アルバムレビュー(洋楽)2018年

2018年9月17日 (月)

前々作、前作も大きな話題に

Title:Ordinary Corrupt Human Love
Musician:Deafheaven

今回紹介するアルバムはDeafheavenというアメリカの5人組バンド。彼らのアルバムを聴くのは本作がはじめてなのですが、前々作「Sunbather」も前作「New Bermuda」も海外では高い評価を得たとか。もともとこのアルバムを聴いたはPitchfolkで「BEST NEW ALBUM」の評価を得たことがきっかけだったのですが、それ以上に興味を引いたのは彼らの音楽のスタイル。ジャンル的にはブラックメタルにカテゴライズされるとか。ただ単純なメタルバンドではなく、シューゲイザーやポストロックなどの影響の強い「ポストメタル」というジャンルにカテゴライズされるバンドのようです。

確かにこのアルバムも、1曲目「You Without End」は静かなピアノの音からスタートします。中盤あたりもバンドサウンドが徐々に加わっていくのですが、メロディアスなフレーズが印象的。ただ中盤、バックにいきなり金切り声が鳴り響き、ブラックメタルらしさがあらわれてきます。

続く2曲目「Honeycomb」はブラックメタルの特徴らしい、トレモロリフと金切り声がいきなり鳴り響きますので、そういう意味ではブラックメタルらしいサウンドと言えるかもしれません。ただ、こちらもそんなヘヴィーなサウンドをバックにダイナミックながらもメロディアスなギターが鳴り響いており、いい意味で聴きやすく、なおかつ重層的なサウンドが楽曲に深みを与えています。

基本的に非常にメランコリックなギターサウンドがメロディアスに鳴り響く中、分厚くダイナミックなバンドサウンドが複雑に展開する構成が特徴的。途中、ブラックメタルらしい金切り声が登場し、メタルらしいへヴィネスさを楽曲に加えています。7曲入りのアルバムながらも、うち4曲が10分以上の曲となっており、その長さの中でサウンドが徐々に展開していくのも大きな魅力となっています。

シューゲイザーからの影響も強いということですが、楽曲のタイプ的にはMOGWAIやGodspeed You! Black Emperorに近いイメージがあります。ブラックメタル好きの壺にももちろんはまりそうなバンドかもしれませんが、それ以上にギターサウンドが主体のポストロックが好きな方にははまりそうなバンドのように感じました。

彼らの曲はメロディーラインも美しく、特に「Night People」ではアメリカでゴシック・ロックを奏でる女性ミュージシャン、チェルシー・ウルフをゲストとして迎えているのですが、こちらはメタル色の薄いポップチューン。ただ男女デゥオの歌のメロディーが美しく、非常に心を打ちます。ラストの「Worthless Animal」も10分という長尺の曲で、ダイナミックなバンドサウンドと金切り声が終始展開されるへヴィーな曲なのですが、どこか郷愁感のあるフレーズが楽曲全体を通じて流れており、心に響いてくる曲になっていました。

今回はじめて聴いた彼らのアルバム。「ブラックメタル」ということで最初は構えたのですが、結果的にはその美しいフレーズとへヴィーなバンドサウンドにすっかりはまってしまいました。申し分ない傑作アルバム。日本ではさほど知名度が高くないように感じるのですが・・・ポストロックが好きならかなりはまりそうな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Collagically Speaking/R+R=NOW

2度のグラミー賞を受賞し、今、最も注目されるジャズピアニスト、ロバート・クラスパーと同じくケンドリック・ラマーにも重用され大きな話題となったプロデューサーでありサックス奏者でもあるテラス・マーティンというジャズシーンで最も注目を集める2人を中心としたバンド、R+R=NOW。全体的にはメロウなメロディーラインがまず耳に残るポップなナンバーが多く収録されています。ジャズのアルバムながらもソウル、HIP HOPの要素も取り入れており、自由度も高いサウンドも魅力的。ただ全体的にはポップでおとなしくまとまってしまっているような印象も。

評価:★★★★

I'm All Ears/Let's Eat Grandma

「おばあちゃんを食べちゃおう!」とはかなり刺激的な名前のつけられたミュージシャンですが、10代の女の子2人によるイギリスのエレクトロポップデュオ。今年のフジロックにも出演するなど、徐々に話題を集めています。基本的には軽快なシンセの音をバックとしたガールズポップがメインなのですが、終盤には9分にも及ぶ「Cool&Collected」や11分にも及ぶ「Donnie Darko」といった曲も展開。いずれも楽曲が進むにつれ複雑に展開していき、ダイナミックで分厚いサウンドやサイケ風のサウンドなども飛び出すなど、単純なエレクトロポップに留まらない一面を楽しめます。一度その名前を聞いたら忘れられなさそうなユニットですが、これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年9月15日 (土)

HIP HOPリスナーに限定しない「聴きやすさ」を感じる傑作

Title:?
Musician:XXXTENTACION

今年6月、フロリダ州南部のディアフィールド・ビーチにて強盗に襲われ、わずか20歳という若さで不遇の死を遂げたラッパー、XXXTENTACION。デビューアルバム「17」はいきなり全米チャート2位を記録。かのケンドリック・ラマーもTwitter上で絶賛するなど大きな話題となり、今年3月にリリースされた同作はビルボードチャートでついに1位を記録するなど、さらに大きくブレイク。さあこれから、という矢先の突然の死はシーンに大きな衝撃を与えました。

ただ残念ながら日本においてはさほど知名度も高くなく、ネット上にあるXXXTENTACIONに関する記事もほとんどが強盗事件を受けてかかれたものばかり。もっともかく言う私も今回の事件を受けて話題となりはじめて彼のことを知っただけに偉そうなことは言えませんが(^^;;どちからというとその話題性から聴いてみたアルバムだったので正直大きな期待はしていなかったのですが、聴いてみるとこれが予想外に「聴きやすい」素晴らしい傑作アルバムになっていました。

まずアルバム全体を貫く大きな特徴としては憂いを帯びた作風の曲が多いという点があげられます。もともと彼のラップには孤独感や厭世観を表現した作品が多いらしく、それがサウンドにも強く反映しています。残念ながらラップの内容自体については詳しくはわからないのですが、そんな方向性は歌詞の世界が詳しくわからなくても、そのサウンドから確実に伝わってくるようです。そして、非英語圏のリスナーにとってもサウンドからしっかりとその主張が伝わってくるという点が、アルバムの聴きやすさのひとつの要因になっているように感じます。

また、今回のアルバム、全18曲入りというボリュームながらも全体の長さはわずか38分という短さ。どの曲も1、2分程度の長さで次々と曲が展開していきます。この次から次へと展開するというアルバムの構成もまた、アルバムの聴きやすさの大きな要素となっています。

そしてジャンル的にはHIP HOPのアルバムなのですが、歌モノの曲が多く収められています。1曲目「ALONE,PART 3」からアコギの音色からスタートし哀愁感たっぷりに歌われる歌モノのナンバーからスタートしますが、続く「Moonlight」も一応はボーカルはラップ風ですし、サウンドもトラップ風ですが、そのラップはまるで歌われているかのようなメロディアスなもの。「Changes」みたいにピアノをバックにソウルフルに歌われるような完全にR&Bのナンバーなどもあったりして、アルバム全体としてラップというよりもメロディーを聴かせる曲が多いのが特徴的。そのためHIP HOPを普段聴かないような方でも聴きやすさを感じるアルバムだったように思います。

さらにサウンド的にもバリエーションを感じさせます。前述の通り、アコースティックなサウンドを取り入れていたり、今風のトラップの要素を入れていたりするのも特徴的ですが、特に特徴的なのはロックからの影響。「NUMB」などダイナミックなサウンドと哀愁感あるメロの組み合わせで、ちょっとベタさも感じるのですが、これだけ聴くと、どこかのオルタナ系バンドの曲と思われても不思議ではありません。「Pain=BESTFRIEND」もギターサウンドをメインとしたロックな歌モノでサビではシャウトまで登場。「schizophrenia」もハードコア風のナンバーとなっており、ロックリスナーにとっても聴きやすいアルバムに仕上がっていました。

そんな感じでアルバム全体としてバラエティーがあり、いい意味でHIP HOPリスナーに限定しない聴きやすさを感じるアルバム。それだけにアメリカで多くのリスナーに支持されていたのが納得感がありますし、またわずか20歳という突然の訃報はあらためて残念に感じてしまいます。残念ながら遺作となってしまった本作ですが、いまからでも是非チェックしてほしい1枚。普段HIP HOPを聴かない方でも十分お勧めできる傑作です。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年9月 3日 (月)

Odd Futureの一員だけども。

Title:Hive Mind
Musician:The Internet

ある意味、名前があまりにもそのまんまなThe Internet。Tyler,The Creator率いるHIP HOPグループOFWGKTAのメンバーであり、自らもプロデューサーとして活躍しているSyd the Kydと同じくOFWGKTAのメンバーであり、彼もまたプロデューサーとして活躍しているMatt Martiansを中心とした、現在は5人組によるバンド。彼らっまた、Tyler,The Creator率いるHIP HOP集団、Odd Futureに所属していることでも知られています。

本作はそんな彼らの約3年ぶりとなるニューアルバム。Odd Futureに所属、ということでHIP HOPのグループのように思われるかもしれまえせんが、彼らの楽曲は主に歌モノがメイン。それも女性ボーカリストでもあるシドがボーカルを取る曲が多く、メロディアスでメロウな曲が多いのが実に魅力的。「Come Over」などもちょっと気だるげにメロウに聴かせるボーカルが魅力的なのですが、特に魅力的だったのが「Stay The Night」。ウィスパー気味のボーカルが実に美しく、しんみりと聴き入ってしまう楽曲になっています。

その後も哀愁感漂う「Mood」、ハイトーンボイスで美しく聴かせる「It Gets Better(With Time)」など、実に美しくメロディアスに聴かせるナンバーが並んでいます。なにげにウイスパー気味で幻想感あるボーカルを伸びやかに美しく聴かせるシドのボーカルが魅力的。まずこのボーカルに聴き入ってしまう内容になっていました。

また、メロディーラインに関しては比較的シンプルでわかりやすいフックを利かせたフレーズが登場する曲が多く、どこか90年代っぽさを感じ、懐かしさすら感じられました。いい意味で耳馴染みのあるフレーズという印象も強く、そういう点からも最後まで楽しめる内容になっていたと思います。

もっとも一方ではタイトル通りのファンキーなグルーヴを聴かせる「Roll(Burbank Funk)」あたりが典型的なのですが、単純な90年代風な感じとも異なるグルーヴ感を覚える曲が多かったほか、例えば「Bravo」「Next Time/Humble Pie」など低音を重視した強いビート感など、HIP HOP的な要素は強く感じます。そういう意味では今時のHIP HOP的なグルーヴ感もしっかり取り入れたバンドというイメージも強く感じてました。やはりOdd Futureに所属するグループらしい、といった感じでしょうか。

基本的にいい意味で聴きやすくポップにまとまっており、ちょっと懐かしさを感じる要素と、今時を感じる要素がほどよいバランスで両立しているように感じます。特にその美しいボーカルやメロディーラインに終始聴きほれてしまうアルバム。個人的には年間ベスト候補の傑作アルバムだと感じました。HIP HOP集団の・・・というよりはむしろR&B、それも90年代あたりのものが好きなら文句なしに気に入りそうなアルバムだと思います。とにかく気持ちのよい1枚でした。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年9月 1日 (土)

前作とは対となる作品に

Title:Lamp Lit Prose
Musician:Dirty Projectors

毎回、アルバムをリリースする毎に安定した傑作をリリースし続けているDirty Projectors。セルフタイトルとなった前作の作成時には、バンドの中心メンバーであるDavid Longstrethが失恋を経験。さらにバンドメンバーほぼ全員が脱退し、事実上、デイヴィッドのソロプロジェクトとなった中でのアルバムリリースとなり、その影響かアルバム全体として憂いを感じる作品となっていました。

しかし、そこからわずか1年。今回のアルバムはある意味、前作とは対になるような作品に仕上がっていました。1曲目「Right Now」は爽やかなアコギの音色をバックに歌いあげるナンバーなのですが、途中、ホーンセッションなども入り、明るい雰囲気に。続く「Break-Thru」も明るくポップな作風になっています。このホーンセッションの導入はアルバム全体でもひとつのキーとなっており、「I Feel Energy」もホーンが鳴り響きながら軽快なパーカッションで彩られた明るくポップなナンバー。「What Is The Time」もメロウなソウルチューンにピッタリとはまるホーンセッションを聴かせる楽曲に仕上がっています。

憂いを感じ、基本的にソロプロジェクトとして進んできた前作に対して、今回のアルバムはアルバム全体として明るさを感じ、またホーンセッションの導入など、多くのメンバーが参加しての作品ということを印象づけられる内容となっています。そういう意味で前作と対になるようなアルバムと言えるのではないでしょうか。

ただ一方ではもちろん前作との類似点も少なくありません。まずは前作同様、多くのゲストが本作でも参加しています。「Right Now」ではThe InternetのSydが、「That's A Lifestyle」では女の子3人組バンドHaimが参加しているほか、「You're The One」ではFleet FoxesのRobin PecknoldにVampire WeekendのRostamが参加するなど、非常に豪華なゲスト陣が目をひきます。

また今回もデイヴィッドの書くポップなメロディーが非常に魅力的。「Blue Bird」のような切ないメロディーラインも耳を惹きますし、「You're The One」ではアコースティックなサウンドをバックにファルセット気味のボーカルで美しいメロディーラインを聴かせてくれます。またサウンド的にはアコースティックなサウンドやホーンセッションなどが入っている一方、様々な音を取り入れた打ち込みも要所要所に顔をのぞかせており、宅録的な要素も感じられます。サウンドは複雑ながらもメロディーは至ってポップという構成も以前から変わりありまえんでした。

そして前作に色濃く感じられたR&Bの方向性ですが、今回のアルバムも特に後半、R&B以上にソウルミュージックやジャズの要素を強く感じられる作風になっていました。複雑なリズムが特徴的な「I Found It In U」もそのメロディーからソウル的な要素を感じさせますし、特に続く「What Is The Time」は70年代あたりの時代を強く感じさせる正統派のソウルナンバーに。そしてアルバムを締めくくるラスト「(I Wanna)Feel It All」はジャジーな雰囲気のナンバーに仕上がっていました。

そんな訳で前作に引き続き今回のアルバムも魅力的なサウンドやメロディーが楽しめる傑作に仕上がっていたDirty Projectors。本当に毎作ハズレがありませんね。今回もポップなメロディーを楽しみつつ、サウンドの魅力にはまっていく、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Dirty Projectors 過去の作品
SWING LO MAGELLAN
Dirty Projectors


ほかに聴いたアルバム

Both Directions At Once:The Lost Album(邦題 ザ・ロスト・アルバム)/John Coltrane

1950年代から60年代にかけて活躍したジャズミュージック界の巨匠、サックスプレイヤーのジョン・コルトレーン。今年、彼の「新作」がリリースされた大きな話題となりました。このアルバム、もともと当時所属していたアメリカのインパルス・レーベルに録音の記録はあったもののマスターテープが紛失しており、いままで「謎」と言われていた音源。その音源が今回発見され、リリースに至ったそうで、未発表のライブ盤とか別バージョンの音源とかではなく、純粋な新曲も含まれる純然たる「ニューアルバム」となるそうです。

日本でも大きな注目を集めオリコンチャートでも14位とジャズのアルバムとしては好セールスを記録しています。もっとも演奏的には良くも悪くも予想通りといった演奏で、目新しいという印象はあまりありません。もっとも所々で聴かせてくれるスリリングな演奏は魅力的ですし、全体としてはいい意味でポップでメロディアス、聴きやすいという印象も受けるアルバム。なによりジャズの巨人の新作を今、聴けるという点を考慮して下の評価に。ジャズリスナーなら聴いて損は・・・・・・って、とっくに聴いてますよね(^^;;

評価:★★★★★

John Coltrane 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年8月26日 (日)

ポップな歌の後ろに独特のグルーヴ感が

Title:THE POOL
Musician:Jazzanova

「ジャズ」と「ボサノヴァ」を融合させた、ある意味かなりストレートなバンド名が印象に残るJazzanova。1995年にドイツ・ベルリンで5名のDJ、プロデューサーにより結成されたバンドで、ジャズをキーワードにエレクトロサウンドと融合させたクラブ・ミュージックが大きな話題に。特に2002年にリリースされたデビューアルバム「In Between」は大きな話題となりました。

そんな彼らは2008年にアルバム「Of All The Things」をリリースした。しかしその後は2012年にはライブアルバムをリリースしたり、シングルリリースなどで継続的な活動はあったもののアルバムのリリースはなし。しかしそんな彼らはなんと10年ぶり、待望となるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは全12曲、それぞれ別々のミュージシャンがゲストとして参加している点が大きな特徴的。アルバムを通じて方向性としてはジャジーな雰囲気の漂う現代にアップデートされたJazzanova流ソウルミュージックという作風に仕上がっています。しかし、様々なゲストの参加により、Jazzanova流ソウルといってもその非常に広い音楽性の幅に、彼らの実力を感じさせてくれるアルバムとなっていました。

例えば2曲目「Rain Makes The River」ではレイチェル・サーマンニがゲストボーカルとして参加。マイケル・キワヌーカ、エルヴィス・コステロ、ロン・セクスミスらが絶賛した今、注目のシンガーのようで、その透明感あふれるボーカルが印象的。その「歌声」にまずは魅了される楽曲となっています。ベルリンを拠点として活動しているシンガーソングライター、ノア・スリーが参加した「Sincere」は軽快なディスコチューンに。80年代的な匂いもあるナンバーで、ポップで聴きやすいナンバーに仕上げています。

イギリス出身のジャズシンガー、ジェイミー・カラムが参加した「Let's Live Well」は哀愁感たっぷりに歌い上げるバラードナンバーが胸をうちますし、エドワード・バンゼットが参加した「I'm Still Here」もフォーキーな雰囲気の漂うメロディーが印象的。ただ、この曲はフォーキーなサウンドの中にスペーシーなエレクトロサウンドを紛れ込ませており、独特なサウンド構成が耳を惹きます。

そんな感じで全編、歌モノのナンバーが多い作品になっており、いい意味で非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていました。歌モノもポップなナンバーが多く、ポップのアルバムとして聴く限り、初心者リスナーをこばみようなマニアックさは皆無。いい意味で幅広い層が聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

とはいえ、もちろん単純に歌を聴かせるだけのポップアルバムになった訳ではありません。例えばHIP HOPを取り入れた「No.9」ではミニマル的なサウンドでグルーヴィーなサウンドを心地よく聴かせてくれますし、「Heatwave」でも非常にカッコいいファンキーなサウンドを聴かせてくれます。全体的にソウルミュージックのテイストの強い独特のグルーヴ感が心地よく、サウンド面でも1曲1曲、音の感触が異なっており、バリエーション豊かなサウンド構成が楽しめるアルバムに仕上がっていました。

10年ぶり久々となるアルバムでしたが、その実力に全く衰えはなく、大満足な傑作アルバム。いわゆる「クラブ系」にカテゴライズされる彼らですが、ソウルミュージックが好きなら間違いなく気に入りそうなアルバムですし、ポップな歌モノも多いだけに幅広い層が楽しめそうなアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Essentials/Jack Johnson

日本でも高い人気を誇るサーフ・ミュージックの第一人者の日本独自企画によるベストアルバム。アコースティックなサウンドをベースとしたオーガニックな雰囲気漂うポップソングは刺激的か、と問われると正直な話、物足りなさを感じてしまうのですが、グッドミュージックという意味では文句なしの名曲揃い。全18曲というボリューム感、ほとんどがアコギで聴かせるという似たタイプの曲ばかり、にも関わらず飽きることなく聴けてしまうあたりがやはり彼の実力なのでしょう。

評価:★★★★★

Jack Johnson 過去の作品
SLEEP THROUGH THE STATIC
To The Sea
All The Light Above It Too

beerbongs&bentleys/Post Malone

おそらく今、アメリカで最も人気のあるミュージシャンと言えるのが白人ラッパー、Post Malone。最新アルバムである本作はビルボードで1位を獲得したのは当然のこと、1週間あたりのアルバム・ストリーミング記録を更新。さらにHot100のベスト20に9曲を同時にランクインさせ、ビートルズとJ.コールが保持していた複数曲のベスト20同時ランクイン数の記録を更新しています。先日のフジロックにも来日を果たし、日本においても注目度がかなり増しているミュージシャンになっています。

そんな彼のアルバムはジャンル的にはHIP HOP。サウンドは今流行りのトラップミュージックの要素を盛り込んだアルバムになっています。が、基本的にラップというよりも終始、ポップなメロディーが流れている「歌モノ」のアルバム。このメロディーラインもしっかりとフックが効いており、インパクト十分。そういう意味では良くも悪くも売れそうなアルバムになっていたと思います。

正直言うと、今の大人気に関しては聴いていて、そこまでか・・・と思う部分はなきにしもあらずなのですが、確かに最新のサウンドにわかりやすいメロディーという構成は売れそうといえば売れそうなタイプな感じも。HIP HOPリスナー層にもアピールできそうな楽曲なだけに、日本でも今後もっと人気が高まってくるかも。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年8月21日 (火)

バンドのコアな部分が表に出たセルフプロデュース作

Title:High As Hope
Musician:Florence+The Machine

女性ボーカリスト、フローレンス・ウェルチを中心とするロックバンドFlorence+The Machine。デビューアルバム「Lungs」がイギリスのアルバムチャートで1位を記録。その後、3作連続イギリスのアルバムチャートでは1位を獲得するなど本国では絶大な支持を得ています。約3年ぶりとなる本作は残念ながら本国イギリスのチャートでは最高位2位に留まったようですが、アメリカビルボードチャートでは見事2位を獲得。全世界的に高い人気を得ているバンドとなっています。

そんな彼女たちの4枚目となるアルバムは、数多くのプロデューサーを迎えて制作されていたいままでの作品と異なり、フローレンス・ウェルチのセルフプロデュースとなる作品。個人的に彼女たちの作品を聴くのは前々作「CEREMONIALS」以来2作目となるのですが、その前々作は比較的ダイナミックなアレンジ、ちょっとネガティブな表現を使うと仰々しさを感じさせる作風でしたが、今回のアルバムはセルフ・プロデュースとなった影響でしょうか、サウンドは比較的抑え気味で、フローレンスのボーカルを前面に押し出して聴かせるアルバムになっていたように感じます。

例えば1曲目「June」も比較的シンプルなサウンドで力強い彼女のボーカルを聴かせつつのスタート。後半、サウンドは徐々にダイナミックに盛り上がってきますが、まずは彼女のボーカルが印象に残ります。特に中盤以降「Big God」もまずはピアノの音色のみで力強い彼女のボーカルを聴かせるスタートとなっていますし、「Grace」も後半はドラムスやコーラスラインでダイナミックにサウンドは変化していきますが、序盤は静かなピアノをバックに彼女の歌声を聴かせる構成になっています。

楽曲的にはソウル的な要素を加え、伸びやかに聴かせる力強いボーカルが大きな魅力になっています。以前聴いた「CEREMONIALS」ではビョークあたりに近い雰囲気を感じる「魔女系」なんて表現をしました。今回のアルバムもそんな神秘的な雰囲気は楽曲の随所に感じられます。ただ、上にも書いた通り、ちょっと仰々しさを感じるサウンドは今回は控えめ。あくまでもフローレンスの生の歌声に焦点をあてており、そういう意味では彼女のボーカリストとしての本質的な持ち味にスポットがあてられたアルバムになっていたと思います。

終盤の「The End Of Love」「No Choir」もピアノを中心とした静かなサウンドをバックに彼女の歌声を聴かせる楽曲で締めくくり。どちらも以前の彼女たちの楽曲と同様、神秘的なサウンドが流れており、それもまた大きな魅力となっているもののあくまでもサウンド的には控えめ。しっかりと彼女の歌を聴かせる構成となっています。

アルバムも4作目となりバンドとしての人気も確立。セルフプロデュースとなり、いい意味で「神秘的」「魔女系」なんてギミックに頼らず、フローレンスのボーカルと彼女たちのコアな部分のみを前面に押し出して勝負できるだけの自信をつけてきたアルバムと言えるのかもしれません。そして、その自信を裏付けるかのように、彼女のボーカルが実に心に響いてくる傑作アルバムに仕上がっていました。これだけ全世界的に人気を博していながら、日本ではなぜかいまひとつ盛り上がっていないのが不思議になってくるのですが・・・Adeleやビョークあたりが好きなら絶対はまるはず。お勧めです。

評価:★★★★★

Florence+The Machine 過去の作品
CEREMONIALS


ほかに聴いたアルバム

SCORPION/DRAKE

相変わらず高い人気を誇るアメリカのHIP HOPミュージシャンDRAKEの最新作。本作も当たり前のように全米1位を獲得しているほか、1日で最もストリーミングされたアルバムという記録を打ち立てるなど、その本気のほどを見せつけています。

そんな彼のアルバムは全25曲入りでCDでは2枚組というフルボリューム。正直言うと、最初の方は比較的ダークな雰囲気の作風の曲が多く、これまでの彼からすると若干聴きにくいな、という印象を受けたのですが、CDで言うとDisc2からすると歌モノの作品が増えてグッと聴きやすく、ポップな作風の曲が増えてきます。いい意味でDRAKEらしい作品が並んでおり、結果としてフルボリュームのアルバムでも最後まであっという間に聴くことが出来ました。その人気だけではなく楽曲自体でも変わらないDRAKEの実力と魅力を感じることが出来る傑作でした。

評価:★★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年8月18日 (土)

シンプルでポップなアルバム

Title:The Now Now
Musician:GORILLAZ

一時期はデーモン・アルバーンとジェイミー・ヒューレットが仲たがいし、その「バンド」としての行方も心配されたGORILLAZ。ただその後2人の関係も修復し、昨年は久々となるニューアルバム「Humanz」がリリースされました。その後、長い沈黙の期間を取り戻すかのように活動が活発化。前作からわずか1年2ヶ月で早くもニューアルバムがリリースされました。

前作「Humanz」は数多くの大物ゲストが参加。中にはかのノエル・ギャラガーが参加するなど大きな話題となりました。また楽曲としてもバリエーションが多く、エレクトロサウンドをメインにしつつ、HIP HOPやレゲエなどの要素も取り込んだ多彩な音楽性が大きな魅力のアルバムとなっていました。

そして今回のアルバムは、ある意味前作「Humanz」とは対照的なアルバムとなっていました。ゲストとして「Humility」にジャズギタリストのジョージ・ベンソン、「Hollywood」ではラッパーのスヌープ・ドッグにエレクトロミュージシャンのジェイミー・プリンシパルが参加していますが、ゲスト勢はこの程度。前作ではあまり目立たなかった2D(=デーモン・アルバーン)のボーカルが前面に押し出された作品となっています。

さらにバラエティー豊富だった前作とは対照的に、今回のアルバムは前作と同じくシンセのアレンジを主軸にしつつも、比較的シンプルなポップソングが並ぶ内容となっていました。1曲目の「Humility」から爽快な雰囲気のサウンドをバックにしたメロディアスなポップチューンになっていますし、続く「Tranz」も打ち込みのリズムが軽快な明るいポップチューン。中盤特に印象的だったのが「Idaho」で、アコギの美しいアルペジオが全編に流れる、牧歌的な空気を感じるしんみり聴かせる暖かいナンバーになっています。

後半も「Magic City」「One Percent」のようなサイケテイストも感じるドリーミーなアレンジのナンバーも目立つものの、これらの曲に関してもしっかりと「歌」が流れており、サウンドよりもメロディーラインを聴かせるような構成になっています。最後まで終始、メロディアスな歌を聴かせる構成になっていました。

サウンド的にもシンセの音色はどこか80年代的で懐かしさを感じさせるような音になっています。中盤「Lake Zurich」はこのアルバム唯一のインストナンバーになっているのですが、エレクトロサウンドが軽快なダンスチューン。どこかディスコテイストの懐かしさすら感じさせるポップチューンになっていました。

また今回のアルバム、GORILLAZのアルバムの特徴的だったHIP HOP的な要素がほとんどありません。唯一、スヌープ・ドッグが参加した「Hollywood」ではHIP HOP的な要素を感じられましたが、このアルバムの中では例外的。そうい意味でも歌を聴かせるポップなアルバムという点が明確になった作風と言えるでしょう。

正直言って、アルバムの中でキラー・チューンになりそうなインパクトあるポップソングもありませんし、一度聴いた感じだと地味にすら感じられるアルバムかもしれません。ただ、2度3度聴くと、知らず知らずに癖になるようなアルバムになっており、それもやはりデーモン・アルバーンのポップスメイカーとしての実力所以なのでしょう。シンプルなアルバムでしたが、それゆえにデーモンの実力が如実にあらわれた作品と言えるかもしれません。今回のアルバムも文句なしの傑作でした。

評価:★★★★★

GORILLAZ 過去の作品
D-Sides
Plastic Beach
THE FALL
The Singles Collection 2001-2011
Humanz

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年8月12日 (日)

ブルース界最後のリビング・レジェンド

Title:THE BLUES IS ALIVE AND WELL
Musician:BUDDY GUY

ここ数年、非常に残念ながらブルース全盛期を知る最後の世代のレジェンドたちが鬼籍に入るというニュースが続いています。2013年にはボビー・ブランドが鬼籍に入り、2015年にはB.B.KINGもついにあの世に旅立ちました。また、ブルースではなくロックンロールですが、昨年はチャック・ベリーも亡くなっています。

そんな中、最後に残ったリビング・レジェンドといえるのが彼、BUDDY GUY。御年82才となる彼ですが、いまだに2、3年に1枚のペースでアルバムをリリースし続けており、バリバリ現役の姿を見せ続けています。

本作はそんな彼の約3年ぶりとなるニューアルバム。タイトルからして「THE BLUES IS ALIVE AND WELL」と、まさに彼自身、最後のブルース・レジェンドとしての立場を引き受けるかのようなアルバムタイトルになっています。また今回のアルバムはなんといってもゲスト勢が豪華。「Cognac」ではジェフ・ベックとキース・リチャーズが、「You Did The Crime」ではミック・ジャガーがゲストとして参加しています。このとんでもない豪華な顔ぶれがゲストとして参加するあたり、彼の今の音楽シーンの中での存在感の大きさがわかります。

そしてそんな立場を背負った彼がリリースした最新作は、いつも以上に気合いが入りまくっている作品になっていました。基本的にスタイルは良くも悪くも以前から大きな変化がありません。楽曲的にはシカゴブルースの王道を行くような路線。今回のアルバムでも特段の目新しさはありません。

ただ、「Whiskey For Sale」では非常に力強いギターとシャウト気味なボーカルを聴かせ、ファンキーなナンバーに仕上げていますし、「Old Fashioned」の力強いギターリフも印象的。ホーンセッションも入って賑やかなナンバーに仕上がっています。ラスト前の「End Of The Line」でも力強いギターサウンドを聴かせますし、ボーナストラックである「In This Day And Age」でもギターでグイグイと押し込んでくるナンバーで、ギタリストとして全く衰えを感じさせないパワフルなプレイを聴かせてくれます。

ジェフ・ベックとキース・リチャーズが参加している「Cognac」ではさすがに2人の天才ギタリストが参加しているだけあって、表現力あふれる力強いギターが実に魅力的ですし、ミック・ジャガーがボーカルではなくハーモニカで参加している「You Did The Crime」ではそのハーモニカの音色をバックに力強い歌声でバラードを歌い上げています。

正直言ってボーカルはちょっと安定感が欠ける部分もあり、寄る年波を感じてしまう部分は否定できません。ただ、ギタープレイはいまなお年齢を感じさせない現役感がありますし、ボーカルにしても声量は十分。アルバム全体を通じて、82歳という年齢を感じさせない若々しさがあります。ここ最近は無難にまとめたようなアルバムが続いていたのですが、今回のアルバムはタイトルからもそうですが、ブルース界を背負って立つという意気込みを感じさせる勢いを取り戻したかのようなアルバムに仕上がっていました。しかし、彼はまだまだ元気に現役を続けそうですね。次の作品もその次の作品も、まだまだ傑作を期待できそうです。

評価:★★★★★

Buddy Guy 過去の作品
LIVING PROOF
Live at Legends
RHYTHM&BLUES


ほかに聴いたアルバム

HEAVEN&EARTH/Kamasi Washington

今をときめくケンドリック・ラマーやサンダーキャットの作品でも話題となったアメリカのジャズ・サックス奏者、カマシ・ワシントン。「新世代ジャズの象徴」みたいな紹介のされ方をしていますので、どちらかというとエレクトロサウンドなどを入れて、「クラブ系」の色合いが強いサウンド・・・と予想して聴いたのですが、サウンド的にはAORやフュージョンなどの色合いが強い感じ。哀愁感を帯びたメロディーもアルバムに終始流れており、むしろオーソドックスなフュージョン系ジャズという印象を強く受けました。ちょっと期待していた音とは違った感じでしたが・・・これはこれで2枚組のフルボリュームな内容を楽しめた作品でした。

評価:★★★★

永井“ホトケ"隆のブルースパワー・ラジオ・アワー ~10th アニバーサリー

以前にも紹介しました日本を代表するブルースミュージシャン永井"ホトケ"隆がパーソナリティーとなってコミュニティーFMを中心に放送している日本唯一のブルースのラジオ番組「ブルースパワー」。3年前に7周年を記念したコンピレーションアルバムがリリースされましたが、本作はその第2弾。タイトル通り、番組は見事10周年を迎え、それを記念して本作がリリースされました。

コンピレーションのスタイルとしては前作と同様。BUDDY GUYやLIGHTNIN' HOPKINS、B.B.KINGやMAGIC SAMなどブルースのレジェンドたちの曲を集め、その曲の合間にラジオ番組よろしく永井"ホトケ"隆による曲紹介が入るスタイル。まさにブルースの入門盤としてうってつけな1枚で、ブルースに興味があるけどどこから入ったらいいかわからない・・・という方に是非ともおすすめしたいコンピになっています。

ただ、前作同様、なぜかロバート・ジョンソンとマディー・ウォーターズは未収録。ここらへん、権利の関係なのかなぁ。ちょっと残念な感じも。まあ、それを差し引いても文句なしに素晴らしいコンピレーションなのは間違いありません。入門盤としてはもちろんですが、ブルースをいろいろと聴いている方にも、永井"ホトケ"隆のブルースにかける思いを曲の合間に聴け、ブルースの魅力がより強く感じることが出来る魅力的なコンピになっていました。

評価:★★★★★

永井“ホトケ”隆のブルースパワー・ラジオ・アワー

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年8月11日 (土)

EPシリーズに続く5年ぶりの新作

Title:Bad Witch
Musician:NINE INCH NAILS

NINE INCH NAILS5年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました!・・・とはいっても、2016年にEP盤「Not The Actual Events」が、2017年にもEP盤「Add Violence」がリリースされていますので、そんなに久しぶりといった感触はありません。特に今回のアルバムも全6曲30分という短さ。前作「Add Violence」リリース時もEP盤のシリーズは3作ある、というアナウンスがされていましたので、実質的にEP盤第3弾的な位置づけのアルバムといった感じになるのでしょうか。

そんな彼らの5年前のアルバム「Hesitation Marks」はエレクトロ色が強く、彼らとしては「軽い」というイメージのあるアルバムでした。ただ、その後リリースされた2枚のEP盤はグッと彼らの本来の持ち味であるインダストリアルの色合いが強いアルバムにシフトしました。そして続く今回のアルバムに関しても、初期の彼らを彷彿とさせるようなインダストリアルメタルの色合いが強く出たアルバムになっていたと思います。

まず1曲目「Shit Mirror」はノイジーなギターにシャウトするボーカルが重なった、疾走感あるナンバーで、インダストリアルというよりもパンク的な色合いの強い作品。まずは気分的にかなり高揚感のある楽曲からはじまります。続く「Ahead Of Ourselves」もテンポよいリズミカルな打ち込みからスタートするナンバー。途中、ヘヴィーなシャウトはあるものの、リズミカルで聴きやすいナンバーとなっています。

ここらへんはある意味、「つかみ」といった感じでしょうか。グッとインダストリアル色が強くなるのが3曲目「Play The Goddamned Part」。出だしからして不穏でメタリックなサウンドがまず耳を惹きます。かなり不気味な雰囲気で淡々と続いていくのですが、序盤から流れていたフリーキーなサックスが後半では全面に押し寄せ、最後までダークで不穏な空気感が続いていくナンバーになっています。

続く「God Break Down The Door」もフリーキーなサウンドと複雑なリズムのドラムスが終始耳を惹くナンバー。不気味なメロディーラインも妙に耳に残ります。さらに「I'm Not From This World」もヘヴィーでメタリックなサウンドで不気味な雰囲気が淡々と続くナンバー。静かなインダストリアルサウンドが非常に緊迫感ある雰囲気を作り出しています。

そんなインダストリアル色の強く不気味で緊迫感ある中盤からラストの「Over And Out」は最後を締めくくる軽快なエレクトロナンバー。いままでの雰囲気から力が抜けたような感じの楽曲になっているのですが、ところどころ、メタリックな雰囲気を残しており、聴き終わった後、なんとも言えない気持ちになって終わります。

昨年、そして一昨年にリリースされたEP盤も30分弱の短さにNINの魅力が凝縮された内容でしたが、今回のアルバムもその延長戦上のような、30分という短さの中で彼らの魅力が凝縮されているようなアルバムになっていました。ただ、そのEP盤2枚に比べてもよりインダストリアル色が強くなっており、ヘヴィーなサウンドの中に感じられる緊迫感が強い魅力に。ポピュラリティーという側面からはちょっと低めかもしれませんが、NINの良さを十分すぎるほど感じられる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events
Add Violence


ほかに聴いたアルバム

OIL OF EVERY PEARL'S UN-INSIDES/SOPHIE

イギリスはグラスゴー出身の女性ミュージシャン、サミュエル・ロングによるソロプロジェクトによる初となるフルアルバム。もともとプロデュースワークでも大きな話題を呼んでおり、過去にはマドンナの曲のプロデュースを手掛けたほか、日本でも安室奈美恵の曲のプロデュースを手掛けて話題を呼んだこともありました。

本作は1曲目「It's Okay To Cry」ではスケール感あるエレクトロサウンドで伸びやかに聴かせるポップチューンを聴かせ、北欧的なちょっと幻想的な雰囲気のあるポップミュージシャンなのかと思いきや、2曲目以降は破壊的なエレクトロサウンドやノイズなどで楽曲をメタメタに切り刻むような作風の曲が続き、ある意味、非常に実験的でパンキッシュな作風が目立ちます。ただ、意外とポップな作風が楽曲を流れている曲も多く、ラストの「Whole New World/Pretend World」もデジタルビートのデジロック風の作品・・・とベタな表現が出来るようなロッキンでポップなナンバーになっていたりします。

1曲目のスタートから2曲目以降の展開にちょっとビックリさせられますが、独特なエレクトロサウンドの魅力をしっかり楽しめる作品。実験的な作風でありつつも、意外とポップで聴きやすい、そう感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

Lush/Snail Mail

2年前、16才の時にリリースしたEP「Habit」が各種メディアで大絶賛を集め、一躍注目のミュージシャンとなったSnail Mailによるデビューアルバム。基本的にはシンプルなローファイ気味のギターロックといった感じで、女性のソロロックミュージシャンということもあってイメージ的にはコートニー・バーネットと近い部分を感じます。楽曲的にド派手さはないのですが、シンプルなだけにしっかりとしたメロディーラインを聴かせてくれています。これからの活躍も楽しみな新人ミュージシャンです。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年8月 7日 (火)

息の合った夫婦デゥオを聴かせる

Title:EVERYTHING IS LOVE
Musician:The Carters

7月、突然ストリーミングにてリリースされたThe Cartersというミュージシャンのアルバム。当初からこのリリースがかなり話題になっていたので「誰?」と思ったのですが、実はこれ、かのBeyonceとJAY-Z夫妻によるユニット。「カーター」というのはBeyonceとJAY-Zの苗字だそうで、「カーター一家」といった感じでしょうか。超大物同士のコラボに騒然となりました。(なのですが全米アルバムチャート2位だったというのは、大物同士のコラボが必ずしも大ヒットにならないという傾向は日米同様のようです)

まずやはり目立つのはBeyonceのボーカル。1曲目「SUMMER」からまずはBeyonceの力強いボーカルが気持ちよいソウルテイストの強い曲からスタート。「713」では力強いボーカルに加えてラップまで披露していますし、なによりも魅力的なのが「FRIENDS」。終始彼女の悲しげなボーカルで歌われる哀愁感たっぷりのメロディーラインが魅力的。決して力強く歌い上げるナンバーではないのですが、確実に歌の魅力が伝わってくるナンバーになっています。

そんな訳でアルバム全体としてはまずはBeyonceのボーカルがが魅力的なアルバムになっているのですが、ただJAY-Zだって決して負けてはいません。どの曲でもBeyonceのボーカルの中でしっかりと彼のラップにも主張が感じられます。Beyonceのボーカルが主でJAY-Zのラップが従といった曲の構成にはなっておらず、イメージとしてはBeyonceとJAY-Zが夫婦でデゥオをしているといった感じの構成になっていましたし、浮気騒ぎとかいろいろとありましたがそこはさすがに夫婦。息の合った「デゥオ」を聴かせてくれています。

そこらへんが一番顕著だったのはラストの「LOVE HAPPY」。タイトルからして明るい雰囲気なのですが、全体的にダークな色合いが濃い作品の中でも比較的、力の抜けた明るい雰囲気を感じさせるナンバー。ここでは完全に息の合った2人の掛け合いを聴かせてくれます。

特にこの曲はラストに「We came and we conquerd, now we're happy in love」という歌詞で締めくくられており、要するに「私たちは困難を乗り越えて、今、幸せだよ」と歌われています。まあ、こうやって2人で組んでアルバムを出そうというのですから、今、2人は上手くいっているのでしょう。上に書いたように暗い雰囲気も感じるアルバムですが、最後の最後は明るい雰囲気で、どこか爽やかさの残る聴後感を残すアルバムになっていました。

サウンド的には全体的に重低音にシンプルなリズムトラックという、決して目新しい感じはしないのですが、今風なサウンド。「NICE」「BLACK EFFECT」など、最近話題のトラップミュージックの影響を強く感じさせる曲もあります。一方、Beyonceのボーカルの影響もあってか、昔ながらのソウルフィーリングも強く感じさせる部分もあり、そういう意味では最新のHIP HOPを取り入れつつ、ソウルミュージック的な魅力もしっかりと感じさせるアルバムになっていたと思います。非常にバランスの良さも感じます。

Beyonceといえば、直近のアルバム「Lemonade」も大傑作でしたが、その勢いを引き継いだかのような、おそらく今年を代表する1枚になりそうな傑作アルバムに仕上がっていました。いろいろな意味でうらやましい夫婦のおふたり。これからも末永くいい夫婦でいてくださいね。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Nasir/NAS

NASの新作は全8曲入りという比較的短めのアルバム。リズムは比較的リズミカルでテンポ良いものが多く、また、メロウでメロディアスな楽曲が多いのも特徴的。目新しさや刺激のようなものはちょっとなかったのは残念な部分はあるものの、8曲という短さもあって、全体的に非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
Life Is Good

KOD/J.Cole

過去リリースされた4枚のアルバムがすべて全米チャート1位を獲得。このアルバムも当然のようにチャート1位を獲得するなど、おそらく今、もっともアメリカで人気のあるHIP HOPミュージシャンのひとり、J.Cole。シンプルなトラックがほどよく今風なサウンドを取り込みつつ、全体的に軽快で聴きやすいラップが特徴的。良い意味で確かに多くのリスナー層の支持を受けそう・・・という印象を受けます。あまりアメリカのHIP HOPを聴かないリスナー層でも素直に楽しめそうなアルバムでした。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

DVD・Blu-ray | その他 | アルバムレビュー(洋楽)2008年 | アルバムレビュー(洋楽)2009年 | アルバムレビュー(洋楽)2010年 | アルバムレビュー(洋楽)2011年 | アルバムレビュー(洋楽)2012年 | アルバムレビュー(洋楽)2013年 | アルバムレビュー(洋楽)2014年 | アルバムレビュー(洋楽)2015年 | アルバムレビュー(洋楽)2016年 | アルバムレビュー(洋楽)2017年 | アルバムレビュー(洋楽)2018年 | アルバムレビュー(邦楽)2008年 | アルバムレビュー(邦楽)2009年 | アルバムレビュー(邦楽)2010年 | アルバムレビュー(邦楽)2011年 | アルバムレビュー(邦楽)2012年 | アルバムレビュー(邦楽)2013年 | アルバムレビュー(邦楽)2014年 | アルバムレビュー(邦楽)2015年 | アルバムレビュー(邦楽)2016年 | アルバムレビュー(邦楽)2017年 | アルバムレビュー(邦楽)2018年 | ヒットチャート | ヒットチャート2010年 | ヒットチャート2011年 | ヒットチャート2012年 | ヒットチャート2013年 | ヒットチャート2014年 | ヒットチャート2015年 | ヒットチャート2016年 | ヒットチャート2017年 | ヒットチャート2018年 | ライブレポート2011年 | ライブレポート2012年 | ライブレポート2013年 | ライブレポート2014年 | ライブレポート2015年 | ライブレポート2016年 | ライブレポート2017年 | ライブレポート2018年 | ライブレポート~2010年 | 名古屋圏フェス・イベント情報 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 音楽コラム | 音楽ニュース