き、ホーンセッションを取り入れたアフロビート風のナンバーを披露。「Pablo Alakori」もパーカッションとコール&レスポンスでトライバルな要素の強いナンバーに仕上げているなど、都会的な洗練さと、アフリカ的なトライバルなリズム感を上手く同居させたアルバムに仕上げています。

さらに後半もアコースティックギターで聴かせる「Fame」はフォーキーなナンバーで、イギリスあたりのSSWの曲と言われても普通に信じてしまいそうなメロディアスなナンバーを聴かせたり、「There is a God」などもスケール感を感じさせつつ、アコギのアルペジオをバックにしんみりとメロディーを聴かせるナンバーを聴かせてくれるなど、アフリカ的というよりも西洋的な要素を強く感じるナンバーも並びます。

かと思えば「Mama」などはパーカッションで軽快なリズムを聴かせてくれますし、「Somebody」もメロウなメロディーラインでしんみり聴かせつつもバックではパーカッションのリズムがしっかりと鳴っていたりと、ある種「西洋的」に感じる部分とアフリカ的な感じる部分のバランスが絶妙に感じられました。

確かにこれはナイジェリアで人気となるのも納得ですし、また年間1位という結果にも納得。また、そのメロディーラインは純粋に歌モノとしてもワールドミュージックを普段聴かないような層まで十分アピールできるだけのメロディーセンスを持っており、ポップス好きまで広い層が楽しめそうな傑作アルバムだったと思います。またこれが2枚目のアルバムという若手ミュージシャンだけにこれからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Carpenters With The Royal Philharmonic Orchestra/Carpenters

カーペンターズの17年ぶりの新作として話題となったアルバム。カーペンターズの代表曲を、リチャード・カーペンター指揮の下にロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるリアレンジが加えられたアルバム。ロイヤル・フィルハーモニーによるリアレンジアルバムは、アレサ・フランクリンやビーチボーイズなどのアルバムもリリースされており、「恒例の企画」なのですが、カーペンターズという知名度、日本での人気やリチャード自ら指揮を執っているという話題性からも日本でも大きな話題となっています。

ただもともとストリングスのアレンジも少なくなかったカーペンターズの曲だけにオーケストラアレンジでもさほどイメージは変わっていません。というよりもオーケストラによるアレンジは必要最小限に抑えられており、特に日本のミュージシャンがオーケストラアレンジを加える時によくなりがちな、仰々しく大味なアレンジになることはなく、オーケストラのおいしい部分をしっかりと生かしたアレンジになっています。その分、「意外性」みたいなものはほとんどありませんが、カーペンターズのベスト盤的にも楽しめるアルバムに仕上がっており、ファンとしては安心して聴くことが出来るアルバムだったと思います。

評価:★★★★

Invasion of Privacy/CARDI B

こちらも2018年ベストアルバムの後追いで聴いた1枚。音楽ニュースサイトamassで主要メディアの年間ベストアルバムを集計していたのですが、この集計で5位にランクイン。以前から気になっていたアルバムだったのですが、遅ればせながら聴いてみました。

まずはこのジャケット写真で大きなインパクトのあるアルバム。このアルバムはアメリカビルボードチャートでも1位を獲得するなど高い人気を確保しています。サウンド的には今風のトラップの要素を取り入れたリズミカルなナンバー。ただ、ジャケット写真からも感じられるようなコミカルな要素も感じられる点がユニーク。またコミカルなポップスさを保ちつつも同時に物悲しさも感じる点が印象的。確かに非常に耳に残るインパクトある内容になっていました。これがアルバムとしてはデビュー作。いきなり大ブレイクとなりましたが、これからの活躍にも要注目です。

評価:★★★★★

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