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2018年11月18日 (日)

生前最期のステージ

Title:ラストライブ“猫と僕と君"
Musician:遠藤賢司

1960年代にフォークブームの中でデビュー。70年代には「カレーライス」などのヒット曲を飛ばし、その後はロックミュージシャンとして若手世代を含む広い層からリスペクトを集めていたミュージシャン、遠藤賢司。2016年3月にはがんと診断され、その後闘病生活を行い、昨年10月、惜しまれつつ70歳でこの世を去った彼。本作はそんなエンケンの、事実上ラストライブとなった2017年6月29日に渋谷CLUB QUATTROで行われたライブの模様を収録した作品です。

バンドメンバーに石塚俊明(頭脳警察)、湯川トーベンを迎えたこの日のステージ。このライブの段階ではすでにがんと診断され、闘病生活の最中だったエンケン。ジャケット写真で見る彼の姿もその様子が見てとれます。

それだけにライブの内容についても最初、少々心配しつつ聴いていました。実際、序盤、「嘆きのウクレレ」「ねえちょいとそこ行くお嬢さん」など、声があきらかに弱弱しく、痛々しさすら感じてしまいます。前半はかなり静かな雰囲気でのステージとなっており、病気の影響を感じてしまいました。

ただ、中盤あたりから徐々に演奏にも歌にも力が入ってきます。「Hello Goodby」ではアコギをかき鳴らし、力強い演奏を聴かせてくれますし、「プンプンプン」では後半、パーカッションと絡んでギターのパワフルなジャム演奏を聴かせてくれます。特にこの曲については「そのうちみんなきっと死ぬよ」という歌詞も登場しており、エンケンの当時の状況と重ね合わせて、胸が痛くなってきました。

さすがにその後は再び落ち着いた曲となり、後半は静かなピアノのインストナンバーが続きます。特に「猫のケンカ」ではタイトル通り、猫のケンカをピアノで表現したユーモラスな曲となっており、エンケンらしいユーモアセンスを感じさせます。

終盤は代表曲「カレーライス」を披露。こちらもさすがに声の弱弱しさは隠しきれない演奏となっていましたが、本編ラストの「夜汽車のブルース」ではそこから一転、アコギをかき鳴らす力強い演奏と歌声を聴かせてくれ、まさに渾身のステージを見せてくれています。

そしてアンコール、まさかの新曲披露で騒然となったという「GOD SAVE THE BAKATIN」。歌詞もまさにエンケン節ともいえるユニークな曲ですし、ギターをノイジーにかき鳴らす力強いロックチューン。結果として彼が生前、ステージで披露した最期の曲となってしまいましたが、そうとは信じられないくらいパワフルで力がこもった内容になっています。最後の最後まで第一線で活躍し続けた彼らしいしめくくりといえるかもしれません。

正直、上でも書いた通り、体調は万全ではなく、弱弱しくちょっと痛々しさを感じるような演奏もありました。ただ、締めるべきところはきちんと生気ある演奏を聴かせてくれており、最後までロックンローラー遠藤賢司を貫いたと感じさせるステージだったと思います。これが最期となってしまったのは実に残念に感じます。あらためてご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:★★★★★

遠藤賢司 過去の作品
ちゃんとやれ!えんけん!

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