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2019年2月 5日 (火)

原点回帰しつつもサウンドは今時にアップデート

Title:Baby Bump
Musician:Chara

ユニバーサルミュージック移籍第1弾となるCharaの約1年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム。「Baby Bump」というちょっと聞き慣れない言葉は赤ちゃんでふくらんだ妊婦のお腹という意味があるそうで、言葉の響きを含めてCharaらしさを感じます。タイトルには音楽との間に出来た子どもという意味を込めたそうで、それだけ今回のアルバムに対する力の入れようもわかります。

そんな彼女の新作は前半、エレクトロチューンのナンバーからスタートするのですが、これがまた実にカッコいい!1曲目「Pink Cadillac」はP-Funkの要素を入れたスペーシーなエレクトロチューン。ファンキーなリズムの中、彼女のウィスパーボイスを上手くエレクトロサウンドの中でひとつの楽器のように聴かせるご機嫌なナンバーになっています。続く「Chocolate Wrapping Paper」も同じく軽快なエレクトロファンクチューン。こちらも彼女のボーカルとエレクトロサウンドをほどよくバランスさせた、楽しいダンスチューンに仕上がっています。

そしてタイトルチューンの「Baby Bump」もアンビエント風のテクノナンバー。こちらもドリーミーな雰囲気のサウンドが彼女のボーカルに見事マッチしており、浮遊感ある感覚が終始楽しめるナンバーに仕上がっています。前作「Sympathy」でもエレクトロサウンドを多く取り入れてきた彼女でしたが、前作以上にエレクトロサウンドを上手く彼女の独特の歌声にマッチさせ、彼女ならではのエレクトロポップに昇華させた名曲が並ぶ作品になっていました。

今回のアルバムはファンキーやソウル、あるいは「クラブサウンド」といった要素を取り込んだ、彼女の初期のスタイルに回帰した作品という傾向も強く、エレクトロファンクチューンが並んだ前半から一転、後半はメロウでソウルフルなミディアムチューンが並ぶ展開となります。そんな中でも強いファンクのリズムが心地よい「Everybody Look」などは舌ったらずでセクシーさを感じるウィスパーボイスはまさに初期90年代のCharaを彷彿とさせるナンバーに。その頃の魅力は全く薄れていないのですが・・・そんな彼女は(失礼ながらも)現在51歳(!)。年齢を感じさせないその若さには驚かされます。

そんな訳で原点回帰的ともなった今回の作品はどこか90年代の彼女も思い起こすような懐かしさを感じられます。ただ、だからといって決して本作は懐古趣味的な作品になった訳ではなく、むしろ、50歳を超え、すっかりベテランの域に入った彼女にも関わらず、攻めの姿勢を強く感じるアルバムになっていました。実際、今回のアルバムでもSeihoやLUCKY TAPESの高橋海、SWING-Oといった新進気鋭のミュージシャン、トラックメイカーと楽曲を制作しており、サウンドの方向的には初期に回帰した部分はありつつも、その内容はしっかりと今の音にアップデートされていました。

しかしCharaはベテランになった今でも傑作アルバムを作り続けており、その音楽に対する意気込みは驚くべきものがあります。今なお若々しさを全く失っていない彼女のボーカルにも驚きを隠しきれません。まだまだ彼女はどんどんと名曲を作り続けていきそう・・・これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy
うたかた
Cocoon
JEWEL
Secret Garden
Naked&Sweet
Sympathy


ほかに聴いたアルバム

JAPRISON/SKY-HI

最近ではラッパーとしての評価も定着してきたSKY-HIこと日高光啓の4枚目となるソロアルバム。ジャジーな楽曲や今どきのトラップ的なサウンドを取り入れた曲、ダークな雰囲気の曲もある一方、爽やかでポップステイストの強い楽曲やギターサウンドを取り入れたロッキンな楽曲など幅広く収録。直近の「FREE TOKYO」はミックステープという形態上、よりコアなHIP HOPリスナーに向けた作風でしたが、今回のアルバムはそんなコアな部分を残しつつも、全体的には幅広いリスナー層に向けたポップな作風に仕上げており、バランスの良さを感じます。彼のポップな側面とコアな側面を同時に感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO

palm/山本精一

前作「LIGHTS」に続くギターソロアルバムの第2弾。全編、アコースティックギターのみを用いたインストアルバムなのですが、アコギを使いミニマルテクノを作り出している非常に実験的かつ意欲的なアルバム。アコギによって作り出させるミニマル的なサウンドがとてもユニークで耳を惹く反面、楽曲的にはフォーキーで哀愁感あるメロが流れている曲が多く、小難しくならずにポピュラリティーもしっかり保たれたアルバムに仕上がっています。挑戦的なサウンドに惹かれつつもポップなメロをしっかり楽しめる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

山本精一 過去の作品
PLAYGROUND
PLAYGROUND acoustic+
ラプソディア
Falsetto
童謡

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