名盤に対するアフリカからの回答
Title:Remain in Light
Musician:Angelique Kidjo
ニューヨークのロックバンド、トーキング・ヘッズが1980年にリリースしたアルバム「Remain in Light」。アフリカ音楽の要素を取り入れた独特のサウンドが注目を集め、今なおロックの名盤としての誉れ高い作品になっています。今回、紹介するのはその名盤をそのままカバーしたアフリカのミュージシャンの作品。アンジェリーク・キジョーはアフリカ・ベナン共和国出身の女性シンガーソングライターで、いままでグラミー賞に4度ノミネートするなど、世界的にも評価の高いミュージシャン。その彼女が「Remain in Light」をまるごとカバーし、一部で話題となっています。
もともとアフリカ音楽の要素の強い同作に対してのカバーは、ある意味、「Remain in Light」に対するアフリカからの回答と言ってもいいかもしれません。基本的に原曲に沿ったようなカバーとなっているのですが、そんな中でもよりトライバルな部分が強調されたスリリングなカバーになっていたように感じます。
例えば「Crosseyed and Painless」はもともとポリリズムの要素を強く取り入れた楽曲でしたが、彼女のカバーでは原曲に入っていたギターサウンドを取り除き、代わりにホーンセッションを取り入れたアレンジに。またその結果、ポリリズムの要素がより強調されたアレンジに仕上がっており、トライバルな要素をより強く感じるカバーになっています。
また今回のカバー、アンジェリーク・キジョーのボーカルがより生かされたカバーになっていた点も大きな特徴でしょう。もともとトーキング・ヘッズによる楽曲自体は、さほどボーカルが前に出ているような曲ではありません。今回、アンジェリークの力強いボーカルが前に押し出され、また彼女のボーカルが楽曲の雰囲気に見事マッチしており、楽曲のトライバルな要素をより押し出している形となっていました。
例えば「The Great Curve」も同じくパーカッションのリズムがより前面に押し出されて、ポリリズムの要素が強調されたカバーになっているのですが、さらに本作ではアンジェリークの力強いシャウト気味なボーカルによるカバーになり、原曲にはなかった力強い迫力あるカバーに仕上がっています。
また「Seen and Not Seen」は原曲ではトーカティブなボーカルが淡々と続いています。原曲の持つ無機質な雰囲気も魅力的ですが、今回のカバーではアンジェリークのパワフルなボーカルが乗り、楽曲がより躍動的に生き生きとした雰囲気を持っているカバーに仕上がっています。
原曲の持っている魅力はそのままに、アンジェリークらしい解釈を、特にアフリカからの回答としてのアレンジを加えている非常に優れたカバーになっていた傑作アルバムとなっていました。原作が好きな方は是非ともチェックしてほしいカバーアルバムです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
ELASTIC DAYS/J Mascis
Dinosaur Jr.のギターボーカルとしても活躍しているJ Mascisのソロアルバム。基本的にアコギをメインとしたシンプルなギターサウンドがメイン。ピアノなども取り入れてポップなメロディーラインを美しく聴かせるスタイル。いつもの彼と同様、インディーらしい雰囲気の作風でしたが、特に今回はフォーキーな作風が目立つ作品に。その分、地味さが強くなってしまった印象もありますが、一方ではメロディーの良さも光る作品になっていました。
評価:★★★★
J Mascis 過去の作品
Several Shades Of Why
Caution/Mariah Carey
約4年ぶりとなるマライア・キャリーの最新作。一時期は世界を席巻し、日本でも絶大な人気を誇った彼女。残念ながらさすがに本作は日本ではチャート最高位30位と一時期ほどの人気はなくなりました(とはいえ本国アメリカでもビルボードで5位にランクインしており、まだまだその人気は健在ですが)。ただ、本作を聴くと、彼女の魅力であるハイトーンボイスは今なお健在。ミディアムテンポのバラードナンバーが多いものの、爽やかなポップチューンが並び、さすがに全盛期には及ばないものの、十分な魅力を感じることが出来ます。なお、日本盤のボーナストラックにはゲストラッパーにKOHHが参加。なんと日本語のラップが入っており、リスナーを驚かせます。ここらへん、日本人にとってはちょっとうれしいところです。
評価:★★★★
Mariah Carey 過去の作品
Memories Of An Imperfect Angel
Merry Christmas II You
Me.I Am Mariah...
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