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2018年11月 4日 (日)

充実した音楽活動を伺う2枚

今回はCorneliusが最近リリースした2枚のアルバムを同時に紹介です。

Title:Ripple Waves
Musician:Cornelius

Title:デザインあ3
Musician:Cornelius

昨年、約10年半ぶりとなるアルバム「Mellow Waves」をリリースしたばかりの彼ですが、そこからわずか1年で新作2枚をリリースという点でも、そのアグレッシブな活動ぶりを思わせます。もっとも近年は「攻殻機動隊」への楽曲提供やMETA FIVEへの参加など自身のオリジナルアルバム以外の積極的な活動も目立ち、音楽の面での充実ぶりがうかがえます。

もっとも今回リリースされた2枚のアルバムも純然たるオリジナルアルバムではありません。「Ripple Waves」は昨年リリースされた「Mellow Waves」以降に発表された曲を中心として、新曲や未発表音源、また「Mellow Waves」の曲を坂本龍一や細野晴臣といったミュージシャンたちが再解釈した音源も収録されています。一方、「デザインあ3」はタイトル通り、Eテレで放送されているデザインをテーマとした番組「デザインあ」で使用された曲を集めたサントラ盤です。

基本的にどちらのアルバムも共通点あり、いずれもアンビエント風の柔らかい音色のエレクトロサウンドが特徴的。ある意味、ここ最近のCorneliusらしいサウンドをなぞったような曲調ではあるので、いわば新鮮味や驚きみたいな部分はあまりありません。

そのうち「Ripple Waves」の方はある意味、いろいろな曲の寄せ集め的なコンピレーションアルバムであるため、全体的な統一感は比較的薄め。特に後半は様々なミュージシャンによる「Mellow Waves」の曲の再解釈楽曲が収録されているため、この「統一感のない感じ」はより強まっています。特にこの再解釈ではサウンドにエッジを利かせたようなアレンジが多く、前半のCorneliusの楽曲と比べると比較的対照的な作風に感じられました。

個人的には実はどちらかというと「デザインあ3」の方がお気に入り。こちらもLEO今井やCHOCOLAT、高橋幸宏、中納良恵といった様々なミュージシャンが参加しているのですが、「デザインをテーマとしたテレビ番組で、かつ対象は子ども」というテーマ性がはっきりしていることもあり、全体的な統一感があります。

また、こういったテーマ性、あるいはリスナー対象の括りというある種の制約条件があるだけに、逆にその中でのミュージシャンとしてのクリエイティビティーがより発揮された作品になっていたように感じます。時計の音をリズムとして用いた「ピッタリ」や街の音をサンプリングして曲の中に織り込んだ「都市のレイヤー」、ミニマル的なサウンドの中に音が少しずつ増えていく「くりかえし」など実験的な楽曲も多く、ある意味、わかりやすさを求められるテレビ番組の使用曲だけに、その意図もいい意味でわかりやすい曲が多く収録されています。

もちろん「Ripple Waves」の方も「Mellow Waves」の曲との聴き比べも楽しいですし、サウンドチェックをそのまま曲としたユニークな「Audio Check Music」みたいな楽しい曲も収録されており、十分すぎるほど楽しめる傑作アルバムになっているのは間違いありません。どちらも要チェックのアルバムであり、上にも書いた通り、Corneliusの音楽的な側面での充実感を覚えるアルバムになっていました。前作まで10年以上かかったオリジナルアルバムですが、次の新作は意外と早くリリースされる・・・かも?

評価:どちらも★★★★★

cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius
Mellow Waves
デザインあ2


ほかに聴いたアルバム

Kisses and Kills/THE ORAL CIGARETTES

本作で初となるチャート1位を獲得したロックバンド。タイプ的にはダイナミックなバンドサウンドが特徴的なオルタナ系のギターロックバンドといった感じなのですが、サウンドもメロディーも良くも悪くもベタ。楽曲によっては歌謡曲テイストの強い曲もあり、メロディーラインにもそれなりにインパクトがあり、売れそうなバンドではあるかな、という印象も。そんなメロを「陳腐」と感じるか「インパクトが強い」と感じるか、微妙な路線を走っているような感じもします。いろいろな意味で評価が難しい印象を受ける1枚でした。

評価:★★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION
UNOFFICIAL

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