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2018年11月

2018年11月30日 (金)

弦楽四重奏によるセルフカバー第2弾

Title:la RiSCOPERTA
Musician:KAN

最近はどうも弦楽四重奏にはまってしまっているようなKAN。
昨年は弦楽四重奏によるカバーアルバム「la RINASCENTE」をリリースしましたが、そこから約1年7か月。早くも弦楽四重奏によるリアレンジアルバムの第2弾がリリースされました。 今回のアルバムタイトルは「la RiSCOPERTA」。タイトルが似ていて前作と混合しそうですが、「生まれ変わる」という意味のフランス語だった前作に対して、本作はイタリア語で「再発見」という意味だそうです。

前作はDonald Fagenの「The Nightfly」のパロディーだったジャケット写真でしたが今回は・・・・・・KAN自らが色鉛筆で書いた絵だそうですが、何とも言えない味があります(婉曲表現)。ちなみにバイオリンを作る工房っぽい雰囲気なのに、なぜか全く無関係の顕微鏡を覗いている図というのにKANらしいユニークさを感じます。

さて肝心のアルバムの内容のほうですが、基本的には前作と同じ構造。最初「l’Addestramento dell’Arrangiamento」というインストのオリジナル曲(意味は「編曲のトレーニング」だそうです)からスタートし、その後は彼の代表曲のセルフカバーが続きます。前作では「愛は勝つ」や「まゆみ」のような大ヒットナンバーはあったのですが、今回のアルバムではそういうヒット曲はなく、ただファンにとってみたらおなじみのうれしい選曲になっています。「サンクト・ペテルブルグ」みたいなちょっと意外性ある選曲もあったりするのですが。また今回も前作同様、洋楽のカバーも。今回はThe Beatlesの「Back in the U.S.S.R.」としてBilly joelの「Lullabye」のカバーも収録しています。

前作「la RINASCENTE」の感想の時も書いたのですが、この手のJ-POPの弦楽アレンジは無駄にスケール感を出そうとしただけの平凡なカバーが少なくありません。ただ前作でのアレンジは必要最小限に抑えられたストリングスアレンジとなっており、シンプルで無駄のないカバーを聴かせてくれました。

今回のアルバムカバーに関しても同様。弦楽四重奏のアレンジといってもストリングスの音は比較的シンプルで控えめ。あくまでも「歌」を主軸としたアレンジとなっているため変なしつこさはあまり感じません。特に「永遠」「今年もこうして二人でクリスマスを祝う」は基本的にピアノを主体としたアレンジとなっており、静かなピアノ弾き語りのスタイルとなっています。まあ、そのため若干「だったらピアノ弾き語りでいいんじゃない?」と思わなくはないこともなかったのですが・・・(^^;;

一方The Bealtesのカバー「Back in the U.S.S.R.」は原曲準拠のアグレッシブなカバーに。こういうスタイルもありなんだというほど激しい弦楽四重奏の演奏となっており、とてもユニークな印象を受けました。また全体的に静かな楽曲が多い中、激しいこの曲をアルバムの真ん中に置くことにより、ちょうどよいインパクトとなっていたようにも感じます。

また、このThe Beatlesのカバーもそうですが、前作同様、弦楽四重奏のアレンジだからといって原曲のイメージを大きく変えているような曲はありません。むしろ原曲のイメージをいかに弦楽四重奏により再現できるかを意識しているようなアレンジに仕上がっていました。そういう意味でも聴いていて安心感もあるアルバムだったと思います。

前作同様、KANのアレンジャーとしての才能が光るセルフカバーアルバム。大味になるんじゃないか、という心配はご無用。彼らしい素敵なポップスの逸品に仕上がっていました。ただ、この企画どこまで続くのかな?次あたりはそろそろオリジナルアルバムを聴きたいのですが・・・。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!
6×9=53
弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば
la RINASCENTE


ほかに聴いたアルバム

What The World Needs Now/ゴスペラーズ

約1年半ぶりとなるゴスペラーズのニューアルバム。「永遠に」をプロデュースしたBryan-Michael Cox、Patrick"J.Que"Smithと再びタッグを組んだ楽曲がメインとなった構成になっています。とはいえ、基本的にはいつものゴスペラーズといった印象を受けるようなメロディアスなR&Bチューンがメイン。シンプルな良作といったイメージなのですが、これといって強いインパクトを残すような曲もなかったかな、という印象も。

評価:★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20
Soul Renaissance

FAB LIVE/フジファブリック

アルバムとしては約1年10か月ぶりとなる新作は、全曲タイアップ付きという5曲入りのミニアルバム。ゲストボーカルで山田孝之が参加して話題となった「カンヌの休日 feat.山田孝之」も収録されています。タイアップ付きということもあってか、楽曲自体はどの曲もそれなりにインパクトはある作品が並んでいますが、どうもこれといった特色が薄く、フジファブリックとしての個性は薄い印象も。ただ、正直、この傾向はここ最近のフジファブリックの曲に共通しているのですが・・・。

評価:★★★★

フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009

STAR
VOYAGER
LIFE
BOYS
GIRLS
STAND!!

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2018年11月29日 (木)

いまだに根強い人気の女性シンガーが1位2位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はいまだに根強い人気を保つ女性シンガーのベスト盤が1位2位に並んでランクインです。

今週は西野カナのベストアルバム「Love Collection 2~pink~」「Love Collection 2~mint~」がそれぞれ1位2位を獲得しました。デビュー10周年を記念したベストアルバムで、2013年にリリースした「Love Collection~pink~」「Love Collection~mint~」以来のベスト盤となります。初動売上はそれぞれ5万6千枚と5万5千枚。直近のアルバム「LOVE it」の7万9千枚(1位)からはダウン。ちなみに前回のベスト盤「Love Collection~mint~」「Love Collection~pink~」は初動売上14万7千枚(1位)及び14万6千枚(2位)でしたので、そちらよりもダウンとなっています。

3位にはロックバンド[Alexandros]「Sleepless in Brooklyn」が初登場。前作「EXIST!」で初の1位獲得となりましたが、今回は残念ながら西野カナのベストに阻まれこの位置に。また初動売上も3万9千枚と前作の5万9千枚からダウン。右肩上がりの人気が続いていましたが、とりあえずは人気はひと段落といった感じでしょうか。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会「TOKIMEKI Runners」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!」の一環である「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル」に登場するキャラクターによるキャラソン。初動売上2万2千枚でベスト10入りを果たしました。

6位には男性声優神谷浩史のミニアルバム「TOY BOX」が初登場でランクイン。初動売上は1万4千枚。前作「Theater」の2万枚(4位)からダウンしています。

8位には、基本的に顔見せをしないことでも話題の女性2人組アイドルグループClariS「Fairy Party」がランクインしています。初動売上は1万1千枚。前作「Fairy Castle」の1万6千枚(10位)からダウンしています。

最後10位には男女2人組ロックユニットGLIM SPANKY「LOOKING FOR THE MAGIC」が入ってきています。初動売上は7千枚。前作「BIZARRE CARNIVAL」の6千枚(7位)からアップ。著名人からの評価が妙に高い彼女たちですが、ある程度ブレイクしたものの、それ以降、いまひとつ伸び悩んでいる印象もあります。

ほかの注目盤としては、映画が日本でも大きな話題となっているQUEEN「ボヘミアン・ラプソディー(オリジナル・サウンドトラック)」が先週の5位から4位にアップ。売上も先週の1万7千枚から2万6千枚と大幅にアップしています。まだベスト10入りしてから3週目ですが、今後、映画のヒットと合わせてのロングヒットが期待できそうです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年11月28日 (水)

バクナン、強し!

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ダウンロード主体とのヒットとなります。

今週1位はback number「オールドファッション」が先週8位からCDリリースにあわせて再度ランクアップ。ベスト10入り3週目にして初の1位獲得となりました。TBS系ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」主題歌。CD販売数は4位に留まりましたが、ダウンロード数、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数いずれも1位を獲得。Twitter数は34位でしたが総合順位で見事1位獲得となります。ちなみにオリコンでは初動5万1千枚で4位初登場。前作「大不正解」の3万3千枚(3位)からアップしています。

2位は乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」が先週1位からワンランクダウンでこの位置。3位は韓国の男性アイドルユニット、東方神起「Jealous」が先週の97位からCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入りです。本作はCD販売数1位を獲得しており、オリコンは初登場1位を獲得しましたが、ダウンロード数は23位と低迷。Twitterつぶやき数も1位を獲得していますが、その他はランク外となり、総合順位ではこの位置に留まりました。ちなみにオリコンは初動9万1千枚で1位獲得。前作「Road」の8万6千枚(2位)からはアップしています。

続いては4位以下の初登場曲です。まず4位に一十木音也(寺島拓篤),聖川真斗(鈴村健一),四ノ宮那月(谷山紀章),一ノ瀬トキヤ(宮野真守),神宮寺レン(諏訪部順一),来栖翔(下野紘),愛島セシル(鳥海浩輔),寿嶺二(森久保祥太郎),黒崎蘭丸(鈴木達央),美風藍(蒼井翔太),カミュ(前野智昭)「雪月花」が初登場でランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」からのキャラソン。CD販売数3位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数3位のほかは圏外という結果に。オリコンでは同曲を収録した「うたの☆プリンスさまっ♪Eternal Song CD『雪月花』」が初動売上6万3千枚で3位に初登場しています。

9位には男性アイドルグループDa-iCE「雲を抜けた青空」が初登場でランクイン。CD販売数5位に対してダウンロード数は18位に留まっており、アイテム的にCDを購入するアイドルらしい人気傾向になっています。ほかにラジオオンエア数28位、PCによるCD読取数66位、Twitterつぶやき数23位を記録。オリコンでは初動売上3万9千枚で5位初登場。前作「FAKESHOW」の4万4千枚(3位)からダウンしています。

最後10位にはONE OK ROCK「Stand Out Fit In」が初登場でランクイン。来年2月にリリースが予定されているアルバム「Eye of the Storm」からの先行配信曲。ダイナミックなロックチューンというよりもアレンジにスケール感を覚えるメロディアスな洋楽テイストの強いナンバーになっています。ダウンロード数で2位、ストリーミング数で9位、ラジオオンエア数80位、Twitterつぶやき数35位、You Tube再生回数80位で見事ベスト10入りを果たしました。

さて今週のロングヒット曲ですが、まず米津玄師「Lemon」は先週の6位から5位にアップ。ダウンロード数3位、You Tube再生回数は2位をキープし、まだまだ根強い人気が続いています。また、同じく「Flamingo」は5位から7位にダウン。残念ながら下落傾向が続いており、「Lemon」ほどのロングヒットとはならなさそうですが、You Tube再生回数は3位を記録しており、まだまだヒットは続きそうです。

またDA PUMP「U.S.A.」は7位から6位にワンランクアップ。You Tube再生回数は今週も1位をキープ。ストリーミング数も3位をキープしており、こちらもまだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年11月27日 (火)

ラップの入門書の決定版(?)

ここ最近、テレビ番組「フリースタイルダンジョン」のヒットなどにより一気に若い世代に人気を広げてきた日本のHIP HOPシーン。その影響なのか、ここ最近、HIP HOPの入門的な書籍が多く発売されています。ここのサイトでも「日ポン語ラップの美ー子ちゃん」「文科系のためのヒップホップ入門2」などを紹介しました。そしてそんな中、HIP HOPの入門書、特にHIP HOPの歴史を知るための入門書として決定的な一冊になりそうな本が発売されました。それが今回紹介する「ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門」です。

本書はもともと、今年1月8日にNHK FMで放送された「今日は一日"RAP"三昧」を書籍化したもの。なにより注目したいのは、あのライムスター宇多丸がラップの歴史を語るという点。宇多丸といえば、日本ラップの黎明期から活動を続けるレジェンド、ライムスターのMCであり、ラジオパーソナリティーとしても人気が高く、またそのサブカルチャーに対する深い知識やしっかりとした論理構成、そして独特の視点から繰り広げるトークには定評があります。そんな彼がどのような「ラップ史」を語るのか、否応なく期待が高まります。

この番組では宇多丸の他、ライターの高橋芳朗、渡辺志保、DJでありレコ屋のバイヤーでもあるDJ YANATAKEが参加。それぞれがそれぞれの視点からラップの歴史について語っています。ただ、基本的には独自の視点といった感じではなく、あくまでもオーソドックスにラップの歴史を紐解いていく通史のような内容になっています。ラップの歴史をまとめたような書籍としては、ここまで紹介した「文科系のためのヒップホップ入門」が一時期大きな話題を集めました。同書では「HIP HOPは『音楽』ではなく場を楽しむツールである」という視点に基づいたラップ史観を展開していましたが、それに比べると本書で語られているのはある意味フラットな視点からのラップ史。そういう意味ではタイトル通り「入門書」としては実に最適な内容になっていました。

そして本書で一番ユニークだったのは海外の、というよりもアメリカのラップ史と並行して日本のラップ史が語られているという点。前述の「文科系のための~」では日本のラップは語られていませんし、ある意味、日本のラップ史を、それをアメリカと対比する形で語られているのはいままであまりなかったのではないでしょうか。それだけに日本のラップ史の部分も非常に興味深く読むことができました。また、いとうせいこう、スチャダラのBose、Zeebra、漢が(インタビューを含めて)参加しており、彼らの視点から語られる「ラップ史」も貴重な証言。そういう意味でも興味深い内容に仕上がっています。

ただ、本書を読んでいくにあたって、いくつか気になるような点がありました。まず今回の本書、基本的にラジオ番組の内容をそのまま書き下ろしたもの。ラジオ番組ならではの和気藹々とした雰囲気が伝わってくる反面、若干話としてまとまりのない部分もあったかな、という印象も受けます。特にみなさんがおそらく疲れてきたであろう後半戦(^^;;全284ページというなかなか分厚い本になっているのですが、ラジオの雰囲気を無視して大胆に構成しなおせば、半分・・・とはいわないまでも3分の2くらいにまとまりそう・・・。

あと、日本のラップ史の中で、ある程度予想していたんですが、やはりDragon Ashの存在って、ある程度無視されるんだな、という点も気になりました。確かにDragon Ashはラップという観点で見るとスキル的にいまひとつだし、決して評価されないグループかもしれません。ただ、日本のラップ史にとってDragon Ashのブレイクというのはあきらかな分岐点。ラップシーンの渦中にいる人だとあまり感じなかったかもしれませんが、Dragon Ashブレイク以前は普段HIP HOPを聴かなかったような一般リスナー層にとって当時、ラップというのは正直言えば「コミックソング」的な扱いを受けていました。それがDragon Ashの「Let yourself go, Let myself go」がヒットし、さらに「I LOVE HIP HOP」「Greateful Days」が大ヒットしたことにより一気にHIP HOPのイメージが「コミックソング」から「カッコいい音楽」にシフト。一気にHIP HOPというジャンルがブレイクしました。そういう意味ではラップのスキルはともかくとして彼らの存在は日本のラップ史において相当大きいと思うのですが、残念ながらあまり語られていませんでした(若干触れられてはいるのですが)。

そんな訳で若干残念に感じた部分もあるのですが、全体的には上にも書いた通り、最近HIP HOPに興味を持ち、ラップの歴史が気になった人にとってはほどよくまとめられている最適な一冊だと思います。特に今年1月の放送とはいえ、最新のトラップミュージックまでしっかりとキャッチアップしており、最新情報もしっかりと網羅している意味では入門書として最適。基本的に対談形式なのでサラッと読める点も入門書としては大きなプラス。私自身、非常に勉強になった1冊でした。

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2018年11月26日 (月)

いつまでも聴いていたくなるような・・・

今日、紹介するのは山下達郎が監修・選曲を行い話題となったドゥーワップのコンピレーション3枚です。ドゥーワップは1950年代から60年代にかけてアメリカで一世を風靡したジャンル。主に黒人のコーラスグループから成り、メロディー以外に「ドゥーワー」などのリズミカルな歌い方を加えていることが大きな特徴。山下達郎はこのドゥーワップの熱心のファンで、ライブの際の客入れの音楽には必ずドゥーワップを流しているとか。まさに日本屈指のドゥーワップマニアともいえる山下達郎によるドゥーワップコンピということでも大きな注目を集めています。

Title:Deserie-Doo Wop Nuggets Vol.1

Title:Your Tender Lips-Doo Wop Nuggets Vol.2

まずVol.1とVol.2。こちらは山下達郎のライブの際の客入れの際に用いた曲から選曲された計31曲が収録されています。収録曲は山下達郎の好みによる部分が大きく、決して「ドゥーワップ入門」的なスタンダードナンバーではないとか。それだけに知る人ぞ知る的なグループの曲が並んでいるようですが、そこはさすがの山下達郎選曲。収録曲にはずれはありません。

特にVol.1の1曲目、タイトルチューンThe Chartsの「Deserie」はいきなり美しいハイトーンボイスのコーラスからスタート。その切ないメロディーラインにいきなり胸がキュンと締め付けられるような感覚に陥ります。

基本的には美しく重厚なコーラスラインをバックに、胸キュンの美メロをしんみりと聴かせてくれるポップソングがメイン。ブラックミュージックといってもソウル、ゴスペルやあるいはブルースとも異なる軽快で明るいポップスがメインなので幅広い層が楽しめそうな楽曲となっています。特にこのメロディーラインの美しさは天下一品で、ついつい聴きほれてしまう曲の連続。かの山下達郎が昔からドッブリとはまり込んでいる理由もわかるような気がします。

またドゥーワップと一言で言っても曲によって様々なバリエーションがあり、例えば「Deserie」収録のThe Capris「It Was Moonglow」は女性ボーカルでムーディーに仕上がており、ブラックミュージック的な要素をほとんど感じません。また同じく「Deserie」収録のKripp Johnson「I'm Spinning」はラテン風のリズムが入り、軽快なナンバーに仕上がっています。

この2枚のうちでは特に2枚目「Your Tender Lips」の方によりキュートで甘~い曲が多かったような印象を受けます。例えばThe Duvals「You Came To Me」ではファルセットボイスや話しかけるようなボーカルを駆使して甘い歌声を聴かせてくれますし、The Wrens Featuring Bobby Mansfield「C'est La Vie」ではミディアムテンポで感情たっぷりに歌い上げるボーカルが甘くてとても印象に残ります。またアルバムの最後を飾るThe Modern Redcapsの「Golden Teardrops」も優しい歌声にタイトル通りの切ないメロディーが心にキュンとなるナンバー。ずっと聴いていたくなるような、心の奥に染み入ってくるような曲が並びます。かと思えばThe Corvairsの「True True Love」はボイスパーカッションが軽快でコミカルなナンバー。単なる甘く切ないだけではないドゥーワップの懐の深さを感じます。

Title:That's My Desire-Doo Wop Nuggets Vol.3

そしてこちらは第3弾となるのですが、こちらは山下達郎がアルバム「オン・ザ・ストリート・コーナー」で取り上げたカバー曲の原曲が収録されています。そのため比較的有名なナンバーが多く、かつ、厳密にはドゥーワップではない曲も収録されています。例えばBen E.Kingの「Stand By Me」なんかは誰もが知っているスタンダードナンバーですね。またドゥーワップというよりもソウルの名曲として知られています。

そのためほかの2枚と比べるとちょっと毛色が違う感じで曲のバラエティーも豊富。とはいえ、こちらももちろん名曲揃い。例えばThe Teenagers Featuring Frankie Lymon「Why Do Fools Fall In Love」はジャズ的な要素も強い軽快なガールズポップといった感じなのですが、とても楽しいポップチューンを聞かせてくれますし、Dion Di Mucci「Drip Drop」は軽快なバンドサウンドも入り、ロックンロールの色合いも強い楽曲になっています。

もちろんこのVol.3でもキュートで甘いメロディーの曲も数多く収録。特にThe Flamingos「I Only Have Eyes For You」は夢見心地なメロディーラインについうっとりしてしまう名曲。そんな心地よいナンバーが数多く収録されています。

本当に3作とも美メロのポップチューンの連続で、いつまでも聴いていたいような感覚に陥るような名曲揃い。実に心地よい時間を過ごすことが出来るポップチューンの連続で、ドゥーワップという音楽の魅力にこれでもかというほど触れることが出来ます。ドゥーワップを知っている人もあまり知らない人も、文句なしにお勧めできるコンピレーションアルバムでした。

評価:いずれも★★★★★

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2018年11月25日 (日)

3人のDIVAがまさかの集結

Title:UPLOAD
Musician:SILVA DOUBLE SUGARSOUL

SILVA、DOUBLE、SUGARSOUL、いずれも主に90年代、日本のポップシーンにR&Bというジャンルがようやく浸透してきたころに一世を風靡したDIVA(・・・という言い方も最近はあまりしなくなりましたが・・・)3人。
今年、奇しくも同時にデビュー20周年を迎えた彼女たちがまさかのコラボ。そしてリリースされたのが今回の5曲入りのミニアルバムとなりました。

アラフォー世代の私にとっては20代後半あたりにかなり聴いていた3人の歌姫がまさかのコラボということでまさに「胸熱」なのですが、このコラボにビックリしたのはこの3人、同じDIVAと呼ばれつつも、その音楽性に違いがあったからです。

同じR&BでもSILVAはもうちょっと歌謡曲色が強い印象。DOUBLEは王道のR&B、そしてSUGARSOULはHIP HOP寄りという傾向が強く、その音楽性に違いがみられました。さらに3人とも正直言ってここ最近はヒットシーンにほとんど顔をのぞかせなくなっており、特にSUGARSOULは2010年にKAMとしての活動を行ったものの昨今はほとんど活動休止状態。それだけに今回の突然のコラボは個人的にも驚いたニュースでした。

そしてそんな3人のコラボ曲「UPLOAD」は、いきなり「朝まで生テレビ」のテーマ曲のサンプリングからスタートするダイナミックなナンバー。楽曲的には90年代あたりのR&Bのテイストの強いナンバーなのですが、力強い3人のボーカルにテンションが一気にあがる曲になっています。

ただちょっと残念なのですが今回、3人がコラボしているのはこの1曲のみ。残りは3人それぞれのソロ曲が3曲と、「UPLOAD」のリミックスが収録されている構成になっています。その3曲はそれぞれの持ち味が生かされた曲になっており、DOUBLEの伸びやかなボーカルを聴かせる「Good Day」。トライバルなリズムが軽快なSILVAの「Emergency」「ヤマトナデシコなんて私無理」というサビの歌詞がSILVAらしい感じ。「minna da dance」もタビーな雰囲気のレゲエ調のナンバーもSUGARSOULらしさを感じさせます。

そんな訳で3人のDIVAそれぞれの持ち味もしっかりと発揮されたミニアルバムになっているのですが、個人的には3人のコラボをもっと聴きたかったな、というのが率直な感想。3人のコラボを4曲+それぞれのソロ2曲ずつ計10曲入りのフルアルバムくらいで聴きたかったかも。正直言うと、そういう意味ではちょっと物足りなさも感じてしまったアルバムでもありました。

現在はさほど積極的に音楽活動を行っていない3人。とはいえ、本作を聴く限り、その魅力的な歌声はいまだに健在な模様。是非これを機に、また積極的な音楽活動を期待したいところです。

評価:★★★★

そして、このアルバムリリースのタイミングにあわせてSUGARSOULが2003年にリリースしたベストアルバム「sugar soul」にリマスターを施したアルバムを再発してきました。

Title:sugar soul<Remasterd>
Musician:SUGARSOUL

2003年にもリアルタイムで聴いていた本作。今回久々に聴いたのですが、もう20年ほど前の曲も収録されているにも関わらず、非常にかっこいい楽曲が並んでいます。楽曲的にはソウルを主軸にHIP HOPやレゲエ的な要素を色濃く入れたサウンドとなっており、そんな中でSUGARSOULのパワフルなボーカルが強く耳に残ります。

特にHIP HOPに関して言えばこの20年、世界的にも日本においても大きく変化したジャンル。それにも関わらずこのアルバムに収録している曲にほとんど古さを感じないのは、当時から高いスキルのラップを組み込んでいたという点もあるでしょうし、また楽曲のメインとなっているのがあくまでもSUGARSOULの歌であることも大きな要因のように感じます。彼女の力強いボーカルの魅力は時代を超えて普遍的。そのため、今聴いても、まったく古さを感じないのではないでしょうか。

今回あらためてユニークさを感じたのが1曲目に収録されており、彼女の代表曲とも言える「今すぐ欲しい」。セックスをテーマとした楽曲で、なおかつ女性の性欲について積極的かつ肯定的に歌詞に組み込んだ内容は、今聴いても新しさを感じますし、このようなテーマの曲をあえて歌うあたり、彼女のすごさを感じてしまいます。

さらに本作ではSUGARSOULとしての待望の新作「Moonlight Dance」を収録。こちらはシンプルなレゲエのナンバーなのですが、物悲しさを感じるサウンドとメロが印象に残るナンバー。彼女のその歌声ももちろん今も健在でした。

3人のコラボ、そしてこのベスト盤の再発に続いて彼女も本格的に活動を再開してほしいなぁ。彼女も唯一無二の個性的なシンガーなだけに、活動休止状態なのは非常に残念。今後の活動がどうなるかわかりませんが・・・SILVA、DOUBLE、そしてSUGARSOUL。3人のこれからの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

DOUBLE 過去の作品
10 Years Best WE R&B
THE BEST COLLABORATION
Ballad Collection Mellow
WOMAN
SINGLE BEST


ほかに聴いたアルバム

HOUSE/yonige

前作「girls like girls」がデビュー作ながらもいきなり大ヒットを果たしたyonigeの新作は7曲入りのギターロック。疾走感あるサウンドが心地よいシンプルな楽曲がメイン。「どうでもよくなる」など女性の恋愛をめぐる切ない心象を描いた歌詞は本作も健在。最後の「笑おう」は楽曲の中で聖者の行進を取り入れていたり、ちょっとベタすぎる部分は気になるのですが・・・。気になる部分はありつつ、とりあえず次のフルアルバムへの期待も高まる1枚でした。

評価:★★★★

yonige 過去の作品
gilrs like girls

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2018年11月24日 (土)

10年来のプロジェクト

Title:Big Red Machine
Musician:Big Red Machine

今回紹介するのは非常に興味深いミュージシャンの組み合わせによる新プロジェクト。Bon Iverのジャスティン・ヴァーノンと、アメリカのインディーロックバンドThe Nationalのアーロン・デスナーの2人による新プロジェクト。もともと2008年にリリースされたエイズ撲滅のためのチャリティ・アルバム「Dark Was The Night」の制作時に、アルバムのプロデューサーを務めたデスナーが「Big Red Machine」と名付けられたアイデア・スケッチのインストゥルメンタルをヴァーノンに送ったことがはじまり。その後、様々なイベントにBig Red Machineとして出演し、苦節(?)10年、ようやくアルバムのリリースに至りました。

さて、そんな待望のニューアルバムな訳ですが、まずはとてもメロディアスでポップ、心に染み入るような人間味ある暖かいメロディーラインと、それに相反するかのようなエレクトロサウンドの組み合わせが耳を惹きます。アルバムの冒頭を飾る「Deep Green」はミディアムテンポの暖かいメロディーラインのバックに流れるのは細かくリズムを刻むエレクトロビート。続く「Gratitude」も力強く歌い上げるボーカルに対して、飛び跳ねるような硬質のエレクトロビートが響きます。

ただし中盤以降はエレクトロサウンドは鳴りを潜め、前半と同様のしんみりと暖かみのあるメロディーラインに対して、バンドサウンドやピアノなどを用いた分厚いサウンドが印象に残ります。「Hymnostic」などはまさにそんなタイプの楽曲。「Forest Green」もゆっくりと分厚いギターの音色に若干トライバルな様相もある力強いドラマのリズムが印象的。タイトル通り、森の中を歩くかのような雰囲気のあるポップチューンに仕上げています。

さらに後半、「People Lullaby」ではピアノの音色とファルセットボイスで美しく歌い上げる神秘的な雰囲気すらあるナンバー。続く「I Won't Run From It」はアコギで爽やかに聴かせたかと思えば、ラストを締めくくる「Melt」はノイジーなギターサウンドを前に押し出したサイケロックのテイストも感じるナンバーと最後まで実にバラエティーに富んだ展開が楽しめるナンバーになっています。

基本的にはBon IverもThe Nationalもメロディーラインが実に魅力的なバンドで、共通項の多いバンド。今回のアルバムに関しても、おそらくどちらのファンの方も気に入りそうな暖かい美メロが魅力的なポップチューンの並ぶアルバムに仕上がっていました。

ただファルセットボイスを用いて美しい歌をシンプルに聴かせるBon Iverに比べると、このバリエーション富んだ作風はThe Nationalに近いものもあるかも・・・とも思うのですが、Bon Iverも直近作「22,A Million」では実験的な作風に挑戦しているんだよなぁ。ただ、「実験的」というよりも様々なアイディアで音楽性を広げているというイメージが強く、The Nationalの直近作「Sleep Well Beast」に近い作りと言えるかもしれません。

ともあえれ、ヴァーノン、デスナーそれぞれがその魅力をしっかりと詰め込んだ傑作アルバムであったのは間違いありません。特にメロディーラインの良さはまさに絶品。実に心地よく最後まで楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Blue Hour/suede

90年代に一世を風靡したイギリスのギターロックバンドsuede。2003年に活動を休止したものの2011年以降活動を再開。活動再開後、3部作と称したアルバムをリリースし、本作はその3部作の最終作となります。

基本的に分厚いサウンドに耽美的な雰囲気の歌い方とメロディーライン。イメージ的には日本のヴィジュアル系を彷彿とさせる感じなのですが、メロディーには哀愁感があり、日本人にもなじみやすそう。本作もファンタジックな作風が心地よく、特に後半のメロディーラインが非常に美しく聴かせます。なにげに再結成後も本国イギリスでは高い人気を保つ彼ら。まだまだその勢いは続きそうです。

評価:★★★★

suede 過去の作品
night thoughts

Tha Carter V/Lil Wayne

「Tha Carter」シリーズとしては約7年ぶりとなるアメリカのラッパー、Lil Wayneのニューアルバム。トラップのサウンドを大胆に取り込み、哀愁感あふれるメロディーセンスを感じるラップを聴かせる楽曲が多く、ある意味、今時の流行と取り入れたような内容になっています。ただその中でも力強いラップと十分にインパクトあるサウンドで全23曲、90分近くに及ぶ長さながらもしっかりと聴かせてしまえるのは、さすがの実力を感じられました。

評価:★★★★★

LIL WAYNE 過去の作品
THA CARTER III
THA CARTER IV
Dedication 4
Dedication 5
I Am Not A Human Being II

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2018年11月23日 (金)

「デモ音源」的なピアノ弾き語りアルバムだが・・・

Title:Piano&A Microphone 1983
Musician:PRINCE

主に80年代においてマイケル・ジャクソンと並びポップミュージック界を代表するミュージシャンとして一世を風靡したミュージシャン、PRINCE。もちろん90年代以降もコンスタントに活動を続け、数多くの名曲、名盤を世に送り出してきましたが、2016年に57歳という若さで急逝。音楽ファンに大きなショックを与えました。

それから約2年。もし存命だったらちょうど60歳の誕生日となる今年6月7日にリリースが発表されたのが本作。タイトル通り、1983年に自宅スタジオにてカセットテープへの録音という形で収録された音源をアルバム化したもの。基本的にはピアノ弾き語りによるデモ音源で、今回はじめてリリースされた未発表音源集となっています(ブート盤で世に出たことはあったようですが・・・)。

デモ音源集、ということで聴く前はPRINCEに関する音源は何でも聴きたいファンズアイテムのようなアルバムで、貴重な音源ではあるものの内容的にはあまり期待できないもの・・・このアルバムを聴く前は正直、本作に関してこのように感じていました。実際、アルバムを聴き始めると最初はPRINCEの話し声が登場し、録音状態も粗い、いかにもデモ音源な雰囲気の内容になっており、そのためさほど期待しない中でアルバムを聴き進めていきました。

しかし、そんな「所詮はデモ音源」というイメージはアルバムを聴き進めるうちに徐々に覆ってきます。基本的にピアノのみの演奏とPRINCEの歌というスタイルなのですが、ピアノは実に力強くファンキーなリズムで奏でられており、PRINCEのボーカルも決してデモだから力を抜いているということは全くなく、本番さながらの力強い歌声を聴かせてくれます。確かに本作に収録されている作品は完成形の前段階であるデモ音源であるかもしれませんが、これはこれでピアノ弾き語りの作品としてひとつの完成形である、とすら言い切れる出来栄えとなっていました。

特に、80年代に発表された曲に関しては、原曲がいかにも80年代的なサウンドがほどこされてしまい、今の耳で聴くと少々古臭く感じてしまう部分が否定できないのですが、本作に収録されているバージョンではピアノのみの弾き語りであるため、むしろ新鮮に聴けてしまうほど。例えば「Purple Rain」はご存じ1984年にリリースされた彼を代表する名盤の表題曲ですが、オリジナルは今聴くと、いかにも80年代なアレンジが気になってしまう反面、本作でのバージョンは本作のコアな魅力がはっきりと表れており、今の耳で聴くと、むしろこちらのヴァージョンの方が魅力的にすら感じてしまうほど。わずか1分27秒のデモ音源なのですが、もっと聴き続けたい気分にさせられてしまいます。

今回のアルバムではほかにも既発表曲の原型となっている「17 Days」や「Mary Don't You Weep」などが収録されているほか、後半では今回のアルバムで初収録となっている未発表曲も収録されています。その中でも特に素晴らしかったのが「Cold Coffee&Cocaine」で躍動感あふれるピアノの演奏と、それにあわせるかのようなファンキーなPRINCEの歌声が実に迫力たっぷりに耳に飛び込んでくる名演奏。これが未発表だったとは、信じられない素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

そんな訳で最初はデモ音源集ということであまり期待しないで聴いていたアルバムでしたが、実に素晴らしい傑作アルバムになっていました。ピアノの演奏だけで彼の曲を聴くスタイルだっただけに、PRINCEの楽曲の魅力の一番コアな部分がはっきりと伝わってくるアルバムだったと思います。いままで何作か、彼のアルバムは聴いてきましたが、今回のアルバムを聴いてこれほど素晴らしい名曲を作り出し、そしてファンキーな歌声を聴かせてくれるミュージシャンだったのか、とその魅力を私自身、再認識したほどでした。

本作は一部の熱心なファン向けのファンズアイテムではなく、音楽ファンなら聴くべきPRINCEのニューアルバムだと言えるでしょう。PRINCEといえば生前、その衰えのない創作意欲で知られ、一節には未発表曲だけで今後、100年分のアルバムがリリースできるといわれているほど。確かにピアノ弾き語り集でこれだけの質のアルバムがリリースされるのなら、今後もかなり期待できそう。その出来栄えにかなり驚かされた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH

ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM

HITnRUN Phase One
HITnRUN Phase Two
4EVER


ほかに聴いたアルバム

Monster Exist/Orbital

日本ではunderworld、THE CHEMICAL BROTHERS、PRODIGYと並び、「テクノ四天王」と呼ばれるイギリスのテクノユニットによる約6年ぶりの新作。サウンド的にはシンプルで奇をてらわないリズミカルなテクノチューン。メロディーラインには全体的に哀愁感があり、メロディアスなポップスとして楽しめる楽曲が並びます。全体的にはおとなしい印象ですが、日本盤のボーナストラックとして収録されている「Satan」のライブ音源はライブ向けのアゲアゲのサウンドとなっており、ライブはライブで楽しそうだな・・・という印象も。

評価:★★★★

Orbital 過去の作品
Wonky

Double Negative/Low

スロウコアの代表的なバンド、Lowのニューアルバム。スロウコアというジャンルについては今回はじめて聴いたのですが、Wikipediaによると「寒々とした暗いメロディと歌詞、抑制の効いたスローテンポのリズムにミニマリスティックなアレンジが施される。」ことが特徴的な音楽のジャンルだそうです。本作に関しては前半から中盤にかけて、非常に静かでダークなノイズが流れるミニマルテイストのサウンドが続きます。一方、後半はメロディーを前に出した歌モノの曲も多く、この哀愁感あるメロが心をうつような曲も目立ちます。全体的にダウナーなサウンドなのですが、どこか幻想的で美しさを感じるような曲が多く、そのサウンドが強く心に残る1枚でした。

評価:★★★★★

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2018年11月22日 (木)

「ラップ」がここまで浸透したのかぁ・・・

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

最近、すっかりお茶の間レベルまで浸透したラップ。最近は特にテレビ番組の影響でフリースタイルバトルなどの人気も高まり、一種のブームとも言えるような状況となってきていますが、今回の1位はそんな状況を象徴するような結果となっています。

今週、アルバムチャートで1位を獲得したのがMAD TRIGGER CREW・麻天狼「MAD TRIGGER CREW VS 麻天狼」。男性声優キャラによるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」からのキャラソン。以前にも書いたのですが、HIP HOPとアニメファンって、ファン層的にもっとも遠い存在のように思っていたのですが、それがこのように結びつくという点にラップバトルがすっかり世間一般に浸透したということを感じさせます。ただ一方で、今後のことを考えると、正直言って、ラップというジャンルが消費されすぎている感があって、長期的にみるとこういう取り上げられ方は決してプラスになるとは限らないような感もあります。まあ、良くも悪くもHIP HOPもロックと同じようにポピュラーミュージックの「単なる一ジャンル」になったという感じもするのですが。初動売上7万2千枚で、同シリーズの前作、Fling Posse・麻天狼「Fling Posse VS 麻天狼」の5万5千枚(3位)からアップ。

2位初登場は男性アイドルグループ超特急「GOLDEN EPOCH」がランクイン。アルバムとしては初となるベスト3ヒット。初動売上3千枚は前作「Dramatic Seven」の4万1千枚(4位)からダウンしています。

3位は先週1位を獲得したTWICE「YES OR YES」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に刀剣男士 team幕末 with巴形薙刀 「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~結びの響、始まりの音~」が入ってきました。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカルの出演俳優によるアルバムで、刀剣男士 team幕末 with巴形薙刀名義としては初のアルバムリリースとなります。初動売上は1万9千枚。同シリーズの前作刀剣男士 formation of つはもの「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~つはものどもがゆめのあと~」の1万6千枚(5位)からアップしています。

6位初登場はつばきファクトリー「first bloom」。ハロプロ系女性アイドルグループで、フルアルバムとしては本作が初。またアルバムでのベスト10入りも本作が初となりました。初動売上は1万6千枚。

7位には西川貴教が総合プロデュースを手掛けるアニメキャラによるアイドルプロジェクトB-PROJECTのドラマCD「KING of CASTE ~Sneaking Shadow~」が先週の27位からランクを大幅に上げてベスト10入り。一般発売日は11月14日だったのですが、11月10日、11日と池袋サンシャインシティで行われたイベント「アニメイトガールズフェスティバル2018」で先行販売していたため、先週、初動売上2千枚でランクイン。今週は売上枚数を1万4千枚に上げ、ベスト10ヒットとなりました。ちなみに同プロジェクトによる前作MooNs「GO AROUND」は初動売上6千枚(8位)でしたので、今週の売上はその初動売上を上回りました。

8位にはずっと真夜中でいいのに。「正しい偽りからの起床」がランクイン。ACAねと名乗る女性ボーカルを中心としたプロジェクトで、著名なボカロPやアニメーターなどが参加していることで、You Tubeの動画などから話題となった「謎のプロジェクト」。今回、デビューアルバムが初動売上1万4千枚でいきなりのベスト10ヒットを記録しました。

最後9位には絢香「30 y/o」がランクイン。前作から約3年半ぶりとかなりインターバルが空いてしまいました。結果、初動売上1万2千枚と、オリジナルアルバムとしての前作「レインボーロード」の3万3千枚(3位)から大幅ダウン。また直近のリリースとなるベスト盤「THIS IS ME~絢香 10th anniversary BEST~」の2万9千枚(3位)からもダウンという厳しい結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年11月21日 (水)

乃木坂46が1位獲得

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位はまずはタイトル通りです。

1位初登場は乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」。先週の10位からランクアップし、CDリリースにあわせて1位獲得です。CD販売数1位、ダウンロード数8位、ストリーミング数4位、ラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数1位、You Tube再生回数44位。アイドル系としては珍しくダウンロード数よりストリーミング数の順位が上回っており、比較的浮動層の支持が広がっていることを伺わせます。オリコンでは初動売上106万2千枚。前作「ジコチューで行こう!」の98万8千枚よりアップしています。

2位はBUMP OF CHICKEN「話がしたいよ」。映画「億男」主題歌。CD販売数3位、ダウンロード数12位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数86位、You Tube再生回数72位。配信限定でのシングルリリースが続いており、CDシングルのリリースは2015年の「Hello,world!」以来、実に約3年7ヶ月ぶりとなりました。10月29日付チャート以来4週ぶりのベスト10返り咲き。CDリリースに合わせてのランクアップに。オリコンでは初動売上5万7千枚で3位初登場。前作「Hello,world!」の15万枚から大幅ダウンに。ただし、前作はCDに同封されているライブイベントの応募券による効果が大きく、前々作「firefly」は初動7万7千枚でしたので、こちらとの比較の方がよいかも。

3位初登場はスターダストプロモーションの男性アイドルグループM!LK「Over The Storm」が初登場でランクイン。CD販売数2位のほかはPCによるCD読取数43位、Twitterつぶやき数81位、そのほかは圏外と典型的な一部の固定ファンに支えられている傾向に。オリコンでは初動売上6万2千枚で2位初登場。前作「ボクラなりレボリューション」の3万8千枚(5位)よりアップ。

続いて4位以下の初登場曲です。といっても今週初登場曲は1曲のみ。10位にTHE YELLOW MONKEY「天道虫」が先週の16位からランクアップしベスト10入り。テレビ東京系ドラマ「天 天和通りの快男児」主題歌。ドラマは見ていないのですが、漫画のイメージにピッタリあいそうな、くすんだ雰囲気がカッコいいナンバーに。ダウンロード2位そのほかはランク圏外という結果でしたが、配信限定のシングルで見事ベスト10入りです。

その他ロングヒット組では米津玄師「Lemon」は3位から6位にダウン。さすがに少々失速気味。ただし、ダウンロード数はいまだに3位をキープ。You Tube再生回数も2位を記録しており、まだまだロングヒットは続きそう。ちなみに「Flamingo」も2位から5位にダウン。こちらは残念ながらダウンロード数4位、You Tube再生回数4位といずれも「Lemon」を下回っており、前作ほどのロングヒットは望めなさそう。

一方、DA PUMP「U.S.A.」は今週も7位をキープ。You Tube再生回数は先週の2位から1位に返り咲いており、まだまだ強さを見せつけています。紅白の出演が決まり、これから年末に向けて露出も多くなりそうな予感もしますし、まだ上位を狙えそうな予感も。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年11月20日 (火)

まさかの名古屋公演!

PAUL McCARTNEY FRESHEN UP JAPAN TOUR 2018

日時 2018年11月8日(木) 18:30~ 会場 ナゴヤドーム

Paul1

ついに行ってきました!ポール・マッカートニーライブ@ナゴヤドーム。実は彼のライブは2014年の大阪公演のチケットを確保していましたが、彼の体調不良のため急きょ中止という事態に涙をのんだことがあります。それから4年。一生に一度は見ておきたいと思っていたポール・マッカートニーのライブ。それもなんと、史上初の名古屋でのライブ(!)。もう、これは行くしかない、ということで満を持して会場に足を運びました。

当日は仕事で若干のトラブルがあり、会場に着いたのが18時50分頃。遅刻した・・・と思ったのですが、自分の席につくとほぼ同時にライブがスタート。約20分押しのスタートとなり、結果として無事、最初からライブを見ることが出来ました。席はステージのほぼ真横のスタンド席。ステージとの距離は比較的近いとはいえ、真横のため若干見にくい場所に。ただ、ポール本人をしっかりとこの眼に焼き付けることが出来ました。まずは本物のポール・マッカートニーを見ることが出来て、大感激です。

ライブはまず「A Hard Day's Night」からスタート。いきなりおなじみのビートルズナンバー。何度も聴いたことある曲。さすがに御年76歳のポールなだけにボーカルの艶は寄る年波には勝てない感じとはいえ、本人が、生で歌っているという状況に大感激しました。続いては「Juniors Farm」。WINGSの曲ですね。こちらも懐かしいナンバーを生で聴けて大感激です。

続いてのMCは、まずは日本語で「コンバンワ!ナゴヤ!」。ポールの口から「名古屋」の言葉が聴けたのも大感激。その後は英語で「古い曲、新しい曲、中間の曲、いろいろやるよ」。この日は会場のモニターに同時通訳によるMCの日本語訳もついており、若干怪しげな訳もあったりしたのですが(彼の新譜「Egypt Station」を曲名と勘違いした訳が登場したり)、ポールの言葉がすべてわかるというのはとてもうれしく感じました。

その後もその彼のMCの通り、基本的にポール・マッカートニーのビートルズ、WINGS、ソロ名義の曲を含めてのオールタイムベスト的な選曲に最新アルバム「Egypt Staion」の曲がからむ形での選曲に。また「最後のパートをジミ・ヘンドリックスに捧げます」としてビートルズの「I've Got A Feeling」を、さらに今の奥さん、ナンシーために書いたという「My Valentine」も。ちなみにナンシーも来日していてこの日のライブを観客席で見ていたそうです。

その後も「From Me To You」や「Love Me Do」などビートルズのヒット曲が惜しみなく披露される中、「この曲をジョンに捧げます」としてジョンの死後に書いた「Here Today」へ。この曲にはおもわず胸が熱くなってしまいます。

さらに「Lady Madonna」「Eleanor Rigby」などおなじみのナンバーにワクワクしながら、「Egypt Station」の曲「Fuh You」に入る前の短いMCで、なんとポールが「ツギハ シンキョク ダガヤ」とまさかの名古屋弁を披露(笑)。これには会場中、大盛り上がりとなりました。

そして「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」に続くMCコーナーではウクレレが登場。それを簡単につま弾きつつ、「ジョージはウクレレが上手かったんだよね」とジョージ・ハリスンとの思い出を語ります。ジョージの家に遊びに行った時に一緒にウクレレを弾いたとか。そこからジョージ・ハリスンの「Something」へと突入。最初はウクレレでのアレンジに。バックにはジョージの写真も映し出され、しんみりとしてしまいました。

そこからは一気に明るく、「みんなで歌おう」というMCに続き「Ob-La-Di, Ob-La-Da」へ。特に日本で人気の高いナンバーなだけに会場は盛り上がります。そしてその後もポールが一言「デラ サイコー」とまたまた名古屋弁の登場に会場が湧くと、WINGSの「Band On The Run」、そしてビートルズ「Back In The U.S.S.R.」。こちらはかなり激しいステージとなっており、終盤にかけて会場のテンションはどんどんと上がっていきました。

続いてはポールがピアノを弾きつつ「Let It Be」へ!この曲を生で聴けたというのはうれしすぎます!もうしんみりとその歌声に聴きほれました。さらに会場中にスマホのライトがチラホラと照らし出され、まるで星空のような美しい風景が広がりました。

Paul2

本編ラストは「Live And Let Die」からまたもやピアノの弾き語りで「Hey Jude」へ!こちらも是非とも聴きたかったビートルズのナンバー。最後の「Na Na Na Na・・・」では大合唱も起こります。ちなみにアリーナ席ではこの曲にあわせて「NA」と大きく書いたプレートも登場。よくよく見ると「NA」に続き「goya」という小さな文字が書かれていて、名古屋のステージらしさを感じました(笑)。

もちろんその後はアンコールへ。ちょっと時間がかかるかな、と思いきや、数分程度であっさりと再登場。この日、座席にはA3の大きな白い紙が配布されており、アンコールの時に掲げるように指示されていたのですが、それを掲げると、アリーナに大きな日の丸と、スタン席には「JAPAN」の文字が浮かび上がる嗜好となっていました。

アンコールではビートルズの「Birthday」から、選曲がちょっと意外だった「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)」、そしてこの日、個人的に一番印象に残ったのは続くビートルズの「Helter Skelter」でした。

この曲、ご存じの通り、史上初の「へヴィーメタル」とも言えるビートルズ史上最も激しいナンバー。この日のステージでは予想以上にへヴィーなバンド演奏に。ポールも、なんと76歳にして、年齢を感じさせない力強いシャウトを披露。確かに「元祖へヴィメタ」という呼び名も納得の、激しい演奏を聴くことが出来ました。

そしてラストは、ビートルズの事実上最後のアルバムと言われる「アビイ・ロード」の、実質的にラスト3曲となる「Golden Slumbers」「Carry That Weight」そして「The End」で締めくくり。ある意味、「粋」な締めくくりの選曲になりました。最後の最後はステージ上に置いてあったドアラの人形(!)を手の会場を去ります。まさに名古屋らしい締めくくりとなった、約2時間半のステージでした。

まさにオールタイムベストという選曲に感動感動の2時間半。なによりも一生に一度は見ておきたかったポール・マッカートニーのライブが見れて感動の一言です。彼のようなミュージシャンに対しては、最近「レジェンド」という言葉がよくつかわれますが、彼に関しては「レジェンド」という言葉以上に、もう「歴史上の偉人」という表現の方がピッタリと来そう・・・。とにかく見れてよかった・・・そんなステージでした。

ただステージ自体は決して「昔の思い出に浸った」という感はあまりありません。最初に「寄る年波には・・・」とは書いたのですが、ステージ自体は非常にアグレッシブで、まだまだ現役のミュージシャンなんだな、ということを強く感じさせるステージ。最初の方は「さすがに声が弱いかな・・・」と思ったのですが、彼自体、徐々に調子にのってきたのか最後の方はそんなことを全く気にならなくなるような素晴らしいステージを見せてくれました。

もう76歳の彼ですが、まだまだ新曲も聴けそうですね。お元気そうなので、まだ何度か来日公演もありそう・・・。ただもっともおそらく名古屋は今回が最初で最後だろうなぁ。ちなみに名古屋ではかなりのフィーバーとなり、地元紙中日新聞では翌日の朝刊の1面で報道されていたのはちょっとビックリ。それだけ名古屋にとってはポールがやってきたというのは大きなニュースなんでしょうね。そのライブに参加できて本当によかったです!

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2018年11月19日 (月)

「平成」最後の傑作アルバム(?)

Title:平成
Musician:折坂悠太

宇多田ヒカルやアジカンの後藤正文などから絶賛を受けたことでも大きな話題となった男性シンガーソング來田、折坂悠太のニューアルバム。私も今回のアルバムがリリースされるまでは彼のことを全く知りませんでした。そんな大絶賛を受けて、若干懐疑的な心境を抱きながら本作を聴いてみたのですが、これが確かに大絶賛も納得の傑作アルバムに仕上がっていました。

正直言うと、アルバムを聴き始めて最初のうちは、そこまで大絶賛されるアルバムか・・・と少々懐疑的にアルバムを聴き進めていました。1曲目「坂道」はシンプルでフォーキーな作品、続く「逢引」はスウィングあたりのジャズの要素を入れつつポップに歌い上げる曲。どちらも「良質なポップソング」というイメージで、確かに良作ではあるものの地味すぎるのでは?というのが最初抱いた印象でした。

正直、この「地味」という印象は最後までぬぐえませんでした。ただ、それ以上に非常にユニークな音楽性に強く惹かれる傑作アルバムになっていました。例えば「揺れる」はアコギでゆっくり聴かせるフォーキーなナンバーですが、郷愁感あふれるメロディーラインが魅力的。「旋毛からつま先」もジャズの要素に歌謡曲的なメロディーラインを加えたポップチューン。イメージ的には60年代あたりのジャズを取り入れたモダンな歌謡曲のイメージでしょうか。個人的には星野源の最近の作風にも通じるところのある軽快さがとても魅力的な名曲でした。

そんな「和風」な要素を強く感じつつ、一方では「みーちゃん」ではポリリズムを取り入れたグルーヴ感あふれるサウンドが魅力的。「丑の刻ごうごう」でも民謡風な歌詞とメロの一方、パーカッションのリズムには独特のグルーヴ感があります。さらに「Take13」ではミニマルなピアノのインストと、実に多彩な音楽性を感じる楽曲が並んでいました。

全体的には和風なメロディーラインとこぶしを利かせたボーカルにジャズ的な味付けがされているような楽曲が主軸。ただ和風なメロといっても様式化されたような最近の歌謡曲のような雰囲気ではなく、60年代あたりの洋楽テイストを取り入れた歌謡曲、あるいはさらに昔に通り過ぎて民謡的な要素を取り入れた楽曲がメインとなっていました。

折坂悠太自体は平成元年生まれだそうで、まさにこのアルバムのタイトルの通り、「平成」を生きてきたシンガー。ということは今年30歳ということですので、決して「早咲きの若手」といった感じではないのですが、ただ、民謡を含めた日本の音楽や海外の音楽に対して等距離に接して、ジャンルレスに楽曲に取り込んでいるあたりは、平成生まれのいい意味で「いまどき」のセンスを感じます。そういう側面を含めて、まさに「平成」のアルバムといえる作品かもしれません。

上にも書いた通り、決してわかりやすいポップチューンが入っているような派手なアルバムではありませんが、聴けば聴くほど心に染み入ってくるような、そして新たな発見のある名曲が並んだ傑作アルバム。平成の最後を飾るにふさわしい、まさに今年を代表する1枚だと思います。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ON THE WAY/漢 a.k.a.GAMI

MSCのメンバーであり、最近ではフリースタイルMCバトルの大会「KING OF KINGS」の主催でもその名前を知られる漢 a.k.a GMI。本作は彼の客演を集めたMIXアルバム。全体的にダークな作風の曲が多いものの、ロッキンな曲やファンキーな作品、さらにはメロウに聴かせるナンバーまで客演集らしくバリエーション豊富な作風が特徴的なアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

M-P-C “Mentality, Physicality, Computer"/冨田ラボ

冨田ラボの2年ぶりとなる新作。タイトルの「M-P-C」とは、Mentality(精神)・Physicality(肉体)・Computer(コンピューター)の略だそうで、このアルバムのコンセプトになっているとか。今回も七尾旅人やペトローズの長岡亮介、WONKのKento NAGATSUKAなど多彩なゲストを迎えてのアルバムとなっていますが、アルバムのコンセプトの通り、コンピューターによる演奏やサンプリングを多岐に用いているそうです。

そんな楽曲の数々は基本的にメロウなシティポップやHIP HOPがメイン。コンピューターによる演奏やサンプリング、といってもいままでの彼のイメージを大きく変えるようなものではなく、彼らしい作品に仕上がっています。全体的には非常に心地よさを感じるトラックが多く、比較的シンプルなサウンドでポップに聴かせるような曲がメイン。そういう意味でとても聴きやすい傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

冨田ラボ 過去の作品
Shipahead
Joyus
SUPERFINE

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2018年11月18日 (日)

生前最期のステージ

Title:ラストライブ“猫と僕と君"
Musician:遠藤賢司

1960年代にフォークブームの中でデビュー。70年代には「カレーライス」などのヒット曲を飛ばし、その後はロックミュージシャンとして若手世代を含む広い層からリスペクトを集めていたミュージシャン、遠藤賢司。2016年3月にはがんと診断され、その後闘病生活を行い、昨年10月、惜しまれつつ70歳でこの世を去った彼。本作はそんなエンケンの、事実上ラストライブとなった2017年6月29日に渋谷CLUB QUATTROで行われたライブの模様を収録した作品です。

バンドメンバーに石塚俊明(頭脳警察)、湯川トーベンを迎えたこの日のステージ。このライブの段階ではすでにがんと診断され、闘病生活の最中だったエンケン。ジャケット写真で見る彼の姿もその様子が見てとれます。

それだけにライブの内容についても最初、少々心配しつつ聴いていました。実際、序盤、「嘆きのウクレレ」「ねえちょいとそこ行くお嬢さん」など、声があきらかに弱弱しく、痛々しさすら感じてしまいます。前半はかなり静かな雰囲気でのステージとなっており、病気の影響を感じてしまいました。

ただ、中盤あたりから徐々に演奏にも歌にも力が入ってきます。「Hello Goodby」ではアコギをかき鳴らし、力強い演奏を聴かせてくれますし、「プンプンプン」では後半、パーカッションと絡んでギターのパワフルなジャム演奏を聴かせてくれます。特にこの曲については「そのうちみんなきっと死ぬよ」という歌詞も登場しており、エンケンの当時の状況と重ね合わせて、胸が痛くなってきました。

さすがにその後は再び落ち着いた曲となり、後半は静かなピアノのインストナンバーが続きます。特に「猫のケンカ」ではタイトル通り、猫のケンカをピアノで表現したユーモラスな曲となっており、エンケンらしいユーモアセンスを感じさせます。

終盤は代表曲「カレーライス」を披露。こちらもさすがに声の弱弱しさは隠しきれない演奏となっていましたが、本編ラストの「夜汽車のブルース」ではそこから一転、アコギをかき鳴らす力強い演奏と歌声を聴かせてくれ、まさに渾身のステージを見せてくれています。

そしてアンコール、まさかの新曲披露で騒然となったという「GOD SAVE THE BAKATIN」。歌詞もまさにエンケン節ともいえるユニークな曲ですし、ギターをノイジーにかき鳴らす力強いロックチューン。結果として彼が生前、ステージで披露した最期の曲となってしまいましたが、そうとは信じられないくらいパワフルで力がこもった内容になっています。最後の最後まで第一線で活躍し続けた彼らしいしめくくりといえるかもしれません。

正直、上でも書いた通り、体調は万全ではなく、弱弱しくちょっと痛々しさを感じるような演奏もありました。ただ、締めるべきところはきちんと生気ある演奏を聴かせてくれており、最後までロックンローラー遠藤賢司を貫いたと感じさせるステージだったと思います。これが最期となってしまったのは実に残念に感じます。あらためてご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:★★★★★

遠藤賢司 過去の作品
ちゃんとやれ!えんけん!

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2018年11月17日 (土)

全編セルフプロデュース第1弾

Title:重力と呼吸
Musician:Mr.Children

Mr.Childrenの前作「REFLECTION」はCDのみでのリリースの「Drip」という形態と、それに加えて23曲入りのUSBメモリを加えた「Naked」という2種類の形態での異色のリリースとなりました。まさに「意欲作」と言ってもいい前作はそれに見合うだけの名曲が揃った傑作アルバムに仕上がっていました。

それから3年4ヶ月。久々の新作となった本作の最大の特徴、それは小林武史の手を完全に離れて全編Mr.Childrenのセルフプロデュースとなったアルバムという点でした。前作「REFLECTION」も何曲か、彼らによるセルフプロデュースの作品がありましたが、そんな準備期間を経て本作では、本格的にセルフプロデュースの作品となった訳です。

前作に引き続いて意欲作とも言える本作ですがアルバム全体として受ける印象としては、まず「地味」というものでした。ただ、同じ地味な印象でもアルバムとしてのコンセプトを感じられる「深海」や「SENSE」みたいなアルバムもありません。一方ではヒット曲満載でポップ路線に走った「BOLERO」や「SUPERMARKET FANTASY」のようなアルバムもありません。「Your Song」のようなPVも作成されたリード曲や配信を含むシングル曲も収録されていたのですが、全体的に「これ」といった核となるようなヒット曲もなく、地味という印象を受けました。

ただ今回のアルバム、全編セルフプロデュースの第1弾アルバムということもあって、あえて「地味」、いいかえれば彼らにとって「平凡」なアルバムを作って来た、と言えるかもしれません。実際、今回のアルバムは良くも悪くもミスチルらしさを強く感じる曲が並んでいました。例えば「Your Song」もストリングスのアレンジに沿って歌い上げるようなサビのスタイルはいかにもミスチル風ですし、「SINGLES」で聴かせるベースラインやそれに絡むギターの入りなんかも、ミスチルの曲で昔から何度聴いたことか・・・。奇をてらわない、ファンにとってみれば聴いていて安心するミスチル節がつまったアルバムになっていたように感じます。

サウンドにしても比較的シンプルなアレンジがほとんど。小林武史の手を離れて、若干バンドサウンドを前に出したような印象は受けますが、ロックバンド寄りに走った、といった感じではありません。小林武史が必要以上に多様していたストリングスは本作でも比較的ふんだんに取り入れており、ここらへんは小林武史からの影響を感じます。もっとも、全曲にわたって嫌というほどストリングスを入れてきたコバタケに比べると、そこはほどよく抑え気味に使用しており、サウンド全体としてはグッとタイトに仕上がったようにも感じました。

本作は全編プロデュースアルバムの第1弾。バンドとしての新たな一歩を踏み出すアルバムとして、あえてミスチルらしい、あえて言えば「平凡な」アルバムに仕上げてきたような印象を受けます。これから徐々に表現の幅を広げていくためのはじめの一歩のような印象を受けました。もちろん「地味」「平凡」という表現を用いていますが、そこはミスチル。決して駄作ではありませんし、アルバム全体としては間違いなく傑作にしあがてきていると思います。小林武史の手を完全に離れた彼ら。これからどこへ向かうのか、楽しみです。

評価:★★★★★

Mr.Children 過去の作品
SUPERMARKET FANTASY
SENSE
Mr.Children 2001-2005<micro>
Mr.Children 2005-2010<macro>

[(an imitation) blood orange]
REFLECTION


ほかに聴いたアルバム

無双Collaborations -The undefeated-/AK-69

名古屋出身のラッパー、AK-69のコラボ作を集めたコラボベスト。ZeebraやKOHHなどといったHIP HOP勢の他、AIのようなR&Bシンガー、UVERworldのようなロック系やちょっと異色なところではToshiとのコラボも行っています。正直言うとAK-69のラップはあまり強い癖がある訳ではなく、そういう意味ではどんなタイプのミュージシャンとのコラボしやすいタイプのラッパーかもしれません。全体的にダークで哀愁感強い歌モノも多いのですが、ポップで聴きやすい作風なのもコラボの上ではやりやすいのかも。

評価:★★★★

AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King
THE THRONE
DAWN

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2018年11月16日 (金)

デビュー30年目のベスト盤

Title:3rd REUNION
Musician:SING LIKE TALKING

今年、デビュー30周年を迎えるSING LIKE TALKINGによるベストアルバム。1992年にベストアルバム「REUNION」、1998年に2枚目のベストアルバム「SECOND REUNION」をリリースしており、それに続く形でのベストアルバムとなります。本作はその「SECOND REUNION」の後にリリースされた2001年のアルバム「METABOLISM」以降のアルバムに収録された曲を集めたベストアルバム。ちょうど21世紀における彼らの活動を網羅したベスト盤となっています。

個人的には特に高校時代によく聴いていたバンドなだけに、もうデビュー30年か、と感慨深いものがあります。もっともベスト盤自体は3年前にオールタイムベストとして「Anthology」というアルバムをリリースしたばかり。楽曲的にもかぶるため、そういう意味では「またか・・・」という感じも否めないではないのですが・・・。

正直に言うとここ数年の彼らの活動に関しては、全盛期に比べてしまうと見劣りがしてしまう点は否めません。アルバムのリリースも1988年から1997年の10年間で9枚のアルバムをリリースしているのに対して、本作の対象となった2001年(1998年以降は活動休止していたため)から2018年の17年間では5枚のアルバムしかリリースしていません。

今回のベスト盤に収録された2001年以降の楽曲に関しても、基本的には初期のSLTと同様、AORやファンクの要素を上手く取り込んだ「大人のポップソング」に仕上げており、そういう意味では彼らのスタイルは大きな変化はありません。そのため、以前はSLTを聴いていたけど最近はちょっと離れてしまっている・・・といったかつてのファンがこのアルバムで彼らの楽曲を久しぶりに聴いてみるのは悪くはないかと思います。

ただ、「Anthology」でも感じたのですが、やはり曲の出来、メロディーラインのインパクトという点では以前の彼らに比べると、どうしても物足りなさを感じてしまうのは事実。もっとも、かといってもクオリティーの面で著しく以前と比べて劣っているわけではないため、かつてのファンの方にとってもそれなりに楽しめる内容だとは思います。

また、今回のベスト盤で彼らのここ最近の曲をあらためて聴いたのですが、なんだかんだいっても全盛期に負けずとも劣らないような胸がキュンとなるような美しいフレーズもたびたび顔を覗かせており、そういう意味ではSLTの魅力を再認識できるベスト盤だったと思います。例えば「回想の詩」のサビのフレーズや「The Love We Make」のファルセットからスタートする美しいサビ、「風が吹いた日」の哀愁感あふれるメロディーラインなどは「ENCOUNTER」や「togetherness」の頃の曲に比べても決して劣っていません。そういう意味ではSING LIKE TALKINGの健在ぶりをアピールできている部分もしっかりと感じることが出来ました。

そんな訳で、ここ最近の彼らの仕事ぶりを振り返るには最適なベスト盤。ただし、2015年にオールタイムベストをリリースしたばかりなので、それを聴いたばかりの方には「またかよ」的な感は否めないのですが・・・。これからデビュー40年に向かって動き出した彼ら。これからの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology
Heart of Gold


ほかに聴いたアルバム

LAST WALTZ IN TOKYO/world's end girlfriend

world's end girlfriend初となるライブ盤。今年1月に行われたライブの模様を収録したアルバムで、今年3月に急逝したdownyのギタリスト、青木裕のラストステージとしても話題となりました。ライブはWEGらしい美しく哀愁感あるメロディーラインに突如組み込まれるダイナミックでノイジーなサウンドが印象的。美しさと混沌が同居したサウンドはWEGの大きな魅力で、それがライブで見事再現されており、さぞ素晴らしいステージだったんだろうなぁ、ということがライブ盤を通じても伝わってきます。青木裕のラストが・・・ということである種の感慨を持ってしまいますが、それを差し引いても素晴らしいライブアルバムでした。

評価:★★★★★

world's end girlfriend(world's end boyfriend)過去の作品
空気人形オリジナルサウンドトラック
Xmas Song(2009年)

SEVEN IDIOTS
Xmas Song(2010年)
Xmas Song(2011年)
LIVE​/​10​/​10​/​2015
LAST WALTZ

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2018年11月15日 (木)

こちらもK-POPが1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

日韓関係が最悪の状況の中、そことは全く関係なく、アルバムチャートもK-POP勢が1位を獲得しました。

1位は韓国の女性アイドルグループTWICE「YES OR YES」が獲得。韓国でリリースされた7曲入りのミニアルバムの輸入盤。初動売上は3万2千枚。直近作は日本盤「BDZ」で、こちらの18万1千枚(1位)からはダウン。ただし輸入盤としての前作「Summer Nights:2nd Special Album」の2万6千枚(4位)からはアップしており輸入盤としては初の1位獲得となりました。

例の徴用工の判決やBTSをめぐる騒動でかなり険悪な状況の日韓関係ですが、シングルチャート同様、音楽シーンにはほとんど何の影響も及ぼしていないよう。ほとんどのファンは政治と文化を切り離しているということでしょうか。そういう意味では健全さを感じさせます。

K-POP勢は3位にもランクイン。男性アイドルグループEXOのこちらも韓国盤アルバム「DON'T MESS UP MY TEMPO」が初動売上2万5千枚で初登場。直近作は国内盤「COUNTDOWN」でこちらも初動8万9千枚(1位)よりはダウンしました。

そんなK-POP勢に挟まれる形で2位、4位にランクインしてきたのが男性俳優育成ゲーム「A3!」からのキャラクターソング集「A3! VIVID AUTUMN EP」「A3! VIVID WINTER EP」。初動売上はそれぞれ2万7千枚、2万4千枚。同シリーズの前作「A3! VIVID SPRING EP」「A3! VIVID SUMMER EP」の3万枚(2位)、2万7千枚(3位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤。まず5位にはロックバンドMy Hair is Bad「hadaka e.p.」がランクイン。前作「mothers」ではオリコン初登場2位を記録するなど人気上昇中の彼らですが、本作は5曲入りのミニアルバム。初動売上2万枚はその「mothers」の3万1千枚(2位)からダウンしています。

さて、今週は世界のポップスシーンにその名を刻む「レジェンド」たちのアルバムが上位にランクインしてきています。まず6位にThe Beatles「The Beatles」が、そして8位にQUEEN「Bohemian Rhapsody(The Original Soundtrack)」がそれぞれランクインしました。

「The Beatles」のほうは「ホワイト・アルバム」の通称で知られる1968年にリリースした彼ら10枚目となるアルバム。その50周年記念アニバーサリー・エディションがリリースされ、初動売上2万枚で見事ベスト10入り。先日もポール・マッカートニーが来日し、多くのファンが会場に詰め掛けましたが、その変わらぬ人気ぶりをうかがわせる結果となりました。

そしてQUEENの方は現在、公開中の映画「ボヘミアン・ラプソディー」のサントラ盤。10月19日にリリースされており、先週の22位から大きくランクアップし、初のベスト10入りとなっています。QUEENのボーカル、フレディー・マーキュリーに焦点をあてた伝記映画で、大きな話題となっています。本作はその映画でも使われた彼らのヒット曲を収録したサントラ盤。1985年に行われたLive Aidを含む未発表のライブ音源が収録されたことでも大きな話題となり、サントラ盤も見事ベスト10入り。こちらもQUEENの変わらぬ人気をうかがわせる結果となっています。

その2枚のアルバムに挟まれる形で7位初登場となったのはパンクバンドHEY-SMITH「Life In The Sun」。初動売上1万枚は前作「STOP THE WAR」の7千枚(8位)からアップしています。

9位にはじん「メカクシティリロード」がランクイン。初音ミクを使用したいわゆる「ボカロP」として話題となり、特に楽曲と小説をリンクさせた「カゲロウプロジェクト」が大ヒットを記録した彼。初登場1位を獲得した2013年の「メカクシティレコーズ」以来、約5年半ぶり。久々となるニューアルバムとなりました。ただ初動売上は7千枚で、「メカクシティレコーズ」の7万5千枚(1位)からは10分の1という大幅ダウンの厳しい結果に。さすが移り変わりの激しいボカロシーンでは5年半というスパンは長すぎたのでしょうか・・・。

今週の初登場は以上。ベスト10全10作中9作が初登場となった今週のチャートですが、残った1枚はベスト10圏外からの返り咲き。10位に宇多田ヒカル「初恋」が先週のベスト50圏外からランクアップし、ベスト10に返り咲いています。ただ、こちらは11月7日にアナログ盤がリリースされた影響によるランクアップ。とはいえ、アナログ盤のみでベスト10入りという点に彼女の高い人気をうかがわせます。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年11月14日 (水)

例の騒動の影響はほとんどなし

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、特にワイドショーなどで大きなニュースとして騒がれたBTS(防弾少年団)の原爆シャツやナチス風衣装着用の問題。今週は彼らのシングル「FAKE LOVE」がランクインしてきましたが、売上の結果を見る限り、そのニュースの影響はほとんどありませんでした。

もともと先行配信の影響でHot100では以前からランクインしていたのですが、CDリリースの影響もあり先週の28位からランクアップ。10月29日付チャート以来3週ぶりのベスト10入りとなりました。CD販売数で1位を獲得しているほか、ダウンロード数86位、ストリーミング数18位、ラジオオンエア数56位、PCによりCD読取数3位、Twitterつぶやき数9位、You Tube再生回数23位を記録。CD販売が先行しているのはアイドル系らしい傾向ですが、ストリーミング数が18位とダウンロードの順位を上回っているあたり、今回の騒動の影響でどんな曲を歌っているのか、ちょっと聴いてみよう、と考えた方も多かったのではないでしょうか。

オリコンでも初動売上45万4千枚という結果を残し1位初登場。前作「MIC Drop」の初動36万5千枚からアップしており、CD売上の面でも例の騒動の影響がほとんどなかったことが伺わせます。今回の騒動、特に原爆シャツ着用の問題については日本人としては、それ以前にやはり原子爆弾の残虐性を考えれば怒って当然のニュースだと思います。ただ一方では今回の結果を見ると、あれだけネット上で騒がれたにも関わらず、影響が軽微だったことから、ネットの影響(特に極端に騒いでいる連中の意見)は世間一般にほとんど影響を与えていないのではないか?とすら感じます。今回の件で出場濃厚と言われていた紅白が落選したり、各種テレビ出演が取りやめになったりして、それはそれで仕方ない面はあるのですが、テレビなどのメディアはあまりネットの騒ぎをうのみにしない方がいいのではないでしょうか。そう強く感じた今回の騒動でした。

さらに今週、同じく韓国の女性アイドルグループTWICE「YES or YES」が5位初登場。今週韓国でリリースされたアルバムに収録されている曲で、ダウンロード数15位、ストリーミング数2位、Twitterつぶやき数12位、そしてYou Tube再生回数では1位を獲得し、見事ベスト10入り。こちらは今日発表の紅白出演も決定。徴用工の判決の件で日韓関係が最悪な状況となっている中、政治と文化は違うことを示したNHKの方針にとりあえずは安心しました。

BTSが上位に入ってきた今週のチャートですが、米津玄師もまだまだその強さを見せています。先週1位の「Flamingo」は今週もワンランクダウンの2位。「Lemon」も先週から変わらず3位をキープ。結果、ベスト3のうち2曲が米津玄師という結果になりました。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にback number「オールドファッション」が先週の81位からCDリリースにあわせて一気にランクアップしベスト10入り。TBS系ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」主題歌。11月21日リリース予定のCDからの先行配信。ラジオオンエア数16位、Twitterつぶやき数51位の一方、ダウンロード数で見事1位を獲得し、ベスト10ヒットとなりました。

6位にはOxT「UNION」が初登場でランクイン。OxTは主にアニメソングへの楽曲提供を行っているオーイシマサヨシとTom-H@ckによるユニット。本作もアニメ「SSSS.GRIDMAN」のオープニングテーマ。CD販売数は15位でしたが、ダウンロード数は2位にランクイン。PCによるCD読取数10位、Twitterつぶやき数15位と上位に食い込み、結果、総合順位でベスト10入りしています。オリコンでは初動6千枚で初登場15位。前作「Silent Solitude」の1千枚(49位)から大きくアップしています。

8位初登場はUVERworld「GOOD and EVIL」。映画「ヴェノム」の日本語吹き替え版主題歌。CD販売数は2位ながらダウンロード数14位、ストリーミング数22位と、CD>ダウンロード>ストリーミングとアイテム的にCDや音楽ファイルの所有を求めるような、アイドル的固定ファンが多い傾向のチャートとなっています。ほか、PCによるCD読取数は5位ながらTwitterつぶやき数33位、ラジオオンエア数は95位に留まる結果に。オリコンでは初動売上3万枚で2位初登場。前作「ODD FUTURE」の3万7千枚(3位)からダウンしています。

初登場最後は10位に乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」が先週の61位からランクアップ。11月14日にリリースされたシングルからの先行配信となります。

また今週はベスト10返り咲き組も1曲。女性シンガーソングライターあいみょん「今夜このまま」が先週の11位からランクアップし9位にランクイン。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。今年の紅白出演が決まった彼女。これからますます注目度が高まりそう。この曲も11月14日にはCDリリースとなり、来週以降、さらに上位に食い込んでくる予感がします。

そして今週、DA PUMP「U.S.A.」は残念ながら5位から7位にランクダウン。You Tube再生回数も1位から2位に、ストリーミング数も2位から3位にそれぞれダウンしています。ただ紅白出演も決まり、年末にかけておそらくテレビ出演も増えてきそう。それだけに年末から来年はじめにかけて再度のランクアップもありそう。これから先、どれだけ粘れるのか、注目です。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年11月13日 (火)

貫禄(?)の第6弾

Title:ムキシ
Musician:レキシ

最近はすっかり人気ミュージシャンの仲間入りをした池田貴史のソロプロジェクト、レキシのニューアルバム。毎回、日本史をテーマとしたちょっとユニークな歌詞と、ビックリするような豪華なゲストが目を惹きます。この豪華なゲストには「レキシネーム」という日本史にちなんだニックネームが与えられるのですが、今回のアルバムではレキシネーム、ビッグ門左衛門こと三浦大知や、オシャレキシこと上原ひろみも参加し話題となっています。

さて、ここ数作、すっかりベスト10の常連となり、最新のライブツアーでも横浜アリーナ2デイズが決まるなど、その勢いは止まるところを知りません。そんな彼のアルバムはここ数作、「安定度」が増し、インパクトあるポップチューンが増えてきたように感じていました。今回のアルバムはまさにそんな路線を突き進んだようなアルバム。特にインパクトあるポップなメロディーラインについては、歌詞とのバランスもよく取れた、いい意味で「売れるツボ」がわかってきたかのような今まで以上に耳に残るポップチューンが多く収録されていたように感じます。

今回のアルバムでもレキシらしいファンクチューンの「なごん」「GOEMON」からスタート。「GOEMON」でビッグ門左衛門こと三浦大知の透明感あるボーカルをうまくいかしつつ、どちらも「清少納言」「五右衛門」というキーワードを上手くサビにからませ耳に残るようなフレーズに仕上げています。続く「GET A NOTE」はアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌というタイアップ付の曲ですが、哀愁感あるメロもインパクトですが「下駄の音がしたんだ」というフレーズを「GET A NOTE GOT SIT DOWN」みたいに英語を発音するかのようにリズムにのせる歌い方も大きなインパクトになっています。

ミディアムテンポでメロウに聴かせる「出島で待ってる」「TAIROW~キミが目指してんのは~」も歌詞のユーモラスさと背反するようなおしゃれな雰囲気のメロとサウンドがインパクトなのですが、中盤で大きなインパクトがあったのが「KATOKU」「SEGODON」。どちらも80年代の産業ロックバンドそのままなシンセのサウンドを前に出した爽快なナンバーに。特に「KATOKU」はJourneyの「Separete Ways」をオマージュしたユーモラスなPVも大きな話題となりました。

後半もラテン歌謡風な「奈良に大きな仏像」、エレピでしんみり聴かせる「マイ会津」などユーモラスながらもしっかりと聴かせる曲で締めくくり。特に終盤の聴かせどころはオシャレキシこと上原ひろみが参加した「SAKOKU」で、ホーンセッションを入れたムーディーなナンバーなのですが、オシャレキシの表現力豊かなピアノの音色が大きなインパクトとなっています。

そんな訳で様々な楽曲のバリエーションを入れつつ、ゲストミュージシャンの個性も楽曲に取り込み、耳に残るインパクトあるフレーズを歌詞の側面でもメロディーの側面でもしっかりと楽曲の中に織り込んだアルバムになっていました。前作「Vキシ」では安定感ある作風でレキシのひとつの完成形と書いたのですが、今回のアルバムではその完成形がさらなる進化を遂げたように思います。特に今回のアルバムに関しては上でも書いた通り、完全に売れるためのツボをつかんだように感じる作品になっており、人気ミュージシャンとしてのある種の「貫禄」すら感じさせる傑作になっていたと思います。

個人的には好き勝手につくった1枚目の「レキシ」と並ぶ、レキシとしての最高傑作ではないかと思います。もっと言えば音楽的な側面では間違いなく彼のアルバムの中の一番の出来ですし、年間ベストクラスの傑作アルバムとすら感じました。とにかく最初から最後まで聴いていて純粋に楽しかった1枚。確かにこういうアルバムをつくってれば人気が爆発するのも納得です。

評価:★★★★★

レキシ 過去の作品
レキツ
レキミ
レシキ
Vキシ


ほかに聴いたアルバム

泣きたくなるほど嬉しい日々に/クリープハイプ

オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるクリープハイプの新作。ハイトーンボイスで切ないラブソングを感情的に訴えるように歌うスタイルはいつもの彼らどおり。「ゆっくり行こう」「イト」のようにホーンセッションを入れた曲もありつつ、基本的にはシンプルなギターロックが主体。NHKみんなのうたで流れた「おばけでいいからはやくきて」は、キッズソングらしいユニークな歌詞なのですが、ある意味、文字通りの「迷子」の話ではなく、人生に迷った人たちへ向けた歌にも聴こえる点、尾崎世界観の作詞家としての実力を感じます。アルバム全体としてはクリープハイプらしさを強く感じる1枚でした。

評価:★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね

More Music/奇妙礼太郎

その名前の通り、非常に「奇妙」な名前にまずは大きなインパクトがある男性シンガーソングライター奇妙礼太郎。以前からその名前のインパクトもあって気になっていたのですが、ソロ名義でのメジャー2作目のアルバムではじめて彼の音源を聴いてみました。

楽曲はいきなり「エロい関係」と身もふたもないインパクトある曲名のナンバーからスタート。この曲はミディアムファンクのナンバーだったのですが、その後はロックンロール、ブルース、ネオアコ、フォークなど、ルーツ志向で聴かせるタイプの曲が多く収録されています。全体的にはどこか温度が低めの雰囲気を持っており、また郷愁的な感じにはなつかしさを感じる部分も。ちょっと薄味かな、と思う部分もあるのですが、これからに期待したいミュージシャンです。

評価:★★★★

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2018年11月12日 (月)

「雅楽」を取り入れたアンビエントの傑作

Title:Konoyo
Musician:Tim Hecker

カナダ人のエクスペリメンタルコンポーザー/サウンドアーティストの9枚目となるソロアルバムである本作は、日本人にとって非常に興味深いアルバムとなっています。今回のアルバムは日本での旅行中に大部分を制作。日本を代表する民間雅楽団体である東京楽所と共に、東京練馬の観蔵院というお寺で録音された音源を使用しているようで、タイトルである「Konoyo」も日本語の「この世」の意味。東京楽所の奏でる雅楽が伝統音楽であるのに対して、このアルバムの音楽は現在(=この世)の音楽であることを意味しているそうです。

そんな本作はエレクトロサウンドがベースとなりつつ、空間ある作風を聴かせるアンビエントのアルバム。基本的に全編、ミディアムテンポの楽曲が並び、伸びやかなサウンドを聴かせる作品となっています。そして一番興味深いのはやはり雅楽の使われ方でしょう。まずおもしろいのは一般的に日本人がイメージしそうな、いかにも「雅楽」といった感じのフレーズは本作ではほとんど登場しません。

例えば1曲目「This Life」でエフェクトにより増幅しつつ流れてくるのは笙の音色でしょうか。メタリックさもある独特の音色が幽玄な雰囲気を醸し出し、確かに雅楽的な要素も感じるのですが、あくまでも現在の音楽としてのアンビエントの中で効果的に用いられているのにとどまります。

続く「In Death Valley」でも笛や太鼓の音が登場しますが、あくまでも楽曲の背後で静かに流れているだけ。楽曲としては分厚いエレクトロサウンドがスペーシーに展開するスケール感ある作品としてまとまっています。

和楽器の要素を強く感じるのは最後の「Across to Tokyo」でしょうか。ノイジーでフリーキーな雰囲気を感じる前半から、後半はおそらく笙や笛の音色で埋め尽くされ、優美な雰囲気を感じるナンバー。最後は笙の音色で優雅に締めくくられます。ただこの楽曲にしても、あくまでもノイジーなエレクトロサウンドとその背後で流れる静かでアンビエント色強いメロディーラインが大きな軸となっている楽曲となっています。

アルバム全体としてはあくまでも雅楽の楽器を効果的に用いて、優美で優雅な雰囲気を醸し出してはいるのですが、「雅楽」のアルバムではありません。タイトルである「この世」もあくまでも伝統音楽である雅楽と対比されたタイトルであるように、あくまでも「現在の音楽」であることに拘っています。おそらくこれが日本人なら「雅楽」であることを必要以上に意識して、いかにも雅楽的なフレーズを前に押し出しそう・・・。雅楽に対してあくまでも客観的なスタンスを感じます。

ただし、雅楽らしい部分が少ないとはいえ、日本人にとってはなじみのある雅楽の楽器の音色が流れてきており、またそれによって生み出された優雅な雰囲気は日本人にとってはどこか琴線に触れるものがあります。本作は海外メディアでも非常に評判が高いようですし、ほぼMade in Japanの作品として日本でももっと注目されてもよさそうなのですが・・・。日本人にとってはまず注目したい作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Collapse EP/Aphex Twin

約2年ぶりとなるAphex Twinの新作。5曲28分の長さの作品で、全体的にはいつものAphex Twinらしい、変態的なビートが展開されつつもどこかメロディアスで惹きこまれるサウンドが特徴的。良くも悪くもいつも通りの彼といった印象が強く、正直言うと目新しさは少ない・・・というよりも30分弱であっさりすぎるかも、という印象でしたが、とりあえずは彼の新作が聴けた、ということだけでも満足感を得られる作品でした。

評価:★★★★

Aphex Twin 過去の作品
Syro
Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP
orphaned deejay selek 2006-2008(AFX)
Cheetah EP

Medicaid Fraud Dogg/PARLIAMENT

FUNKADELIC名義でのアルバムは2014年にリリースされていたものの、PARLIAMENT名義では実に38年ぶり(!)となるニューアルバム。今、流行の真っただ中にあるトラップを取り入れるなど、一応今風にアップデイトしているのですが、これに関しては若干「取り合えず流行っているから取り入れました」的なやっつけ感は否めず。全体的にもパワー不足の感もあるのですが、ただそれでも所々にしっかりとどこかコミカルで楽しい、ライブ映えしそうなファンクナンバーがしっかりと収録されており、CDにして2枚組全120分に及ぶアルバムながらも最後まで楽しむことが出来ました。

評価:★★★★

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2018年11月11日 (日)

遊び心あふれるユニークな企画から登場

Title:カンタンカンタビレ
Musician:奥田民生

また奥田民生がちょっとマニアックな、でも非常にユニークな企画から登場したアルバムをリリースしました。
今回のアルバムタイトルともなった「カンタンカンタビレ」という企画は、もともと2017年の秋からスタートした企画。
様々なミュージシャンをゲストとして呼びつつ、彼がかつて他のミュージシャンに提供した楽曲のセルフカバーを、宅録スタイルのDIYレコーディングを行い、その模様をYou Tubeで配信したもの。アナログレコーディングの全盛期に名機と称され、現在は入手困難な“8トラックオープンリールテープレコーダー「TEAC 33-8」"、“アナログミキサー「TASCAM M-208」"を使用してのレコーディングだそうです。

以前にも彼は「ひとりカンタビレ」と称して、ライブイベントでファンの前で実際にレコーディングを行う企画を行ったことがあります。今回の「カンタンカンタビレ」はいわばその続編的な企画。曲がどういう風に出来上がるかを含めてファンに伝えたいという彼のこだわりを感じさせます。

本作はそんな「カンタンカンタビレ」企画から生まれた曲の中から、本人曰く「自分の曲より真面目につくっているかも(笑)」と公言した11曲を収録した作品。ちなみに動画の方もチラッと見たのですが、奥田民生が録音のやり方や機材などについて解説しつつ、本当に録音している風景をそのまま配信しています。レコーディングに興味のある方とか、楽器をやっていた方にとってはかなり興味深く見ることができるのではないでしょうか。

楽曲的には比較的、ルーツ志向が強く、シンプルな曲が収録されています。奥田民生らしい、と感じるような曲もありつつ、他のミュージシャンへの提供曲だからでしょうか、比較的「奥田民生カラー」は薄味にしているような印象を受けました。曲によっては提供ミュージシャンの「顔」がよく見えてくるような曲もあり、一番典型的だったのはPUFFYへ提供した「モグラライク」。軽快なメロディーラインからしてそのまんまPUFFYらしい楽曲で、奥田民生が歌っているのに、バックからPUFFYの2人の歌声が流れてくるよう(笑)。また石川さゆりに提供した「スロウサーフィン」は石川さゆりのイメージにピッタリのムーディーな雰囲気が漂う楽曲になっていました。

レコーディング的にもシンプルなロックンロールの「トキオドライブ」からスタートし、比較的シンプルなバンドサウンドが中心ながらも、楽曲によっていろいろな音の感じが試されている感のあり、ここらへんはまだ見ていませんが、You Tubeの動画で録音風景を確かめてみたいところ。特に「プールにて」ではエフェクトをかけまくってサイケな雰囲気に仕上げているので、ここらへん、どのようにレコーディングを行ったか、動画を見てみたくなりました。

もちろん、この企画を抜きにして純粋なセルフカバーアルバムとしてもよく出来たアルバムだったと思います。いかにも「奥田民生の曲」といった感じの曲は多くないものの、ルーツ志向のサウンドにどこかユーモラスなテイストを感じる歌詞とメロという、彼特有の魅力がつまったような曲ばかり。また、全体的に脱力感があり、なにより奥田民生本人が演奏を楽しんでいるように伝わってきました。

とにかく楽しい11曲。まだYou Tubeの配信はチラッとしか見ていないのですが、時間を見つけて少しずつ見ていきたいなぁ。いい意味で実に彼ららしい遊び心たくさんのアルバムでした。

評価:★★★★★

奥田民生 過去の作品
Fantastic OT9
BETTER SONGS OF THE YEAR
OTRL
Gray Ray&The Chain Gang Tour Live in Tokyo 2012
O.T.Come Home
秋コレ~MTR&Y Tour 2015~
奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン"
奥田民生になりたいボーイに贈るプレイリスト
サボテンミュージアム


ほかに聴いたアルバム

じゃぱみゅ/きゃりーぱみゅぱみゅ

一時期に比べると人気の面でかなり落ち着いてしまったきゃりーぱみゅぱみゅ。新作はちょっと間が空いてベスト盤を挟んだものの約4年ぶりのアルバムとなりました。前々作、前作といずれもチャート1位を獲得していた彼女ですが、最新作ではなんと最高位12位といきなりベスト10落ち。かなり厳しい結果となっています。

ただ、確かにいままでのアルバムと比べると少々厳しいものを感じます。基本的には本作も中田ヤスタカプロデュースによる軽快で楽しいポップチューンが並んでいます。ただ、きゃりーのいままでの曲の特徴といえば、一度聴いたら耳に残るインパクトあるワンフレーズが大きな特徴。良くも悪くもサビのインパクト一発勝負的な部分が大きかったのですが、残念ながら本作で言うと完全なネタ切れ。このネタ切れについてはベスト盤の時に気になっていたのですが、本作ではその不安が的中してしまったようです。

正直言うと、人気的にも「かわいい」で売って来た彼女の売り方についても今が正念場ように感じます。今後、どんな方向性にシフトしていくのでしょうか。残念ながら今回のアルバムではその方向性について提示されていませんでしたが、今後のベクトルについて非常に気にかかってしまいアルバムでした。

評価:★★★

きゃりーぱみゅぱみゅ 過去の作品
なんだこれくしょん
ピカピカふぁんたじん
KPP BEST

IMPERIAL BLUE/モーモールルギャバン

約1年4ヶ月ぶりとなるモーモールルギャバンの新作は初のセルフプロデュースとなる5曲入りのミニアルバム。今回も狂気を秘めたような歌詞やサイケデリックなダンスナンバーなどが魅力的。ただ、全体的なインパクトはちょっと薄めな感じ。5曲という短さもあって、それなりの勢いは感じつつも、ちょっと物足りなさも感じてしまいました。

評価:★★★★

モーモールルギャバン 過去の作品
クロなら結構です
BeVeci Calopueno
僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
モーモールル・℃・ギャバーノ
シャンゼリゼ
PIRATES of Dr.PANTY
ヤンキーとKISS

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2018年11月10日 (土)

40年目のベスト盤

Title:海のOh,Yeah!!
Musician:サザンオールスターズ

今年、なんとデビュー40周年(!)を迎えるサザンオールスターズがリリースした2枚目となるベストアルバム。ベスト盤としては20周年の時にリリースし大ヒットを記録した「海のYeah!!」から20年ぶりとなるベスト盤になります。「海のYeah!!」の時も大ヒットを記録し大きな話題となったのですが、そこからもう20年も経つのか・・・と感慨深くなってしまいます。ちなみにタイトルの読み方は「うみのおや」だそうで、要するに「生みの親」をもじったタイトル。彼ららしいユーモラスセンスあふれるタイトルになっています。

ただ、「海のYeah!!」までの20年間、彼らは12枚のアルバム、38枚のシングルをリリースしていますが、「海のYeah!!」以降、本作まででリリースされたのは活動休止期間もあったため、わずか3枚のアルバムと16枚のシングルをリリースしたのみ。また、この20年間、ヒット曲をめぐる環境に大きな変化があったとはいえ、国民的大ヒットといえるのは「TSUNAMI」の1枚のみ。正直言って、ベスト盤を選曲する際の母集団となる曲数に大きな違いがあることもあって、ベスト盤としてのインパクトは誰もが知っているヒット曲だらけだった前作「海のYeah!!」に比べると、弱く感じてしまう点は否めません。

しかし、そういった点を差し引いても、このアルバムに収録されている曲を聴くと、あらためてサザンオールスターズのすごさを感じます。当たり前のことかもしれませんが、メジャーシーンでCDをリリースし、さらにヒットを飛ばすミュージシャンは、誰も私には持っていない「才能」を感じさせます。そんな才能あふれるミュージシャンたちの中にあっても、サザンオールスターズ、桑田佳祐の才能に関してはメロディーラインのすごさ、取り入れるジャンルの幅、ポップスと挑戦心のバランス、歌詞の内容とユーモアセンス、どれをとっても格の違いを感じてしまいます。

若さゆえの勢いがあり才気あふれていた「海のYeah!!」に収録されている楽曲に比べると、今回のベスト盤に収録された楽曲に関しては、良くも悪くもサザンオールスターズらしい、と感じるような作品が並んでいます。普通は〇〇らしい曲が並んでいるというと似たような曲ばかりが並ぶようなパターンが彷彿とされるでしょう。ただサザンの場合は一言でサザンらしいといっても、そのバリエーションだけで何パターンもあるため、似たような曲が並んでいるという印象をほとんど受けません。

本作でもおなじみのバラードナンバー「TSUNAMI」からスタートし、打ち込みのサウンドを入れた「イエローマン~星の王子様~」やハワイアンに歌謡曲の要素を加えたような「SEA SIDE WOMAN BLUES」、ギターロックな「01MESSENGER ~電子狂の詩うた~」にダンスチューンの「DIRTY OLD MAN ~さらば夏よ~」、沖縄民謡の要素を取り入れた「神の島遥か国」と実にバラエティー豊富。様々なジャンルの音楽性を取り入れつつ、それを高い次元でしっかりとポップにまとめあげ、かつサザンとしての色をしっかりとつけている桑田佳祐の才能には改めて舌を巻かされます。

個人的にその中で特に気に入っているのが原由子ボーカルの「唐人物語 (ラシャメンのうた) 」。和風なメロディーラインの美しいこと美しいこと・・・。この美メロには本当にうっとりさせられますし、またこのメロディーラインに原由子のボーカルがピッタリとマッチしています。原由子のソロ曲で有名な「花咲く旅路」に通じる、和風の美メロを聴かせてくれます。

冒頭にも書いたとおり今回のベスト盤で「国民的ヒット曲」と言えそうなのは「TSUNAMI」のみかもしれませんが、そんなことは全く関係ない、サザンの才能を再認識させるような名曲たちが収録されています。全音楽リスナーにとってマストなベストアルバム。まだまだサザンの活躍はこれからも続きそうです。

評価:★★★★★

サザンオールスターズ 過去の作品
葡萄

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2018年11月 9日 (金)

魅力を再認識

Title:miwa THE BEST
Musician:miwa

今年、デビュー8年目を迎えたシンガーソングライターmiwaの初となるベストアルバム。 デビュー直後にブレイクし、その後、積極的にシングルをリリースしている彼女なだけに、デビューからまだ8年というのはちょっと意外な印象を受けます。本作ではデビュー以来、今年5月にリリースしたシングル「アップデート」までの全24枚のシングルを(ダブルA面曲を含め)全曲、リリース順に収録した内容となっています。

miwaに関してはいままで基本的にオリジナルアルバムは一通り聴いてきました。彼女のようなタイプのポップなメロをシンプルなギターロックに載せて聴かせるというガールズロック的なタイプのミュージシャンが個人的に好みなので・・・ということもあったのですが、ところどころでポップなメロが耳を惹くものの、基本的には典型的なJ-POPで良くも悪くもありがちなポップスミュージシャンという、どちらかというとネガティブな印象も受けていました。

ただ、今回、シングル曲をこうやって並べたベスト盤をあらためて聴いてみると「なんだかんだ言って、なかなかいいじゃん」というポジティブな印象を強く受けました。メロディーラインは十分なインパクトもあり、アルバムの中では若干いろいろなジャンルに手を伸ばしすぎのように感じたのですが、シングルではロック寄りの曲、打ち込みを入れた曲、アコースティックなナンバー、ホーンを入れた曲など、基本的にはシンプルなギターロックを中心としてほどよいバランスも感じられ、それなりに統一感を感じられました。

特にメロディーラインについては、ところどころに私にとって壺にはまるグッとくるメロディーラインが顔を覗かせたりしており、私にとっては大きな魅力になっています。個人的に好きなのが「ミラクル」のサビの回転するかのようなフレーズだとか、「360°」の半音ずつ徐々に上昇するようなサビのフレーズだとか、個人的にはかなりの壺です。

ほかにも「Kiss you」の軽快なフレーズとか「fighting-φ-girls」の疾走感ある爽やかなフレーズなども魅力的。ベタベタな歌謡曲路線とはいえ「夜空。」なども仰々しくも哀愁たっぷりのメロディーが大きなインパクトとなっています。

歌詞は基本的に「片想い」「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」のような女の子の気持ちをストレートに歌ったラブソングやブレイク作になった「chAngE」や「fighting-φ-girls」のような前向き応援歌がメイン。ここらへんはいかにもJ-POP的という印象も受けるのですが、女の子の気持ちをストレートに歌ったラブソングは具体的に歌われた歌詞の内容といい、あらためて聴いてみるとなかなか心に響くものがあります・・・が、なんとなく「女の子の飾らない本音」というよりは、「男の子がイメージしそうな『女の子の本音』」といった印象も。正直言うとmiwaは女性陣からは「あざとい」と嫌われがちなのですが、その理由がここらへんにあるのかなぁ、なんていう印象を受けました。

そこらへん本作にも収録されている「Princess」あたりはいかにもといった感じで、男性視線でもちょっとあざといと感じてしまう部分も(^^;;まあ、そんな点含めて、野郎には魅力的といえば魅力的なのですが・・・。

そんな訳で正直アルバム単位だと彼女の「悪い」部分ばかりが目立ったような印象もありますが、シングルのみをまとめて聴くと、彼女の「良い」部分がきちんと集約されていたように感じます。そういう意味でも彼女は典型的なシングル向けのミュージシャンなのかも。miwaの魅力を再認識できたベストアルバムでした。

評価:★★★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD


ほかに聴いたアルバム

スキマノハナタバ~Love Song Selection~/スキマスイッチ

デビュー15周年を迎えたスキマスイッチが「記念日に贈りたい曲、記念日に聴きたい曲」をテーマに楽曲を選挙区したセレクションアルバム。ミュージシャン名にかけている訳ではありませんが、オリジナルアルバムの間の隙間を埋めるだけの企画といった感じ・・・。ライブアルバムを含め、彼ら、こういう「企画盤」的なアルバムが妙に多いような印象も。選曲的にも楽曲自体ももちろん申し分ないのですが、よほど熱心なファン以外には積極的におすすめはできないかも。楽曲自体は申し分なく5つですが。

評価:★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム

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2018年11月 8日 (木)

こんな週に日韓合同グループが1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週1位はIZ*ONE「COLOR*IZ」が獲得しました。

「アイズワン」と読むこのグループは韓国のオーディション番組「PRODUCE 48」から生まれたグループ。この番組では韓国の芸能事務所に所属する練習生のほか、日本からAKBグループのメンバーが参加し、日韓合同という形で番組が進められていきました。そしてこのグループはこの番組の合格者によって結成されたアイドルグループで全12名のうち3名が日本人という陣容になっています。

このアルバムは韓国でのデビュー作なのですが、初動売上1万1千枚を獲得し、輸入盤でありながらも初登場1位を記録しました。ただ、ご存じのように現在、戦時中の徴用工の補償を巡る問題で日韓関係が現在、最悪な状況となっています。そのような状況の中、アルバムチャートで1位を獲得するのがこのような日韓合同グループというのは偶然の出来事なのでしょうが、ある種の「希望」も感じられるチャートと言えるかもしれません。

2位はMr.Children「重力と呼吸」が5位からランクアップしベスト10返り咲き。売上枚数は1万2千枚から9千枚にダウンしていますが、根強い人気を見せつける結果となりました。

3位には先週1位のケツメイシ「ケツノポリス11」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはavexの男女混合ダンスグループlol「lml」がランクイン。AAAの二番煎じ後継者的なグループという感じでしょうか。アルバムでのベスト10入りは本作が初。初動売上7千枚は前作「lolol」の6千枚(16位)から若干のアップ。

6位には先日解散した2人組女性ロックバンドチャットモンチーのベストアルバム「BEST MONCHY 1-Listening-」がランクイン。彼女たち13年のキャリアを網羅したオールタイムベストとなっています。ちなみに「2」はPVやライブ映像を収録したDVDとなっています。初動売上は6千枚。直近のオリジナルアルバム「誕生」の9千枚(13位)からダウン。ベスト盤としては前作となる「チャットモンチーBEST~2005-2011~」の3万3千枚(2位)からは大きくダウンしてしまっています。

7位には女性シンガーソングライター柴田淳「ブライニクル」がランクイン。約1年ぶりとなるニューアルバム。初動売上6千枚は前作「私は幸せ」の7千枚(7位)から若干のダウン。

初登場ラストは9位。「TVアニメ 『Free!-Dive to the Future-』キャラクターソングミニアルバム Vol.1 Seven to High」がランクイン。タイトル通り、テレビアニメ「Free!-Dive to the Future-」のキャラクターソング。初動売上4千枚でベスト10入りです。

今週のベスト10は以上ですが、今週は復活盤が1枚。今週4位にDJ和「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~ mixed by DJ和」が先週の13位からランクアップ。8月27日付チャート以来、11週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。売上枚数も先週の4千枚から7千枚にアップ。驚異的なロングヒットを記録している本作ですが、ここに来ての売上増には驚き。詳細は不明ですが、先月22日に本作のロングヒットを記念してライブイベント「ラブとポップフェス」を開催したそうなので、それに伴い露出が増えた影響でしょうか。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年11月 7日 (水)

米津玄師人気爆発

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は米津玄師がすごいことになっています。

まず1位にはニューシングル「Flamingo」がランクイン。先週の11位からCDリリースにあわせてランクアップ。SONYワイヤレスイヤホン「WF-SP900」CMソング。和風なこぶしも取り入れたようなメロディーラインに妖艶さを感じるサウンドが特徴的。特にサウンドはベースによるリズムにグッとグルーヴィーさが増した印象があり、いままでの楽曲からさらに深化を遂げた印象もあります。CD販売数、ダウンロード数、ラジオオンエア数、PCによるCD販売数で1位獲得。Twitterつぶやき数は2位、You Tube再生回数3位とすさまじい勢いでの1位獲得となっています。

オリコンでも本作は初動売上22万8千枚で1位獲得。まさにCDの売上の側面でも人気が爆発した形となります。前作「Lemon」の19万4千枚(2位)からさらにアップしています。ちなみにこの前作「Lemon」は今週、3位にランクイン。こちらも根強い人気を見せています。CD販売数12位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数14位、そしてYou Tube再生回数2位と、こちらはなんと「Flamingo」より上位にランクインしています。

さらに4位には「Flamingo」と両A面扱いの「TEENAGE RIOT」が初登場でランクイン。ダウンロード数では「Flamingo」に続く2位を獲得、ラジオオンエア数で21位、You Tube再生回数で4位を獲得しているほか、なんとTwitterつぶやき数では1位を獲得しています。バンドサウンドを前に押し出したロック色の強いナンバーになっており、「Flamingo」よりこちらが好みという方も少なくないかも。

そんな訳で今週、3作同時ランクインという結果となった米津玄師。あらためて彼の高い人気のほどを感じさせます。さらにベスト10以下でも12位に「Flamingo」のカップリング「ごめんね」が、20位に「LOSER」がランクインしていますし、ベスト100圏内になんと10曲がランクインという快挙を達成。この人気はまだまだ続きそうです。

さて、そんな米津玄師の快進撃が目立つ今週のチャートですが、ほかの初登場曲に移りましょう。まず2位にはGENERATIONS from EXILE TRIBE「少年」が先週の77位からランクアップし、CDリリースにあわせてベスト10入り。爽やかなバラードナンバー。CD販売数2位、ダウンロード数19位、ストリーミング数12位とCD販売数が圧倒的に上位に来ており、アイテム的にCDを購入されている傾向が強いアイドル的人気が伺わせます。ほかにはラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数3位、You Tube再生回数43位を記録。オリコンでは初動売上7万1千枚で2位初登場。前作「F.L.Y. BOYS F.L.Y. GIRLS」の8万9千枚(2位)からランクダウンです。

6位には韓国の男性アイドルグループSF9「Now or Never」が初登場でランクイン。CD販売数3位のほか、Twitterつぶやき数で24位にランクインし、その他はすべて圏外という典型的な固定ファン層のみに支えられたアイドル的人気が伺えるチャート傾向となっています。オリコンでは初動売上4万5千枚で3位初登場。前作「マンマミーア!」の3万6千枚(4位)よりアップしています。

9位初登場はハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「タデ食う虫もLike it!」がランクイン。テレビ東京ドラマ「このマンガがすごい!」オープニングテーマ。CD販売数5位、ダウンロード数59位と、CDをアイテム的に購入する、いかにもアイドル的なチャート傾向に。ほか、PCによるCD読取数22位、Twitterつぶやき数44位にランクインしています。オリコンでは初動売上4万枚で5位初登場。前作「泣けないぜ...共感詐欺」の4万4千枚(2位)からダウンしています。

最後10位にはUru「プロローグ」がランクイン。TBS系ドラマ「中学聖日記」主題歌。Uruは本名・生年月日・出身地等非公開の「謎の」女性歌手という建付けだそうで、本作は12月5日リリースのCDからの先行配信となります。ダウンロード数3位、Twitterつぶやき数73位でベスト10入りを果たしました。

続いてベスト10圏外からの返り咲き組が1曲。7位にSKE48「いきなりパンチライン」が先週のベスト100圏外からランクアップ。7月30日付チャート以来、18週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。おそらく、握手会のための劇場盤CDの通販等の影響えはないかと思われます。

そしてロングヒット組ではDA PUMP「U.S.A.」は今週は先週と変わらず5位をキープ。ちなみに先週2位にランクダウンしたYou Tube再生回数は今週1位に返り咲き。ただ一方、7月9日付チャート以来1位をキープしてきたストリーミング数は今週2位にダウンしてしまいました。とはいえまだまだ高い人気をキープしているこの曲。ロングヒットはまだまだ続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年11月 6日 (火)

ジャケットのキャラクターがまず目を惹く

Title:コレでしょ
Musician:コレサワ

今回紹介するのは、最近話題となっている女性シンガーソングライター、コレサワのメジャー2枚目となるアルバム。まず私が彼女のことを知ったのは、非常に目を惹くジャケットに出てくる謎のキャラクター。イラストレイターのウチボリシンペの描く「れ子」というクマのキャラクターだそうで、彼女自身は基本的に顔出しNGで、このクマのキャラクターの被り物をかぶってインタビューなどに答えているようです。

さてそんな彼女の歌う楽曲の大きな魅力は女性の恋愛に対する心境を素直に、本音ベースに、時には「どぎつさ」も感じられる表現で綴っている歌詞の世界でしょう。特に今回のアルバムでも大きなインパクトとなっているのが1曲目「彼氏はいません今夜だけ」。タイトル通り、女性の浮気心を素直な心境で綴っている歌詞で、浮気の経験がなくてもその気持ちはわかるという女性陣も多そう・・・。タイトルやこのタイトルをそのまま歌うサビの部分など、一度聴いたら忘れられないインパクトを持っています。

ほかにも少しずつ心が離れていく恋心を切なく描く「いたいいたい」や満員電車ならどさくらに紛れてくっつけるよね、とかわいらしく歌う「君と満員電車」、切ない片思いをプラネタリウムに反映させる「プラネタリウムに憧れた」、恋人との日常を描いた「君とぬいぐるみ」など、女性の心境をストレートに、かつ素直につづった歌詞が続いていきます。率直に綴られる女心はおそらく男性にとってもいろいろな意味で印象に残るもの。この歌詞の世界が彼女の大きな魅力となっています。

ちなみにメロとサウンドについては比較的シンプルなギターロックといった印象。メロディーラインは至ってシンプルで素直なポップといった印象ですし、アコギやピアノなどを入れた曲もあるものの、サウンドの面はいたってシンプル。あくまでも歌詞で勝負という印象を受けますし、また変に中途半端にいろいろなタイプのサウンドに手を伸ばさないのは好感も持てます。

ボーカルについてはちょっとねちっとした色っぽさも感じるボーカルはaikoに通じるものもありますし、また歌詞も含めてどこか阿部真央に通じるような印象も。ちなみに「東京コロッケ」などコミカルな曲もあったりして、このコミカルな雰囲気は阿部真央に近いような印象もあります。

ちょっと残念なのが「彼氏はいません今夜だけ」は歌詞の選び方といいサビへの歌詞の載せ方といい、非常にインパクトがあるのですが、それ以外の曲に関してはこの曲ほどのインパクトを感じなかった点。サウンドとメロディーが比較的薄味なので、もうちょっと濃い歌詞の曲が多くてもよかったのかなぁ、とも感じてしまいました。

ただ、その点を差し引いても女性心理をストレートに描いた歌詞は非常に魅力的ですし、これからも非常に楽しみなシンガーなのは間違いありません。そのビジュアルインパクト(?)を含め、今、注目しておいて間違いないシンガーでしょう。これからも切ない名曲が次々と聴けそうです。

評価:★★★★

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2018年11月 5日 (月)

キュートなボーカルが魅力的なレトロポップ

Title:SOLEIL is Alright
Musician:SOLEIL

現在、15歳の美少女、それいゆのボーカルを中心に結成された3人組バンドSOLEIL。とてもキュートな彼女のボーカルが歌うのは60年代のマージービートそのままなルーツ志向のロックンロールサウンドということでも大きな話題となりました。そのメジャーデビュー作「My Name is SOLEIL」から半年、早くも2枚目となるニューアルバムがリリースされました。

前作も数多くの豪華なミュージシャンたちが楽曲を提供していましたが、今回も豪華。メンバーのサリー久保田(元ザ・ファントムギフト、les 5-4-3-2-1)や中森泰弘(ヒックスビル)はもちろんのこと、前作から引き続き元ピチカート・ファイブの高浪慶太郎に、本作ではクレイジーケンバンドの横山剣、スカートこと澤部渡、GO-BANG'Sの森若香織に原田真二という層々たる面子が参加しています。

楽曲の基本的なスタイルについては前作と同様で大きな変化はありません。60年代ロックンロールそのままな楽曲をそれいゆのキュートなボーカルで歌い上げるスタイル。ルーツ志向のシンプルなサウンドが彼女のアイドルばりのボーカルに意外とマッチ。彼女のボーカルスタイル自体、今風のアイドルというよりは60年代のガールズポップと彷彿とさせる部分があり、そういう意味でも楽曲にマッチし、レトロな雰囲気を醸し出しています。

今回もThe Beatlesの「TAXMAN」にインスパイアされたような「太陽がいっぱい」からスタートし、続くSOLEIL流フィル・スペクターサウンドの「Baby Boo」はとにかくキュートなメロディーラインに胸を締め付けられるような楽曲。軽快なサマーポップの「夏の終わりのシルエット」やネオアコ風の「卒業するのは少しさみしい」もそれいゆのボーカルのかわいらしさをいかしたキュートなポップスに。

ボ・ディドリービートで軽快に聴かせる「Sweet Boy」も耳を惹きますし、続く「Hong Kong Chang」はどんなスタイルになっても隠し切れない横山剣節が魅力的なエスニック風チューン。今回のアルバムの中ではちょっと異色な楽曲に仕上がっています。そしてラストはキュートなポップチューン「恋の発熱40℃」からインストチューンの「UFO」で締めくくり。最初から最後までキュートなボーカルによって見事にコーティングされたスイートなポップチューンが続いていきます。

上にも書いた通り、基本的には前作と同じスタイルなのでアルバムとしては大きな変化はありません。そういう意味では前作と比べると甲乙つけがたいという感じなのですが、今回のアルバムは前作に比べると、それいゆのキュートなボーカルをより生かした楽曲が多かったようにも思います。そういう意味では個人的には1枚目より本作の方が好きだったかも。とにかく心地よいポップスアルバムでこれからの活躍も楽しみになってくる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

SOLEIL 過去の作品
My Name is SOLEIL


ほかに聴いたアルバム

KBB vol.2/KANA-BOON

KANA-BOONのシングルのカップリング曲を集めた、いわゆる「B面集」の第2弾。基本的にはアップテンポで疾走感あるギターロックの作品が多く、ある意味KANA-BOONらしい曲がつまっています。カップリングらしい、アルバムにも収録しずらい、KANA-BOONの意外な側面が知れるような曲もあってもおもしろかったとは思うのですが・・・。

評価:★★★★

KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME
Origin
NAMiDA
KBB vol.1
アスター

red/藤原さくら

前作「green」からわずか3ヶ月のスパンでのリリースとなった新作は6曲入りのミニアルバム。タイトルからもわかりやすいのですが、前作「green」の続編的な作品になっています。前作に比べると秋口にリリースされたアルバムということもあり、暖かい雰囲気のミディアムテンポナンバーが多い本作。今回もルーツ志向の色合いが濃い、特にオーガニックな色合いが強いアルバムに仕上がっています。こういうタイプのミュージシャンで、かつ楽曲にインパクトもあり、ルックス的にも・・・という女性ミュージシャンは数少ないだけにがんばってほしいところなのですが・・・。もっともっと高い評価を得てもいいと思うんですけどね。今回も文句なしの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green

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2018年11月 4日 (日)

充実した音楽活動を伺う2枚

今回はCorneliusが最近リリースした2枚のアルバムを同時に紹介です。

Title:Ripple Waves
Musician:Cornelius

Title:デザインあ3
Musician:Cornelius

昨年、約10年半ぶりとなるアルバム「Mellow Waves」をリリースしたばかりの彼ですが、そこからわずか1年で新作2枚をリリースという点でも、そのアグレッシブな活動ぶりを思わせます。もっとも近年は「攻殻機動隊」への楽曲提供やMETA FIVEへの参加など自身のオリジナルアルバム以外の積極的な活動も目立ち、音楽の面での充実ぶりがうかがえます。

もっとも今回リリースされた2枚のアルバムも純然たるオリジナルアルバムではありません。「Ripple Waves」は昨年リリースされた「Mellow Waves」以降に発表された曲を中心として、新曲や未発表音源、また「Mellow Waves」の曲を坂本龍一や細野晴臣といったミュージシャンたちが再解釈した音源も収録されています。一方、「デザインあ3」はタイトル通り、Eテレで放送されているデザインをテーマとした番組「デザインあ」で使用された曲を集めたサントラ盤です。

基本的にどちらのアルバムも共通点あり、いずれもアンビエント風の柔らかい音色のエレクトロサウンドが特徴的。ある意味、ここ最近のCorneliusらしいサウンドをなぞったような曲調ではあるので、いわば新鮮味や驚きみたいな部分はあまりありません。

そのうち「Ripple Waves」の方はある意味、いろいろな曲の寄せ集め的なコンピレーションアルバムであるため、全体的な統一感は比較的薄め。特に後半は様々なミュージシャンによる「Mellow Waves」の曲の再解釈楽曲が収録されているため、この「統一感のない感じ」はより強まっています。特にこの再解釈ではサウンドにエッジを利かせたようなアレンジが多く、前半のCorneliusの楽曲と比べると比較的対照的な作風に感じられました。

個人的には実はどちらかというと「デザインあ3」の方がお気に入り。こちらもLEO今井やCHOCOLAT、高橋幸宏、中納良恵といった様々なミュージシャンが参加しているのですが、「デザインをテーマとしたテレビ番組で、かつ対象は子ども」というテーマ性がはっきりしていることもあり、全体的な統一感があります。

また、こういったテーマ性、あるいはリスナー対象の括りというある種の制約条件があるだけに、逆にその中でのミュージシャンとしてのクリエイティビティーがより発揮された作品になっていたように感じます。時計の音をリズムとして用いた「ピッタリ」や街の音をサンプリングして曲の中に織り込んだ「都市のレイヤー」、ミニマル的なサウンドの中に音が少しずつ増えていく「くりかえし」など実験的な楽曲も多く、ある意味、わかりやすさを求められるテレビ番組の使用曲だけに、その意図もいい意味でわかりやすい曲が多く収録されています。

もちろん「Ripple Waves」の方も「Mellow Waves」の曲との聴き比べも楽しいですし、サウンドチェックをそのまま曲としたユニークな「Audio Check Music」みたいな楽しい曲も収録されており、十分すぎるほど楽しめる傑作アルバムになっているのは間違いありません。どちらも要チェックのアルバムであり、上にも書いた通り、Corneliusの音楽的な側面での充実感を覚えるアルバムになっていました。前作まで10年以上かかったオリジナルアルバムですが、次の新作は意外と早くリリースされる・・・かも?

評価:どちらも★★★★★

cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius
Mellow Waves
デザインあ2


ほかに聴いたアルバム

Kisses and Kills/THE ORAL CIGARETTES

本作で初となるチャート1位を獲得したロックバンド。タイプ的にはダイナミックなバンドサウンドが特徴的なオルタナ系のギターロックバンドといった感じなのですが、サウンドもメロディーも良くも悪くもベタ。楽曲によっては歌謡曲テイストの強い曲もあり、メロディーラインにもそれなりにインパクトがあり、売れそうなバンドではあるかな、という印象も。そんなメロを「陳腐」と感じるか「インパクトが強い」と感じるか、微妙な路線を走っているような感じもします。いろいろな意味で評価が難しい印象を受ける1枚でした。

評価:★★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION
UNOFFICIAL

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2018年11月 3日 (土)

「歌心」あるHIP HOPアルバム

Title:Room 25
Musician:Noname

シカゴの女性ラッパー、Nonameのデビューアルバム。Chance the Rapperのアルバムにも参加して話題となったミュージシャンのようですが、このデビュー作はメディアにも評判が高いようで、Pitchforkでも高い評価を得ており、気になったので聴いてみました。ちなみに既に昨年、日本にも来日を果たし、一部では「知る人ぞ知る」的なラッパーとなっているようです。

Chance the Rapperのアルバムに参加、ということもあって、タイプ的にはいかにも「今風」なラッパーなのかなぁ、と今回のアルバムを聴く前は漠然と考えていました。しかし、実際に聴いてみるとタイプ的には大違い。シカゴ出身のラッパーといっても、他のシカゴ出身のラッパー含め、最近の流行のスタイルとはかなりイメージの異なるタイプのラップを聴かせてくれます。

まずアルバムはいきなりネオソウル風のメロウなコーラスとサウンドからスタートする点に驚かされます。そしてそれに続くNonameのラップは、ラップとポエトリーリーディングの中間を行くような、いわば「語る」ようなラップ。優しさを感じるその声に、まずは大きく惹かれます。

この「語る」ようなラップが個人的にはかなり壺。「Window」「Don't Forget About Me」などでもポエトリーリーディングにも近いようなラップスタイルを聴かせてくれるのですが、ひとつひとつの言葉をしっかり語るように綴るスタイルに個人的には好印象。ただ単純に語るだけではなく、しっかりとリズムにのせており「ラップ」している点も特筆すべきでしょう。

トラックもジャズやネオソウルなどの影響の強いメロウなトラック。ベースラインを強調していたり、それなりに今風にアップデートするスタイルは感じるのですが、今流行りのトラップ的な要素は皆無。ただ、メロウで実に美しいトラックにはとても耳を惹きつけられるものがあります。

後半には「Montego Bae」「Part Of Me」のような歌モノも登場。少々トライバルなリズムも印象的なナンバーなのですが、美メロともいえるメロディーラインを聴かせてくれており、R&Bのミュージシャンとして歌でも十分勝負できそうな力量と歌心を感じます。

そしてラストを飾るセルフタイトルともえいる「No Name」も実に素晴らしい名曲。最初は静かなピアノのインストからスタートし、途中で彼女のラップも登場。後半は男性R&シンガーAdam Nessとのデゥオで締めくくられます。歌もサウンドも美しく聴かせるナンバーで、最後を締めくくるにふさわしい、心に残る名曲に仕上がっています。

「刺激的で新しい」というタイプのラップではないかもしれませんが、彼女の語るようなラップもメロウなトラックも歌も、心に響いてくるとても優しい曲を聴かせてくれます。HIP HOPでありながらも歌心あふれる楽曲の連続で、HIP HOPリスナー以上にソウルやジャズ系の曲が好きな方が気に入りそうなアルバム。私もすっかり気に入りました。傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

QUARTERTHING/Joey Purp

Quarterthing

Chance the Rapperを抱えるクルー、Save Moneyのひとりとして注目を集める若手ラッパー、Joey Purp。いままでMix Tapeのみのリリースでしたが、本作がスタジオアルバムでもデビュー作だとか。もっともいままでのMix Tape同様、CDでのリリースはなく、配信オンリーでのリリースだそうです。

サウンドは今時のトラップ的な要素を取り入れつつ、リズミカルで軽快なラップ。トラップ的なハイトーンのスネアの音もそうですが、全体的にハイトーン気味のシンプルなミニマルテイストのサウンドで軽快に聴かせてくれます。全36分という長さも試しに聴いてみるにはちょうど良く、いい意味でポップで聴きやすいアルバムに仕上がっています。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

MY MIND MAKES NOISES/Pale Waves

最近、特に日本でメディアにおいてよく取り上げられているイギリスの新人バンドPale Wavesのデビュー作。女性ボーカルを中心とした4人組のバンドで、80年代あるいは90年代を彷彿とさせるような、ちょっと懐かしい雰囲気のあるエレクトロ・ガールズポップを奏でています。同じレーベルのThe 1975との類似性を言われることも多いようですが、またChvrchesともかぶるような部分も。確かに軽快で明るいポップソングは聴いていて素直に楽しめるのですが、最近よくありがち・・・と思ってしまったのも事実。ゴシックロックをイメージしたルックスに強いインパクトがあるバンドですが、楽曲自体にもう一歩のインパクトも欲しいところかも。

評価:★★★★

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2018年11月 2日 (金)

ついに結成30年目

Title:REBROADCAST
Musician:the pillows

2013年の活動再開以降、積極的な活動が続くthe pillows。本作も前作「NOOK IN THE BRAIN」から約1年半というインターバルでのアルバムとなりました。来年はなんと結成30年を迎える彼ら。本作はその30周年記念アイテムの第1弾だそうで、今後の第2弾、第3弾アイテムのリリースも待たれます(ということは10年ぶりのベスト盤リリースでしょうか?)

さて、今回のアルバム、まずは1曲、大きく印象に残る曲がありました。それがミュージックビデオも作られ、代表曲とも位置付けられている「ニンゲンドモ」。普段、あまり社会派な曲を歌うことが多くない彼らとしては珍しく、明確に反差別をテーマとした社会派のナンバーとなっています「女性客にだけ威張るドライバー」に対して「その歪んだ自尊心 粉々にしてやるよ」と歌ったかと思えば、一方ではコンビニに働くタイ人に対して「愛想はないけどさ 覚悟はあるんだろ」「キミの好きなロックミュージック 聴いてみないな」と優しい視線を投げかけています。

さらにこの曲のすごいところは

「加害者と被害者のどっちにも
優しくする優しい人
とても優しいんだろうね
でもそのパフォーマンスは
誰かを傷つけてるって
そして誰にも真剣じゃないって
白状すべきだろ」

(「ニンゲンドモ」より 作詞 SAWAO YAMANAKA)

と、この手の差別の論議をする時によくあらわれる「どっちもどっち」的な、表面的に中立路線を取ろうとするニヒリズム的な立ち位置にも明確なノーを突き詰めています。楽曲自体は歌詞も含めて、感情的な印象は薄いのですが、その歌詞の裏側には山中さわおのはっきりとした怒りを感じることが出来ます。

もっともそれ以外の楽曲については基本的にはthe pillowsらしい内省的な歌詞が特徴的。ただ一方で「ぼくのともだち」「BOON BOON ROCK」など、昔の熱い心を忘れてしまって「大人」となってしまった私たちに対して、ロックミュージックで新たな世界に踏み出そうと手を差し伸べるような歌詞も目立ちます。ここらへんはある意味、ベテランバンドとなった彼ららしいメッセージと言えるかもしれません。

一方サウンド的にはいつもの彼らどおりのシンプルなギターロック。ある意味、マンネリともいえるかもしれませんが、聴いていてもマンネリな感じはほとんどありません。前作「NOOK IN THE BRAIN」の感想でも「若々しさすら感じる」と書いたのですが、本作も同様。結成から30年近くがたったバンドとは信じられないくらい、いまだにデビュー直後のバンドのような疾走感、勢い、さらにはある種の緊迫感すらあります。そのため、いつも通りのサウンドとはいえマンネリ感は皆無。新鮮味すら感じらせるサウンドに仕上がっていました。

そんな訳でいい意味でいつも通りの傑作アルバムとなった本作。結成30年目を迎える彼らですが、その勢いはまだまだ止まらなさそう。これからの活躍もまだまだ楽しみです。

評価:★★★★★

Title:劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」Song Collection「Fool on CooL generation」
Musician:the pillows

で、こちらがオリジナルアルバムの直前にリリースされたアルバムなのですが、9月に公開された映画「フリクリ オルタナ/プログレ」と、いままでのアニメ「フリクリ」に使用されたthe pillows楽曲を集めたコンピレーションアルバム。映画主題歌「Star overhead」が収録されているほか、the pillowsの代表的なナンバーが収録されているのですが、注目したいのが、新曲以外全曲セルフカバーという点。映画にあわせてリリースされた半分宣伝目的の、やっつけ的な企画盤ではなく、彼らの過去の楽曲を今の時代にアップデートした、アニメは見ていないファンにとってもマストなアイテムになっています。

さらに収録曲自体もなかなかファンにとっては興味深い選曲になっています。彼らの代表曲ともいえる「ハイブリッドレインボウ」や「ストレンジカメレオン」が収録されていないなど、決して「ベスト盤」という内容ではないのですが、「知る人ぞ知る」的ではないものの、the pillowsを聴く上でとりあえずは抑えておきたいような「名曲」が多くセレクトされています。「MY FOOT」なんかはベスト盤などには収録されていないものの、個人的には大好きな名曲。また「LAST DINOSAUR」「LITTLE BUSTERS」などちょっと昔の曲もしっかりと抑えられており、選曲者のピロウズ愛が伝わってくるようなラインナップになっています。

またセルフカバーといっても基本的には原曲を大きく変えるものではありません。ただ、全曲、今の彼らによって演奏していることによりアルバム全体に統一感が生まれる結果となっていますし、過去の楽曲を演奏しても、オリジナルにまったく引け劣らない若々しさを感じる点、オリジナルアルバムでも感じた彼らの勢いを裏付ける演奏となっていました。

14曲入り59分の長さもちょうどよい感じですし、the pillowsの入門盤としても最適なアルバムだったと思います。なによりもthe pillowsの魅力をしっかりと伝えているセレクトとなっている本作。予想外に素晴らしい、魅力的なコンピ盤でした。

評価:★★★★★

the pillows 過去の作品
LOSTMAN GO TO YESTERDAY
PIED PIPER
Once upon a time in the pillows
Rock stock&too smoking the pillows

OOPARTS
HORN AGAIN
トライアル
ムーンダスト
Across the metropolis
STROLL AND ROLL
NOOK IN THE BRAIN


ほかに聴いたアルバム

00-ism [mono/omni/ripple]/GOMES THE HITMAN

まずは懐かしいなぁ、という印象を受けました。1993年に結成。1999年にメジャーデビューし話題となったギターポップバンドGOMES THE HITMAN。一時期は楽曲がCMソングなどにも起用されて話題になったのですが、残念ながら大きなブレイクもなく実質上、活動休止状態に。ただ、このほどライブを中心として活動を再開したそうで、そんな中、2000年代にリリースされた3枚のアルバム「mono」「omni」「ripple」がボックスセットとして再発されたため、久しぶりに彼らの曲を聴いてみました。

そんな久々に聴いてみた彼らのアルバムなのですが、率直に言ってしまうと、良質なギターポップだと思うのですが、かなり地味(苦笑)。決して悪いアルバムではないのですが、GOMES THE HITMANだけが持つような個性はあまり感じられず、メロディーのひっかかりもありません。悪いアルバムではないと思うのですが、ブレイクするにはちょっと厳しいなぁ、と思ってしまいます。ギタポ好きは聴いてみて損はない作品とは思うのですが・・・。

評価:★★★

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2018年11月 1日 (木)

約7年半ぶりの1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

久々の1位獲得となりました。

今週1位はケツメイシ「ケツノポリス11」が獲得。彼らのアルバムの1位獲得は2011年の「ケツノポリス7」以来4作ぶりとなります。ちなみに彼らのアルバムはデビュー作以来ずっと「ケツノポリス」という名前なのですが、「8」以降はアルファベットで「KETSUNOPOLIS」となっていました。それが本作では元のカタカナ表記に復活。1位復帰はそのため・・・という訳ではないのでしょうが・・・。ただし初動売上4万枚は前作「KETSUNOPOLIS 10」の5万5千枚(2位)よりダウンしています。

続く2位初登場は男性シンガーソングライター高橋優「STARTING OVER」が獲得。顔のアップというシンプルなジャケット写真ですが、この写真、かのリリー・フランキーにより撮影されたものだとか。初動売上2万5千枚は前作「来し方行く末」の2万4千枚(4位)から若干のアップ。2位というのはシングルアルバム通じて自己最高位となります。

3位には現在、活動休止中のいきものがかりのボーカル、吉岡聖恵のソロデビュー作「うたいろ」がランクイン。本作はカバーアルバムとなっており、米津玄師のような最近のミュージシャンから「さらば恋人」のような懐メロまで幅広くカバーしています。初動売上2万5千枚で見事ベスト3入りです。

続いて4位以下の初登場です。まずはアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」からのキャラクターソングアルバムSwitch「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ Switch」MaM「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ MaM」がそれぞれ4位、9位にそれぞれランクイン。2枚同時リリースとしては珍しく、売上枚数に差がつきました。初動売上はそれぞれ1万6千枚と7千枚。同シリーズの前作UNDEAD「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ UNDEAD」の4万8千枚(3位)からは大きくダウンしていまs。

6位にはKalafina「Kalafina All Time Best 2008-2018」がランクイン。梶浦由記プロデュースの女性3人組ユニットですが、昨年、梶浦由記が所属事務所を退社し、活動休止状態に陥ってしまった彼女たち。今年結成10周年を迎えるのですが、そんな彼女たちのオールタイムベストが本作です。初動売上9千枚。直近作「Winter Acoustic "Kalafina with Strings"」(15位)からは横バイ。ベスト盤としての前作「THE BEST "Blue"」「THE BEST "Red"」の2万6千枚(3位)、2万5千枚(4位)からは大きくダウンしてしまいました。

7位には韓国の男性アイドルグループMonsta Xの韓国盤アルバム「Take.1 Are You There?: MONSTA X Vol.2」がランクイン。初動売上8千枚。直近作は日本盤アルバム「PIECE」で、同作の2万3千枚(3位)よりはダウンしています。

8位初登場はベリーグッドマン「BEST BEST BEST」がランクイン。男性3人組ユニットで、楽曲のタイプ的にはGReeeeNやFUNKY MONKY BABYSの亜流みたいな感じのラップを取り入れた前向きJ-POPグループといった感じでしょうか。本作は初のベスト盤で、彼らにとっても初のベスト10ヒットとなりました。初動売上7千枚は前作「SING SING SING 6」の4千枚(13位)よりもアップしています。

最後10位には男性声優岡本信彦「Braverthday」がランクイン。5枚目となるミニアルバムです。初動売上6千枚は前作「Questory」(15位)から横バイです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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