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2018年10月23日 (火)

円熟味を増した傑作

Title:INNER VOICE
Musician:真心ブラザーズ

来年、デビュー30周年を迎えるベテランバンド、真心ブラザーズのちょうど1年ぶりとなるニューアルバム。デビュー30年を迎え、ここ最近ではさらに成熟度の増した感のある彼ら。ここ数作、ルーツ志向を明確したアルバムが続いていますが、今回のアルバムもその延長線上にあるような作品になっています。が、これがまたよい!いい意味で枯れた雰囲気がとてもうまく曲に作用したベテランミュージシャンらしい味わいのある傑作に仕上がっていました。

特に今回のアルバムの大きな特徴が、いつも以上にルーツ志向の度合いが増しているという点。例えば「ライダースオンナ」は軽快なギターリフにブルースハープも加わった王道のブルースナンバーになっていますし、「手ぶら」もベタル・スチールの哀愁感あるサウンドがとても心地よいブルージーなナンバー。「ギター小僧」もタイトル通り、ギターが大好きな少年がカバーしそうな、60年代風のサーフロックなギターインスト。また、「Z」も昔ながらもロックンロールナンバーなのですが、歌詞のテーマが自動車(それも昔ながらの「セダン」をテーマとした)というのも昔ながらのロックンロールらしい楽曲になっています。

また、そんな円熟さを感じるのはサウンドの面だけではありません。歌詞の側面でもアラフィフの彼らだからこそ歌えるような円熟味を帯びた歌詞の世界が繰り広げられています。例えば冒頭を飾る「メロディー」。YO-KING作詞作曲のナンバーなのですが、

「大丈夫 安心して みんな本当は退屈しているから
退屈を怖がるな 退屈と共に在れ」

(「メロディー」より 作詞 YO-KING)

なんていう歌詞は彼らくらい歳を重ねてはじめて歌えるのではないでしょうか。そんなアラフィフならではのメッセージを優しくフォーキーなサウンドにのせて歌い上げます。

アラフィフらしい歌詞というと桜井も負けていません。「バンブー」では

「どん底でもないが 天国でもない
退屈ではないが 新鮮でもない
なるべく 痛い目にはあわないように
お互い 気持ちよく過ごせますよう
ときめきが 胸の鼓動が
夢が 明日が そこそこだ」

(「バンブー」より 作詞 桜井秀俊)

という、ある種の達観したような、でもどこかユーモラスな歌詞が楽しい曲を聴かせてくれます。

基本的にはYO-KINGボーカルがメインとなっているのですが、YO-KINGと桜井秀俊が違うベクトルで楽曲づくりとしているというよりもルーツ志向という点で同じ方向を向いたようアルバムになっています。YO-KINGと桜井秀俊が別の路線で個性がぶつかり合うようなアルバムも魅力的でしたが、本作は本作でアルバムとして一体感があります。お互い、必要以上に個性を発揮せず、統一感を持った曲づくりをしているのも、ある意味、アラフィフになったから、という感じでしょうか。

そんな訳でアルバム全体として決して派手さがある訳ではありません。いかにもヒットしそうなインパクトあるメロディーが飛び出してくるわけではありません。ただ、デビュー30年の彼らだからこそ出来る、まさに円熟味のある傑作アルバムに仕上がっていました。かつての勢いのある彼らも魅力的でしたが、年数を重ね味が出てきた真心の曲も魅力的ですね。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE
FLOW ON THE CLOUD

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