J-POP史に残るバンド
Title:BEST MONCHY1-Listening-
Musician:チャットモンチー
今年7月、惜しまれつつその活動を「完結」させたロックバンド、チャットモンチー。その突然の解散に多くのファンが衝撃を受けたと思います。本作はそんな彼女たちが解散後リリースしたオールタイムベスト。彼女たちの代表曲が発表順に収録されているほか、Disc3ではレア音源も収録されている、彼女たちの活動を総括するようなベスト盤となっています。
さてこのチャットモンチーというバンド、個人的には間違いなくJ-POP史に名前を残すレジェンド的なバンドだと思っています。その理由はトリビュートアルバムの感想でも書いたのですが、彼女たちが、数多くのガールズバンドを生み出す先駆け的存在であったため。もちろんチャットモンチーの前にも多くの女性オンリーのバンドはありました。ただ、同じくガールズバンドの代表格であるプリンセスプリンセスなどはあまりにポップス色が強すぎてフォロワー的なバンドはほとんど現れませんでしたし、逆に少年ナイフやZELDA、メスカリンドライブなどはある意味サブカル色が強すぎて、ガールズバンド登場の大きな契機とはなりませんでした。
しかし彼女たちの場合はロックバンドとしてのカッコよさを持ちつつ、同時にヒットチャートで戦えるポピュラリティーも持っており、結果として多くの女性たちに「女の子だけでバンドが出来るんだ」ということを知らしめるきっかけになったと思います。そして、彼女たちのブレイク以降、ねごと、SHISHAMO、yonige、赤い公園、the peggies、CHAI(CHAIはどちらかというと少年ナイフやZELDAからの流れかもしれませんが)などのガールズバンドが登場しました。そういう意味でチャットモンチーというバンドはJ-POP史に大きな痕跡を残したバンドだったと思っています。
そして今回のベスト盤を聴くと、あらためてチャットモンチーというバンドはいろいろな意味でバランスの取れたバンドだな、ということに気が付かされました。楽曲的にロックバンドとしてのカッコよさとポップミュージックとしてのポピュラリティーのバランスの良さはもちろんですし、例えば歌詞の世界にしても男性陣にとっては「かわいらしい」と感じさせるような女の子像を描きつつも、女の子としての等身大の本音をきちんと描いており、この「かわいらしさ」には男性陣に媚びたようないやらしさは感じられません。ここらへんの歌詞の世界観もチャットモンチーというミュージシャンが幅広く支持を集める大きな要因ではないでしょうか。また、ちょっといやらしい話かもしれませんが、彼女たちルックスも、嫌味のない程度にほどよくかわいく、そういう点でも男女ともに広く支持を広げる要因のように思います。
もっともそんな彼女たちも今回のベスト盤を聴く限り、解散の理由として出来ることをやりつくしたという理由が非常に強く納得できる内容になっていました。特に高橋久美子脱退後、2人組になってからは、2人だけでアルバムを作ったり、逆にサポートメンバーを入れてきたり、さらにラストアルバムでは打ち込みを入れてきたりと、様々な作風に挑戦してきました。そしてその結果、この2人だけで出来ることはほぼやりつくした、と感じたのではないでしょうか。今回の解散という話は非常に残念ではありますが、一方でこのベスト盤を聴くと、解散という結論を出したことになんとなく納得がいく感もありました。
そんな訳で、チャットモンチー解散は非常に残念ではあるものの、一方ではどこか「仕方なかったかな」という感想も抱くベストアルバム。おそらくこれからも2人は音楽活動を続けるでしょうが、これからの活躍も楽しみ。これからさらなる飛躍を遂げるであろう彼女たちの今後を心から応援したいと思います。
評価:★★★★★
チャットモンチー 過去の作品
生命力
告白
表情
Awa Come
YOU MORE
チャットモンチーBEST~2005-2011~
変身
共鳴
誕生
ほかに聴いたアルバム
What A Wonderful World/堀込泰行
フルアルバムでは2枚目となる元キリンジ、堀込泰行のニューアルバム。基本的にはキリンジ時代からほとんど変わらないスタイルのシティポップ。「泥棒役者」のような、彼らしいユニークな言葉の使い方をしている楽曲もあり、ファンなら満足できそうな楽曲が並びます。前作「One」ではヘナヘナしたボーカルが気にかかり、今回のアルバムでも正直、キリンジ時代と比べると声が出ていないような印象は受けましたが、前作ほどは気にならず、そういう意味では改善傾向といった感じでしょうか。アルバム全体としては目新しさは感じませんが、彼らしいポップソングで卒なくまとめられている印象が。聴いていて心地よさを感じる良質なポップアルバムでした。
評価:★★★★★
堀込泰行 過去の作品
River(馬の骨)
"CHOICE" BY 堀込泰行
One
GOOD VIBRATIONS
THE PENDULUM/降谷建志
Dragon Ashのボーカリスト降谷建志の2枚目となるソロアルバム。ピアノやストリングスを入れて叙情感を増したサウンドが前作よりも前面に出ているものの、基本的には物悲し気な歌がメインとなるアルバム。彼のメロディーセンスをこれでもかというほど生かしたような美しいナンバーがメインとなっており、前作同様、繊細さと力強さを同居させた、彼らしいソロアルバムになっていました。
評価:★★★★
降谷建志 過去の作品
Everything Becomes The Music
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