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2018年10月27日 (土)

いままでにないシンプルな作風だが

Title:Raise Vibration
Musician:Lenny Kravitz

かつてはグラミー賞を受賞し、アルバム毎に大ヒットを記録。日本でも楽曲がCMソングに採用されるなど高い人気を誇っていたロックミュージシャン、レニー・クラヴィッツ。ただ残念ながら最近では人気の面ではちょっと落ち着いたような印象を受けます。そんな彼の約4年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

レニー・クラヴィッツの楽曲と言えば、ゴリゴリのギターリフとファンキーなリズムに載せて繰り出されるロックサウンドが特徴的。ある意味、「これぞロック」といった感じのわかりやすいスタイルが強いインパクトを持っており、良くも悪くも「ベタ」という印象を強く受けました。

しかし、今回のアルバムに関してはそういう「わかりやすい」レニー・クラヴィッツ節ともいうようなスタイルに出会うことはほとんどありません。確かに1曲目の「We Can Get It All Together」はノイジーなギターサウンドを前に押し出した、いかにもなギターロックナンバーですし、続く「Low」でもファンキーなリズムを聴くことが出来ます。ただし、どちらの楽曲にしてもゴリゴリのギターリフを聴かせるとか、とにかくこれでもかというほどのファンクのリズムを聴かせるというスタイルはなく、比較的シンプルな雰囲気にまとめ上げています。

今回のアルバムはいわばギミック的な側面をほとんど排除し、シンプルなギターロックに終始したアルバムに仕上がっていました。その後もタイトルナンバーである「Raise Vibration」も最初は彼らしいギターリフからスタートするものの、あくまでもシンプルなギターロックナンバーにまとめあげていますし、さらに「Johnny Cash」「Here to Love」はミディアムテンポで聴かせるナンバー。いずれも彼のメロディーセンスがキラリと光るような楽曲に仕上がっています。

この傾向は後半も続き、「The Majesty of Love」のようなホーンセッションを入れたファンキーなナンバーが一種のインパクトとなっているものの、「5 More Days 'Til Summer」「Gold Dust」のようなメロディーを主軸としたシンプルなギターロックナンバーがメイン。ラストの「I'll Always Be Inside Your Soul」もメロウに聴かせるソウルバラードで締めくくられています。

アルバム全体としては非常にシンプルな印象を受けるアルバムであり、派手さはほとんどありませんし、インパクトのある曲もありません。ただシンプルなだけにレニーのメロディーメイカーとしての実力が良くわかるアルバムになっていたと思います。ある意味、ギミック的な部分を排除した結果、レニー・クラヴィッツというミュージシャンのコアな部分がより表にあらわれた作品といってもいいかもしれません。

ここ最近の彼のアルバムは正直なところマンネリ傾向が強く、悪くないけど・・・という煮え切らない印象を強く持っていました。しかし、そんな中でこのアルバムはインパクトこそ薄いものの彼の良さがより出ていた久々の傑作アルバムになっていたと思います。一時期に比べて人気の面で落ち着いた彼。本作も目立つアルバムではないので人気回復の起爆剤としては難しいかもしれません。ただこのような良作を作り続ければ、次第に人気はまた上向きに回復していきそう・・・。これからもまだまだ彼の活躍から目を離せなさそうです。

評価:★★★★★

Lenny Kravitz 過去の作品
Black and White America
Strut

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