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2018年12月16日 (日)

ライブ音源が魅力的

Title:野宮真貴 渋谷系ソングブック
Musician:野宮真貴

ご存じ元ピチカート・ファイブのボーカリストであり、90年代に起きた「渋谷系」と呼ばれる音楽のムーブメントの中心にいた野宮真貴。彼女が、その原点を振り返るべくここ数年の行っている企画が「野宮真貴、渋谷系を歌う」。いわゆる渋谷系と呼ばれるルーツと思われる曲を彼女がカバーする企画で、最初はライブの企画からスタート。その後、アルバムを5枚リリースし今日に至っています。

今回のアルバムはその「渋谷系を歌う」の企画を総括するベストアルバム。いままで彼女がリリースしたアルバムの中から、ライブ盤だった1枚目と、(なぜか)最新アルバム「ホリディ、渋谷系を歌う」を除く3枚のアルバムからセレクト。さらに渡辺満里奈のアルバム「MY FAVOURITE POP」に収録されていた「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)- Marina's 30th Anniversary Mix-」も収録されています。

さらに今回のベスト盤の大きな目玉のひとつが本編ラストに収録されている「中央フリーウェイ」。2015年11月に行われたライブ音源なのですが、この日、ライブを見に来ていたムッシュかまやつが飛び入り出演。今となっては貴重な音源となってしまった2人によるデゥエットも収録されています。

そして肝心の内容自体は、アルバムをいままでもここで紹介していますし、いまさら言うまでもないかもしれません。しんみりとその歌声を聴かせつつも、感情過多にならないそのボーカルのバランスの良さはさすが経験豊富な大人のボーカリストといった印象。また彼女の歌声はそのしっとりとした歌声には強いインパクトがありつつも、一方では歌い方にも声色にも比較的「癖」が薄く、そのためいろいろな曲のカバーにもマッチするという意味では、この「渋谷系を歌う」の企画がピッタリということも言えるでしょう。

ただ、今回のこのアルバムの一番の肝となるのはDisc2の方になるかもしれません。今年2月に行われた「モーション・ブルー・ヨコハマ」でのステージをMC含めてフル収録したライブ盤。もともとこの企画はライブイベントからスタートしていますので、ライブこそが「渋谷系を歌う」の本領と言えるかもしれません。

渋谷系の大定番「ぼくらが旅に出る理由」のカバーなども素晴らしいのですが、途中にはチョコレートのCMソングを歌うコーナーがあったり、MCではカバーする曲の詳しい説明があったり、そういった部分も楽しいですし、よくよく聴くと、バックにおそらく観客が食事をしていると思われる食器の音なども聞こえたりするのもライブの臨場感が増す大きな要素となっていたりします。

さらにこのライブではゲストも参加しています。高野寛を迎えたコーナーでは懐かしいヒット曲「Winter's tale」が聴けたりするのがなかなかうれしいのですが、特に素晴らしいのが横山剣とのデゥオ。二人とも本当に渋い大人のボーカリスト同士といった感じで、その相性も抜群。絶妙なデゥエットを聴かせてくれます。なにでにこの2人で組んで、アルバムをリリースしてくれないかなぁ・・・そんなことくらい考えてしまう相性の良さでした。

さらにうれしいのは・・・これはライブでは毎回の定番のようですが、アンコールのピチカート・ファイヴメドレーもしっかりと収録されている点でしょう。なんだかんだ言っても、やはり野宮真貴=ピチカート・ファイヴのイメージでしょうし、懐かしいヒット曲の連続で聴いていてうれしくなってきますし、ワクワクもしてきます。このピチカート・ファイヴメドレーが収録されている点はライブ盤ならでは、といった感じでしょうか。

ともかく、いろいろな点から彼女のライブの魅力がしっかりとつまった臨場感あるライブ盤。本編の方に含まれたレア音源も含めて、いままでの彼女の「渋谷系を歌う」シリーズを全て聴いていたとしても、あらためて聴いてみたいベスト盤になっていました。ただ・・・そろそろこの企画も「ネタ切れ」状態。このベスト盤がひとつの区切りとなるのでしょうか。次はどんな企画になるのか・・・そろそろ彼女の「純粋なソロオリジナルアルバム」も聴いてみたいのですが。

評価:★★★★★

野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-
男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。
野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~
野宮真貴、ホリディ渋谷系を歌う。


ほかに聴いたアルバム

After The Rain/古内東子

今年、デビュー25年を迎えた古内東子の、なんとオリジナルアルバムとしては約6年半ぶりとなるニューアルバム。この6年半の間、結婚・出産という大きなイベントを経た彼女。しかし、ここでよくありがちな「母としての作品」にはならなかったのはある意味彼女らしい感じ。久々のニューアルバムは、むしろ原点回帰的な、いかにも彼女らしい王道を行く切なくメロウなナンバーが並ぶアルバムに仕上がっています。正直なところそのため目新しさみたいなものはなかったのですが、結婚・出産を経てもこれからもこのスタイルで行くという彼女の決意のようなものを感じました。

評価:★★★★

古内東子 過去の作品
IN LOVE AGAIN
The Singles Sony Music Years 1993~2002
Purple

透明
夢の続き
and then...~20th anniversary BEST~
Toko Furuuchi with 10 legends

NEUE TANZ/YELLOW MAGIC ORCHESTRA

YMO結成40周年を記念してリリースされたコンピレーションアルバムはメンバーのソロ作を含めて選曲をテイ・トウワが行い、さらに砂原良徳によるリマスタリングが行われたコンピレーションアルバム。選曲のテーマとして「今響かせたいYMO」をテーマにしたそうで、それだけに音楽的な進歩が早いエレクトロミュージックでありながらも、まりんのリマスタリングと合わせて、今の耳で聴いても古さを感じさせないどころか新鮮味すら感じさせる曲が並んでいます。また、基本的にポップな作風にどこかコミカルさも感じられ、最初から最後まで全く飽きることなく一気に聴けるコンピレーションに。「正統派」ではないかもしれませんが、今のリスナーにとってはYMO入門としてピッタリの1枚と言えるでしょう。

評価:★★★★★

Yellow Magic Orchestra 過去の作品
LONDONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON 15/6 08-
GIJONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN GIJON 19/6 08-

YMO
NO NUKES 2012

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