60歳を迎えた今だからこそ
Title:True Meanings
Musician:Paul Weller
イギリスロック界のボス的存在のポール・ウェラー兄貴。パンクバンドThe Jamのボーカリストとしてデビュー後、The Style Councilとしての活動を経て、現在ではソロで活動している彼。いまでも1,2年、長くて3年に1枚くらいのペースでコンスタントにアルバムをリリースしているだけではなく、いずれもアルバムも全英チャートでは上位に食い込んでくるから驚きです。そしてそんな彼のどの作品もしっかりと現役感のある作品に仕上がっています。
しかし、そんな彼の約1年ぶりとなるニューアルバムはちょっと驚かされました。1曲目「The Soul Searchers」からいきなりアコースティックギターをベースとした物悲しいメロディーラインでスタート。続く「Glide」も美しいアコギのアルペジオを聴かせるフォーキーなナンバーに。優しく歌う彼のボーカルも、いつもの「兄貴!」といった感じよりも、ちょっと失礼ながら「おじいちゃん」に近い雰囲気すらあります。
その後も基本的にアコースティックなアレンジで「歌」を聴かせるような楽曲が並びます。もちろんフォーキーな雰囲気のナンバーだけではなく、例えば「Old Castles」はバンドサウンドが入り、ムーディーな雰囲気で聴かせる楽曲に。女性ボーカルが加わる「Books」のように、シタールの音色も入ってエキゾチックな雰囲気に仕上がる楽曲もあります。ただ、基本的には先行シングルとなった「Aspects」やピアノとアコギの音色が美しい「Bowie」など、シンプルに歌を聴かせる、レイドバックした曲が続きます。
いままでももちろんアルバムの中でアコースティックなナンバーは聴かせてくれています。ただ、ここまで全面的にアコースティックに仕上げたアルバムははじめて。歌詞も全体的に内省的なものが多いようで、インタビューでは本人曰く、このような内省的なアルバムになったのは「60歳を迎えたことが大きい」とのこと。「個人的なアルバムを作るべき時期があるとしたら、今しかないと思った」とも語っています。
そんないつもの彼とはちょっと違うスタイルの本作ですが、「歌」が前面に出た結果、メロディーラインがとても美しいポップチューンが並んでいました。「Glide」や「Bowie」などフォーキーな作品のほかにもストリングスを取り入れた「May Love Travel With You」なども美メロとも称すべき、素晴らしいメロディーラインを聴かせてくれます。本作ではまさにメロディーメイカーとしての本領が発揮された傑作というべき作品になっていました。
もっとも彼曰く、このような作風のアルバムは今回でお終い。次回作以降はいままでと同様の前向きな作風に戻るということですので、いままでの彼の作風が好きな方はご安心を。もっとも「いままでと同様」と言ってもアルバム毎にいろいろなスタイルを聴かせてくれる彼なだけに、今後もどのようなアルバムが聴けるのか、いまから楽しみにしていたいところ。とりあえずは今は、本作でじっくりと彼の歌声と美しいメロディーを味わいたいところです。
評価:★★★★★
Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
ほかに聴いたアルバム
And Nothing Hurt/Spiritualized
約6年半ぶり、少々久しぶりとなったSpiritualizedの新作。ここ最近、比較的シンプルなギターロック路線が続いた彼らですが、今回のアルバムも「On The Sunshine」のようなギターノイズを前に出した、若干サイケな路線の曲もありつつ、基本的にはシンプルなギターロック路線が継続されています。どの曲もメロディアスでポップなメロディーラインが心地よいのですが、全体的に個性は薄め。いいアルバムだとは思うんですが、もうちょっとガツンと来るようなインパクトが欲しかったような。
評価:★★★★
Spiritualized 過去の作品
Songs in A&E
Sweet Heart Sweet Light
Safe In The Hands of Love/Yves Tumor
本作よりWarpからアルバムがリリースされることとなったアメリカ出身、イタリア在住のミュージシャン。「エクスペリメンタル・ソウル」「ゴシック・ポップ」などという表現をされることの多い独特かつ実験的なサウンドが特徴的で、ソウル、ジャズ、ノイズ、ミニマルミュージックなどの要素を融合。ダイナミックなサウンドも印象に残ります。「歌モノ」の楽曲もあるものの、基本的にはボーカルラインもサウンドと同一に並べたような「インスト」の作品がメイン。正直言うとちょっと取っつきにくさは否めないのですが、今後次第ではよりおもしろくなりそうな可能性も感じる作品でした。
評価:★★★★
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