クラプトンのオールタイムベスト
Title:Eric Clapton:Life In 12 Bars(Original Motion Picture Soundtrack)
以前、当サイトでも紹介したエリック・クラプトンの生涯を描いたドキュメンタリー映画「エリック・クラプトン~12小節の人生」。彼の波乱万丈な生涯が描かれた、強い印象に残る映画だったのですが、その映画公開に先立ちリリースされたのがこのサントラ盤。映画を見た後に遅ればせながらサントラ盤も聴いてみました。
さてこのアルバム、映画のサントラ盤なのですが、その収録曲がなかなかすごいものがあります。ご存じの通りクラプトンといえば、生涯にわたり様々なバンドに参加してきました。彼のキャリアの最初の活動であるヤードバーズからはじまり、ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインドフェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノス。そしてこのサントラ盤には、彼が参加してきたこれらのバンドの曲を網羅的に収録。さらにはソロ時代の作品が収録されているほか、序盤に彼の影響を受けたブルースの楽曲を収録。そして彼がギターで参加したことでも知られるThe Beatlesの「While My Guitar Gently Weeps」まで収録されています。権利上の関係か、あまりビートルズの作品がこの手のコンピに収録されるケースは少ないだけに、本作に収録されたという事実には驚かされます。
まさにクラプトンのオールタイムベストとも言える内容。まあ、彼の波乱万丈の生涯をわずかCD2枚に収録しているわけで、それだけに省略されている曲も多く、例えば彼の代表曲のひとつとしても知られる「Change The World」などは収録されていないのですが、そういう点を差し引いても、エリック・クラプトンの入門盤としても最適な内容になっていると思います。
そしてその彼の過去の楽曲を聴いてあらためて強く感じた点があります。それは彼が本当に幅広い音楽に挑戦しているということ。今回の映画の副題「12小節の人生」の「12小節」とはブルース形式と呼ばれるブルースの基本的な構成が12小節で成り立っていることからつけられたものです。実際、クラプトンとブルースといえば切っても切れない関係であるのですが、彼の音楽は単純なブルースの模倣・・・ではありません。クリームはサイケロックやハードロックの傾向が強いですし、デレク・アンド・ザ・ドミノスはサザンロックの傾向が強くなります。さらにソロになってからは本作にも収録されている「I Shot The Sheriff」はレゲエミュージシャンのボブ・マーリーの曲のカバーですし、92年にリリースした大ヒット作「アンプラグド」の影響か、最近のクラプトンにはむしろAOR的なイメージすらついてまわります。
逆にそれだけ積極的に様々な音楽に挑戦しているからこそ、ひとつのバンドに留まることなく、様々なバンドを結成・参加して今に至っているのでしょう。本作はそんなクラプトンの活動を、彼が強い影響を受けたブルースの楽曲を含めて網羅的に把握できるアルバムになっていました。映画を見てクラプトンの生涯に感銘を受けた方はもちろん、映画を見ていなくてもクラプトンの入門盤としても最適なアルバムです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Delta/Mumford&Sons
前作「Wilder Mind」は悪い意味でスタジアムバンド的な、スケール感ばかりを前面に出した大味な作品になっていました彼ら。今回も同じようにスケール感がある分厚いサウンドの曲が多い一方、ミディアムテンポ主体のメロディーラインをしっかりと聴かせる曲も多く、決して大味にならない魅力的なメロディーがグッと多くなったように思います。デビューアルバムの時のフォーキーな感じはさらに薄くなった感はあるのですが、バンドとしてより「大物」へと成長を感じされる1枚でした。
評価:★★★★
Mumford&Sons 過去の作品
Sigh No More
Babel
Wilder Mind
The Hansa Session/Chvrches
Chvchesの新作は5曲入りのEP盤。最新アルバム「Love Is Dead」の曲をアコースティックとストリングスのアレンジで収録した企画盤で、タイトルの「Hansa」とはデヴィッド・ボウイやイギー・ポップなど数多くのミュージシャンが作品を収録したベルリンのハンサ・スタジオのこと。エレクトロポップスバンドの彼女たちですが、アコースティックなアレンジをほどこすと、その美しいメロディーラインが際立ち、メロディーメイカーとしての才が目立つ作品になっています。ちなみに本作はLP盤と配信のみのリリースだとか。こういう形態、日本でも取り入れるミュージシャンが増えてきていますが、全世界的な流れになってきているようですね・・・。
評価:★★★★★
Chvrches 過去の作品
The Bones Of What You Believe
Every Open Eye
Love Is Dead
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