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2019年1月 7日 (月)

ポップな面と硬派な面がバランス良く

Title:ドリーム銀座
Musician:サイプレス上野とロベルト吉野

毎回、楽しいポップなHIP HOPチューンを楽しませてくれるサイプレス上野とロベルト吉野、通称「サ上とロ吉」。
昨年7月にメジャーデビュー作となるミニアルバムをリリースしましたが、それに続き、待望のフルアルバムがリリースされました。いままでの幅広い人気と活躍があったため、これがフルアルバムとしてはメジャーデビューというのがちょっと意外な印象を受けてしまいます。

さて、そんなメジャーデビューアルバムの特徴は、彼らのメジャーデビューを祝うかのように数多くのミュージシャンが彼らの曲のプロデュースを手掛けているということ。mabanua、LIBRO、STUTSなど、新進気鋭のミュージシャン、トラックメイカーが今回、彼らのアルバムを手掛けています。さらには「メリゴ」ではSKY-HIが客演として参加しており、彼らの音楽の世界をさらに広げる役目を担っています。

そんな「サ上とロ吉」の曲の大きな特徴といえば、HIP HOPリスナーでなくても楽しめるようポップで楽しいナンバー。今回のアルバムでも、「メリゴ」のようなSKY-HIを迎えて爽やかなポップなメロディーが入ってくる曲や、ライブでも盛り上がりそうな「上サイン」「ヒップホップ体操第三」など、特に前半にポップで楽しいナンバーが並びます。さらに中盤ではあの石野卓球がプロデュースを手掛けた「ホラガイHOOK」でダンサナブルでエレクトロなトラックの楽曲を聴かせてくれており、ここらへんはテクノ好きでも楽しめるナンバーになっています。

また、彼らのもうひとつの大きな特徴といえば、彼らのふるさと横浜をテーマとしていること。本作でもイントロに続いて事実上1曲目で「Yokohama La La La」といきなり横浜をテーマとした曲で開始していますし、さらに「PRINCE OF YOKOHAMA 2222」では、2222年の横浜にタイムスリップするというユニークなリリックを聴かせる楽曲に仕上げてきています。

ただ今回のアルバム、そんなポップな彼らの側面にしっかりとスポットをあてている反面、特に後半では、より硬派な彼ら、音楽性を重視したサ上とロ吉により焦点をあてたような楽曲が並んでいました。mabanuaプロデュースによる「ムーンライト」ではメロウなトラックを楽しむことが出来ますし、韻シストのBASI、GAGLEのHUNGERをゲストに迎えた「RUN AND GUN pt.2」は多くのラッパーが参加したマイクリレーも楽しめる硬派なナンバーに。ラストの「NO LIMIT」もテンポよいラップにループするトラックが印象的。ラッパーとしてのスキルを発揮した、しっかりと聴かせるナンバーに仕上げています。

そんな訳で、彼らの魅力であるポップな側面をしっかりと押し出している一方で、「ポップ」なだけではない彼らの実力もしっかりと聴かせてくれるアルバムになっていました。彼らのポップな側面と硬派な側面がほどよくバランスされた作品で、メジャーデビュー作らしく、彼らの実力がしっかりと反映された傑作に。彼らの魅力がしっかりと伝わってくる1枚でした。

評価:★★★★★

サイプレス上野とロベルト吉野 過去の作品
WONDER WHEEL
YOKOHAMA LAUGHTER
サ上とロ吉のINMIX~non stop rental~
MUSIC EXPRES$
TIC TAC
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(紅)
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(白)

コンドル
大海賊


ほかに聴いたアルバム

もともとは堀込兄弟2人組としてスタートしたキリンジ(現KIRINJI)。今年はメジャーデビュー20周年の年となるのですが、彼らの「キリンジ」時代の曲を集めたコンピ盤がリリースされました。

Melancholy Mellow-甘い憂鬱-19982002/キリンジ

メランコリック&メロウをテーマとして選曲されたアルバムで、こちらはタイトル通り、1998年から2002年、彼らのワーナー時代の作品を収録しています。

Melancholy Mellow II -甘い憂鬱- 20032013/キリンジ

で、こちらは2003年から2013年のEMI/コロムビア時代の作品を収録したアルバム。

ある意味、どちらもまさにこれぞキリンジといった感じの曲が並んでいるアルバム。「エイリアンズ」「Drifter」など彼らの代表曲から知る人ぞ知る曲まで並んでいるのですが、どれも暖かい雰囲気でリスナーを包み込むようなメランコリックな作品となっています。ただ、ある意味、メランコリックな曲がこれだけ並ぶと、さすがにやりつくした感も否めないような。そういう意味では、兄弟2人のユニットから、堀込泰行が脱退し、バンドKIRINJIと、堀込泰行ソロにわかれたという流れはある意味必然だったのかな。そんなことも感じてしまったコンピ盤でした。

評価:どちらも★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ
愛をあるだけ、すべて

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