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2018年11月24日 (土)

10年来のプロジェクト

Title:Big Red Machine
Musician:Big Red Machine

今回紹介するのは非常に興味深いミュージシャンの組み合わせによる新プロジェクト。Bon Iverのジャスティン・ヴァーノンと、アメリカのインディーロックバンドThe Nationalのアーロン・デスナーの2人による新プロジェクト。もともと2008年にリリースされたエイズ撲滅のためのチャリティ・アルバム「Dark Was The Night」の制作時に、アルバムのプロデューサーを務めたデスナーが「Big Red Machine」と名付けられたアイデア・スケッチのインストゥルメンタルをヴァーノンに送ったことがはじまり。その後、様々なイベントにBig Red Machineとして出演し、苦節(?)10年、ようやくアルバムのリリースに至りました。

さて、そんな待望のニューアルバムな訳ですが、まずはとてもメロディアスでポップ、心に染み入るような人間味ある暖かいメロディーラインと、それに相反するかのようなエレクトロサウンドの組み合わせが耳を惹きます。アルバムの冒頭を飾る「Deep Green」はミディアムテンポの暖かいメロディーラインのバックに流れるのは細かくリズムを刻むエレクトロビート。続く「Gratitude」も力強く歌い上げるボーカルに対して、飛び跳ねるような硬質のエレクトロビートが響きます。

ただし中盤以降はエレクトロサウンドは鳴りを潜め、前半と同様のしんみりと暖かみのあるメロディーラインに対して、バンドサウンドやピアノなどを用いた分厚いサウンドが印象に残ります。「Hymnostic」などはまさにそんなタイプの楽曲。「Forest Green」もゆっくりと分厚いギターの音色に若干トライバルな様相もある力強いドラマのリズムが印象的。タイトル通り、森の中を歩くかのような雰囲気のあるポップチューンに仕上げています。

さらに後半、「People Lullaby」ではピアノの音色とファルセットボイスで美しく歌い上げる神秘的な雰囲気すらあるナンバー。続く「I Won't Run From It」はアコギで爽やかに聴かせたかと思えば、ラストを締めくくる「Melt」はノイジーなギターサウンドを前に押し出したサイケロックのテイストも感じるナンバーと最後まで実にバラエティーに富んだ展開が楽しめるナンバーになっています。

基本的にはBon IverもThe Nationalもメロディーラインが実に魅力的なバンドで、共通項の多いバンド。今回のアルバムに関しても、おそらくどちらのファンの方も気に入りそうな暖かい美メロが魅力的なポップチューンの並ぶアルバムに仕上がっていました。

ただファルセットボイスを用いて美しい歌をシンプルに聴かせるBon Iverに比べると、このバリエーション富んだ作風はThe Nationalに近いものもあるかも・・・とも思うのですが、Bon Iverも直近作「22,A Million」では実験的な作風に挑戦しているんだよなぁ。ただ、「実験的」というよりも様々なアイディアで音楽性を広げているというイメージが強く、The Nationalの直近作「Sleep Well Beast」に近い作りと言えるかもしれません。

ともあえれ、ヴァーノン、デスナーそれぞれがその魅力をしっかりと詰め込んだ傑作アルバムであったのは間違いありません。特にメロディーラインの良さはまさに絶品。実に心地よく最後まで楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Blue Hour/suede

90年代に一世を風靡したイギリスのギターロックバンドsuede。2003年に活動を休止したものの2011年以降活動を再開。活動再開後、3部作と称したアルバムをリリースし、本作はその3部作の最終作となります。

基本的に分厚いサウンドに耽美的な雰囲気の歌い方とメロディーライン。イメージ的には日本のヴィジュアル系を彷彿とさせる感じなのですが、メロディーには哀愁感があり、日本人にもなじみやすそう。本作もファンタジックな作風が心地よく、特に後半のメロディーラインが非常に美しく聴かせます。なにげに再結成後も本国イギリスでは高い人気を保つ彼ら。まだまだその勢いは続きそうです。

評価:★★★★

suede 過去の作品
night thoughts

Tha Carter V/Lil Wayne

「Tha Carter」シリーズとしては約7年ぶりとなるアメリカのラッパー、Lil Wayneのニューアルバム。トラップのサウンドを大胆に取り込み、哀愁感あふれるメロディーセンスを感じるラップを聴かせる楽曲が多く、ある意味、今時の流行と取り入れたような内容になっています。ただその中でも力強いラップと十分にインパクトあるサウンドで全23曲、90分近くに及ぶ長さながらもしっかりと聴かせてしまえるのは、さすがの実力を感じられました。

評価:★★★★★

LIL WAYNE 過去の作品
THA CARTER III
THA CARTER IV
Dedication 4
Dedication 5
I Am Not A Human Being II

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アルバムレビュー(洋楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

時にエレクトロの効いたサウンドだったり、時に暖かみのあるフォーキーなサウンドだったりと流麗かつ特徴的なメロディを活かすサウンドがただただ素晴らしかったです。

投稿: ひかりびっと | 2018年11月25日 (日) 18時54分

>ひかりびっとさん
ご感想どうもありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2019年1月26日 (土) 22時53分

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