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2018年11月 2日 (金)

ついに結成30年目

Title:REBROADCAST
Musician:the pillows

2013年の活動再開以降、積極的な活動が続くthe pillows。本作も前作「NOOK IN THE BRAIN」から約1年半というインターバルでのアルバムとなりました。来年はなんと結成30年を迎える彼ら。本作はその30周年記念アイテムの第1弾だそうで、今後の第2弾、第3弾アイテムのリリースも待たれます(ということは10年ぶりのベスト盤リリースでしょうか?)

さて、今回のアルバム、まずは1曲、大きく印象に残る曲がありました。それがミュージックビデオも作られ、代表曲とも位置付けられている「ニンゲンドモ」。普段、あまり社会派な曲を歌うことが多くない彼らとしては珍しく、明確に反差別をテーマとした社会派のナンバーとなっています「女性客にだけ威張るドライバー」に対して「その歪んだ自尊心 粉々にしてやるよ」と歌ったかと思えば、一方ではコンビニに働くタイ人に対して「愛想はないけどさ 覚悟はあるんだろ」「キミの好きなロックミュージック 聴いてみないな」と優しい視線を投げかけています。

さらにこの曲のすごいところは

「加害者と被害者のどっちにも
優しくする優しい人
とても優しいんだろうね
でもそのパフォーマンスは
誰かを傷つけてるって
そして誰にも真剣じゃないって
白状すべきだろ」

(「ニンゲンドモ」より 作詞 SAWAO YAMANAKA)

と、この手の差別の論議をする時によくあらわれる「どっちもどっち」的な、表面的に中立路線を取ろうとするニヒリズム的な立ち位置にも明確なノーを突き詰めています。楽曲自体は歌詞も含めて、感情的な印象は薄いのですが、その歌詞の裏側には山中さわおのはっきりとした怒りを感じることが出来ます。

もっともそれ以外の楽曲については基本的にはthe pillowsらしい内省的な歌詞が特徴的。ただ一方で「ぼくのともだち」「BOON BOON ROCK」など、昔の熱い心を忘れてしまって「大人」となってしまった私たちに対して、ロックミュージックで新たな世界に踏み出そうと手を差し伸べるような歌詞も目立ちます。ここらへんはある意味、ベテランバンドとなった彼ららしいメッセージと言えるかもしれません。

一方サウンド的にはいつもの彼らどおりのシンプルなギターロック。ある意味、マンネリともいえるかもしれませんが、聴いていてもマンネリな感じはほとんどありません。前作「NOOK IN THE BRAIN」の感想でも「若々しさすら感じる」と書いたのですが、本作も同様。結成から30年近くがたったバンドとは信じられないくらい、いまだにデビュー直後のバンドのような疾走感、勢い、さらにはある種の緊迫感すらあります。そのため、いつも通りのサウンドとはいえマンネリ感は皆無。新鮮味すら感じらせるサウンドに仕上がっていました。

そんな訳でいい意味でいつも通りの傑作アルバムとなった本作。結成30年目を迎える彼らですが、その勢いはまだまだ止まらなさそう。これからの活躍もまだまだ楽しみです。

評価:★★★★★

Title:劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」Song Collection「Fool on CooL generation」
Musician:the pillows

で、こちらがオリジナルアルバムの直前にリリースされたアルバムなのですが、9月に公開された映画「フリクリ オルタナ/プログレ」と、いままでのアニメ「フリクリ」に使用されたthe pillows楽曲を集めたコンピレーションアルバム。映画主題歌「Star overhead」が収録されているほか、the pillowsの代表的なナンバーが収録されているのですが、注目したいのが、新曲以外全曲セルフカバーという点。映画にあわせてリリースされた半分宣伝目的の、やっつけ的な企画盤ではなく、彼らの過去の楽曲を今の時代にアップデートした、アニメは見ていないファンにとってもマストなアイテムになっています。

さらに収録曲自体もなかなかファンにとっては興味深い選曲になっています。彼らの代表曲ともいえる「ハイブリッドレインボウ」や「ストレンジカメレオン」が収録されていないなど、決して「ベスト盤」という内容ではないのですが、「知る人ぞ知る」的ではないものの、the pillowsを聴く上でとりあえずは抑えておきたいような「名曲」が多くセレクトされています。「MY FOOT」なんかはベスト盤などには収録されていないものの、個人的には大好きな名曲。また「LAST DINOSAUR」「LITTLE BUSTERS」などちょっと昔の曲もしっかりと抑えられており、選曲者のピロウズ愛が伝わってくるようなラインナップになっています。

またセルフカバーといっても基本的には原曲を大きく変えるものではありません。ただ、全曲、今の彼らによって演奏していることによりアルバム全体に統一感が生まれる結果となっていますし、過去の楽曲を演奏しても、オリジナルにまったく引け劣らない若々しさを感じる点、オリジナルアルバムでも感じた彼らの勢いを裏付ける演奏となっていました。

14曲入り59分の長さもちょうどよい感じですし、the pillowsの入門盤としても最適なアルバムだったと思います。なによりもthe pillowsの魅力をしっかりと伝えているセレクトとなっている本作。予想外に素晴らしい、魅力的なコンピ盤でした。

評価:★★★★★

the pillows 過去の作品
LOSTMAN GO TO YESTERDAY
PIED PIPER
Once upon a time in the pillows
Rock stock&too smoking the pillows

OOPARTS
HORN AGAIN
トライアル
ムーンダスト
Across the metropolis
STROLL AND ROLL
NOOK IN THE BRAIN


ほかに聴いたアルバム

00-ism [mono/omni/ripple]/GOMES THE HITMAN

まずは懐かしいなぁ、という印象を受けました。1993年に結成。1999年にメジャーデビューし話題となったギターポップバンドGOMES THE HITMAN。一時期は楽曲がCMソングなどにも起用されて話題になったのですが、残念ながら大きなブレイクもなく実質上、活動休止状態に。ただ、このほどライブを中心として活動を再開したそうで、そんな中、2000年代にリリースされた3枚のアルバム「mono」「omni」「ripple」がボックスセットとして再発されたため、久しぶりに彼らの曲を聴いてみました。

そんな久々に聴いてみた彼らのアルバムなのですが、率直に言ってしまうと、良質なギターポップだと思うのですが、かなり地味(苦笑)。決して悪いアルバムではないのですが、GOMES THE HITMANだけが持つような個性はあまり感じられず、メロディーのひっかかりもありません。悪いアルバムではないと思うのですが、ブレイクするにはちょっと厳しいなぁ、と思ってしまいます。ギタポ好きは聴いてみて損はない作品とは思うのですが・・・。

評価:★★★

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