「ラスボス」による初のベスト盤
Title:THE BEST ALBUM
Musician:般若
最近ではテレビ番組「フリースタイルダンジョン」で、「ラスボス」として降臨。知名度を一気に高めただけではなく、そのラッパーとしての実力を世に知らしめた般若。そんな彼がキャリア初となるベストアルバムをリリースしました。デビューアルバム「おはよう日本」から、2016年にリリースされた「グランドスラム」までに収録された曲の中から発表順に並べたアルバム。ちなみに全20曲入りのCD版のほか、サブスプ版は全33曲収録。ボリューム満点の内容になっています。
さて、そんな般若の楽曲の大きな特徴と言えば、間違いなく具体的な表現に終始した、しっかりと内容を聴かせるラップを主軸に据えている点でしょう。また、彼のラップのスタイル自体も、リリックの内容をしっかり聴かせるべく、言葉をしっかりと綴るラップのスタイルとなっています。そして、そんな彼のラップが描き出す世界は非常に多岐にわたっており、それが般若のラップの大きな魅力となっています。
具体的に言えば「ちょっと待って」のようなコミカルなラップに、反戦をテーマとした「オレ達の大和」や下流社会の現実を描いた「路上の唄」のようなハードな社会派のラップ。「ゼロ」のように死をテーマとした内省的なラップもあるかと思えば、HIP HOPでは恒例とも言える「MY HOME」のような地元をテーマとした曲や「最ッ低のMC」のようなラップ界について綴った曲もあります。
そんな中でも印象に残るのが父親への複雑な思いを綴った「家族」から、産まれてくる自分の子どもに対する思いを綴った「#バースデー」への流れ。「#バースデー」では実際に妻であるシンガーのSAYも参加しており、父親への思いと自らが父親になる思いを並べたこの構成に、聴いていてグッと感じ入るものがあります。
ただ、彼の魅力はこのリリックの内容だけではありません。こういう具体的なテーマのリリックがしっかりとリズムに乗ってラップされている点も大きな魅力。わかりやすく語尾を合わせるというよくありがちなライムがあるわけではないのに、しっかりとリズム感よくラップが出来る言葉をセレクトそている彼の実力を強く感じますし、また、そんなリリックを卒なく、かつテンポよくラップする彼のラッパーとしての実力も強く感じることが出来ます。ここらへん、さすが「ラスボス」。そのスキルは伊達ではありません。
一方でトラックについては「無難」という印象を受けます。正直言って、これといって特筆するようなトラックはありません。もちろん、かといって聴いていて厳しくなるようなチープなトラックはありませんし、「#バースデー」などのような今風なトラックもしっかりと取り入れています。
もっともこれはおそらく、彼の「売り」はあくまでもラップ自体であるため、トラックはラップを邪魔しないように作り込まれているのではないか、という印象を受けます。実際、楽曲を聴いていてもラップがすんなり耳に入り、いい意味でトラックはBGM的に機能しているように感じます。そういう意味ではラップとトラックがちょうどよいバランスの上に成り立っているように感じました。
来年1月には初となる武道館ワンマンも控えている彼。知名度もあがってきて勢いにのってきている感もあります。そんな彼の入門盤としても最適な1枚ですし、また、彼のキャリアを振り返るという意味でも最適なベストアルバム。これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★★
般若 過去の作品
ドクタートーキョー
HANNYA
グランドスラム
ほかに聴いたアルバム
RUN/tofubeats
メジャーデビュー以降、勢いある傑作アルバムが続いたtofubeatsですが、4作目となる本作は正直言ってしまうと、うーん、悪い作品ではないけど、いままでのアルバムと比べるといまひとつ。前半と終盤が歌モノ、中盤がインストチューンという構成になっていて、どちらもそれなりに楽しく聴かせます。ただ、80年代ポップスを狙った曲があったり、いままでの彼のお得意だった90年代J-POP風の曲があったり、細野晴臣やcorneliusあたりからの影響を感じる曲があったりと意欲的な音楽性を感じつつも、全体的には中途半端。おとなしすぎるような感も強く、いまひとつ印象薄の作品でした。
評価:★★★
tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental
POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
ROCK SHOW/ZIGGY
昨年、メジャーデビュー30周年を迎えてベスト盤をリリースしたZIGGY。さらにその後、10年ぶりのオリジナルアルバムがリリースされましたが、そこからわずか1年。ニューアルバムが早くもリリースとなりました。今回のアルバムは、タイトルやジャケット写真の通り、まさに「ロックショー」といった感じの80年代のハードロックをゴリゴリと入れてきて、かなり仰々しい雰囲気に仕上げたスタジアムロック風の作品。まさにロックが華々しかった80年代あたりを彷彿とさせるダイナミックなサウンドが並んでいて、あの頃のロックという音楽が持っていたきらびやかさを、ちょっとのいかがわしさも加味して再現したアルバムに。アラフィフあたりの世代なら懐かしさを感じさせる感もある反面、少々仰々しすぎて胸焼けした感も否めず。
評価:★★★★
ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
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