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2019年1月 3日 (木)

爽快なメロディーがとにかく魅力的

Title:wizard
Musician:ビッケブランカ

ファルセットボイスと心地よいピアノに分厚いサウンド、キュートでポップなメロディーがとにかく心地よい男性シンガーソングライター、ビッケブランカ。
前作「FEARLESS」ですっかりはまってしまったのですが、それに続く約1年4ヶ月のメジャー2枚目となるフルアルバム。今回も非常に気持ち良いポップチューンが並ぶ、個人的には壺にはまりまくりの傑作アルバムに仕上がっていました。

本作はいきなりタイトルチューン「wizard」からスタートするのですが、「猫」の語りと、それをバックに小曲が流れるイントロ的な曲。とぼけた感じの棒読みで音楽用語を並べてビッケブランカの魅力を語るのですが、この語り口がなかなかユニーク。ここらへん、ちょっとm-floっぽいなぁ、とも感じたのですが、お遊び心の強い出だしからスタートします。

そして続く「Winter Beat」もピアノとストリングスで彩られたポップチューンがとにかく心地よい。サビのファルセットボイスも魅力的ですが、爽やかさと切なさが同居したメロディーがとにかく心にキュンキュンと響いてきます。続く「まっしろ」はドラマの挿入歌にも起用された曲なのですが、切ないメロディーが印象的なピアノバラードで雰囲気がガラッと変わります。序盤は「冬」らしいナンバーを並べた、今の季節にピッタリの構成となっています。

その後も「ウララ」「キロン」などピアノをメインとした分厚いサウンドにファルセットボイスという疾走感あって心地よいポップチューンや「Smash」「WALK」など、ファルセットボイスを美しく聴かせるピアノバラードナンバーなど、彼らしい楽曲をしっかりと聴かせます。

また一方では前作同様、ハイトーンボイスを聴かせるポップなメロディーという軸の部分はぶれずに、バリエーションを持った曲調も特徴的。今回でいえば「Black Rover」などはアップテンポなオルタナ系ギターロックのナンバーになっていますし、さらに「Buntine Special」ではヘヴィーなギターリフを聴かせるパンキッシュなナンバーに仕上げています。さらには「夏の夢」のようなちょっとジャジーなAORナンバーがあったり、「Lights Out」のような打ち込みを使ったエレクトロ色の強いミディアムテンポのナンバーもあったりします。

ただ、そんなバリエーションを持たせつつも、アルバム全体としては上にも書いた通り、ピアノをバックに爽快なサウンドで聴かせるポップチューンという方向性は一貫しているためアルバム全体としてはしっかりと統一感を持っており、ビッケブランカの魅力をしっかりと伝えている作品になっていると思います。

この手のポップミュージシャンはいわゆる夏フェス受けするわけでもないし、1曲、シングル的な曲のヒットがないとなかなかブレイクしきれないのですが、ただ、これだけインパクトあって魅力的な曲を作っているだけに、今後、もっともっと注目されそうな予感もあります。とにかく、前作に続いて今回のアルバムも個人的には壺にはまりまくった作品に。素直にポップの魅力を楽しめる、音楽ファンに幅広くお勧めしたい傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS


ほかに聴いたアルバム

-11℃/BIGMAMA

BIGMAMAというとメンバーにヴァイオリニストを入れ、ヴァイオリンの音色をロックの曲の中に重ねてくるのが大きな特徴。ただその結果、ヴァイオリンを前に押し出すことによって少々仰々しい大味な仕上がりになるか、ロックな面を前に出すことによりヴァイオリンの音が浮いてしまうという問題点がありました。ただ今回のアルバムは全体的にノイジーなギターサウンドを前に押し出しつつ、ヴァイオリンをほどよく絡ませることにより、いい意味で両者のバランスが取れたアルバムになっていたと思います。いままでのアルバムで一番良くできたアルバムかと。

評価:★★★★

BIGMAMA 過去の作品
Dowsing For The Future
君がまたブラウスのボタンを留めるまで
君想う、故に我在り
Synchronicity(HY+BIGMAMA)
Fabula Fibula
BESTMAMA

還暦少年/スターダストレビュー

約4年ぶりとなるスタレビの最新作。メンバーのうち根本要、柿沼清史が還暦を迎えた彼ら。本作は還暦を迎えても心はいつもロック少年という意味合いのタイトルだそうで、あえて「年齢」を意識させるような歌詞の曲が多く収録されています。もちろん楽曲の方は、彼ららしく、ロックンロール、ファンク、フォーク、さらにはボッサ的な要素を感じさせる曲など幅広い音楽性を取り入れた完成度の高いポップソングが並んでいます。ただ、「恋するTシャツ」など、一方では還暦という年齢を押し出しつつ、ラブソングに関していくらなんでも心持ちが若すぎないか?(というよりも幼すぎないか?)と思うような歌詞も目立ち、正直言うと、違和感が・・・いや、あえて厳しい言い方をさせてもらうと、例えば会社の中で、いい歳した50代60代のおっさんが20代の若手女性社員に色目を使っているような、セクハラにもなりそうな気持ち悪さすら感じてしまいました。ラストの「静かな愛で」のような歌詞ならば何も違和感はなく自然体に感じられたと思うのですが・・・。その点さえなければ、ここ最近の作品の中でもかなり出来のよい作品だったと思うのですが・・・。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-

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