3人組としての集大成
Title:サニーデイ・サービスBEST 1995-2018
Musician:サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービスのベスト盤が配信オンリーという形ですが、突如リリースされました。このアルバムリリースと同時に、MIDI時代の音源のサブスクリプション配信が解禁となっており、それに伴いプレイリスト的にリリースされた、という見方も出来るアルバムですが、一方で昨年5月にメンバーの丸山晴茂が47歳という若さで逝去。若い頃の3人が並んだ写真をジャケットにしていることからも推測できるように、3人組でのサニーデイ・サービスにひとつの区切りをつける、ということでも今回のリリースにつながったのかもしれません。
今回のベスト盤は2013年にリリースされた「サニーデイ・サービスBEST 1995-2000」からわずか5年というスパンでリリースされたベスト。ただ、前回のベストアルバムは2008年の再結成後の音源は含まれていません。特にサニーデイはここ最近、「DANCE TO YOU」「Popcorn Ballads」「the CITY」と傑作アルバムを次々とリリースしており、これらのアルバムを含む、再結成後のアルバムを加えてのオールタイムベストのリリースは存在意義も大きいかと思われます。
ただ、ちょっと残念なのは全32曲というフルボリュームの中、再結成後の音源は9曲のみと、ちょっと少な目だった点。内訳的には「本日は晴天なり」から1曲、「Sunny」から3曲、「DANCE TO YOU」から3曲、「Popcorn Ballads」から1曲、「the CITY」から1曲となっています。個人的には「Popcorn Ballads」や「the CITY」からもうちょっと選ばれてもよかったように思うのですが・・・。
ただ今回、デビューアルバムの「若者たち」の1曲目「いつもだれかに」からスタートし、リリース順に並べられた彼らの曲を聴いていると、基本的にその心に染み入ってくるくるような聴かせるメロディーラインに思ったより大きな変化はないんだな、という印象を受けます。特にここ最近のアルバムに関してはHIP HOPやソウル、ファンクやエレクトロなど多彩な音楽性を取り入れているだけに、デビュー時からのサニーデイとしての一本のコアな部分が最新アルバムまでしっかりとつながっているという点が今回のベスト盤で再確認できたように思います。
もっとも、上にも書いた通り、「Popcorn Ballads」や「the CITY」からの選曲が少なかったというのは、ここ最近の、HIP HOPやらエレクトロやら初期サニーデイとは大きく異なるようなタイプの曲を選ばなかったから、ということなのかもしれません。ベスト盤として統一感を覚えたアルバムでしたが、最近の新たな音楽性を取り入れたような挑戦的な曲も取りあげて欲しかったかも、とは思いました。
また、一本のコアな部分でつながっている、とは書いたのですが、実は初期サニーデイから今の彼らに至るまでに変化した部分もあります。それは初期の彼らが、どちらかというと60年代フォークやはっぴいえんどあたりの影響を強く受けた作風であったのに対して、途中からソウル、R&Bなどの要素を取り入れ、楽曲に「メロウさ」が出てきたという点。このベスト盤ではその転換点が「夢見るようなくちびるに」あたり。アルバムで言うと「MUGEN」のあたりでしょうか。この方向性は今の彼らにもしっかりとつながっています。
そんな訳で選曲に関しては思う部分もありつつも、網羅的に彼らの歴史を知ることが出来る、入門盤的にも最適なベストアルバムだと思います。全32曲、2時間19分とかなりボリューミーな内容ですが、「DANCE TO YOU」「Popcorn Ballads」「the CITY」が発売された今、最初に彼らのベスト盤を聴くのであれば、まずはこのアルバムから、で間違いないでしょう。2人きりとなってしまったサニーデイですが、今後の彼らの活動にも注目したいところです。
評価:★★★★★
サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love
Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
ほかに聴いたアルバム
The Insulated World/DIR EN GREY
オリジナルアルバムとしては実に4年ぶりとなるDIR EN GREYの新作。ただその間にベスト盤をリリースしており、ある意味、活動に一区切りをつけた形となったベスト盤を挟んでの、あらたな一歩を踏み出したアルバムともいえる本作。ただ、印象としてはいままでの作品以上にヘヴィネスさを増した印象が強く、ベスト盤で感じたDIR EN GREYとしての完成形をさらに推し進めた印象を受けるアルバム。サウンドに終始圧倒される内容になっており、これぞDIR EN GREYという楽曲に終始魅せられたアルバムでした。
評価:★★★★★
DIR EN GREY 過去の作品
UROBOROS
DUM SPIRO SPERO
THE UNRAVELING
ARCHE
VESTIGE OF SCRATCHES
BTTB-20th Anniiversary Edition-/坂本龍一
坂本龍一が1998年にリリースした初のピアノアルバム「BTTB」。そのリリース20周年を記念してアニバーサリーエディションがリリースされました。98年にリリースされた初回盤の内容に加え、翌年リリースされた通常盤に加えられた「snake eyes」「tong poo」、さらにインターナショナル盤に収録された「reversing」に、翌年リリースされ大ヒットを記録した「ウラBTTB」より「energy flow」を収録した内容になっています。
翌年99年にリリースして大ヒットを記録した「ウラBTTB」といえば、当時「癒し系」と呼ばれ、一種のブームとなりました。このアルバムもピアノ曲ということでその流れ・・・と思いきや、内容的にはかなり実験的な作風の曲も含まれており、決して「癒し系」なる陳腐な表現で語られるアルバムではありません。もちろん、「enegry flow」のようなメロディアスな曲も収録されていますが、ピアノ一本で様々な音を表現しており、まさに坂本龍一の才能を強く感じさせられるアルバム。20年たった今でも全く色あせない傑作です。
評価:★★★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984
ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
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