終始、小西サウンドを堪能
Title:素晴らしいアイデア 小西康陽の仕事1986-2018
ご存じピチカート・ファイブのメンバーとして活躍。ピチカート・ファイブとして数多くのヒット曲をリリースする傍ら、数多くの楽曲の作詞・作曲及び編曲を手掛け小西康陽。2001年にピチカート・ファイブが解散して以降も自らのソロ活動を続ける一方で精力的な楽曲提供を続けています。本作はそんな彼がほかのミュージシャンに提供した曲をまとめた作品集。全5枚組というフルボリュームな内容で、彼の作品が発表順に収録されています。さらに最後にはCMトラックや仮歌というレア音源も収録。彼の仕事ぶりを網羅した作品集となっています。
そんな全352分にも及ぶ本作を聴いてまず感じた印象ですが、数多くの楽曲を提供している彼ですが、職人肌というよりも根っからの天才肌のミュージシャンだな、ということを感じます。それはデビュー直後の作品から最近の作品まで通じて、どの曲もネッチリと小西康陽らしいサウンドがこびりついているため。彼の提供している作品は聴けば一発で「小西康陽が関わったな」とわかるようなサウンドばかりで、良くも悪くも意外性はありません。本人の手癖を消して、様々なタイプの曲を手掛けることが出来る職人肌の作家ではなく、彼の場合はどうしても小西康陽らしさが出てしまうタイプのミュージシャン、要するに職人ではなくて天才肌のミュージシャンなんだな、ということを強く感じました。
とはいえデビュー当初の提供作、例えば水谷麻里の「パステルの雨」などでは、まだ後々の小西サウンドを聴くことはできず、ここらへん、決してデビュー当初から彼のサウンドが確立されていた訳ではないことがわかります。もっとも、1989年提供の小西康陽とゴーゴーアタックス名義による「それ行けジェームズ」では、いかにも小西康陽らしいドラムのフィルインが入っており、比較的早い段階から小西康陽らしいサウンドに出会うことも出来ます。
また今回の作品集で感じたのは小西康陽のサウンドってアイドルポップに非常に合っているな、ということでした。ある意味、底抜けの明るさを持っている彼のサウンドは難しいことを抜きにして楽しめることが重要なアイドルポップにはうってつけ。実際、ご存じ「慎吾ママのおはロック」なんていう大ヒット曲もありますし、細川ふみえ「スキスキスー」や、小倉優子「オンナのコ♡オトコのコ」のような、アイドルポップらしい底抜けに明るいものの馬鹿っぽいアイドルポップもお手の物。最近でもNegiccoやななのんなどのアイドルポップを提供している彼ですが、小西康陽サウンドとアイドルポップ(特に女性)には相性の良さを感じます。
さらには仕事の選ばなさ、といったら失礼かもしれませんが、実に幅広いタイプのミュージシャンに楽曲を提供していることもこの作品集で気が付かされた事実。アイドル勢をはじめとして、電気グルーヴやMURO、吉幾三やふなっしー(!)などといったミュージシャン(?)も本作では参加しています。ただ、どんなタイプのミュージシャンに対しても小西康陽サウンドは一貫しており、そういう意味でも上で書いたような彼の天才肌を強く感じました。
個人的には谷村有美にも小西康陽が楽曲を提供していたのがちょっと意外に感じたのですが・・・こちら楽曲的には小西康陽らしくないなぁ、と思ったのですが作詞だけの参加なんですね。ただ、作曲やアレンジに注目を集めることの多い彼ですが、作詞家としてもユニークな歌詞を提供している曲も多く、作詞家としてもその実力を感じさせる曲が多くあることに今回の作品集ではじめて気が付かされました。
そんな訳でミュージシャン小西康陽の様々な側面での実力、魅力を強く感じることが出来るフルボリュームの作品集。300分を超える長さですが、その魅力的な楽曲の数々に一気に聴くことができる、はず。非常に聴きごたえのある作品でした。
評価:★★★★★
「SUNNY 強い気持ち・強い愛」Original Sound Track/小室哲哉
引退を表明している小室哲哉が最後に音楽を手掛けることとなった映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」。90年代のヒット曲が劇中に多く登場するそうですが、本作はその劇伴音楽を集めたサントラ盤。所々に小室哲哉らしい手癖を感じるサウンドはあるものの、全体的にはワンアイディアのBGM的な曲が多く、小室哲哉名義のアルバムとしては最後になるかもしれないと思うと、若干物足りなさも感じてしまいます。また映画関連のサントラにしても、どちらかというと劇中に使われるヒット曲を集めたオムニバスを聴きたかったかも。映画を見た方は楽しめるかもしれませんが。
評価:★★★
小室哲哉 過去の作品
Digitalian is eating breakfast 2
Far Eastern Wind-Complete
DEBF3
TETSUYA KOMURO EDM TOKYO
Tetsuya Komuro JOBS#1
Tetsuya Komuro JOBS#1(INSTRUMENTAL)
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