貫禄(?)の第6弾
Title:ムキシ
Musician:レキシ
最近はすっかり人気ミュージシャンの仲間入りをした池田貴史のソロプロジェクト、レキシのニューアルバム。毎回、日本史をテーマとしたちょっとユニークな歌詞と、ビックリするような豪華なゲストが目を惹きます。この豪華なゲストには「レキシネーム」という日本史にちなんだニックネームが与えられるのですが、今回のアルバムではレキシネーム、ビッグ門左衛門こと三浦大知や、オシャレキシこと上原ひろみも参加し話題となっています。
さて、ここ数作、すっかりベスト10の常連となり、最新のライブツアーでも横浜アリーナ2デイズが決まるなど、その勢いは止まるところを知りません。そんな彼のアルバムはここ数作、「安定度」が増し、インパクトあるポップチューンが増えてきたように感じていました。今回のアルバムはまさにそんな路線を突き進んだようなアルバム。特にインパクトあるポップなメロディーラインについては、歌詞とのバランスもよく取れた、いい意味で「売れるツボ」がわかってきたかのような今まで以上に耳に残るポップチューンが多く収録されていたように感じます。
今回のアルバムでもレキシらしいファンクチューンの「なごん」と「GOEMON」からスタート。「GOEMON」でビッグ門左衛門こと三浦大知の透明感あるボーカルをうまくいかしつつ、どちらも「清少納言」「五右衛門」というキーワードを上手くサビにからませ耳に残るようなフレーズに仕上げています。続く「GET A NOTE」はアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌というタイアップ付の曲ですが、哀愁感あるメロもインパクトですが「下駄の音がしたんだ」というフレーズを「GET A NOTE GOT SIT DOWN」みたいに英語を発音するかのようにリズムにのせる歌い方も大きなインパクトになっています。
ミディアムテンポでメロウに聴かせる「出島で待ってる」「TAIROW~キミが目指してんのは~」も歌詞のユーモラスさと背反するようなおしゃれな雰囲気のメロとサウンドがインパクトなのですが、中盤で大きなインパクトがあったのが「KATOKU」と「SEGODON」。どちらも80年代の産業ロックバンドそのままなシンセのサウンドを前に出した爽快なナンバーに。特に「KATOKU」はJourneyの「Separete Ways」をオマージュしたユーモラスなPVも大きな話題となりました。
後半もラテン歌謡風な「奈良に大きな仏像」、エレピでしんみり聴かせる「マイ会津」などユーモラスながらもしっかりと聴かせる曲で締めくくり。特に終盤の聴かせどころはオシャレキシこと上原ひろみが参加した「SAKOKU」で、ホーンセッションを入れたムーディーなナンバーなのですが、オシャレキシの表現力豊かなピアノの音色が大きなインパクトとなっています。
そんな訳で様々な楽曲のバリエーションを入れつつ、ゲストミュージシャンの個性も楽曲に取り込み、耳に残るインパクトあるフレーズを歌詞の側面でもメロディーの側面でもしっかりと楽曲の中に織り込んだアルバムになっていました。前作「Vキシ」では安定感ある作風でレキシのひとつの完成形と書いたのですが、今回のアルバムではその完成形がさらなる進化を遂げたように思います。特に今回のアルバムに関しては上でも書いた通り、完全に売れるためのツボをつかんだように感じる作品になっており、人気ミュージシャンとしてのある種の「貫禄」すら感じさせる傑作になっていたと思います。
個人的には好き勝手につくった1枚目の「レキシ」と並ぶ、レキシとしての最高傑作ではないかと思います。もっと言えば音楽的な側面では間違いなく彼のアルバムの中の一番の出来ですし、年間ベストクラスの傑作アルバムとすら感じました。とにかく最初から最後まで聴いていて純粋に楽しかった1枚。確かにこういうアルバムをつくってれば人気が爆発するのも納得です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
泣きたくなるほど嬉しい日々に/クリープハイプ
オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるクリープハイプの新作。ハイトーンボイスで切ないラブソングを感情的に訴えるように歌うスタイルはいつもの彼らどおり。「ゆっくり行こう」や「イト」のようにホーンセッションを入れた曲もありつつ、基本的にはシンプルなギターロックが主体。NHKみんなのうたで流れた「おばけでいいからはやくきて」は、キッズソングらしいユニークな歌詞なのですが、ある意味、文字通りの「迷子」の話ではなく、人生に迷った人たちへ向けた歌にも聴こえる点、尾崎世界観の作詞家としての実力を感じます。アルバム全体としてはクリープハイプらしさを強く感じる1枚でした。
評価:★★★★
クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
More Music/奇妙礼太郎
その名前の通り、非常に「奇妙」な名前にまずは大きなインパクトがある男性シンガーソングライター奇妙礼太郎。以前からその名前のインパクトもあって気になっていたのですが、ソロ名義でのメジャー2作目のアルバムではじめて彼の音源を聴いてみました。
楽曲はいきなり「エロい関係」と身もふたもないインパクトある曲名のナンバーからスタート。この曲はミディアムファンクのナンバーだったのですが、その後はロックンロール、ブルース、ネオアコ、フォークなど、ルーツ志向で聴かせるタイプの曲が多く収録されています。全体的にはどこか温度が低めの雰囲気を持っており、また郷愁的な感じにはなつかしさを感じる部分も。ちょっと薄味かな、と思う部分もあるのですが、これからに期待したいミュージシャンです。
評価:★★★★
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