有村竜太朗の魅力がよりはっきりと
Title:個人作品集1992-2017「デも/demo #2」
Musician:有村竜太朗
ヴィジュアル系ロックバンドPlastic Treeのボーカリストによるソロアルバム第2弾。Plastic Treeというと、デビューが1997年というから、既にデビュー後20年以上が経過しているベテランバンド。残念ながら大ヒット作というのはなく、アルバムシングル共にオリコン9位が最高位というバンドなのですが、その高い音楽性から高い支持を集めており、根強い人気を確保しています。
このPlastic Treeというバンドがユニークなのは、一般的にハードロックやへヴィーメタルからの影響が強いヴィジュアル系ロックバンドの中では珍しく、オルタナティブ系のロックバンドに強い影響を受けているという点。そのため、ヴィジュアル系バンドをあまり聴かないようなリスナー層にも高い支持を受けていました。
そして今回の有村竜太朗のソロアルバムには、そんな彼の音楽的志向が、Plastic Treeのアルバム以上に強く出ていたように感じます。特に今回のアルバムではサウンドプロデューサーに凛として時雨などを手掛ける釆原史明、そしてCOALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKIを迎えています。COALTAR OF THE DEEPERSといえば、知る人ぞ知る、日本を代表するシューゲイザーバンド。このアルバムでも、シューゲイザー色の強い、心地よいホワイトノイズの楽曲を数多く聴くことが出来ます。
イントロ的な「幻形フィルム/genkeifuirumu」に続く「くるおし花/kuruoshibana」は分厚いギターサウンドとメランコリックなメロディーラインが印象的なナンバー。このメランコリックなメロディーといいノイジーなギターサウンドといい、有村竜太朗が影響を公言しているThe Smashing Punpkinsからの影響を強く感じます。
またシューゲイザー色といえば中盤で聴かせる「ザジ待ち/zajimachi」でしょう。物悲しいメロディーラインをゆっくりと聴かせる楽曲ですが、アウトロでは心地よいホワイトノイズで埋め尽くされて楽曲は終了します。哀愁感あるメロが流れる中、少々サイケ気味の幻想的なギターサウンドが印象的な「日没地区/nichibotsuchiku」もシューゲイザー好きには心地よさを感じさせるナンバー。ラストの「19罪/jukyusai」も泣きメロも印象に残るナンバーなのですが、楽曲を埋め尽くすホワイトノイズに気持ちよさを感じさせるナンバーになっています。
さらにメランコリックに泣かせるメロディーラインも大きなインパクトを持っており、強く印象に残ります。ノイジーなサウンドが強い印象に残る楽曲ながらも一方では歌の部分もしっかりと前に押し出されているようなサウンド構成になっており、プロダクション的にもバランス感覚の良さを感じます。結果としてメロディーメイカーとしての有村竜太朗の魅力がより表に出ているアルバムになっていたように感じます。
正直、彼の歌い方についてはヴィジュアル系特有の鼻にかかったような耽美的な歌い方が特徴的なので好き嫌いはわかれる部分かもしれません。私もPlastic Treeの楽曲についてはアルバムを基本的にすべて聴いているのですが、そのため大はまりは出来ない、という状況でした。しかし前作もそうだったのですが、彼のソロアルバムに関しては、メロディーラインの良さ、サウンドの心地よさがより前に出ていた結果、彼の歌い方の癖を差し引いてもはまってしまう傑作アルバムに仕上がっていたように感じます。それだけ有村竜太朗というミュージシャンの魅力をしっかりと捉えていたアルバムだったように感じました。次はPlastic Treeのアルバムリリースになるのでしょうか。そちらも楽しみなのですが、是非ソロでの活動も今後も継続してほしいなぁ、と感じる作品でした。
評価:★★★★★
有村竜太朗 過去の作品
デも/demo
ほかに聴いたアルバム
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS/大橋トリオ
以前も紹介したNHKドラマのエンディング曲をまとめたコンピレーションアルバム「植物男子ベランダー」の、こちらはSEASON2として2018年9月から12月に放送された放送分に使用されたエンディング曲を集めた配信オンリーでのアルバム。既発表曲のみをまとめたコンピなので目新しさみたいなものはありませんが、ただこうやってあらためて聴くと、いい意味で安心して聴ける大人のポップの名曲が並んでいる印象。大橋トリオの魅力をあらためて強く感じることが出来るコンピになっていました。
評価:★★★★★
大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R
FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
Little Christmas/佐藤竹善
2018年はEric ClaptonやJohn Legendがクリスマスアルバムをリリースし、さすがアメリカではクリスマスだけで著名なミュージシャンが1枚のアルバムを作ってしまうほどクリスマスに対する思い入れが深いのか・・・と思っていたのですが、日本でもクリスマスをテーマにアルバムをリリースしてきたミュージシャンがいました!SING LIKE TALINGのボーカリスト、佐藤竹善。いままでも「Your Christmas Day」のタイトルで3枚のクリスマスアルバムをリリースしてきましたが、今年は「Little Christmas」のタイトルで新たなクリスマス企画アルバムをリリース。ライブ音源のカバーが中心なのですが、ジャジーな演奏をバックにしんみりと歌い上げる彼の歌声は絶品。大人のクリスマスアルバムといった感じで、寒い季節にはピッタリのアルバムとなっていました。
評価:★★★★
佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
Your Christmas Day III
The Best of Cornerstones 1 to 5 ~The 20th Anniversary~
My Symphonic Visions~CORNERSTONES 6~feat.新日本フィルハーモニー交響楽団
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