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2018年12月22日 (土)

相変わらずの暑さ

Title:STARTING OVER
Musician:高橋優

その具体的で世の中のリアルを突いた歌詞が大きなインパクトを持つシンガーソングライター、高橋優の2年ぶりとなるニューアルバム。
相変わらず自身の顔のドアップがそのままジャケット写真になっている訳ですが、この「生真面目」そうなジャケット写真が示すように、彼の歌詞はある意味世の中を真正面から「真面目」に取り上げているという印象を受けます。

ただ、その結果として、いままでのアルバムにも共通するのですが、世の中について真正面から取り組みすぎて、「押し一辺倒」にある種の暑苦しさを感じてしまうのが気になってしまいます。今回のアルバムにしても1曲目「美しい鳥」がまさに彼が今の時代に感じることを一気に吐露するような歌詞になっており、聴いていてちょっとひるんでしまいます。

また、歌詞に若干唐突感があるのも良くも悪くも彼の特徴になっており、例えば「いいひと」なんかは

「いい人ですねって言うのは 大抵都合のいい人って意味だから本当であればいい人なんかならなくたっていいんだよ」
(「いいひと」より 作詞 高橋優)

なんていう歌詞はかなり納得感を覚えるものの、歌詞の登場人物がなぜかいきなり「サイコパス」な側面を持っていたりして違和感バリバリですし、上に紹介した「美しい鳥」にしろ、日本語歌詞を立て板に水のごとく歌った後、いきなり「How do you feel?」なんて英語が登場してくるあたり、正直、中2病的な言葉の選択のようにも感じられ、失笑してしまいました。

ただ、歌詞についても決して悪くはないんですよね。上にも書いた「いいひと」の歌詞のように、心に残るような歌詞にもしっかり出会えますし、「非凡の花束」のような、日常の中での妻に対するラブソングのような素敵な曲も収録されています。

また今回のアルバムでユニークかつ秀逸だったのが「Harazie!!」で、彼の出身地、秋田県の方言をそのまま歌詞にして、それをファンクなリズムに乗せて歌い上げるナンバー。ファンクの持つ泥臭さが秋田弁の雰囲気にピッタリとマッチし、まさに彼しか歌えない和製ファンクの傑作ナンバーになっています。

そのほかにも「若気の至り」ものすたるいっくな切ない歌詞がアコースティックなサウンドの載せて歌われる印象的なナンバー。学生時代のなつかしさを感じさせる風景描写も秀逸で、彼の歌詞の魅力を存分に感じることができる作品となっています。

そんな訳で、しっかりと高橋優の実力と魅力を感じられ、歌詞にしろメロディーにしろしっかりとインパクトを感じられるアルバムなのは間違いありません。ただ、やっぱり、これでもかというほどに畳みかけられる歌詞には、正直もうちょっと力を抜いた部分があった方がよりおもしろくなると思うんですよね・・・。もっとも彼もまた34歳と若いだけに(・・・といえるほど「若い」かは微妙ですが(^^;;)これからもっと年を重ねるごとに、力の抜き方を覚えると思うのですが・・・。この歌詞の暑苦しさは魅力であると同時に、彼の弱点でもあるように感じます。そろそろもうちょっと肩の力を抜いたほうがおもしろくなると思うんだけどなぁ。

評価:★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』
来し方行く末


ほかに聴いたアルバム

うたいろ/吉岡聖恵

今年年末の紅白での復活が予定されているいきものがかりのボーカリストによるソロアルバム。そんな彼女のソロデビュー作は全曲カバーアルバムで、米津玄師の「アイネクライネ」のような作品の曲もありますが、笠木しず子「ヘイヘイブギー」、ピーター、ポール&マリー「500マイル」(作詞は忌野清志郎)など、結構昔の楽曲が目立つ、ちょっと渋い選曲になっています。

正直彼女自身、ボーカリストとして安定感はありますが、表現力に乏しく、決して上手い歌手ではありません。実際、中島みゆきの「糸」など原曲と比べるとかなり辛い内容になっており、「カラオケレベル」という部分も否めません。ただ、メロディーをしっかり聴かせる懐かしい選曲はなかなか惹かれるものがありますし、また「ヘイヘイブギー」のようなハイトーンボイスを生かしたアップテンポなナンバーはそれなりに健闘しているような印象もあります。歌唱力、特に表現力に厳しい部分はありましたが、選曲含めて曲は素直に楽しませてもらったので下記のような評価に。次は・・・カバーアルバムにしないほうが無難かと思いますが・・・。

評価:★★★★

地球 東京 僕の部屋/和田唱

TRICERATOPSのボーカリスト、和田唱による初のソロアルバム。ジャケット写真のかわいらしい写真は彼の5歳の時の写真だとか。かわいいね(笑)。ちなみにこれ書いていてはじめて気が付いたのですが、手に持っているのって、確か透明な部分にフィルムが入っていて、スコープを覗いて手元もボタンを押すとフィルムがくるくる回って、アニメが見れるようになるおもちゃだよね。懐かしい!私も確か持っていました!さすが同年代(笑)。

ちなみにソロアルバムはすべての楽器の演奏を一人でこなしたとか。歌詞の内容も内省的で自分のことをうたった歌詞が多く、いかにもソロアルバムらしい作品になっています。音楽的にもファンキーな曲調のナンバーやAOR調の曲などあって、トライセラではあまり出来ないようなタイプの曲も並びます。ただメロディーメイカーの彼としてはメロディーラインはちょっと地味だったのはトライセラに遠慮したのでしょうか?ラストを飾る「Home」はピアノとストリングスで聴かせるバラードナンバーになっており、彼のメロディーセンスがしっかりと反映された聴かせるナンバーに仕上がってはいるのですが。

ただトライセラに留まらない広い音楽への興味を感じますし、今後もちょくちょくソロでのリリースは続きそうな感じはします。もっとも、そろそろトライセラの新作も聴きたいところなので、そちらにも期待!

評価:★★★★

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