前作よりもポップで聴きやすく
Title:Negro Swan
Musician:Blood Orange
前作「Freetown Sound」が大きな評価を集めたプロデューサーとしても活躍しているイギリスのミュージシャン、デヴ・ハインズのソロプロジェクト、Blood Orangeの約2年ぶりとなるニューアルバム。今回の高い注目を集めた新作となりました。
そんな待望のニューアルバムなのですが、まずは率直に言って、非常に心地よいポップな作品に仕上がっていたな、というのが第一の感想でした。まず1曲目「Orlando」はハイトーンボイスが心地よい、ネオソウル風の作風となっています。それだけにいかにも「今時」感を醸し出しつつ、続く「Saint」「Take Your Time」は比較的シンプルでソウルなポップチューンに仕上げています。さらにPuff Daddyと、新進気鋭の女性シンガーTei Shiを迎えた「Hope」もラップとハイトーンで美しく聴かせる女性ボーカルを絡ませつつ、楽曲的にはちょっとジャジーな要素を入れつつも、あくまでもポップにまとめ上げています。
その後も基本的にはハイトーンボイスで気持ちよく聴かせるフィリーな雰囲気のソウルナンバーが続きます。リズミカルなトラックとメロウなボーカルが心地よい「Chewing Gum」、シンプルなサウンドで、ほぼアカペラベースで力強いボーカルを聴かせる「Holy Will」、ループするサウンドが心地よい「Dagenham Dream」など、メロウなボーカルで心地よく聴かせるポップチューンが続きます。
そんな訳で全体的な方向性としては前作「Freetown Sound」同様。今風なサウンドを入れつつも、一方では80年代風な要素を感じさせるサウンドが心地よいソウルチューンの連続。全16曲入りながらも1曲あたり2、3分程度の短いポップチューンにおさめており、全48分という聴いていてちょうどよい長さなのも前作同様。そういう意味では前作の延長線上のような作品と言えるかもしれません。
ただ様々なサウンドとアイディアを入れてきて、少々情報過多にも感じられた前作に比べると、今回のアルバムはよりすっきりとポップなアルバムに仕上がっていたように感じます。そういう意味で前作よりも聴きやすいアルバムに感じました。メディアなどの評価では本作の評価もそれなりに高い反面、前作ほどの出来ではないというのが一般的のようですが、個人的にはむしろ前作よりも本作の方が気に入ったかも・・・。とても気持ちよく楽しめた1枚でした。
評価:★★★★★
Blood Orange 過去の作品
Freetown Sound
ほかに聴いたアルバム
The Atlas Underground/Tom Morello
ご存じRAGE AGAINST THE MACHINEのギタリストであり、最近ではPROPHET OF RAGEとしても活躍しているトム・モレロの、初となるソロ名義でのアルバム。今回は彼のギターサウンドにEDMを取り入れるなど挑戦的な方向性になっています。ただ、正直、EDMという方向性は「いまさら」感は否めませんし、彼のギターを生かそうとした結果、取り入れ方も中途半端に。所々に彼らしいカッコイイギターリフは顔を覗かせるのですが、全体的には「あのトム・モレロのソロ」として聴くと少々期待はずれな内容になっていました。
評価:★★★
Bottle It In/Kurt Vile
The War On Drugsの元メンバーであり、昨年はCourtney Barnettとのコラボでも話題となったギタリストの新作。基本的にはアコギメインでのダウナーな路線は前作から変わらず、地味な作風ながらもメロディアスに聴かせる楽曲は魅力的。ただ今回、1時間18分という長さのアルバムの中で、10分を越える曲が2曲、10分近い曲が1曲あり、いずれも淡々とした作風の曲に。そのためアルバムとしては少々中だるみした感じが否めず、1曲1曲の出来は悪くないのですが、少々聴いていて退屈してしまう部分も。そういう意味では非常に惜しいアルバムなのですが・・・。
評価:★★★★
Kurt Vile 過去の作品
B'lieve I'm Goin Down…
Lotta Sea Lice(Courtney Barnett&Kurt Vile)
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