暖かいメロと歌詞が際立つ
Title:Stray Dogs
Musician:七尾旅人
今年、デビュー20周年を迎える七尾旅人の、オリジナルアルバムとしてはなんと約6年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。七尾旅人といえばデビュー時は「天才、現る」という呼び声も強く、高い評判となったことをよく覚えています。それから早くも20年。いやはや早いなぁ・・・という印象を受けてしまいます。もっともデビュー時の彼の作品は正直言ってポップな要素よりもアバンギャルドな要素が強すぎて、個人的には違和感が先に立ってしまったことを覚えています。
そんな彼の作品でしたが、前々作「billion voices」より、まずはメロディーの良さを前に押し出した曲を多くリリースしてくるようになりました。そして前作「リトルメロディ」はタイトル通り、ポップなメロを前に押し出したアルバム。いままでの七尾旅人には少々距離を感じていた私にとって文句なしにはまれる傑作のポップアルバムになっていました。
今回のアルバムに関しても、基本的には前作と同様、メロディアスで暖かさを感じるメロディーが主体となるポップなアルバムとなっていました。1曲目「Leaving Heaven」は歌詞とメロともに暖かさと切なさを感じるフォーキーなナンバーからスタート。続く「Confused baby」もちょっと80年代テイストなエレクトロナンバーながらも都会で自分を見失いそうになる女性へのエールともいえるポップで優しい視点を感じる曲に仕上げています。
郷愁感あふれるメロと歌詞が胸をうつ「スロウ・スロウ・トレイン」も耳を惹きますし(「湘南新宿ライン」が登場する歌詞を含めて、ちょっとくるりっぽい感じも(^^;;)、ピアノとアコギでジャジーに聴かせる「Almost Blue」もとてもしんみり聴かせる美しいナンバーに仕上げています。
後半もサビの連呼に力強い彼なりのエールを感じる「きみはうつくしい」も強い印象を受けますし、和風なサウンドの「蒼い魚」にラストを飾る「いつか」のアコギとピアノで聴かせる美しいサウンドとメロも心をうちます。基本的にどの曲も日本語でしっかりと聴かせる、郷愁的で美しい歌詞が載っており、その美しく聴かせるメロディーラインとあわせて、シンプルな歌が胸をうつ曲が並んでいます。
ただ一方でどの曲も微妙に曲の雰囲気を変えてきているのが、彼のその実力を感じさせます。フォーキーなナンバーからエレクトロチューン、ジャジーなナンバーなどなど、全体的にアコースティックなテイストのポップなナンバーが多いものの、同時に幅広い楽曲のバリエーションも感じさせます。特に「Across Africa」などアフリカ音楽の要素を全編的に取り込んだ曲を中盤に配しており、この構成により楽曲のバラエティーがより強調される展開に。彼らしい挑戦的な要素もしっかりとアルバムの中に感じられました。
前作「リトルメロディ」も文句なしの傑作アルバムだった彼ですが、今回のアルバムも前作に引き続き、2018年の最後にリリースされた2018年を代表するアルバムの1枚になったと思います。「天才」という呼び声の高かったデビュー当初。20年たった今でもその「呼び声」に偽りはなかったと強く感じることが出来た作品でした。
評価:★★★★★
七尾旅人 過去の作品
billion voices
リトルメロディ
ほかに聴いたアルバム
Songs Of The Living Dead/Ken Yokoyama
ここ最近、ハイスタとしての活動に自らのソロ名義での活動にと積極的な活動が続くKen Yokoyama。本作はいままでコンピレーションやオムニバスアルバムなどに収録してきた曲をまとめた「セルフ・コンピレーションアルバム」。新曲が収録されているほか、数多くのカバー曲も収録された本作は、いつもの彼らしいポップスパンクの曲も多く収録しつつ、もっとポップ寄りの曲、横ノリのナンバー、ガレージロック、などなど、よりバリエーションのある内容になっており、Ken Yokoyama名義のオリジナルアルバムとはちょっと異なった方向性を楽しむことが出来ます。Ken Yokoyamaの多彩な音楽性も知ることが出来るコンピ盤でした。
評価:★★★★★
Ken Yokoyama 過去の作品
Four
Best Wishes
SENTIMENTAL TRASH
Ken Yokoyama VS NUMBA69(Ken Yokoyama/NAMBA69)
BADHOP ALLDAY vol.2/BAD HOP
今やラップグループとしての評価、人気ともに最高潮に達しているBAD HOP。昨年11月にはなんと武道館ワンマンを成功させています。そして、その時に来場者全員に配布されたのが本作のCD。その後、配信オンリーでリリースされ、ライブに参戦していなくても聴くことが出来るようになりました。
基本的に今風なトラップ風のサウンドで、タイトル通り、BAD HOPの仲間たちとのことを綴ったリリックが特徴的。全体的にダークな作風になっており、BAD HOPのいままでの作品の延長線上のような作品となっています。それだけにファンにとっては満足度のある内容だったと思うのですが、ただ一方で耳に残るようなインパクトあるフレーズやリリックは少なかったような。武道館での無料配布というスタイルからして、よりファン向けという作品なのかもしれませんが、ちょっとインパクトの弱さを感じてしまいました。
評価:★★★★
BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
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