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2019年1月 2日 (水)

彼らの「自信」をうかがわせる傑作

Title:Sleepless in Brooklyn
Musician:[Alexandros]

約2年ぶりとなる[Alexandros]のニューアルバム。売上的には1位を獲得した前作「EXIST!」に比べて初登場3位とダウン。初動売上枚数も下回るなど、右肩上がりの勢いがあった前作までと比べると、若干ひと段落した感のある本作ですが、8月には千葉マリンスタジアムで初となるスタジアムワンマンライブを実施するなど、まだまだ勢いを感じられます。

そんな彼らの前作「EXIST!」は脂ののりきったバンドだけがリリースできるような奇跡的な傑作アルバムに仕上がっていました。それだけに次のアルバムがどのような出来になるのか注目していたのですが・・・結果としては前作「EXIST!」が彼らにとって決して奇跡的に誕生した偶然の傑作ではないことを証明する作品に仕上がっていました。

まず今回のアルバムで彼らにとってある種の「自信」を感じさせるのが序盤。アルバムというと通常は序盤にインパクトのある作品からスタートするのが一般的。前作「EXIST!」でも1曲目「ムーンソング」はさわやかなメロディーを聴かせる曲からスタートしたものの、2曲目「Kaiju」ではガツンとくるハードロックなナンバーを入れて、一気にリスナーの耳を惹きつける構成になっていました。

今回のアルバムでは1曲目「LAST MINUTE」はエレクトロテイストの強いミディアムテンポのポップチューンになっており、メロディーの良さは感じるものの、決してガツンと強いインパクトを持ったナンバーではありません。続く「アルペジオ」も切なさを感じるメロディーが主軸となったナンバー。サビではそれなりに分厚いバンドサウンドが入ってくるものの、ロックテイストは弱めになっており、どちらもロックなサウンドというよりはメロディーラインを聴かせる曲からスタートしています。

そういう意味ではこの序盤の展開にはリスナーの耳を惹きつけやすいダイナミックなバンドサウンドではなく、メロディーラインでもしっかりとリスナーを惹きつけることができるという、彼らの自信を感じることが出来ます。そして、そんな聴かせるナンバーが並んだあとの3曲目「Mosquito Blue」ではいきなりヘヴィーなギターのリフのイントロからスタートするロックなナンバー。ここでロックバンドとしての彼らを前面に押し出してくるのですが、この展開にはゾクゾクとすらさせられます。続く「I Don't Believe In You」もシンセのサウンドを効果的に使った疾走感あるナンバーで、ファンキーなリズムも入ったカッコいいロッキンなナンバー。ここでロックな彼らを求めるリスナーの耳もグッと惹きつけます。

ただ今回のアルバム、全体的にはポップなメロディーラインを押し出したような曲が多かった印象を受けます。続く「ハナウタ」も和風な郷愁感も覚えるミディアムチューンですし、「PARTY IS OVER」も打ち込みの力強いリズムとシンセのサウンドが印象的なエレクトロテイストの強いナンバーながらもミディアムテンポのメロディーラインを前に押し出した聴かせるナンバーに。終盤の「Your Song」もフォーキーな雰囲気でしんみり聴かせるナンバーに仕上がっています。

[Alexandros]というと以前は、サウンドはそれなりに洋楽的なのに、悪い意味でJ-POP的なベタなメロディーが特徴的という印象を受けていました。その点、前作「EXIST!」は洋楽的な部分がグッと前面に押し出された結果、傑作のアルバムとなったのですが、今回のアルバムに関しても、彼らの持つ洋楽的な要素とJ-POP的な要素がほどよくバランスされており、その結果としていままでベタなJ-POP的と感じたポップテイストの強いミディアムチューンでもグッとメロディーラインのクオリティーが上がったように感じます。

特に「FISH TACOS PARTY」などでは哀愁感あるメロディーラインやサビでの転調などいかにもJ-POP的なのですが、インパクトあるフレーズが英語詞にもうまくマッチしており、洋楽的な側面とJ-POP的な側面がほどよくブレンドされた聴かせるナンバーに仕上がっていました。

もちろんロックな側面でもカッコいいナンバーも少なくなく、HIP HOPの要素も取り入れ、ヘヴィーなギターリフがカッコいい「MILK」や疾走感ある「KABUTO」など、ロックバンドとしての強度もいままで以上に上がったように感じます。

前作「EXIST!」は「奇跡の傑作」という表現をしていたのですが、今回のアルバムを聴く限り、前作が決して「奇跡」ではなく、彼らが一つの壁を乗り越えた結果のアルバムだったんだ、ということを強く感じました。そして、今回のアルバムはそんな壁を乗り越えた彼らが作り上げた、バンドとしての「自信」をうかがわせる傑作アルバム。いや、文句なしにいいバンドになってきました。これからの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!


ほかに聴いたアルバム

Happy Days/岡本真夜

岡本真夜の最新作は7曲入りのミニアルバム。基本的にはいつもの彼女らしいポップソングが並んでいるのですが、タイトル通り、とにかく明るい曲の連続。大いなるマンネリ的な曲といえばその通りなのですが、素直にワクワクするような楽しいポップチューンが並んでおり、純粋に楽しむことが出来る1枚でした。

評価:★★★★

岡本真夜 過去の作品
seasons
Crystal Scenery II
My Favorites
Close To You
Tomorrow
岡本真夜 20th Anniversary ALL TIME BEST~みんなの頑張るを応援する~
Love Story

ザ・シサ/筋肉少女帯

メジャーデビュー30周年を記念してリリースされた約1年ぶりのニューアルバム。タイトルの「視差」とは同じ物でも見る角度によって見え方が違ってくるという、ある意味筋少らしいタイトル。「オカルト」とか「なぜ人を殺しちゃいけないのだろうか?」とか、いかにも彼ららしい曲も収録。そんな感じでそれなりに楽しめるアルバムではあるものの、全体的にはちょっとマンネリ気味なのは否めないかな。曲もこれといったインパクトあるフレーズも少なかったですし。

評価:★★★★

筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀
THE SHOW MUST GO ON
おまけのいちにち(闘いの日々)
再結成10周年パーフェストベスト+2
Future!

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アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

硬派な面と軟派な面がキチンと両立している大傑作だと思いますよ、ドロスの新作は。

投稿: ひかりびっと | 2019年5月 3日 (金) 23時05分

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