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2018年12月18日 (火)

懐かしさあふれるコンピ盤

Title:宮川泰 テレビテーマ・ワールド
Musician:宮川泰

和製ポップスの第一人者として数多くのヒット曲を生み出し、かのザ・ピーナッツの育ての親としても知られる作曲家、宮川泰(「やすし」ではなく「ひろし」と読みます)。おそらく当サイトを見てくださっているような方にとっては、「宇宙戦艦ヤマト」の作曲者、と言われれば一番ピンと来るかもしれません。そんな彼はテレビ番組の挿入歌、テーマ曲も数多く手掛けているのですが、今回紹介するのは、そんなテレビに使われた彼の楽曲をまとめたコンピレーションアルバムとなります。

その収録音源は、アルバム冒頭を飾る「シャボン玉ホリデー」のような60年代、70年代の頃の曲もあり、さすがになじみのない曲も少なくありませんが、一方ではおそらく私のようなアラフォー世代にとっても非常になじみのある懐かしいテレビのテーマ曲も数多く収録されています。そしてこれらの曲が使われていた80年代や90年代はネットがなくまだまだテレビが家庭の中心にあった時代。おそらく家にいれば、まずはテレビを見ていたという方も多いでしょう。そういう世代にとっては、宮川泰の名前を知らなくても、知らず知らずのうちに彼の曲に出会っていたことに気が付かされます。そして、彼の曲を聴くと、そのテレビを見ていた頃のことを懐かしく思い出してしまうことでしょう。

私にとっては例えば「ひるのプレゼントのテーマ」「午後は○○おもいッきりテレビテーマ」などを聴くと、番組自体よりも、風邪だったり何かの理由で学校を休んだ平日の昼間の、普段だったら学校にいるはずなのになぜか家でゴロゴロしている、あのなんともいえない解放感を思い出します。また土曜日の午後にやっていた(というか、まだ「やっている」なのですが)番組のテーマ「バラエティー生活笑百科テーマ」を聴くと、この番組を見ていた当時はまだ土曜日の午前中に学校の授業があった頃。これから休みになる、というワクワク感を思い出させてくれます。また「ズームイン!朝」「ズームイン!!SUPERオープニングテーマ」なども聴いているだけで眠たい朝を思い出す人も多いのではないでしょうか。

そして個人的に一番懐かしく感じたのが(これはテレビの曲ではないのでボーナストラック扱いなのですが)「歌謡ベスト10 オープニングテーマ」。FM東京系で土曜日の午後1時から放送されていた「コーセー歌謡ベスト10」のテーマ曲。実は私にとって、いわゆるポップス、歌謡曲、ヒット曲との出会いがこの番組を中学生の頃に聴き始めたから。中学生の頃はこの番組をむさぼるように聴いていて、ランクインしている曲を片っ端から聴いていました。いわば私の音楽趣味の原点とも言える番組で、正確には私が聴いていたころ使われていたテーマ曲は、今回のコンピに入っている曲を若干アレンジした曲だったのですが、あの中学生の頃を思い出してしまい、とても懐かしくなってしまいました。

そんな感じで、まさにおそらく多くの方にとって聴いているだけで懐かしくなってくるような曲が数多く収録されているコンピレーション。私と同じアラフォー世代やもっと上の世代、さらにおそらく30代あたりの方でも同じような思いを抱くのではないでしょうか。ちなみに冒頭で紹介した「宇宙戦艦ヤマト」も収録されています。またこのコンピ盤を聴いていくと、いかにも一昔前のテレビ番組の曲といった印象を受ける曲に多く出会うかもしれません。それは彼がいかにもな曲を書いていた、というよりも、宮川泰が書くサウンドのことを、私たちが「一昔前のテレビ番組の曲」とイメージしていた、という理解の方が正確かもしれません。

そして彼の書く曲を聴いていると、ソウルやジャズなどの要素を取り入れた曲が多く、今の私たちの耳から聴いても洋楽テイストが強くあか抜けた作風という印象を強く受けます。「お笑いオンステージの歌」はソウル風なリズムがカッコよさすら感じますし、「わんさかワンサくん」もニューオリンズ風の軽快でコミカルな楽曲が楽しめます。そういう点からも、懐かしさに浸るだけではなく音楽的な面でももちろん楽しめるコンピでしたし、また、洋楽テイストを強く押し出した和製ポップスという意味では、同じく洋楽的な要素を強く押し出しているJ-POPの原点という見方も出来るかもしれません。実際、彼の曲は数多くのヒット曲や、あるいはテレビのテーマ曲などを通じて、知らず知らずのうちに私たちやさらに下の世代の耳にも届いている訳で、そういう意味ではJ-POPシンガーも意識的に、あるいは知らず知らずのうちに彼の曲の影響を受けているという見方も出来るかもしれません。

そんな訳で、アラフォー世代以上にとっては、いやもっと下の世代にとっても懐かしさに浸れるコンピ盤。またもちろん音楽的にも楽しめる1枚となっていました。とりあえず、おそらく多くの方にとって1度は聴いたことあるような曲が必ず収録されているコンピなので、興味ある方は是非。テレビが家庭の中心にあった時代に流れていた音楽たちが、今の時代に復活してくる、そんな懐かしさあふれるコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ALL INDIES THE BACK HORN/THE BACK HORN

結成20周年を迎える彼らが、20周年企画の第3弾としてリリースする本作は、現在、廃盤となっているインディーズ時代の楽曲を再録した企画盤。彼らのインディーズ時代の曲は今回はじめて聴いたのですが、叙情感あふれるメロディーとダイナミックなサウンドはメジャーデビュー後の作風と変わらず、初期の段階からその作風が既に完成していたことを伺わせます。ただ一方、似たような作風の曲が多く、1曲1曲はカッコよく耳を惹くのですが、アルバム全体としては後半、少々飽きが来てしまいました。

評価:★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II
情景泥棒

ケツノポリス11/ケツメイシ

ケツメイシ11枚目のアルバムは、ここ最近、英語表記の「KETSUNOPOLIS」だったタイトルが「ケツノポリス」に戻り、ジャケットの色もデビューアルバム「ケツノポリス」と同じ白に。さらに写真の構図も同作と同じという、ある意味「原点回帰」的なジャケットとなっています。

ただ内容的にはいい意味で、そのデビューアルバムから遠くに来たなと感じさせるような内容。レゲエはもちろん、HIP HOP、エレクトロ、トランス、ポップなどの音楽的な要素を広く入れてほどよくポップにまとれ、歌詞も大人になった彼らの等身大のスタイルを時にはユーモラスをまじえて歌い上げています。特に今はやりのラップバトルの要素をコミカルに織り込んだ曲などは彼らならでは。ここ最近、安定感の増した彼らですが、ベテランミュージシャンとして、さらに一歩上のレベルに到達した感のある、ある種の貫禄すら感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ケツメイシ 過去の作品
ケツノポリス5
ケツノポリス6
ケツノポリス7
ケツの嵐~春BEST~
ケツの嵐~夏BEST~
ケツの嵐~秋BEST~
ケツの嵐~冬BEST~

KETSUNOPOLIS 8
KETSUNOPOLIS 9
KTMusic(KTMusic)
KETSUNOPOLIS 10

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