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2018年12月 8日 (土)

3人のSSWの違いと共通項が上手く反映

Title:boygenius
Musician:boygenius

今回紹介するアルバムはアメリカの女性シンガーソングライターPhoebe Bridgers, Julien Baker, Lucy Dacusの3人が集まったニュープロジェクト。今回、そのプロジェクトの初になる6曲入りEPがリリースされました。すいません、こう書いておいて何なのですが、実は3人とも初耳のミュージシャンばかり。その3人が集まった、と言われてもいまひとつピンと来ませんでした。

そんなこともあって今回、この3人の女性シンガーの曲についてYou Tubeなどであらためて聴いてみました。印象としてはPhoebe Bridgersはギターサウンドをバックにしたフォークロック、Julien Bakerは美しい歌声をアコースティックなサウンドにのせて幻想的な雰囲気に聴かせるポップシンガー、Lucy Dacusはギターサウンドをバックに大人な雰囲気のボーカルでメロディアスに聴かせるシンガーといった印象。

3人のソロを聴くとタイプ的には微妙に異なる3人ですが、ただ一方では同じような方向性も感じられます。まず3人ともフォークからの影響を感じる美しいメロディーラインで聴かせるポップチューンがメインという点。また3人ともボーカルを美しく聴かせる楽曲を奏でているという点でも共通項でしょう。

そんな3人が組んだプロジェクトだからこそ、3人の音楽性の異なる点をうまく生かしつつ、3人の共通項をしっかりと聴かせる、この手のユニットらしいアルバムがリリースされました。まず1曲目「Bite The Hand」はダウナーなギターサウンドを前に出したローファイ気味なギターロック。ノイジーなギターが耳に残る一方、メロディーは至ってポップにまとめていますし、3人によるハーモニーも実に美しくまとまっています。

続く「Me&My Dog」も3人の美しいハーモニーが強く耳に残るナンバー。バックにはノイジーなギターが流れ、幻想的で美しいポップチューンに仕上がっています。ここから一転「Souvenir」はアコースティックギターとピアノで聴かせるフォーキーなナンバー。ただ美しいメロディーとコーラスラインは1、2曲目から変わりません。さらに「Stay Down」もピアノの力強い演奏をバックに美しい歌声でメロディアスに聴かせる曲調。フォークテイストが強い作風なのですが、根底に流れる音楽性は大きな変化はないため、アルバムの流れの中で自然に聴くことができます。

さらに「Salt In The Wound」も再びギターサウンドが前に出てきたロッキンなアレンジとなっていますが、こちらもミディアムテンポでメロディーを聴かせるナンバー。途中から登場する3人のハーモニーの美しさが特に耳を惹きます。そしてラスト「Ketchum,ID」はアコースティックギターをバックで3人で美しいハーモニーを聴かせるフォークソング。プライベイトな雰囲気の強い録音状況となっており、3人の息の合ったコーラスがとても魅力的に仕上げています。

そんな訳で、3人の音楽性の違いと共通項をうまく利用した完成度の高いアルバムに仕上がっていました。3人のフォーキーなサウンドと美しいメロディーライン、そしてなにより息の合ったハーモニーが耳を惹く素敵なポップチューンが並んでいます。3人とも残念ながら日本ではさほど知名度が高くなく、私もいままで一度も聴いたことがなかったのですが、これを機に、ソロ作も聴いてみたいなぁ。とにかく、ポップス、とくにフォークロックあたりが好きならはまること間違いなしの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Natural Rebel/Richard Ashcroft

元The Verveのボーカリスト、Richard Ashcroftによるソロ5作目のアルバム。イギリス出身の彼ですが、いままでのソロアルバムはイギリスというよりもアメリカのロックの影響を色濃く感じたのですが、本作もカントリーの要素を入れつつ、いなたい感じのロックチューンに、アメリカのカントリーロックからの影響を色濃く感じます。渋い雰囲気の強い大人のロックアルバムといった印象を受けた1枚でした。

評価:★★★★

RICHARD ASHCROFT 過去の作品
THE UNITED NATIONS OF SOUND(RPA&THE UNITED NATIONS OF SOUND)
THESE PEOPLE

A Star Is Born Soundtrack(邦題 アリー/ スター誕生 サウンドトラック)/Lady Gaga & Bradley Cooper

Lady Gaga主演ということで日本でも話題の映画「アリー/ スター誕生」のサウンドトラック。楽曲的にはどちらかというとLady Gagaと共に主演を務めた俳優、Bradley Cooper歌唱による曲が多いのですが、圧巻なのは特に後半に並ぶLady Gagaによる曲。その歌唱力、表現力ともに圧倒するものがあり、Lady Gagaって、こんなに歌が上手かったんだ・・・とあらためて実感させられます。Bradley Cooperもなかなか健闘はしているのですが、ちょっと物足りなかったかな。

評価:★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)
Joanna

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