アルバムレビュー(洋楽)2018年

2018年7月15日 (日)

結成35年。超ベテランバンドの軌跡。

Title:GREATEST HITS VOL.1
Musician:The Flaming Lips

結成から35年。サイケデリックなサウンドとキュートなメロディーラインで根強い支持を誇るバンド、The Flaming Lips。その彼らの初となるオールタイムベストがリリースされました。CDでは3枚組となり、全52曲3時間40分強というかなりボリューミーな内容がまずは目をひく今回のベスト盤。さすが30年以上のキャリアを誇る超ベテランバンドなだけあります。

楽曲はワーナー移籍後のもの。1992年にリリースされたアルバム「Hit to Death in the Future Head」以降の曲が収録されています。CDのうち1枚目2枚目は、その「Hit to Death in the Future Head」から最新アルバム「Oczy Mlody」までの曲がリリース順に収録され、彼らの歩みがわかる構成に。そして3枚目のCDにはレア音源や未発表曲などの楽曲が収録されています。

The Flaming Lipsといえばアルバム毎にいろいろなタイプの楽曲を聴かせてくれているバンドなのですが、ベスト盤を聴くと、まさにバラエティーあふれる楽曲が並んでおり、彼らの音楽性の広さを強く感じる内容になっていました。1曲目を飾る「Talkin' 'Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To Live Forever)」はギターノイズが楽曲を埋め尽くす、まさにシューゲイザー系直系の楽曲からスタート。初期の作品に関しては、まさにそんなシューゲイザー系からの影響を受けたような楽曲が並んでいます。

ただそんな雰囲気が徐々に変わってくるのが「Brainville」あたりから。サイケな作風のアレンジにはなっているものの、アコギに鈴の音色も鳴り響く明るい雰囲気のポップテイストの強い楽曲で、ビートルズからの影響も強く感じる本作は、初期のギターロック路線からの新たな方向性を感じさせる曲調となっています。

その後もソウルのテイストを加えてきた「Riding To Work In The Year 2025」、アコースティックなテイストながらもリズムは打ち込みというアンバランスさがユニークな「Yoshimi Battles The Pink Robots Pt.1」、ビートルズ直系のポップな作風が耳を惹く「The Yeah Yeah Yeah Song」、60年代テイストを感じるちょっとレトロな雰囲気の「Silver Trembling Hands」、さらに最近の曲では「Always There In Our Hearts」「How??」のようにエレクトロなサウンドも取り入れています。

3枚目のレア音源でもこのバラエティー性は顕著。「Jets (Cupid's Kiss Vs The Psyche Of Death)」はブルージーなギターを聴かせてくれますし、「If I Only Had A Brain」のようなまるでキッズソングのような曲も。さらにラストは「Silent Night / Lord, Can You Hear Me」(「きよしこの夜」ですね)という日本人にもおなじみのクリスマスソングで締めくくるという展開もユニークです。

ただそんなバラエティーあふれる作風が特徴な彼らですが、基本的にはどの曲もエフェクトをかけまくったサウンドでサイケな雰囲気を醸し出しつつ、メロディーは非常にキュートでポップで耳を惹くというのが共通項。このサイケだけどとてもポップという方向性は「Frogs」など初期の作品でも既に確立されており、例えば「Waitin’ For A Superman (Is It Getting Heavy?)」「Do You Realize??」など美しいメロディーラインがとにかく魅力的という曲がこのアルバムの中でも多く収録されています。

このバラエティー富んだ作風とポップでキュートなメロディーラインという大きな要素のため、今回のアルバム、4時間近くにも及ぶボリューミーな内容ながらも最後までほとんどだれることなく、一気に聴ききれてしまう内容になっていました。そのサイケでドリーミーなサウンドにキュートなメロディーという実に甘美的な雰囲気を味わえるアルバムで、しっかりとThe Flaming Lipsの魅力が伝わってきたベストアルバムだったと思います。

The Flaming Lipsといえばゴム製の骸骨にUSBをつけてEPとしてリリースしたり、さらには本物の骸骨の中に24時間にも及ぶ楽曲をおさめてリリースしたりと、特に最近では奇抜な行動が目立つバンドなだけに、少々とっかかりずらいという印象を受ける方もいるかもしれません。実際、グラミー賞を受賞した「Yoshimi Battles the Pink Robots」やその後のオリジナルアルバムではそれなりのヒットを記録したものの、アメリカビルボードでベスト10入りしているオリジナルアルバムは2009年の「Embryonic」のみと、どちらかというとやはり「音楽ファン受けが強いバンド」という印象も否めません。ただこのベスト盤を聴けば、確かに癖の強さがある部分もありますが、決して聴きにくいバンドではなく、むしろポップなメロディーラインは幅広い層でもアピールできる魅力のあるバンドであることに気が付くのではないでしょうか。さすがに3枚組3時間40分強というボリュームは彼らへの入り口としては少々お勧めしにくい部分もあるのですが・・・興味があればぜひともチェックしてほしい、そんなベスト盤です。

評価:★★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody

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2018年7月10日 (火)

内省的な作風が印象的

Title:Ye
Musician:Kanye West

今、いろいろな意味でアメリカを最も騒がしているミュージシャン、Kanye West。先日もアメリカのトランプ大統領を支持するツイートを行い、賛否両論入り混じる大きな話題となりました。日本でも先日、RADWIMPSの「HINOMARU」をめぐる騒動があったばかりですが、カニエがトランプ支持という投稿をするのを日本で考えれば宇多田ヒカルとかミスチルの桜井とかB'zの稲葉とかそのレベルのミュージシャンが「安倍総理支持」とツイートしたと仮定すれば、確かに賛否入り混じる騒動になりそうな感じも・・・。もっとも彼の場合、アメリカにおける黒人差別という歴史と差別的な発言すら行うトランプ大統領という背景があるだけに、余計にその発言が反響を生み出しているのでしょうが。

そんな騒動の渦中にリリースされたのが今回のニューアルバム。カニエのアルバムといえば、以前、CDではアルバムを発表しないと表明したり、前作「The Life Of Pablo」では当初、自らが共同オーナーをつとめるストリーミングサービスTIDALのみで発表したりとこちらもいろいろな意味で世間を騒がしてきました。そして今回の作品はわずか7曲入り23分というミニアルバムのようなアルバム。今回も配信先行でのリリースとなりましたが、ただCDでのリリースも予定されているようです。

まず今回のアルバムで大きな特徴的なのは、アルバム全体として非常に内省的な内容になっているという点でした。まず冒頭を飾る「I Thought I About Killing You」からして、ストリングス主導のちょっと悲し気なトラックに、ラップはどちらかというとポエトリーリーディング的なもの。さらに今回、この曲のラストに自ら双極性障害であるという告白が大きな衝撃を与えています。

さらにこの曲をはじめ、全体的に美しいメロディーラインが耳を惹く曲が多く、例えば「Wouldn't Leave」も美しいボーカルトラックが強い印象に。この曲は妻のキムへの愛情を歌ったナンバーだそうで、そんな歌詞を反映するかのような実に美しい曲に仕上がっています。「Ghost Town」もメロディアスな歌が中心となった歌モノ。分厚くノイジーなトラックも耳に残るダイナミックなナンバーに仕上がっています。

ラストを飾る「Violet Crimes」は暴力的な犯罪というタイトルとは裏腹に、自分の娘2人に対する愛情を歌ったナンバー。こちらもピアノを中心とした美しいトラックに歌うようなラップに女性ボーカルによる歌も印象に残ります。いろいろと騒動を起こしているカニエ・ウェストもいっちょ前にパパさんなんだなぁ、ということでほほえましくすら感じてしまいます。

そんな訳で、歌詞自体も非常に内省的にまとめあげられており、メロディーやトラックもそれに合わせるようにメロディアスな雰囲気にまとまっている今回のアルバム。衝撃的な告白はあるものの、全体的に等身大の人間としてのカニエ・ウェストを描いており、受け止めやすい内容になっていたと思います。また全体的にメロディアスでポップな内容にまとまっていたため、HIP HOPリスナー以外にとっても十分楽しめる、いい意味で「ポップ」なアルバムになっていたと思います。23分という短さもいい意味で聴きやすい内容に仕上がっていた作品。良くも悪くも話題に上る彼ですが・・・やはりミュージシャンとしては一流であることを感じることが出来た傑作でした。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS
The Life Of Pablo

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2018年7月 8日 (日)

J-POPリスナー層にも訴求しそうなポップス

Title:Love Is Dead
Musician:CHVRCHES

かわいらしい女性ボーカルと軽快なポップソングが魅力的で本国イギリスやスコットランドでも高い人気を誇る女性ボーカル+男性2名という3ピースバンドCHVRCHES(チャーチズ)。前作から約2年8ヶ月。待望の3rdアルバムがリリースされました。

彼女たちの音楽の大きな特徴はメロディーが非常にわかりやすく軽快な、どこか80年代も彷彿とさせるシンセポップと、かわいらしい女性ボーカル。基本的に1枚目も2枚目も、そんな彼女たちの特徴をそのまま生かした素直なポップソングが並んでいましたが、3作目となる本作もそんな彼女たちの基本路線をきちんと踏襲した、実に彼女たちらしいポップソングが並んでいました。

また彼女たちの楽曲は、洋楽としては珍しくわかりやすいサビを持ったJ-POP的な構造の曲が多く見受けられるのも特徴的。本作でいえば1曲目「Graffiti」もわかりやすくインパクトあるサビを持っていますし、「Graves」などはまさしくテンポよいリズムとサビにむかって盛り上がっていき、わかりやすいサビが展開する楽曲構造などはまさしくJ-POP的。ここらへん、かわいらしい女性ボーカルとあわさって、普段、洋楽を聴かないようなリスナー層にも訴求しやすいポップスだと思っています。そういう意味ではもっと日本でも売れてもいいタイプのミュージシャンだと思っているのですが・・・。

また「Heaven/Hell」やある種のスケール感を感じるラストソングの「Wonderland」のシンセサウンドなど、80年代の匂いを感じるシンセの使い方にどこかノスタルジックな雰囲気も感じます。ここらへんも彼女たちの音楽がいい意味で聴きやすさを感じさせる大きな要因でしょう。

今回のアルバムでちょっと異色的だったのが「My Enemy」でThe Nationalのマット・バーニンガーが参加していること。マットのボーカルが渋さを感じさせるナンバーになっており、アルバムの中でもひとつのインパクトとなっています。また「God's Plan」でもいつものように男性ボーカル曲を入れてきて、アルバムの中でのバリエーションを持たせています。この曲はよりエレクトロ色が強く、ダンサナブルなテクノ風のナンバーに仕上げており、ここらへんのバリエーションの持たせ方もいつも通りといった感じでした。

そんな訳でアルバムの内容としては1枚目、2枚目と大きな変化はありません。ただ、彼女たちみたいな軽快なポップソングが魅力的なミュージシャンは変にスタイルを変えてくるよりも、本作のようにあくまでもポップであることを追及したアルバムの方が良いのかもしれません。実際、3作目となる本作でもメロディーのポップスさもあり、マンネリな雰囲気を全く感じることなく魅力的なポップアルバムに仕上がっていました。上にも書いた通り、J-POPリスナー層でも違和感なく楽しめるポップスだと思うだけに、普段洋楽を聴かないような方も、是非ともチェックしてみてほしいのですが・・・。日本でももっともっと人気が高まってほしいなぁ。

評価:★★★★★

Chvrches 過去の作品
The Bones Of What You Believe
Every Open Eye

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2018年7月 1日 (日)

大充実のブルースボックス盤

Title:DOWN HOME BLUES-CHICAGO

今日、紹介するのは豪華5枚組のブルースのボックス盤。Winnerworldというイギリスのレコード会社からリリースされたコンピレーションアルバムで、「BLUES&SOUL RECORDS」誌に大きく紹介されており興味を持ち、5枚組ながらも5千円弱という安さもあり、思い切って買ってしまいました。

タイトル通り、1940年代、50年のシカゴブルースを収録したコンピレーションアルバムなのですが、まずそのボリューム感がすごい。全5枚組のCDに収録されているのは41ミュージシャン134曲。レーベルもRCAビクターやコロンビア、チェスといった有名どころから新興のインディーレーベルまでレコード会社の垣根を越えてそろえてあります。また曲順もおおむね録音年代順になっており、コンピレーションを聴きすすめていく中でシカゴブルースの流れを知ることが出来ます。

またこのコンピアルバムではMuddy WatersやHowlin' Wolf、Little WalterにElmore Jamesなどなどの有名どころはきちんと抑えられており、そういう意味ではブルース初心者層にもアピールできる一方で、80曲以上がシングルとして発売されなかった曲やシングルの別テイク。Muddy WatersやHowlin' Wolfなどのメジャー勢に関しても著名なヒット曲はあえて入れていなかったりと、なにげに選曲に関してはマニアックな部分も多く、マニア層へのアピールも十分。そういう意味では実にバランスの取れた選曲と言えるかもしれません。

さてこの134曲という大ボリュームのアルバムをお腹いっぱいになりながら聴き進めていったのですが、一言で「シカゴブルース」といってもそのバリエーションの広さをまず感じました。いかにもブルースらしい聴かせるナンバーがあるかと思えば、スウィング風の曲やムーディーなナンバー、軽快なブギウギやロックンロール風の曲、ダンサナブルなナンバーやインストチューンなど様々。シカゴブルースの世界の懐の深さを感じます。

このコンピではブルース好きなら誰もが知っているようなミュージシャンから知る人ぞ知る的なミュージシャンまで様々揃っているのですが、当たり前かもしれませんが著名なミュージシャンは聴いていてすぐわかる強い個性を持っていることをあらためて感じました。Howlin' Wolfの独特のだみ声やElmore Jamesの強烈なギターサウンドはいわずもがな、Muddy Watersのボーカルってあんな色っぽかったんだ、とあらためて認識させられたり、Little Waterの個性的なハープの音色にあらためて気が付かされたり、様々な曲の中と並べて聴くからこそあらためてわかるような発見も少なくありませんでした。

また、そんなメジャーどころ以外で個人的に印象に残ったのが、Disc3に収録されているBlue Smittyの「Crying」。独特のトレモロ奏法が強い印象を残します。また、同じDisc3のHomesick Jamesというユニークな名前のシンガーによる「Homesick」も印象的。かなりパワフルなボーカルが印象に残りますし、軽快なピアノとノイジーなギターの演奏も楽しげで印象に残ります。ちなみにかのElmore Jamesの従兄弟だそうです。

さらに本作、CDの内容もすごいのですが、同封のブックレットもすごい!88ページにも及ぶ読み応えのある内容なのですが、ミュージシャンの紹介がギッシリ。さらに収録曲のセッションミュージシャンに関する情報も記載されており、リスナーにとっては非常にありがたい内容に。さらに当時の貴重な写真も数多く載っており、CDを読みながらこのブックレットを読むだけでブルースファンにとっては至福の時間が訪れること間違いなしです!(あ、ちなみに輸入盤オンリーなので英語のみです・・・念のため)

そんな満足度100%の非常に充実したコンピレーションアルバム。ブルースが好きならとりあえずは聴いてみて損のないアルバムだと思います。非常に幸せな時間が味わえるボックス盤でした。

評価:★★★★★

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2018年6月30日 (土)

様々なサウンドを取り入れて

Title:Knock Knock
Musician:DJ Koze

ドイツ/ハンブルグを拠点とするDJ/プロデューサーのDJ Kozeが約5年ぶりにリリースしたニューアルバム。前作「Amygdala」は2013年のミュージックマガジン誌ハウス/テクノ/ブレイクビーツ部門の年間ベストアルバムに選出されていたため聴いてみて、その内容を一気に気に入ったのですが、今回5年ぶりとなるアルバムの評価も上々のようで、再び彼のアルバムを聴いてみました。

その前作「Amygdala」は聴いていて心地よくなるようなポップなサウンドといろいろなジャンルを取り合わせたようなごった煮的な楽曲が魅力的でした。今回のアルバムに関してもまた、様々なジャンルを取り入れたようなごった煮的な方向性が大きな魅力になっていました。

例えば「Music on My Teeth」はレトロな雰囲気のポップチューンが大きな魅力となっていますし、「This Is My Rock」は(タイトルに反して)ネチッとした雰囲気のソウルナンバーに仕上がっています。「Pick Up」はリズミカルなミニマルハウスのナンバーになっていますし、Lambchopのフロントマン、Kurt Wagnerを迎えた「Muddy Funster」はドリーミーなななーに仕上げられています。

全体的にはちょっと懐かしい雰囲気もある「Illumination」「Scratch That」のようなソウルなナンバーが目立ったような感じが。今回はほかにもArrested DevelopmentのラッパーであるSpeechやRóisín Murphyなどのゲストシンガー勢も豊富で、歌モノも目立つため、アルバム全体としてはポップという印象も強く受けました。

ただ一方で、インストチューンの「Club der Ewigkeiten」「Bonfire」などは、テクノチューンらしいリズミカルなエレクトロサウンドを入れつつも、様々な音を楽曲の中に取り入れて複雑に展開していきます。

歌モノの楽曲に関しても基本的には楽曲イメージに沿ったサウンドを繰り広げつつも1曲1曲個性的なサウンドを繰り広げており、リスナーを飽きさせません。例えば「Planet Hase」はタイトル通り、どこかスペーシーなサウンドが心地よさを感じますし、最後の「Drone Me Up,Flashy」では女性ボーカルをサンプリングしてコーラスとして用い、神秘的なサウンドを作り上げています。

バラエティー豊富なサウンドなだけに一言で語るのが難しいアルバムでしたが、それだけに聴き飽きないサウンドの奥深さも感じるアルバムに仕上がっていました。前作に引き続き傑作のアルバム。前作同様、聴いていてとても心地よくなれる作品でした。

評価:★★★★★

DJ Koze 過去の作品
Amygdala

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2018年6月29日 (金)

シンプルなタイトルの7枚目

Title:7
Musician:Beach House

毎作、アルバムが大きな話題となるアメリカのインディーロックバンドのニューアルバム。前作「Thank Your Lucky Stars」は前々作「Depression Cherry」からわずか2ヶ月のインターバルでのリリースとなりましたが、本作は前作から約2年半ぶりの新作となりちょっと久々の新譜となります。とはいえ、昨今アルバムリリースにもっと長い時間をかけるバンドはざらにいるので、決して特別長いスパンでのリリース、といった感じではありませんが。

さて今回のアルバム、「7」というタイトルは純粋に彼らにとって7枚目のアルバムだから、という意味。非常にシンプルなタイトルのつけ方ですが、アルバムの内容自体もBeach Houseらしさを素直に表現した、シンプルに彼ららしい、と言えるアルバムに仕上がっていました。

Beach Houseの最大の魅力といえばノイジーなギターがとても心地よい夢のようなポップミュージック。ここにボーカル、ヴィクトリア・ルグランのウィスパー気味のボーカルがのり、とても心地よい世界を作り出しています。今回のアルバムでも1曲目「Dark Spring」から、ヴィクトリアともう1人のメンバー、アレックス・スカリーのツインボーカルによる、非常のドリーミーなポップソングからスタート。リスナーを夢の世界へと連れ込んでくれます。

続く「Pay No Mind」はへヴィーなノイズが流れ、さらに「Lemon Glow」はドリーミーながらももっとサイケ色の強いサウンドが特徴的ながらも、どちらもヴィクトリアによるメロディアスな歌がしっかりと流れており、いい意味で聴きやすい内容に。そして「L'lnconnue」はどこかおごそかで神秘的な雰囲気が魅力的なナンバーに。Enya・・・とまではいきませんが、教会音楽的な雰囲気が一種独特なナンバーに仕上がっています。

その後も「Drunk In LA」「Woo」のようにメロディーがとにかく美しいナンバーが流れてきたり、「Black Car」のようにエレクトロ色の強いナンバーがあったりとそれなりにバラエティーを持たせつつアルバムは展開していきますが、基本的にノイジーなギターやシンセを取り入れた分厚いサウンドで聴かせるドリームポップが並びます。どの曲も、ヴィクトリアのウィスパー気味なボーカルで、幻想的な雰囲気と同時に、どこか神秘的な雰囲気すら感じるポップソングが大きな魅力。最初から最後までそのドリーミーな世界が展開されるアルバムになっていました。

最初から最後まで終始サウンドの気持ちよさに酔いしれる傑作アルバム。シンプルなタイトルのアルバムだからこそ、非常にシンプルにBeach Houseの魅力を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

Beach House 過去の作品
Bloom
Depression Cherry
Thank Your Lucky Stars

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2018年6月25日 (月)

ポップなメロディーがより印象的に

Title:Tell Me How You Really Feel
Musician:Courtney Barnett

デビューアルバムである前作「Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit」が話題となり、グラミー賞の最優秀新人賞にもノミネートされたオーストラリアの女性シンガーソングライター、コートニー・バーネット。昨年はKurt Vileとのコラボアルバムをリリースしましたが、純然たるソロ名義のアルバムとしては話題となったデビューアルバム以降、約3年2ヶ月ぶりとなる待望のニューアルバムがリリースされました。

彼女の特徴はSONIC YOUTHやPIXIESあたりを彷彿とさせる80年代のローファイ気味なインディーギターロック。ノイジーなギターが淡々と鳴り響くダウナーなサウンドが癖になるのですが、メロディーラインがポップなのも魅力的(まあ、これは80年代のインディーギターロックにも共通する部分ですが)。こういってしまうと若干「偏見」が入っているかもしれませんが、ポップなメロディーラインにはどこかキュートさも加わっており、女性らしい可愛らしさも感じます。

今回のアルバムに関しても基本的にそんな前作の特徴を踏襲したアルバム。全10曲、ノイジーなギターサウンドが鳴り響き、基本的には前作からの大きな違いはありません。アルバムは最初「Hopefulessness」で非常に静かな雰囲気の中からスタート。そして続く「City Looks Pretty」はポップなメロディーラインがとても心地よいナンバー。ポップなメロの中に加わる歪んだギターサウンドがいかにもな感じですが、これがとても心地よく感じます。

「Charity」はギターのイントロがいかにもインディーギターロックらしくてちょっとうれしくなってきますし、「Need a Little Time」は一転、しんみりしたメロディーラインが魅力的な曲に仕上がっています。

その後も比較的ポップな曲調が目立つ楽曲が多いのも特徴的で、軽快なメロディーラインの「Nameless, Faceless」「Crippling Self-Doubt and a General Lack of Confidence」や、ミディアムテンポのナンバーで歌をしっかりと聴かせる「Walkin' on Eggshells」やラストを締める「Sunday Roast」など、ローファイ気味なサウンドは変わらずながらも、前作よりも歌やメロディーの輪郭がはっきりしたポップチューンが多かったように思いました。

一方、ロック的な観点からかっこよかったのが「I'm Not Your Mother, I'm Not Your Bitch」。なんかタイトルからしてなにを歌いたいのかすぐわかるような内容なのですが(^^;;ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドにシャウト気味なボーカルでいかにもロッキンな楽曲。ロックミュージシャンとしてのかっこよさを強く感じるナンバーになっています。

全10曲入り37分という短さも大きな魅力で、似たようなタイプの曲が多いものの、そんなことを気にせずに最後まで一気に聴けてしまう勢いのあるアルバムでした。前作同様の傑作アルバムにすっかりはまってしまった1枚。ちなみにクレジットを見て気がついたんですが、ギターとバックボーカルに元PIXIESのキム・ディール姉御が参加されているんですね。確かに、キム・ディールに通じるところが大きそうですからねぇ。うれしい驚きです。

2枚目にして彼女が話題となったデビュー作の一発屋ではなく、実力あるミュージシャンだということを確信できた傑作アルバム。イギリスのアルバムチャートでは見事ベスト10入りを記録しており、人気上昇中であることが実感できます。これからの活躍も楽しみ。ギターロック好きはマストな1枚です。

評価:★★★★★

Courtney Barnett 過去の作品
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit
Lotta Sea Lice(Courtney Barnett&Kurt Vile)

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2018年6月23日 (土)

作風をガラリと変えた問題作

Title:Tranquility Base Hotel & Casin
Musician:Arctic Monkeys

よくアルバムの中には発売当初賛否両論となる「問題作」というものが少なくありません。古くはThe Beach Boysの「Pet Sounds」なんかがそんなアルバムでしたし、The Rolling Stonesの「Their Satanic Majesties Request」などもそんなアルバムのひとつでしょうか。前作から作風がガラッと変わってしまったアルバムは、時として「問題作」となり、良くも悪くも大きな話題となります。

約4年8か月ぶりとなるArctic Monkeysのニューアルバムである本作は、まさしくそんな問題作と言える作品でした。まず1曲目「Star Treatment」からして、まずムーディーに歌い上げるAlex Turnerのボーカルが目立つナンバー。Arctic Monkeysといえばガレージロック色の強いバンドですが、この曲調はロックというよりもむしろオールドスタイルなムード歌謡曲に近い雰囲気となっていました。

その後も彼ららしいゴリゴリのギターサウンドを求めて聴き進めていくのですが、続く「One Point Perspective」も同じようなムーディーな作品。さらに続く「American Sports」では美しいピアノの調べがムーディーな雰囲気をかきたてる、ライブハウスというよりはコンサートホールや、ホテルのディナーショーで歌われそうな、そんな雰囲気の楽曲になっています。

「Golden Trunks」「Science Fiction」あたりでようやくノイジーなギターも入ってくるのですが、ムーディーな曲調でサウンドよりも歌を聴かせるというスタイルは最後まで変わらず。正直言って、最初はかなりこのアルバムの作風には戸惑ってしまいました。

ただ、よくよく聴いていくと、この歌は実に心に響いてくるようなメロディーラインを持っていることに気が付かされます。特に「Golden Trunks」などハイトーンボイスで歌われる美しい歌声と美メロが印象に残りますし、ラストを飾る「The Ultracheese」はちょっと切ない雰囲気のメロディーが実に絶品。将来的にスタンダードナンバーになる可能性を秘めた、インパクトある名曲に仕上がっていたと思います。

サウンドに関しては正直言って、エッジの効いたバンドサウンドを聴かせるわけではありません。ただ、ボーカルとのバランスにおいてほどよいバランスをもって歌を引き立たせています。「She Looks Like Fun」などは、このアルバムとしては珍しくヘヴィーなバンドサウンドを聴かせるナンバーなのですが、こちらにしてもボーカル部分をしっかり引き立てており、かつピアノパートとの絡みも絶妙。そういう意味ではアレンジに関してよく練られているものを感じます。

正直言って好みのわかれる、まさに賛否両論となるアルバムだったと思います。ただ、よくよく考えると前作「AM」もヘヴィーなギターリフをゴリゴリと前に押し出したナンバーだったものの、哀愁感あるメロディーが目立つ、実に「渋い」アルバムでした。そう考えると、基本的に本作は前作の延長線上にあるアルバムともいえるかもしれません。

この方向が今後どうなるかわかりませんし、個人的にも次回作はゴリゴリのギターロックを聴きたいな、という印象も受けます。ただこのアルバムに関してはArctic Monkeysの新たな可能性を感じる傑作アルバムだったと思います。特にメロディーの側面で彼らの魅力を最大限に引き出したアルバムに仕上がっていたと思います。最初は違和感を覚えるかもしれませんが・・・是非何度か聴いてメロディーの良さを味わってほしい、そう思う新作でした。

評価:★★★★★

ARCTIC MONKEYS 過去の作品
Humbug
SUCK IT AND SEE
AM

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2018年6月17日 (日)

oasisフォロワーによる2枚目

Title:FOR NOW
Musician:DMA'S

これが2枚目のアルバムとなるオーストラリアはシドニー出身の3人組バンド。デビューアルバム「Hills End」が一部で大きな話題となりました。その話題となった最大の理由は、あまりにもわかりやすいoasisフォロワーだったから。デビューアルバムではoasisの1st、2ndあたりをストレートに彷彿とさせるようなギターロックの曲が並んでおり、oasis好きにとっては非常に壺にはまるようなアルバムになっていました。

このoasis愛は2枚目となる本作でも強く感じられます。1曲目のタイトルチューン「For Now」からしてサイケでグルーヴィーな雰囲気はまさにoasisらしいUKギターロック・・・・・・というよりもoasisのルーツのひとつであるSTONE ROSESっぽいかも?

その後の「Do I Need You Now?」「Break Me」のようなノイジーでグルーヴィーなギターロックにちょっとダウナー気味だけれどもわかりやすいポップなメロが重なるスタイルもある意味oasisらしい感じ。oasisらしさはアルバムの随所に感じられます。

ただ、前作で感じられたoasisとの相違点が今回のアルバムではより強くなってきたようにも感じます。それはoasisに比べてより軽くポップであるという点。例えば「In The Air」はアコースティックなギターで切ないメロディーを爽やかに聴かせるナンバー。oasisというよりもむしろTRAVISあたりっぽい雰囲気を感じさせますし、「Warsaw」「Lazy Love」も軽快なギターポップナンバーとなっており、oasisとはその方向性が異なります。

歌い方も前作同様、リアム・ギャラガーからの影響を強く感じさせるものの、ポップになった作風のせいか、もうちょっと素直な歌い方の曲も増え、前作ほどは「まんまリアム」な印象が薄れた感じもします。そういった意味でアルバム全体としてはoasis色が薄くなり、DMA'Sとしての色が出せれたアルバムになっていたようにも思います。

とはいえ、上にもSTONE ROSESやTRAVISといったバンドをイメージとして出したように、全体的にはイギリスのオルタナ系ギターロックからの影響を強く受けたメロディーラインとサウンドという点は共通。そういう意味ではoasisが好きな方ならばおそらく気に入るであろう範疇の音を出しているアルバムだったと思います。実際私も、前作同様にすっかりこのアルバムにはまってしまいました。

全体的にはサイケなサウンドの方向性もあったものの、さっぱりとした味付けがされており、oasis的なものをあまりに求めすぎるとちょっと薄味に感じられるかもしれません。ただ、そういった点を含めて前作よりもDMA'Sらしさは出せていたアルバムだったように思います。いい意味で難しいこと抜きにポップな路線を貫いていた点は大きなプラス。これからの活躍がまだまだ非常に楽しみなバンドです。

評価:★★★★★

DMA'S 過去の作品
Hills End

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2018年6月12日 (火)

とにかくポップで楽しい作品

Title:Dirty Computer
Musican:Janelle Monae

前作「The Electric Lady」が大きな話題となり各種メディアでも高い評価を受けたR&Bシンガー、ジャネール・モネイ。その後、映画「ムーンライド」や「ドリーム」などにも出演し、女優としても活躍をはじめた彼女。まさに今、もっとも勢いのある女性シンガーの一人といえる彼女ですが、そんな彼女の実に4年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

その話題となった前作「The Electric Lady」は全体的に80年代風のポップが並ぶ中、ディスコやアーバンソウル、R&BやHIP HOPなど、様々なジャンルを取り入れた楽曲が並ぶのが非常に魅力的なアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムでも比較的80年代の空気を感じられるエレクトロポップチューンが大きな魅力になっています。軽快でリズミカルなエレクトロポップチューンの「Take A Byte」やGrimesを迎えた「Pynk」はテクノテイストも強いエレクトロナンバー。「Make Me Feel」はファンキーなナンバーながらもどこかユーモラスなエレクトロアレンジが楽しいナンバーになっていますし、トライバルなリズムが印象的な「I Got The Juice」も魅力的です。

ちょっと雰囲気の変わったところではHIP HOPテイストにまとめた「Django Jane」なんて曲もあったり、またメロウなバラードチューン「Don't Judge Me」ではボーカリストとしての魅力を甘い歌声でこれでもかというほど聴かせてくれています。

そしてラストを飾る「Americans」は、80年代にMTVにPVがそのまま流れていても違和感のないような楽しいポップチューン。非常にハッピーな気分となりアルバムは幕を閉じます。

全体的なバリエーションとしては正直、前作の方が広かったような印象を受けました。ただ一方、全体的に前作以上にポップにまとめっており、純粋にワクワクするような楽しさを持った作品に。特に、そのポピュラリティーはどこかキュートな部分があわさっており、そういう意味でもアルバム全体としてかわいらしさを感じさせるアルバムに仕上がっていたと思います。

R&Bというジャンルにこだわらずとても楽しいアルバムで、ポップス好きならおそらく一発で楽しめるアルバムになっていたと思います。シンガーとしても女優としても積極的な活躍が目立つ彼女。これからのさらなる飛躍が楽しみになってくる1枚です。

評価:★★★★★

Janelle Monae 過去の作品
The Electric Lady


ほかに聴いたアルバム

World Wide Funk/Bootsy Collins

60年代から活躍を続けるP・ファンクの代表的なベーシスト、Bootsy Collins。御年66歳にしていまだに積極的な活動を続けていますが、今回の新作も「World Wide Funk」とある意味、あまりにひねりのないタイトルが逆にユニークさすら感じてしまいます。

サウンド的には今風のHIP HOP的な要素を入れつつも、基本的には昔から変わらないP・ファンクのスタイル。そういう意味では目新しさはない反面、純粋にファンキーなリズムを楽しむことが出来るアルバムに。とにかくファンクを聴いたという満足感を覚えるアルバムでした。

評価:★★★★

Bootsy Collins 過去の作品
THA FUNK CAPITAL OF THE WORLD

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