« ポップスバンドとしてさらなる成長を遂げた傑作 | トップページ | 「ポップ」な傾向がより強く »

2019年1月14日 (月)

全15曲にして24分という短さ

Title:Some Rap Songs
Musician:Earl Sweatshirt

ご存じTyler, The CreatorやFrank Oceanなどもメンバーの一員であるオルタナティブ・ヒップホップ集団Odd Future。今回紹介するEarl Sweatshirt(アール・スウェットシャツ)はその中心メンバーの一人。その彼の3年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムの最大の特徴は、全15曲入りながらもアルバムの長さがわずか24分という点。要するに1曲あたり2分未満という短いラップが続いていくような内容になっています。そのため聴いているとめまぐるしく次から次へと楽曲が展開していく構成になっており、次々とサウンドが変わるため、最後まで耳を離せない、飽きさせない作品になっていました。

楽曲的にはアブストラクト的な色合いの強い淡々とした雰囲気のラップが続くイメージ。ループするサウンドが明確で、楽曲毎がつながっており、かつ似たような雰囲気の曲が続くため全24分が1曲という感覚でも聴けてしまうようなアルバムにもなっていました。またサウンドの雰囲気としても決して明るさが前に立ったような作風ではなく、むしろ淡々とした楽曲が続くイメージ。1曲あたり2分弱で様々なサウンドが続いていく構成のため、淡々とした作風でもリスナーに最後まで飽きさせない仕上がりとなっています。

ちなみにアルバムタイトルも「Some Rap Songs」と非常にそっけなさを感じさせますが、今回のアルバム、昨年他界した父親に捧げられたもの。特に「Playing Possum」ではその父親と母親の声がサンプリングされており、アルバムの中のひとつの山場となっています。ただこの曲を含めてアルバム全体としてパーソナル的な要素の強いリリックになっているそうで、「Some Rap Songs」というタイトルは、そんなリリックだからこその謙遜的な意味合いがあるのでしょうか。

もっともそんな個人的な内容でありつつも楽曲の中には様々なアイディアも感じられます。ムーディーさを感じる「Loosie」だったり、静かなノイズとピアノで聴かせる「Peanut」だったり、最後の「Riot!」もちょっとレトロな雰囲気が耳を惹きます。個人的な内容といっても、1曲あたりの短さを含め、しっかりとポピュラリティーを保ったアルバムになっていたと思います。

そんな訳で、アルバムの「短さ」を含めて、ラップを普段聴かないような層でも気軽に楽しめそうな作品となっていたと思います。最後まで耳を離せない飽きの来ない展開で楽しめた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Hence/OREN AMBARCHI,JIM O'ROURKE AND U-ZHAAN

オーストラリアのマルチ楽器奏者、オレン・アンバーチの新作は、ジム・オルークとさらに日本のタブラ奏者U-Zhaanを迎えての新作。オレン・アンバーチについては今回、完全に初耳だったのですが、U-Zhaanが参加しているということで聴いてみた本作。アルバム・・・といっても全2曲入り。いずれも20分近いインスト曲が収録されている全40分弱のアルバム。ミニマルテイストなサウンドにタブラの音が入っており、どこかエキゾチックで幽玄的なサウンドが魅力的。決してわかりやすいポップなメロディーが入っている曲ではないのですが、その不思議な魅力あるサウンドについつい惹き込まれる作品でした。

評価:★★★★

|

« ポップスバンドとしてさらなる成長を遂げた傑作 | トップページ | 「ポップ」な傾向がより強く »

アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 全15曲にして24分という短さ:

« ポップスバンドとしてさらなる成長を遂げた傑作 | トップページ | 「ポップ」な傾向がより強く »