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2019年1月15日 (火)

「ポップ」な傾向がより強く

Title:ホームタウン
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

オリジナルアルバムとしては約3年半ぶりとなるアジカンのニューアルバム。途中、ベスト盤や「ソルファ」のリメイクアルバムのリリースがあったのですが、新譜としてはちょっと久しぶりのアルバムとなりました。

アジカンといえば、分厚く疾走感あるギターサウンドが心地よく、「ロック」を聴いたという満足感を高く覚えるのが最大の魅力となっています。特に前作「Wonder Future」ではこの「ロック」という側面に焦点をあてたアルバムになっており、特にロックを聴いた満足感を強く覚える作品になっていました。

一方今回のアルバムに関しても分厚いサウンドがまずは心地よく感じます。1曲目「クロックワーク」からギターノイズにへヴィーなバスドラが心地よく響いてきますし、続くタイトルチューンである「ホームタウン」も分厚いバンドサウンドが気持ちよいパワーポップの作品に仕上がっています。

ただ今回の大きな特色はそこではありません。確かにアジカンらしい分厚いバンドサウンドも大きな魅力のひとつではあったものの、アルバム全体としてはミディアムテンポでポップなメロディーラインを聴かせる楽曲がメイン。「ロック」に主軸を置いていた前作とはある意味対照的な、「ポップ」に主眼を置いたアルバムになっていました。

例えば「レインボーフラッグ」などもミディアムテンポでかみしめるように歌う歌詞が前面に押し出されている、歌が主体となっているポップチューンになっていますし、「ダンシングガール」も力強いバンドサウンドが気持ちのいいパワーポップチューンになっているものの、哀愁感も覚えるようなメロディーラインがまずは耳に残るナンバーになっています。同じく「さよならソルジャー」も日本語の歌詞がしっかりと耳に届いてくる歌中心のナンバーに仕上がっていました。

もちろん、先行シングルとなった「荒野を歩け」のような疾走感あるサウンドのロック色の強いナンバーも収録されていますし、どの曲も力強いバンドサウンドからアジカンのロックの側面も強く感じることが出来ます。ただ全体的にはメロディーを前に押し出した「歌」を中心軸に据えたポップな楽曲がメインとなっているアルバムに仕上がっていました。

ただ今回のアルバムではアジカンの、バンドとしてのある種の貫録のようなものも感じました。まずロックバンドとして耳障りのよいアップテンポな曲に頼らず、ミディアムテンポの「歌」で勝負するというあたりに、バンドとしての自信を感じますし、そんな楽曲はどれもアジカンとしての魅力をしっかり伝えている、いい意味での安定感を覚えるような楽曲が並んでいます。こういうアルバムを作ってこれるというあたりに、デビューから15年、そろそろ「ベテランバンド」の域に入って来た彼らの、若手バンドとのある種の格の違いを感じさせる内容になっていたと思います。

なおちょっとユニークなのは今回のアルバムのうち「クロックワーク」ではWeezerのリヴァース・クオモとアメリカのシンガーソングライター、ブッチ・ウォーカーと、「ダンシングガール」ではリヴァース・クオモとの共作となっていますが、必要以上に「洋楽テイスト」を前に押し出す訳ではなく、日本語詞のポップナンバーになっていたという点。ただ、確かにWeezerに通じるようなメロディーラインの良さはしっかりと感じられる楽曲に仕上がっていました。

ちなみに今回、初回限定盤には「Can't Sleep EP」というEP盤がついてきています。こちらは配信では「ホームタウン」とは別枠で配信されているため、初回盤を購入していなくても簡単に聴くことが出来るのはうれしいところ。こちらにはFEEDERのグラント・ニコラスとの共作曲「スリープ」、ストレイテナーのホリエアツシが作曲を手掛けた「廃墟の記憶」、ベースの山田貴洋がボーカルをとった「イエロー」、THE CHARM PARKが作曲を手掛ける「はじまりの季節」が収録。「企画盤」的な色合いの強いバラエティーあふれる楽曲が並んでいますが、ポップという方向性については「ホームタウン」よりもより強く感じられる内容になっています。今のバンドとしての嗜好が「ポップ」であるということをより鮮明に感じられました。

ロック色が薄めということで賛否はある作品ではあるようですが、個人的にはアジカンとしての実力をしっかりと感じさせる傑作であることは間違いないと思っています。メロディーラインももちろん魅力的ですし、分厚いバンドサウンドで満足感の高いアルバムに仕上がっていました。このポップス志向がこれからまだ続くのかは不明なのですが・・・次回作も楽しみです。

評価:★★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク
THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO
フィードバックファイル2
Wonder Future
ソルファ(2016)
BEST HIT AKG 2(2012~2018)
BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"
BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"


ほかに聴いたアルバム

アッコがおまかせ ~和田アキ子50周年記念トリビュート・アルバム~

デビュー50周年を記念したトリビュートアルバム。MISIAやMAN WITH A MISSION、クレイジーケンバンド、サンボマスター、氣志團などポップスフィールドのミュージシャンたちが和田アキ子の楽曲をカバーしています。シンガーとしての実力は折り紙付きの彼女ですが、若干今回の顔ぶれ的には「芸能界的にやらされている」感は無きにしも非ずなのですが、突き抜けた名カバーこそないものの、全体的にほどよくまとめられた聴かせるカバーが並んでいます。

秀逸な出来だったのがやはりクレイジーケンバンド「笑って許して」。和田アキ子らしさと横山剣の魅力を同居させたカバーに仕上げており、相性の良さをうかがわせます。またサンボマスター「どしゃぶりの雨の中で」もエレピの音でレトロな雰囲気を醸し出した力強いカバーに。また、横山健「抱擁」はパンクロッカーである彼としてはちょっと意外な選曲となっており、彼の意外な一面を垣間見れるカバーになっているほか、大原櫻子「さあ冒険だ」は今風のガールズポップになっており、和田アキ子にこんな曲があったんだ、という意外性も感じました。

最初に書いたとおり、突出したものはなく、トリビュートとしては若干「やらさせている」感も感じてしまったものの、はずれもなく、全体的にはよく出来たカバーアルバムになっていました。参加ミュージシャンのファンなら聴いて損のない1枚かと思います。

評価:★★★★

氣志團万博2018

毎年9月に開催され、最近ではすっかりおなじみとなった氣志團主催の夏フェス、氣志團万博。昨年、同イベント参加ミュージシャンによるコンピがリリースされましたが、昨年に続き今年も出演ミュージシャンによるコンピがリリース。ベテランのロックバンドから若手勢、ヴィジュアル系にアイドル、ポップス系からお笑いまで、本当の意味でのジャンルレスなミュージシャンたちが並んでいるのが楽しい感じ。普段から絶対聴かないようなミュージシャンの曲が聴けるのもおもしろいところ。1度くらい行きたいなぁ・・・と思っているのですが・・・。来年も期待。

評価:★★★★

氣志團万博2017

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