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2019年1月22日 (火)

80年代を代表する歌姫の光と闇

最近、音楽系の話題映画の公開が相次いでいるように思います。今回、そんな話題の音楽系のドキュメンタリー映画を見てきました。

80年代に一世を風靡した歌姫、ホイットニー・ヒューストン。特に92年に公開された主演映画「ボディーガード」は大ヒットを記録し、同映画の主題歌でもあった「I Will Always Love You」も大ヒットを記録。日本でも180万枚という洋楽のシングルとしては異例となる大ヒットを記録。いまでもスタンダードナンバーとして親しまれている曲となっています。

ただし、彼女はその「ボディーガード」のヒットを頂点に、その後は薬物依存に陥り、2012年にわずか48歳という若さでこの世を去りました。大スターのあまりにも早い死は強い驚きを持って迎え入れられたことを覚えています。今回のドキュメンタリー映画はそんな彼女の生涯を追った作品。ホイットニー・ヒューストン財団初公認ということでも話題となりました。

今回のドキュメンタリー映画はある意味、この手のドキュメンタリーとしてはオーソドックスなスタイル。関係者のインタビューの合間に彼女の過去の映像などを入れて、彼女の生涯を追っていく構成になっています。特に晩年、彼女が薬物中毒に陥っていく理由について、衝撃的な証言も飛び出しており、まさに彼女の「闇」の部分も斬り込まれた内容になっていました。

Whitney

実は私自身、ホイットニーについてはあまり詳しく知っている訳ではなく、アルバムも売れたアルバムを何枚か聴いた程度。今回、はじめて知った事実も多く、そういう意味では非常に興味深く映画を見ることが出来、また映画を見終わった後に、あらためてホイットニーのアルバムを聴いてみたくなりました。そういう意味ではとても楽しめた映画だったと思います。

以下ネタバレの感想

今回の映画でひとつ明確だったのは、彼女の「光」と「闇」の部分を対比させるように描く構成になっていた点。前半は彼女の生い立ちからブレイク、そして全盛期に至る過程が描かれています。両親から愛され、いわばインテリだった父親と、シンガーとして一定以上の地位を築いていた母親の元で、一見すると何不自由ない暮らしを過ごしていた彼女。音楽業界に入ってからも比較的、コンスタントに人気を伸ばし、そして「ボディーガード」の大ヒット・・・と一見すると薬物依存とはかけ離れたような理想的な人生のように描かれています。

そのトーンが変わるのが後半。若い頃に経験した両親の離婚やファミリービジネスになってしまったことにより彼女の人気に寄生虫のように頼る親族とその中で敬愛していた父親の裏切り。さらには幸せな結婚と思われた夫、ボビー・ブラウンとの破局など、彼女の「闇」の部分が描かれています。その中で一番の衝撃かつ薬物依存の一番の原因として描かれていたのは、彼女が幼いころに性的虐待を受けていたという話。その「犯人」として従姉妹であり、自身も歌手として活躍していたディ・ディ・ワーウィックが実名で告発されている、衝撃的な内容になっています。

ここらへんの衝撃的な告発については賛否両論あるようで、実際にホイットニーもおらず、「犯人」も既にこの世を去った反面、ホイットニーの母親をはじめ関係者がまだ多く存命な中でのこういう発言については、若干の疑問がない訳でもありません。実際、母親のシシーはドキュメンタリー映画でのこういう形での告発に強い抗議の声明を出しているようです。これに関しては非常に難しいところ。確かにこういう形での告白はちょっと早すぎるのかなとも思うのですが、ただいつかは表に出てくるような話でもあり、複雑な気分にもさせられました。

ただ今回の映画で一番辛かったのは、映画がハッピーエンドではなく、ちょっと後味が悪いエンディングになっていたという点でした。ここ最近、この手のミュージシャンの光と闇を描いた映画が相次いでいますが、日本でも大ヒットした「ボヘミアン・ラプソディー」は(ノンフィクション的な構成とはいえ)一応はハッピーエンド的な終わり方をしていますし、エリック・クラプトンのドキュメンタリーも最後はハッピーエンドで終わっています。

しかしこの映画は彼女の生涯を追う形になっていたため、最後はバッドエンドの形になっており、それが見ていて少々辛いものがありました。特に晩年、薬物依存で表舞台から姿を消したものの、映画「スパークル」にも出演し、徐々に復帰してきた中での急逝であっただけに、より見ていて悲しくなりました。

また、今回の映画、彼女の生涯について公平な視点からよくまとまった構成になっていたものの、ただちょっと幅広く取り上げようとしすぎて、若干焦点がぼやけてわかりにくい部分もあったのが気になりました。晩年の薬物依存の「闇」にスポットをあてるのなら、正直、あえてもうちょっと切り捨ててもよかったので?例えば彼女の親友でマネジャー的な役割をしていたロビン・クロフォードについて、ホイットニーの親族がけちょんけちょんにけなしているのですが、ただ最終的にホイットニーを裏切っているわけではなく、位置づけが中途半端。もうちょっと取り扱い方を考えてもよかったようにも思います。

ただ印象的だったのは彼女が薬物依存になった後の、アメリカのメディアでの彼女の取り上げ方。もう徹底的にバッシングしており、その露骨さに嫌悪感を覚えました。もともとキリスト教の教えの中にルサンチマン的要素があると言われているそうですが、それにしてもこれだけ露骨に叩くものなのか・・・まあ、正直、今の日本でも人のことを言えない部分は強いのですが・・・。そんな中で、ホイットニーがマイケル・ジャクソンと会った時、2人はほとんど会話を交わさなかったものの、お互いの心境について深く理解しあった、という証言が映画の中で語られており、非常に強く印象に残りました。

また、彼女の一人娘、クリッシーはホイットニーをめぐる騒動の中の最大の被害者に感じました。彼女はわずか22歳で、母親と全く同じ、薬物中毒を起因とする溺死によりあまりにも短い生涯に幕を下ろすのですが、映画の中でも母親の人気に翻弄される姿が語られており、あまりに可哀そうに感じました。逆に母親がクリッシーの死を知らずに先立てた点のみ、不幸中の幸いと言わるのかもしれませんが・・・。

そんな訳で、映画として若干の問題点を抱えつつ、見ていて辛い部分も多い映画だったのですが、一方で興味深い部分も多く、ホイットニーについてあらためて興味を抱くことが出来た映画だったと思います。とりあえず彼女のアルバムを久しぶりに聴いてみたくなりました。

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